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めでぃのくの日記
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2011-05-27 (Fri)
 この話は

 淮覇 強姦 を含む 岱覇で 暗いので
 飛ばしても 7に繋がる仕様の予定なので
 暗いのとかあと

 郭淮が酷いの嫌な方は 読まないで下さい すいません 

 郭淮は激しい雨の夜に限って、夏侯覇を犯しにやって来たが、夏侯覇はそれを悲しみこそすれ、憎んだりはしなかった。

 今夜もまた、闇と雨音に紛れてやって来た、黒い影のような姿の郭淮に触れられている。「かくわい」と名を呼んでも、答えは無い。ただ黙々と、身体を慈しむように撫でている。その指はいつも冷たくて、夏侯覇は震える。

 いつも郭淮は夏侯覇の自由を奪う。縛ったり、薬を使ったり、針を刺したり。その時も夏侯覇は、寝台の柱に両手をくくりつけられていた。そんな事をしなくても、抵抗などしないのに、といつも思っていた。恐らく、触れられたくなかったのだろうと理解したのは、随分後になってからだ。

 激しい雨の音。荒い郭淮の息遣い。時折小さな咳。冷たい指になぞられる身体。深い、深いだけの、闇。





 物心付いた時には、側に父と、張郃と、郭淮が居た。

 皆各々優しく、強くて、幼い夏侯覇は彼らが大好きだった。明るく楽しい父と、そんな父を美しいと言う優しい張郃、そして静かで穏やかな郭淮。皆でいつも笑っていたように思う。楽しかった。いつも満ち足りていた。

 夏侯覇は皆大好きだった。ずっとずっと、こうして共に居られるものと、信じていた。

 父が死んでも、その直後から変わった事は、少なかったように思う。張郃は特に優しいままだった。彼は悩む夏侯覇を抱きしめ、それは愛おしげによく言った。貴方は貴方、そのままでとても美しい人。その表現は彼独特のものだったが、夏侯覇そのものを、そのままの形で受け入れてくれた。

 郭淮も当初はこんな風ではなかった。いや、その時に壊れそうな程に泣くなりしていれば、また違ったのかもしれない。鬱積した悲しみが歪んでいったのだ。郭淮もまた夏侯覇を受け入れようとしたはずだ。ただ、それが出来なかっただけ。

 よく言われた。お父上なら、と。夏侯覇はいつも父に比べられ、そしていつも郭淮を落胆させた。そうした事が何度も繰り返され、郭淮との関係は歪んでいった。

 初めて犯されたのも、大雨の晩だった。珍しく一緒に食事をして。眠くなってしまって。ふと気付くと、口を塞がれたまま、犯されていた。

 妙な薬でも使われていたのか、よく慣らされたのか。痛みはなかった。ただ、快感も得られない。身動きも殆ど取れないまま、ただ犯された。

 郭淮、なんで、やめてよ、こんなのいやだよ。

 そう思っても言葉にならず、抵抗も出来ないまま、涙を零した。そうすると郭淮が優しく目尻に口付けを落として「淵将軍」と名を呼ぶのだ。そうして夏侯覇は郭淮が正常でない事を知って、ますます抵抗する術を失う。郭淮をこうしてしまったのは、他の誰でも無い己だと思った。父になれない自分が、郭淮をこうしてしまったのだと。

 その後も二人の関係は続いた。夏侯覇は子供のように明るいままだったし、郭淮は少々口うるさい保護者のような存在のまま。そして決まって激しい雨の夜、犯される。それをただ、受け入れる。

 歪んだ関係だと理解していたし、何よりずっと辛くてたまらなかった。何処かに逃げ出したいとさえ思ったが、それも出来ない。

 あの日々が戻って来るのを、願っていたのだ。不毛な願いだと判っているのに。あの日のように父が、張郃が、郭淮がただただ優しく笑ってくれることを、祈り続けているのだ。判っているのに。判っている、のに。

 そしてきっとそれは郭淮の願いでもあるのだ。だから、雨が降る。願いの叶わない悲しみの分だけ、水たまりが出来るのだ。





 ただ犯されるだけの行為。それでも慣らしてはくれたから、いつも痛みはあまり感じなかった。けれど、やはり快楽も得られない。得られよう筈も無い。身体の弱い郭淮には、若い夏侯覇を何とかする余裕も無いのだ。夏侯覇が望まない行為で、本当の快感を覚えられよう筈も無かった。

「――っ、ぅ、……っ」

 ぐいぐいと激しく揺さぶられ、そのまま体内に熱いモノが流し込まれる。体温は低いのに、そればかり熱くて、夏侯覇はいつも眉を寄せた。そして郭淮が倒れ込んで来る。いつもの事だ。荒い呼吸は時折咳にも変わって、それを聞きながら夏侯覇はただ闇を見つめる。

「――……なぁ、郭淮……」

 その日、夏侯覇は口を開いた。何故そうしたのか判らない。いつも黙って受け入れていたのに。その日は、静かに、言葉を紡いだ。
 
「も、こんな事、よそうぜ……」

 郭淮が、僅かに顔を上げる。闇の中では表情も見えない。互いの体温と雨の音、郭淮の呼吸、それが全て。

「俺もお前も、こんなの望んでない。そうだろ……? ましてや郭淮が、父さんや俺を、こんな風にしたいなんて、本当に思ってるわけじゃないだろ……? もう、止めようぜ、こんな事……郭淮……」

 いつの間にか涙があふれていた。こんな形はお互いに望んでいない。判っている。だから悲しい。悲しくてたまらない。郭淮さえ、恐らくこうして傷つき続けているのだ。それが判るから、辛くて辛くてたまらない。

 郭淮はしばらく反応しなかった。が、やがて夏侯覇の涙を指で拭うと、そのまま口を塞いで、また動き始める。

「――っ、ぅ、う……っ、ぅ、」

 ぐいぐいと突き上げられても、苦しいばかりでまた涙が零れた。言葉は届かない。どうすればいいのか、何を望んでいるのか、何を望まれているのか、判らない。ただ一つ判っている事は、悲しい事に恐らく、この行為にある種の愛が、確かに存在している事だった。






「――坊や、坊や」

「――っ」

 ハッと眼を覚ますと、すぐそばに馬岱の顔が有った。心臓が忙しなく鼓動を打って、酷く辛い。馬岱が心配そうに頬を撫で目尻を拭った。それでようやっと夏侯覇は状況を理解する。

 旨い酒が手に入ったからと、二人で飲んだ。悪酔いしてはいけないと、多くは飲ませてくれなかったが、それでも良い気分にはなった。うとうとしていたのも覚えている。「もうここで寝るかい?」と問われた。恐らく頷いたのだろう。二人は馬岱の寝台に入っている。いつの間にやら、雨が降っているようだ。激しい雨音が聞こえる。

「大丈夫かい。随分苦しそうだったから、起こしてしまったけど」

 そう言いながら、頬を優しく撫でてくれる。それが心地良くて、たまらなくなった。ぎゅうと馬岱に抱き付いて、その胸に顔を埋める。夢を見ていたのだ。悲しい夢を。

 子供のようにすり寄っても、馬岱は夏侯覇を撫でるばかりで何も言わなかった。夏侯覇も何も言わない。ただずっと考えていた。結局自分達はどうすれば救われたのだろう、と不毛な事を。答えなどは無い。有ろう筈も無い。

 馬岱の手の平は大きくて温かい。大抵の人は、夏侯覇より大きい。夏侯覇もあれこれ努力したのに、背も伸びなかったし、筋肉もそれほど付かず、その癖弓も上手く使いこなせなかった。どんなに願っても、大抵のものは手に入らなかった。

 今は、少なくとも、居場所が有る。

「……おっちゃん」

「ん?」

「……しよ……」

 小さく求めれば、ややして「大丈夫なのかい?」と問い。夏侯覇は頷いて、馬岱に抱き付く。おっちゃんと呼んではいるが、それ程年が離れているわけではないように、ここ最近思うようになった。結局いくつなのかは互いに明かしていないから、正確な事は判らない。ただ、どうでもいい事のようにも思う。

 本当は馬岱に対しても、不安な気持ちをいくつか持っていた。間接的にとはいえ、互いに親族の仇である存在だ。当初、彼が馬岱であると知った時、夏侯覇は少々彼の事を恐れた。どういうつもりで近寄って来たのだろう、と勘繰っていた節も有る。それらの事についても、やはり触れぬままで、かといって今更触れられるような事でも無い。

 こうして身体を重ねるようになっても、不安なものは残る。だからせめて、確かめたい。色々な事を。例えば、自分は愛されているのだと言うような、長い間確かめられなかった事を。

 事実、馬岱に抱かれるまで、身体を交える事がこんなにも満ち足りる事だとは、知らなかったのだ。





「ぁ、……っ、は、ぁ……っ!」

 ゆっくりと最奥まで侵入される。ぞわぞわと身体中がそれを悦ぶのを感じて、夏侯覇は馬岱に縋りついた。体内が熱くてたまらない。苦しいが、それだけではない。

 正常位で交わる。馬岱は夏侯覇を縛ろうとするところが有ったが、今日はあくまで優しく、ただただ愛してくれた。何度も何度も口付けを落とし、身体中を優しく撫でてくれた。それが温かくて、とても心地良い。

 慣れるまで待っている間に、のろのろと馬岱の身体に触れた。筆で戦うから、文官のような身体かと思っていたが、意外としっかりとした筋肉がついている。少なくとも、夏侯覇よりはよほど立派な身体だ。それが少々羨ましくて撫でていると、「くすぐったいよ」と声。

「いたずらする余裕が有るなら、もう大丈夫かな」

 苦笑しながら馬岱がゆっくり動き始める。ずる、と抜けていく感覚が、ぞわぞわしてたまらない。なんとか声を抑えて、馬岱の背中に縋りつく。背中もやはり大きい。馬岱も特に痛がっていないと判断したらしく、夏侯覇の脚を抱えあげて、本格的に揺さぶり始めた。もう、声を抑える事など出来ない。

「ぁ、ア、ぁ……っ、ん、んぅ、あ……」

 熱くて、気持ち良くてたまらない。馬岱の息遣いも荒くなってきて、それにも少々興奮する。互いに悦んでいるのだという実感が、たまらない。ぞくぞくするのが止まらなかった。

「ぁ、あ、……っ、おっちゃ、ん……っ好き……っ」

「何が……?」

「ぅあ、っ、ん、お、ちゃん、が、……」

「俺も君の事が大好きだよ、……気持ち良いかい?」

 耳元で尋ねられる。それもまたぞわぞわして、夏侯覇はただコクコク頷いた。どうにかなってしまいそうだと思う。気持ち良い。気持ち良くてたまらない。

「そう。もっと気持ち良くしてあげようね」

 おもむろに馬岱が、夏侯覇の胸に触れる。きゅう、とつままれて、思わず「ひっ」と声が漏れた。最初は何とも無かったが、摘んだりこねたりされているうちに、それがもどかしい快感に変わり、熱になって下半身に溜まり始める。

「お、おっちゃ、……っそこ、いじるの、だ、だめ……っ」

 思わず身を捩ると、体内の馬岱が動いてしまうわけで、また得も言われぬ快楽が押し寄せて来る。「ここ、好きなんだね」と言われたが、「ちがう」と頭を振った。だめ、と何度も繰り返す。なのに、止めてくれない。

「や、だ、やだ、や……っ、も、もう、やぁ……っ」

「うんうん、そろそろ達かせてあげようか」

 泣きそうな声で訴えると、ようやく馬岱が激しく動き始めた。急な刺激に夏侯覇は悲鳴を上げて、馬岱に縋りつく。

「ひぁ、ぁ、あっ! ぁ、おっちゃ、おっちゃん……っ、も、も、俺……!」

「うん、いいよ、出しな。俺も出すから、ね……!」

「ぅ、あ! ……っ!」

 前を擦られて、夏侯覇は一際大きな声を上げて、びくびくと精を吐き出した。それと同時に、馬岱が唸って、体内に熱いモノが吐き出される。それを感じながら、夏侯覇は意識を手放した。




 しばらく眠っていたらしい。ふと気付くと、身体は綺麗に拭われていて、側に馬岱が寝転がっていた。

「おっちゃん……」

「うん?」

「……おっちゃん……」

 甘えるように名前を呼べば、優しく髪を撫でてくれた。こうして確かな愛情を感じるのは、本当に久しい事で、今自分は幸せで満ちているのだ、と思う。居場所は出来た。失ったものも沢山有ったけれど。

「俺、おっちゃんの事、好き」

「うんうん、俺もだよ」

「大好きなんだ。たぶん愛してる」

「なんだい、改まって」

 馬岱が困ったように微笑む。そんな彼の胸に顔を埋めて、呟く。

「言えなかったから、おっちゃんには言えるだけ言っとく」

 馬岱はしばらく何も言わなかった。夏侯覇の髪を撫でていたが、やがてぎゅうと抱き寄せて、「俺も」と呟いた。

「色んな人に言わないで来たから、君には言っておくよ。俺の側に居てくれてありがとう。君と居る時間がね、俺にとっては大切なのよ。ホント」

「はは、おっちゃんこういう時もそういう喋り方なんだ」

「すまないね、こういう性格で」

「いいよ、俺、そういうおっちゃんが好き」

 だから、だから今だけでも、ずっと、ずっと一緒に居たい。

 この温もりが、確かなうちに。

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