[PR] 賃貸住宅 オクラサラダボウル 【美流】そっとオリBL試作品その6【オリBL】 忍者ブログ
http://medianox.blog.shinobi.jp/
めでぃのくの日記
1303  1302  1301  1300  1299  1298  1297  1296  1295  1294  1293 
2025-03-14 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2013-03-09 (Sat)
ちょっと展開に急いた感が有るので、この辺は調整入れないとですね

 後悔したのは、1月5日の事だった。

「俺、葵さんの事が、好きです」

 あれからも一日おきのペースで会って。何をするでもなく、喫茶店で長い間話したりする程度の事を続けていた。その日も、喫茶店の個室に入り、延々と貴俊の話を聞いていたら、突然その告白が始まったのだった。

「……? はあ、ありがとうございます」

「葵さんほど優しくて、素敵な人を俺は他に知りません。それにとっても美人だ。だから、俺なんかと釣り合うわけが無い、と思う、だけど……でも、でも思い切って言おうと思います!」

「……え……」

「好きです、葵さん! 俺と……俺とお付き合いして下さい!」

 そう言って、貴俊は深々と頭を下げた。

 最初に思ったのは、コイツはバカじゃないのか、という事だ。

 ついこの間、女にフラれたと言って、まさにこの部屋で泣き喚いていたというのに。なんという切り替えの早さ。いや、恐らく逐一相談に乗っていたから、勘違いされたのだろう。よしておけばよかった、と思っても、もう遅い。

「……私、男ですよ?」

 とりあえず判りきっている忠告をしてみると、貴俊はそのままの姿勢で「はい!」と答えた。

「判ってます、俺がおかしな事を言ってるのぐらい……でも、でも俺は今、どうしようもなく葵さんが好きだ! でも嫌なら断って欲しい……嫌な物は、嫌だろうし……」

 ああ、嫌、嫌だね。そう思ったが、貴俊を傷付けずに断る言葉が見つからない。そもそも、そんな配慮をしている事がおかしい。貴俊がどう思ってどうなろうが、知った事ではないはずだ。ここはキッパリ、断るべきだ。

 そう考えながら、貴俊の頭を見る。未だに下げられたそれからは、死刑宣告でも受けるかのような緊張と、絶望感が滲み出ている。

(……断るべきだ。間違いなく。お互いの為に)

 判っているのに、判っていたのに。

「……貴俊さん、我々はまだ、お互いの事をあまり知りません。……まずは、友人、から、始めませんか」

 口をついて出たのは、そんな意味のわからない提案だった。




 1月6日

「俺は何をやっているんだ……本当に」
 
 全く、悩みごとが尽きないせいか、頭が痛い。今年は正月から散々だ。意味のわからない事ばかりで、体が重くて仕方ない。頭痛薬を飲んで、椅子に腰かけて居ると、後ろからヒュウガが声をかけてくる。

「でも、先輩、OKしちゃったんでしょ?」

 久しぶりに現れたと思ったら、生意気な口を利く。淹れてくれたコーヒーを受け取りながら「ああ、したさ」と不機嫌に答えた。

「他にどんな選択肢が有ったって言うんだ。別にあの客に何の興味も無いし、ただの客相手にこれ以上どうにもなる気は無いけどな。全く……」

「……」

 ヒュウガが何か言いたそうにこちらを見ている。だが結局何も言わずに、ソファに戻ろうとした。それがまた癪に障る。

「何だ、何か言いたい事が有るなら言え」

「……言ったら先輩、本当に怒りますもん」

「バカ言え。俺は何にも執着してない。だから怒ったりなんかしない」

 ヒュウガは一度疑わしそうな目で葵を見て、それから少し近寄って、言う。

「興味が無くて、これ以上になる気が無いなら、最初からキッパリ断ってると思うんです」

「状況が状況だったんだ、仕方ないだろ」

「そこですよ。状況、とか、相手の気持ちを考えてるから、気にしちゃうんでしょ?」

「考えてない」

「考えてなかったら、先輩はもっともっとつまんない人です!」

「お前、さりげなく俺をつまんないって言ってるな?」

「そんなことはどうでもいいです」

「どうでもよく、」

「いいですか、つまりですね」

 ヒュウガが葵の言う事を聞かない。珍しい事に困惑している間に、ヒュウガは言う。

「先輩も、その人の事が、少なからず好きだって事です」

「……お前、バカなのか?」

「バカなのは先輩です。そんな簡単な事も判ってないみたいなフリして。見ていて歯がゆいって言うか、通り越してイラッときちゃいます。大好きな先輩が、どーしょーもない事になってるの、見てると」

「お前、」

「僕、恋人が出来ました」

 唐突に宣言されて、一瞬葵は何を言われたのか判らなかった。少し遅れて「ハァ!?」と声を上げると、ヒュウガは悲しげに言う。

「でも、今の先輩は放っておけないです、今の状態じゃ……先輩、今すごく揺れてるみたいだし、側に居てあげたいって……」

「待て、待て、なんでサラッと変な告白した!? 恋人って……誰だ」

「樹さんです」

 その名前を聞いて、葵はまた一瞬言葉が出なかった。男だと言っていた。どちらも男。こっちがホモに絡まれていると思ったら、ヒュウガまで絡まれていた。

「お前……お前、それは今すぐ離れろ」

「何でですか?」

「お前……なんでも何も無い、とにかく、分かれるんだ。大体……出来過ぎだろ!? この間知り合ったばかりなのに、そんな、お前……利用されてるだけとか、考えないのか!?」

「僕だって色々考えていますし、それは大丈夫です」

「何が大丈夫だよ……! お前、変なところで楽天的すぎるぞ!」

「先輩は変なところで譲らなすぎです! 大体、僕の事なんてどうでもいいハズなんでしょ? 何でそんな事言うんですか」

「……っ、そ、それは……」

 言葉に詰まった。何かを言いそうになって、何かを考えそうになって、それを必死に食いとめる。なのに、ヒュウガの方がそれを許さなかった。

「簡単な事じゃないですか、先輩、本当はその人の事も、僕の事も心配でたまらないから、でしょ? 僕の自意識過剰なんかじゃない、先輩は、僕の事も、その人の事も好きなんだ。なのに、それを認めようとしてないだけじゃないですか!」

 ああ、いつからコイツはこんなに生意気になったんだろう。昔は、先輩先輩って、後ろを着いてきて、隠れてるような奴だったのに。

 だから、だから、側に居ても良いと思っていたのに。

 ――何故、そう思ったんだろう。

「……出てけ」

「……先輩」

「……出てけ……もう二度とここに来るな。恋人さんとやらとよろしくしてろよ」

 なんとかそれだけ吐き出す。ヒュウガは悲しげな顔で葵を見ていたが、やがて荷物を手に取ると、静かに部屋を出て行った。

 時計の針の音だけが響く、静かな静かな部屋で、葵は一人で座っていた。



 1月6日

 その日は朝から雨が降っていた。

 長期休暇の最終日、葵は貴俊に呼ばれて、飲みに出た。

 貴俊の行き付けの居酒屋らしい。狭くて少し汚いそこは、しかし料理も酒も旨く、店主は少々うるさかったが、まあ楽しい時間を過ごせた。このところのストレスを発散したいと思っていたのも有り、また今日も頭痛が止まらないので、それを忘れようとしたらしい。葵はいつもよりよく飲んだ。

 酒に弱い方ではない。むしろ、そこそこいける口だ。自分を失うほどに飲んだ事は無い。だから、今日ぐらいは、と好きなだけ食べて飲んだ。明日から仕事だ、という事は理解していたが、そもそも支障が出るほど飲んだ事が無かった葵は、ペースを落とさなかった。

 そのせい、だろう。

(……?)

 ふと気付くと、葵は知らない天井を見上げていた。

 薄いピンクの天井。ライトがあまり眩しくない。のろのろと周りを見渡す。最初に思ったのは、ビジネスホテル、という事だった。葵はベッドの上に居るようで、その部屋はそれほど広くない。家具らしい家具も無い、質素な部屋だったから、最初はホテルだと思った。だが、壁がピンクで、シーツもピンクで、ついでに妙な位置に鏡が有って、おまけに部屋の隅にそれらしい袋を見つけて、飛び起きた。

 ここは、ラブホテルだ。

 飛び起きて、そしてクラクラとベッドに戻った。何故だか頭が痛いし、周りが歪んで見える。

(なんだ、何がどうなって……俺の上着は何処だ)

 ふと気付く。コートを着ていない。その着ているシャツも、僅かにボタンを外されている。

 そしてシャワールームから水音が聞こえる。つまり、つまりは、今の状況を考えると。

(……やばい)

 犯される、と思った。思ったが、どうにもこうにも頭が重い。うう、と呻きながらようやっと起き上がり、ベッドから出たが、そのままクタクタと床に崩れ落ちた。しっかりしろ、俺の体。でないとこのまま大切な物を失うんだぞ。そう叱咤して、なんとか立ち上がると。

「あれ、葵さん。もう大丈夫?」

 目の前にシャワー上がりの貴俊が立っていた。

「――っ!」

 驚きのあまり、腰が抜けた。また床に座り込んでしまう。貴俊は濡れた髪をまとめ、バスローブを着ただけの状態だった。見るからに危険だ。

「ああ、まだダメそうだね……ほら、葵さん、ベッドで大人しくしてなきゃ……」

「な、何を、する気ですかっ」

 伸ばしてきた手を振り払って言う。貴俊は一瞬きょとんとした顔をして、「何をって……」と考え始めた。その隙になんとか立ち上がる。逃げないと、貞操の危機だ。

「……いや、葵さんね、酔いつぶれちゃったから、ここに連れて来たんだけど……」

「連れ込んだ、の間違い、でしょう」

「え? いやまあ、別にどっちでもいいけど……」

「あ、貴方は、な、何でも良いんですかっ、ゆ、友人から、始めようって、言ったのに、いきなり、こんな」

 そう言われて貴俊は、ようやく何かに気づいたらしい。慌てるように言う。

「あ、葵さん、何か誤解しているようだけど、俺は決して……」

「な、何が、この状況の何が誤解ですかっ!? お、俺を、俺を犯そうとしてるんだろっ!?」

 思わず素が出たのは、状況が状況だからか、酒が入っているからなのか。とにかく頭がグラグラして、考えがまとまらない。

「ち、違う、違うよ! 誤解だよ、葵さんの様子がおかしいから、休めるところをって思って」

「そんな理由で、こんな所に、わざわざ、連れ込むわけ、ないっ」

「葵さん、違うんだよ……!」

 説明しようとしたのか、手を伸ばしてきたから、葵はそれを払いのけて、のろのろと部屋の入り口へと向かう。

「葵さん!」

「う、うるさい! 俺に触るな、変態野郎っ! ちょ、ちょっとでも、気を許した俺が、バカだった、この際、この際言っとくけど、俺、あんたの事好きでも何でもない! ただの客と店員だ、勘違いしてんじゃねえよ、どいつもこいつも! 俺が誰かを好きになるなんて! あり得ないんだよ、なんで判らないんだ!」

「葵さ……」

「俺は、誰の事も好きじゃないし! ずっと一人だし! ……俺の何も知らない癖に、好きとか、バカじゃねえの……! もう俺の事は放っておいてくれよ、俺は、あんたらが思うような人間じゃないんだ……っ」

「葵さん」

 なんとかドアまでたどり着いたが、あっけなく追いつかれてしまった。グッと肩を掴まれて、振り向かされる。このまま犯されるものだと思っていた葵は、真剣な顔をした貴俊に顔を覗きこまれて、困惑した。

「葵さん、確かに俺は貴方の事を何も知らないよ、まだ。でも知りたい、知った上でもっと好きになりたい、そう思うんだ。葵さんが何をそんなにまで隠していて、何でそんなに苦しんでるのか、俺は判らない。判らないけど、そんな辛そうな顔をする葵さんを、どうにか笑わせてあげたいって、そう思うんだ」

「ば、バカか、アンタは……」

「バカでいい、そんなバカに、そんなに苦しそうな葵さんが救えるなら、それでいい、なんとかしたいんだ、葵さん。本当の事を聞かせてくれよ、本当は何を隠してるんだ、葵さん」

 そんなの、俺だって知るか。

 葵は夢中で逃げだした。何から逃げたのか、もう判らない。貴俊からなのか、それとも色々な言葉や、考えからなのか。酔っていたのに、足もとも覚束なかったのに、奇跡的に葵は気付くと自宅の玄関でしゃがみこんでいた。ずぶ濡れになっていて、寒いと思って目を覚ましたのだ。寒い、寒いと呟きながら、自宅に戻り、シャワーを浴びながら。

 ああ、とんだ新年初出勤になる。どうしてこう、嫌な事ばっかりなんだ。

 そんな事を考えていたのを最後に、また葵の意識は途切れた。

拍手[0回]

PR
■ この記事にコメントする
NAME
TITLE
COLOR
MAIL ADDRESS
URL
COMMENT
PASSWORD
プロフィール
Google Earthで秘密基地を探しています
HN:
メディアノクス
性別:
非公開
趣味:
妄想と堕落
自己紹介:
浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。


二人とも変態。永遠の中二病。
カレンダー
02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
メロメロパーク
ひつじです。
ブログ内検索
最新コメント
[02/11 美流]
[02/10 通りすがリィ]
[02/10 通りすがリィ]
[07/28 谷中初音町]
[07/02 美流]
バーコード
カウンター
SEARCH IN THIS BLOG
忍者ブログ × [PR]
PRODUCE BY SAMURAI FACTORY
"オクラサラダボウル"