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2013-04-05 (Fri)
ということでおーわり

ヒュウガ編書いた方がいいかもしれない

 2/13

 夜。

 明日はバレンタインデーですよ、先輩何もしないつもりなんですか!? 僕と一緒にチョコレート作りましょうよ!

 そう言ってヒュウガが押しかけて来たものだから、葵は仕方無く、彼と一緒に手作りチョコレートとやらの作成に取り掛かっていた。

 葵自身にはやる気は無かったが、やるとなったらプロ意識が働く。葵もヒュウガと一緒に真剣になって取り組んだ。ただ、彼と違って、ハートに「いつきさんだいすき!」とか書く痛い事をしようとは思わないだけだ。

 その作業の間、なんだかんだと話していて、自分達の関係の事になった。葵と貴俊は、店員と客という関係であるし、それまでのいきさつがいきさつだから、多少関係自体がおかしい。ヒュウガと樹も、詳しくは語られなかったが、急に恋人関係になったのは同じだ。何かしらマトモじゃない事が有ったのだろう、と思う。でなければ、ホモでもないのに男同士がひっつく事は無い筈だ。

 だからきっと、この関係はマトモじゃないのだと思う。

 そう葵が言うと、ヒュウガは「うーん」と唸ってから応える。

「僕もそうですけど、先輩もちょっと難しく考え過ぎなんじゃないか、って思うんですよね」

「どういう事だ?」

「だって、どっちみちこのままずっとずーっと一緒に居られるとは限らないでしょ? 心が離れたり、死別だって可能性有りますし。この先どうなるかなんて、誰にも判らない。その上、それを不安に思ったってキリが無い。だったら今、全力で好きになって、ぶつかったり触れたり離れたりしながら、全力で愛したらいいんじゃないかって、僕は思ったんです。もしこの気持ちが勘違いで、そのうちこの出会いも黒歴史みたいになっちゃうかもしれないですよ。でも、それまで全力で一緒に居れば、きっときっと、大切なモノは残ったりするんじゃないかって、思います」

 そう言うヒュウガの眼は昔のように自信の無い眼ではなかった。いや、きっと本質的な部分は変わっていないのだろうが、少なくとも、何かは確実に変わっている。それが何か、とハッキリは判らないが、とりあえずそれが、現在のところ、ヒュウガにとってよい方向に変わっているように、葵は思う。

 ずっと葵に小さい事も大きい事もグズグズ泣いて相談して、それでも泣いていたようなヒュウガが、自分で決めて、自分で歩いている。その事が、葵は今、確かに少し寂しいとも思うが、それでも嬉しいと思う。

「……お前、本当に生意気になったよな」

「ごめんなさい……」

「いや、怒ってるんじゃない。俺はむしろ、嬉しいよ。お前が前向きになってさ。……でも無理はするなよ。大体人間てのは、ちょうどいい所では止まれないからな」

「……気をつけます。……僕も、先輩が笑うようになって、嬉しいんですよ。最近先輩に表情が有るなって思うんです。人と付き合うと、きっと悲しい事もいっぱい有ると思いますけど、楽しい事もたくさんありますよ。何も無いなんて、寂しいです。だから先輩も大切な人に出会えて、僕、本当に良かったって思います」

 僕が前向きになれたのは、先輩が今までずっと一緒に居てくれたからです。これからもよろしくお願いします、先輩。今度は僕が恩返しをしたいと思ってるんですよ。

 ヒュウガが微笑む。だから葵は「ああ」と頷いて、それから聞こえないほどの小さな声で「俺もお前の世話にはなってるさ」と呟いた。

 ヒュウガには聞こえなかったらしい。葵の手元を見て、「わあ!」と声を上げる。

「先輩、なんだかすごい形になってますよ、チョコ!」

 ヒュウガと同じように型に入れたハズのチョコは、なんとも形容しがたい、あえて表現するなら、そう、「ぐっちゃぐちゃ」というような様子になっていた。

「そうだろ……なんて言うか……前衛的だろ……」

 葵も判っていて黙っていた。プロ意識は有るのに、何故こうなってしまったのだろうか。思えば、美術部に所属していたが、顧問に誉められた事は一度も無く、大抵「前衛的ですね」と評価されていたのを思い出した。一方のヒュウガは、センスが有ると誉められていたと思う。今も、ヒュウガのチョコはマトモだ。女の子が作ったチョコ、と言っても違和感が無いぐらい、完璧な本命チョコだ。

 それに比べて、葵のそれは、あまりにも「ぐっちゃぐちゃ」だった。

「料理に前衛とかいらないです! わぁわぁ、ちょ、ちょっと作り直しましょうよ先輩!」

「ヒュウガ、お前の上手いな。分けてくれ」

「だ、ダメですよ! こういうのは、本人の手作りってトコが一番大切なんですよ!」

「俺はその辺の事にちっとも価値を感じないから構わん」

「いやでも、貴俊さんが作ってくれた野菜は好きでしょ?」

 そう言われて、葵は天井を見上げた。しばらく考えて、考えて、考え抜いて、葵は真顔でヒュウガに言う。

「それとこれとは、別だ」

「絶対別だと思ってないですよね、今の間! ほら、手伝いますから、スネないで、もう一回作りましょ!」

「俺は断じてスネてない」

「そうですか、じゃあ、一緒に頑張りましょうね!」

 ヒュウガに促されて、葵は仕方なくチョコレートを再び溶かす作業に取り掛かった。



 2/14

 運が良いというか、なんというか。ちょうどその日は仕事が休みだったし、貴俊も(もしかしたら彼の方は何か期待して来たのかもしれない)部屋に遊びに来たので、バレンタインデー当日にチョコを渡す事になった。

 リビングで一緒にソファに座って。少し話してから、そっと小箱を取り出した。きょとんとしている貴俊に、「バレンタインですから、手作りチョコ……です」と言って、おずおず差し出す。

「えっ!? 手作り!?」

 包装だけは一人前のチョコを手渡すと、貴俊の目が輝いた。エサを目の前にした大型犬のようだ、と葵は一瞬思った。「ひどいものですけど」と目を反らして言っても、貴俊は「嬉しいなあ! ありがとう葵さん!」と大喜びをしている。

「男の人は喜ぶって、ヒュウガがやたらに言うんで……」

「え、葵さんは嬉しくないの?」

「さぁ、私は、『手作りなんだから気持ちこもってます』的な押し付けがましいのには、あんまり興味が無かったので……」

 実際、葵は手作りという事にあまり価値を見出していない。まあ、それも今まで人と心を交わさなかったから、かもしれないが。心の通った人間からもらうのとは、また違うかもしれない。

「そっかあ……俺は嬉しいよ、ホントに。早速開けていいかな?」

 はあ、と気の無い返事をして、葵はしょんぼりと余所を見る。その間に、貴俊が包みを開けて、チョコを取り出した。結局どれほど頑張っても、「なんていうか……どうやったらこうなるんですか?」とヒュウガに言われる形状からは逃れられなかった。貴俊の顔を見るのが怖くて、目を伏せていたら、すぐにモグモグやっているのが判って、葵は顔を上げた。

 貴俊はなにやら、満面の笑みでチョコを食べている。

「……んん、葵さん、おいしい!」

 世の中にこんなに嬉しそうにチョコを食べる男が、他に居るだろうか、ましてこんな前衛的なチョコを。それぐらい幸せそうな顔で、見ているこっちまで幸せになりそうだったが、すぐに正気に戻る。

「……何も言わないんですね」

「えっ?」

「前衛的な形してるでしょう……」

「ああ……んでも、葵さんの気持ちは伝わったよ、一生懸命作ってくれたんだって。それで十分、それに、美味しいよ! 俺、すごく嬉しい」

「そ、そう、ですか……」

 なんだか気恥かしくなって、また目を反らす。貴俊は「おいしい、おいしい、うれしい、いやあ幸せだなあ」などと繰り返しながら、チョコを食べている。それを聞きながら、葵は黙って彼の隣に座っている。

 なんとも言えず、温かい時間だった。そんな気持ちになるのが不思議で、葵は貴俊を見てみる。彼も葵の視線に気づいたらしく、見つめ返して来た。「どうしたの?」と聞かれて、葵は困った。自分は一体、どうしたのだろう。

「……なんて言うか、……この所、経験した事の無い出来事ばかり起こって……少し、困惑しています。ただ……その……恐らくですけど……」

 今、私は、幸せだと思います。

 そう言うと、貴俊がぎゅうと抱きついてきた。困惑していると、「俺も」と貴俊。

「今、すごく幸せだ。……俺、葵さん、ありがとう、こんな時間をくれて」

「いえ、私は何も……」

「葵さんに出会えただけで、こんなに色んな事が変わった。すごい事だと思ってる。本当はずっとずっと、こうやって、誰かを好きになったり、したかったんだ。でもずっと自信が無くて、出来なかった。……今は、葵さんを好きでいられる。まだ自信はそんなに無いけど……でも、葵さんを好きで居ていいんだなって、思える、から……」

 愛しげに背中を撫でられて、葵は目を細めた。それは自分の方だって言える事だ。傷付くのが怖くて、他人に心を開かないようにしてきた。好きにならないように。それを変えたのは、貴俊だ。だから今、葵は貴俊が好きだ。

 相変わらず、恋ではないと思う。それでも、好きだと思う。愛しい。共に有りたい。

「……私も、貴俊さんと会えて、良かったです……」

 葵がそう言うと、貴俊は優しく微笑んだ。その優しい表情が、ずっと前から、こういう関係になる前から、好きだった。





 いつどうなるか判らない。この時間が永遠なのか、良いものなのかも判らない。

 だからこそ、今だけでも、全力で好きでいようと、思うのだ。

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