じゃんじゃか書いてるんだけど、
あっちにじゃんじゃかアップロードするのも気が引けるから
こっちに置いておくw
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こっちに置いておくw
「おっちゃん! 手合わせしてくれよ」
全身鎧兜、自慢の大剣を持って現れたかと思うと、夏侯覇はそう言った。だから馬岱は呆気にとられるしかなかった。
「暇だろ? な、いいっしょ?」
「いや、いやいやいや」
思わず眼の前の青年の口癖が出てしまった。馬岱は困ったような顔をして言う。
「その……まあ暇だけど。君と俺とじゃ、随分武器も装備も違うし……」
「あんな薄っぺらい服で戦場出てるんじゃん。不公平とか言うなら、ちゃんと鎧着ればいいっしょ。大体、筆とか武器にしてんのおっちゃんぐらいだよ」
「あ―……と、君が鎧を脱ぐとか、そういう選択肢は無いのかい?」
「何言ってんの、この鎧が有るから、鍛えられるんだよ。大丈夫、刃の方は当てないから、さ!」
そういう問題かなあ。馬岱は思ったが、暇である事は間違いなかったので、仕方なく、夏侯覇の稽古に付き合う事にした。
稽古、というのは口実だったのかもしれない、と馬岱は空を見ながら思った。少し開けた広場で、しばらく手合わせをした。時折通りかかる人に声をかけられたりして、その度二人して明るく返事をするものだから、あまり稽古にはならなかったろう。が、夏侯覇は「休憩」と腰を下ろした。だから馬岱も側に座って、空を見上げる。
随分と澄んでいた。雲がゆっくりと形を変えながら流れて行く。昔――小さかった頃、従兄と一緒に遠乗りに出て、何が楽しかったのやら、草原に仰向けになって、ずっと空を眺めてた事を思い出した。
「俺さ、この国の人、好きになれそう」
「……へぇ。それは、なによりだね」
「おっちゃんも含めて、皆、良くしてくれるし。俺の事、変な目で見ないし。この国は、いい所だなって思う。ちょっと貧しいけどさ。この国の為に戦おうって、そう思うんだ」
「うん、まぁそれは俺も同じだよ。蜀には受け入れてもらった恩が有るからね。生きてる限りは、この国の為に頑張ろうと思っているよ」
馬超と共に、命からがら落ち伸びてきた。それを優しく迎え入れてくれた劉備への恩は忘れようもない。たとえその人がもう居なくても、それは変わらないのだ。
「それで、なんて言うか。誰とは言わないけど、見てて危なっかしい奴が居るから、さ。そいつの事、守ってやりたいと思うんだ。支えたい、っていうか」
姜維殿の事か。馬岱は理解していたが、敢えてその名を出しはしなかった。かの麒麟児が、もはや病的なまでに思い詰めている事を、皆知っている。知っていて、皆何もしてはやれなかった。そんな彼に肩を貸し、守って逃げたのは夏侯覇だ。
「……そうだね。月の無い夜道を走る人間には、何を言っても届かないものだよ。むしろ恐れさせるだけかもしれないね。そっと明かりを灯してやるしか出来ないし、それが出来るのはきっと君、だろうね」
「……おっちゃんは、出来ないの?」
「俺はね、鳴らない太鼓は叩かないのよ」
「???」
夏侯覇はしばらく首を傾げていたが、やがて「そうだ」と思い出したように言う。
「ちょっと俺の部屋に来て欲しいんだ。今から、良い?」
「? それはまあ、良いよ」
さっさと自室に向かって歩き出した夏侯覇を追う。部屋に戻るや否や、鎧を器用に脱いで普段着に戻ると、夏侯覇は一本の短刀を手渡してきた。
「これ、おっちゃんにあげる」
「? これは何だい? 随分立派な物だけど」
豪華な装飾がされている辺り、理由も無しに手放したりする類の物では無いだろう。夏侯一族は魏では名門であるし、少なくともそれなりの値がはるもののように見える。そう考えていると「父さんの形見」とあっさり言われて、馬岱は眉を寄せた。
「……そんな大事な物は、受け取れないよ」
「んー、っていうか、お守りって言うか。父さんが死んだ時さ、それ忘れて行ってたから。逆にこれさえ有れば、死なないって感じだから。俺、おっちゃんの事、好きだから、死んでほしくないし」
もう、置いて行かれたくないし。小さく呟いたのが聞こえて、馬岱は一つ溜息を吐くと、夏侯覇の手に短刀を戻した。
「なら尚更、これは君が持っているべき、だよ」
「なんでそうなんの」
「いいかい、俺にはね、呪いがかかってるのよ」
「……呪い?」
「そう。怖~い仙人が、俺に呪いをかけたの。全ての愛する人を見送らないと、死ねない呪いをね」
実際は仙人などに会った事も無いし、そんな呪いがかけられたような覚えも無い。ただ、どうにもおかしい程に、馬岱は生き延びている。そう強い方でもないのに、強運と言うのやら、仮にやられたとしても、特に怪我も無く死にもしない。だから馬岱はそういうものなのだろうと、諦めている。
「呪いじゃなけりゃあ、天命がそうなってるのよ。だったら君が長生きしてくれれば、俺も死ななくて済むだろう? 俺も寂しいのよ、先立たれてばっかりで。だからこれは、君が肌身離さず持っていると良い。そうしたら一緒に長生き出来るよ」
「……う、ん……」
夏侯覇が僅かに俯いたので、また何か苦しんでいるのだろうか、と顔を覗きこむ。と、青年は僅かに頬を染めていた。坊や? と名を呼ぶと、彼は「あーっ」と大声を出して、短刀を懐にしまった。
「わ、判った、そうする! じゃ、じゃあ代わりって言うか、肉まんおごらせてよ! 今から行こ、店教えて!」
「今からかい? 随分急だねぇ」
「思い立ったら吉日ってね! うん!」
あまりに明るく言うものだから、彼が何かを誤魔化した事は判ったが、無害そうだったので馬岱もそれ以上は追及しなかった。二人でとりとめのない話をしながら、肉まんの店に向かう。と、町中で暴れる従兄の姿を見つけた。ごろつき同士の乱闘を止めに入って、結果的に一緒に暴れているのだ。
「あー、もう、若っ! ご、ごめんね、ちょっと待っててよ!」
慌てて止めに入って、なんだかんだと言ったり、実力行使をしたりして、なんとか乱闘騒ぎを終わらせる。やれ「正義」がどうのと大声を出している従兄を引きずって、元の場所に戻る。
と、夏侯覇の姿が無い。
「――あれぇ?」
きょろ、と周りを見ていると、近くの店の店員が言った。急用を思い出したから申し訳無いが帰ると伝えてほしい、と頼まれた。馬岱は眉を寄せた。
「急用って、思い出す物?」
店員は、そう言われただけだからそれ以上判らないと言うし、どうにも理解出来ずに馬岱は首を傾げた。腕の中では従兄が何やら文句を言っている。色々考えたが、今日の所はとりあえず、この厄介な正義を愛する親戚をなだめて帰る事にした。
+++
ちなみに当サイトでは
馬超×馬岱、郭淮×夏侯覇前提の 馬岱×夏侯覇をおしてます
全身鎧兜、自慢の大剣を持って現れたかと思うと、夏侯覇はそう言った。だから馬岱は呆気にとられるしかなかった。
「暇だろ? な、いいっしょ?」
「いや、いやいやいや」
思わず眼の前の青年の口癖が出てしまった。馬岱は困ったような顔をして言う。
「その……まあ暇だけど。君と俺とじゃ、随分武器も装備も違うし……」
「あんな薄っぺらい服で戦場出てるんじゃん。不公平とか言うなら、ちゃんと鎧着ればいいっしょ。大体、筆とか武器にしてんのおっちゃんぐらいだよ」
「あ―……と、君が鎧を脱ぐとか、そういう選択肢は無いのかい?」
「何言ってんの、この鎧が有るから、鍛えられるんだよ。大丈夫、刃の方は当てないから、さ!」
そういう問題かなあ。馬岱は思ったが、暇である事は間違いなかったので、仕方なく、夏侯覇の稽古に付き合う事にした。
稽古、というのは口実だったのかもしれない、と馬岱は空を見ながら思った。少し開けた広場で、しばらく手合わせをした。時折通りかかる人に声をかけられたりして、その度二人して明るく返事をするものだから、あまり稽古にはならなかったろう。が、夏侯覇は「休憩」と腰を下ろした。だから馬岱も側に座って、空を見上げる。
随分と澄んでいた。雲がゆっくりと形を変えながら流れて行く。昔――小さかった頃、従兄と一緒に遠乗りに出て、何が楽しかったのやら、草原に仰向けになって、ずっと空を眺めてた事を思い出した。
「俺さ、この国の人、好きになれそう」
「……へぇ。それは、なによりだね」
「おっちゃんも含めて、皆、良くしてくれるし。俺の事、変な目で見ないし。この国は、いい所だなって思う。ちょっと貧しいけどさ。この国の為に戦おうって、そう思うんだ」
「うん、まぁそれは俺も同じだよ。蜀には受け入れてもらった恩が有るからね。生きてる限りは、この国の為に頑張ろうと思っているよ」
馬超と共に、命からがら落ち伸びてきた。それを優しく迎え入れてくれた劉備への恩は忘れようもない。たとえその人がもう居なくても、それは変わらないのだ。
「それで、なんて言うか。誰とは言わないけど、見てて危なっかしい奴が居るから、さ。そいつの事、守ってやりたいと思うんだ。支えたい、っていうか」
姜維殿の事か。馬岱は理解していたが、敢えてその名を出しはしなかった。かの麒麟児が、もはや病的なまでに思い詰めている事を、皆知っている。知っていて、皆何もしてはやれなかった。そんな彼に肩を貸し、守って逃げたのは夏侯覇だ。
「……そうだね。月の無い夜道を走る人間には、何を言っても届かないものだよ。むしろ恐れさせるだけかもしれないね。そっと明かりを灯してやるしか出来ないし、それが出来るのはきっと君、だろうね」
「……おっちゃんは、出来ないの?」
「俺はね、鳴らない太鼓は叩かないのよ」
「???」
夏侯覇はしばらく首を傾げていたが、やがて「そうだ」と思い出したように言う。
「ちょっと俺の部屋に来て欲しいんだ。今から、良い?」
「? それはまあ、良いよ」
さっさと自室に向かって歩き出した夏侯覇を追う。部屋に戻るや否や、鎧を器用に脱いで普段着に戻ると、夏侯覇は一本の短刀を手渡してきた。
「これ、おっちゃんにあげる」
「? これは何だい? 随分立派な物だけど」
豪華な装飾がされている辺り、理由も無しに手放したりする類の物では無いだろう。夏侯一族は魏では名門であるし、少なくともそれなりの値がはるもののように見える。そう考えていると「父さんの形見」とあっさり言われて、馬岱は眉を寄せた。
「……そんな大事な物は、受け取れないよ」
「んー、っていうか、お守りって言うか。父さんが死んだ時さ、それ忘れて行ってたから。逆にこれさえ有れば、死なないって感じだから。俺、おっちゃんの事、好きだから、死んでほしくないし」
もう、置いて行かれたくないし。小さく呟いたのが聞こえて、馬岱は一つ溜息を吐くと、夏侯覇の手に短刀を戻した。
「なら尚更、これは君が持っているべき、だよ」
「なんでそうなんの」
「いいかい、俺にはね、呪いがかかってるのよ」
「……呪い?」
「そう。怖~い仙人が、俺に呪いをかけたの。全ての愛する人を見送らないと、死ねない呪いをね」
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「あー、もう、若っ! ご、ごめんね、ちょっと待っててよ!」
慌てて止めに入って、なんだかんだと言ったり、実力行使をしたりして、なんとか乱闘騒ぎを終わらせる。やれ「正義」がどうのと大声を出している従兄を引きずって、元の場所に戻る。
と、夏侯覇の姿が無い。
「――あれぇ?」
きょろ、と周りを見ていると、近くの店の店員が言った。急用を思い出したから申し訳無いが帰ると伝えてほしい、と頼まれた。馬岱は眉を寄せた。
「急用って、思い出す物?」
店員は、そう言われただけだからそれ以上判らないと言うし、どうにも理解出来ずに馬岱は首を傾げた。腕の中では従兄が何やら文句を言っている。色々考えたが、今日の所はとりあえず、この厄介な正義を愛する親戚をなだめて帰る事にした。
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二人とも変態。永遠の中二病。
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