[PR] 賃貸住宅 オクラサラダボウル 【創作BL】橘先生とキツネの魔法使い(仮) その3 忍者ブログ
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めでぃのくの日記
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2014-04-15 (Tue)
その3
 やっぱり2が長過ぎるから分割してこれが4になるのが本来かなあ







 あれから一週間が経った。しばらく村長云々の話も聞かなくなったと思っていたが、どうやら皆、すぐに決まると思っていたらしい。一週間が経過すると、また話題に上るようになった。

 そういえばもし俺が誰とも何もせずに一か月が経過したらどうなるのか、キツネに聞いてみたところ、一カ月後に新しい御子が選ばれて、次の村長が決まるまで継続するだけなんだそうだ。それに伴って、仕事を果たせなかった託宣の魔法使いは交代になる、それだけ。なら別に、俺が誰かと肉体関係を持つ必要は無い。俺は出来る限り逃げさせてもらおう。

 とはいえ、この村から出て行くのも不自然だし、それで御子だとバレたなら、村に非協力的だと思われて、どっちみち居場所は無くなるだろう。だから、疑われないように、大人しく、一ヵ月が過ぎるのを待つ事にした。

 今朝は朝から大雨だ。それでも長谷川のお爺ちゃんは、六時にはうちに来ている。

「おはようございますじゃ、た、田中……田中……かく……」

「おはようございます、それはたぶん私よりずっと偉い人で、私は橘です、橘翼」

「お、おお、そうじゃったそうじゃった」

 相変わらず名前は覚えてもらえない、というか、どんどん遠くなってる気がする。ともかく診察所を開いて、いつも通り血圧を測って、次の患者さんが来るまで、と世間話をしていると、「しかし今年のキツネ様はどうなさったんじゃろうの」とおじいちゃんが呟く。

「キツネ様?」

「あぁ、魔法使いの名前じゃよ。キツネ面をしておって、真っ赤な衣装を着ておるんじゃが。あの方は魔法使いの中でも一番弱いので、いつも託宣の魔法使いとして御子が決まったら、他の魔法使いに誰がそうなのかを知らせておるらしいんじゃ」

「……えっ? キツネ様が、他の魔法使いに? じゃあ、御子はすぐ見つかるはずじゃないですか」

「そうじゃよ、いつもはそうなんじゃ。なのに、今年は一向に村長が決まらん。と言う事は、キツネ様が誰にも教えてない、という事じゃ。どうしたんじゃろうのう?」





「そりゃあ、理由が有るとすれば、色々有るんだろうけど。一番判りやすいのはさぁ、今の村長が気に入らない、とかじゃないのかねぇ」

 長谷川のお爺ちゃんから聞いた事を、由良君に振ってみると、彼はそう言った。

「気に入らない……ですか」

「今までのやり方で公開したら、現村長に食べられちゃうからねぇ。あの人若いし、それに佐久間家って言ったらこの村でも結構大きい家でね、しかも改革派なわけ。味方も多いけど、敵も多いんじゃないのかなぁ。保守派の七瀬、九条、二宮あたりはいい顔しないわけよ。ほら、今の村長はさ、色々やってるでしょ。センセを連れて来たのも、その一つだし、こんなド田舎に光ケーブルなんて引いちゃってさ。いやおかげで僕は好きなだけネトゲ出来るんだけどね?」

 確かに、山奥なのに携帯は通じるし、ネットは早いし、ここに来たばかりの頃にとても驚いた記憶がある。あれは今の村長がやった事なのか。おかげで田舎暮らしでも困ったりはしないが、確かにそこまで急進派なら、例えば昔ながらの静かな農村を望むご老人方には反対もされるかもしれない。

「やっぱり有るでしょ、閉鎖的な農村を守って行きたい、みたいなの。うちのチームもさぁ、古参が今のままじゃいけないってマスターに反抗して、メンバーの一部連れて脱退したりでさぁ。色々有るのね。だから魔法使いの世界にも、色々有るんじゃない? そういう、わだかまり、みたいなの」

 ま、僕には関係無いんだけどねぇ。由良君はそう言っていた。

 キツネの本心はどうなんだろう。彼は聞いても、あまり答えてくれない。その割に、時々やって来て、大人しく側に座っていたりする。それで『橘様は、こちらにいらっしゃる前は何をなさっていたのですか』などと、気まぐれに俺の事を尋ねてくるものだから、俺ものんびりと色々答えた。前は大きな病院で内科医をしていたけど、向こうでの仕事はあまり好きでは無くて、それに職場で色々有ったのも重なって。そう言うと、『色々、とは?』と聞かれるから、まあ人が多ければ色々有るでしょう? と答える。すると、『そうですか』と返事をして、それで終わりだ。興味が有るんだか、無いんだか。

 またしばらくすると、『このような田舎でお暇ではありませんか』と尋ねてくる。「まあ娯楽は少ないけど、今はインターネットも有るし。それに皆来てくれるから、昼間はそう暇でも無いですよ」と答えれば、また『そうですか』で終わりだ。一体なんなんだろう。そしてふと気付くと、居なくなっている。

 よく判らない。よく判らないが、どうしようも無かった。




 雨は降っていたが、予定はこなさなくてはいけない。今日は楓君の包帯を取る日だ。カッパを着て原付を走らせる。流石にこう雨が降っていると、外には人影も無い。視界が悪いから、そのほうがいいとも思った。事故でも起こしたら大変だ。

 九条家に辿り着くと、文彦さんがビニール傘を持って出迎えてくれていた。とても親切な人だ。屋内に入ると、バスタオルも貸してくれた。カッパを着ていても結構濡れていたので、とてもありがたい。着替えますか、と言ってもらえたが、何か身体に御子の証でも有ったら困るので、遠慮しておいた。

 一通り身体も拭いたところで、楓君の部屋に向かう。ノックをしてから入ると、彼は珍しく布団にはおらず、机に向かっていた。机の上にはパソコンと何か参考書のような物が置いてある。

「こんにちは、楓君。お勉強してたのかな?」

 笑顔で挨拶してみると、楓君は「まあ」と小さく返事をして、布団に戻ってしまった。あまり詮索されたくないようなので、「邪魔してごめんね」と謝罪しつつ、左足を見せてもらう。

 触っても動かしても、特に痛みも無いようだ。すっかり良くなっている。包帯を外して、「もう大丈夫だよ、今までよく頑張ったね」と言うと、楓君は少し考えてから、「お世話になりました」と小さな声で言って、頭を下げた。少し素直になったのか、どうなのか。

「これからも身体に気を付けてね。何か有ったら、遠慮無く呼んでもらえれば、来るから」

 そう言うと、楓君はまた頭を下げる。それっきり会話も続かなかったので、またね、と挨拶をして部屋を出ると、また文彦さんがお茶でもどうぞと呼び止める。まあしばらく来る事も無いだろうし、と了承すると、また上等なお茶や和菓子を出してくれた。

「先生、本当にありがとうございました」

「いえ、そんな、私は仕事をしただけですし」

「いえいえ、先生がこの家に違う空気を運んでくれる事は、ありがたいんですよ。近頃は九条の方々も、少々ピリピリしていますから、坊っちゃんも肩身が狭そうで」

「何か有ったんですか?」

「いえ、村長選びが行われていますでしょう。未だに決まっていないという事は、九条家にもチャンスが有る、という事ですから」

「そういえば九条家は保守派……なんでしたっけ」

「ええ。少し前までは、九条家から村長は出てたんです。でも最近は、タヌキ様と組んだ佐久間家が独占していますから。このところの改革派の政治に苛立っている方は、それなりに居ましてね。この辺りで九条家が再び村長になって、実権を取り戻したいみたいで。それで坊っちゃんに対する風当たりもますます強くなって」

「……? どうして楓君に?」

 首を傾げると、文彦さんは「そうか、先生はご存知有りませんでしたか」と困ったような顔をした。

「俺から聞いたって事はどうぞ内密にお願いします。実は坊っちゃんは、佐久間の血も引いていましてね……」





 異母兄弟とか、隠し子とか、不倫とか。まあそんな噂も耳にはしていたが、事実と確認したのは初めてだった。楓君は佐久間家の女性と、九条家当主の間に出来てしまった子供、らしい。九条家が引き取る事になったが、そもそもこの二つの家は犬猿の仲。双方の家に愛される訳も無く、間に挟まれて居心地の悪い思いばかりして来たせいで、ついに家から出なくなってしまったらしい。

 それでもなんとかなるのはこの家に金が有るからで。とはいえ将来の事を考えて、今は通信制の高校に通っているとかなんとか。捻挫をしたのはその通学途中に転んだとか。

 そういう田舎の居心地の悪い感じを、俺は一切持って来なかった。俺は楓君の事は何も知らずに接した、それが楓君と文彦さんにとっては、とてもありがたかったらしい。

 田舎ってのもなかなか難しいところだ。知らないで来た訳でもないが、やはり少々不条理だなと思わなくもない。こんな小さな村の確執で、子供が苦しむんだから。今は平成だ。人は一人一人自由で、平等だ。少なくともそう教わっている。たぶん楓君だって、この村から出れば、違う生き方も出来るんだろうが。事はそう簡単でも無い。まだ一六歳だし、家の後押し無しで社会に出るのは少し厳しいだろう。

 さて楓君は少々かわいそうだと判ったが、俺の現状も判った。どうやら佐久間家と九条家、どちらからも狙われているらしい。となれば、文彦さんも敵の可能性が有る。なるほど、寄る辺が無い。あんな親切な人まで信じられないとは、困ったものだ。村中が敵みたいなものだ。今まではキツネだけは味方だと思っていたけれど、もし保守派に俺を売るつもりなら、と考えると、全面的に信じる事も出来ない。

 いやはや、人を信じられないというのも、なかなか困ったものだ。早い所一か月が経って、この良い村の人々と今まで通り付き合いたいものだ。

 幸いインターネットは田舎にしてはとても早い。娯楽も有るし、調べ物も出来る。出来るだけ大人しくしておこう。まさか、男の医者をいきなり押し倒して犯したりする奴も、そうは居ないだろう。俺が余所者とあれば、風習を理解しないで警察に通報したりする可能性も有るんだから。

 そういえば。調べようと思っていた事が有ったんだった。俺はその事を忘れないようにしながら、九条家を後にした。




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