天下の一級ともなると平均点がビクとも動きださないんだぜ……
一応頑張ってみるけど……解答読んでもハァ?みたいな事はなくなったが
こりゃ根気のいる作業だな……3時間も……
2級までは簡単なのにねぇ 出題が答えみたいなもんだし……
それとも慣れたら一級も出題が答えになるんかな……まだ判らん
以下、オリやおい「いぬひざ」の6 ここで勇慈サイドは終わり
一応頑張ってみるけど……解答読んでもハァ?みたいな事はなくなったが
こりゃ根気のいる作業だな……3時間も……
2級までは簡単なのにねぇ 出題が答えみたいなもんだし……
それとも慣れたら一級も出題が答えになるんかな……まだ判らん
以下、オリやおい「いぬひざ」の6 ここで勇慈サイドは終わり
和沙の家に入って、彼が何か言う前に、勇慈は「先にカレーを作らせてほしい」と訴えた。調理に時間がかかるし、出来てしまえば温め直す事も出来るから、と。和沙はしばらくしてから、小さく頷いて許してくれた。勇慈はキッチンへ向かい、まずはカレーを作る。
勇慈はどちらかと言えば甘党なほうだったから、まずは和沙に好みの辛さを聞いた。中辛だそうだ。中辛のルーを用意して、ひとまず一般的なカレーを作り上げた。和沙は何が面白いのか、ずっと勇慈が調理するのを後ろから見ていて、時々勇慈が話しかけても、特に返事はしなかった。
煮込みも終わり、味をみて良い具合と判断した勇慈は、コンロの火を止めて振り返る。
和沙が、何やら茶の入ったコップを差し出していた。
「先生、これ飲んで」
「……これ、……何か入ってるの?」
いつぞの事を思い出して問うが、和沙は「いいから」と突き出すばかり。勇慈は諦めてそれを受け取ると、ひと思いに飲んだ。相変わらず、妙に旨いお茶だった。
和沙に促され、先に客間へ移動する。そのうちまた眠ってしまうんだろうな、と勇慈はため息を吐いた。いつまでこんな事が続くんだろうか、と思わなくもない。和沙がどんな事情を抱えているのか知らないが、早く突き止めないと、こちらの身がもたない。
客間に座りこんでいると、和沙がやって来た。特に何も用意はしていない。勇慈が眠るまでの間、監視しているようにも見えた。勇慈はふぅと柱に背を持たれて、またため息を吐く。逃げたりなどするものか、逃げたりなど。
「……先生さ。誰とでも、こういう事、するの」
「え?」
「ドミニクとか、女子生徒とか、俺じゃなくても、こういう事されて、文句も言わないの?」
勇慈は素直にそういう状況を想像した。ドミニクには尻を撫でられてばかりだが、果たしてそれ以上となると、どうだろうか。あのような事を、と想像しようとしたが、どうにも判らない。女子生徒についても考えたが、まさか自分が生徒を犯すような事は無いだろうし……。勇慈はあれこれ考え、そして首を振る。
「判らない。でも……でもそうだな、和沙君は特別かもしれない」
「特別?」
和沙は相変わらずの無表情だ。勇慈は言葉を選んでいたが、強い眠気に襲われ始めて、慌てて言葉を紡ぐ。
「うん、なんだろう、放って、おけないんだ。和沙君は、迷惑かも、しれないけど、でも、でも……」
でも、とそればかりしか出なくなる。瞼が重くてたまらない。ぐら、と身体が揺れて、あぁ倒れると思ったが、いつの間にか和沙が手を差し伸べていて、身体は倒れなかった。
ああやっぱり、と勇慈は何故かそう思いながら、目を閉じた。
そこは、とてつもなく狭く、暗かった。
やだ、やだ、と何度言っても、強い手がその狭い空間に押し込もうとする。いやだ、と手を振り払っても、四本も有る腕が伸びて、どんどん押し込まれてしまう。
止めて、お願い、僕が何をしたっていうの。そう叫んでも、答えは無く、ただただ、ぎゅうぎゅうと押し潰される。
真っ暗闇と、ぎゅうぎゅうしたその空間で、ただ命の限り泣き続ける以外に、何も出来なかった。
「……え……?」
は、と目を覚ましたのに、そこは真っ暗で。首を振っても、身じろぎしても、真っ暗のままで。
「あ、……か、和沙君、和沙君!」
勇慈は助けを求めて声を上げ、身を揺らす。が、床に倒れた身体は後ろ手に縛られているらしく、動かない。
暗い、身体が自由にならない。何を言っても聞いてもらえない。誰も、来てくれない。
「あ、あ、や、やだ……っ」
息が苦しくなる。何故だか判らない。何故こうなったのか判らない。ここが何処なのか判らない。かずさくん、かずさくんとそれだけ繰り返しても、何も変わらない。
怖い。
勇慈は身体を丸めて震えていた。そこが酷く狭い場所で、閉じ込められていると思うと、身体の震えが止まらない。呼吸もままならなくなってきた。
実際には、そこは和沙の家の客間で、彼は目隠しをされ、後ろ手に縛られて転がっているだけだった。しばらくすると和沙が部屋にやって来る。「うるさいな」と不機嫌そうだった和沙も、勇慈のただならぬ様子に驚き、側に駆け寄る。
「先生? おい、どうしたんだよ」
身体に触れ、揺さぶってもろくな返事をしない。ただ泣いていて、震えているばかりで、和沙は慌てて勇慈の拘束を解いた。それでもがたがた震えるばかりの勇慈から目隠しを取ってやると、彼は和沙から逃げようとした。何か怖いものでも見たように、手で和沙を遠ざけようとする。それに眉を寄せた和沙は、勇慈の手を取って「俺だよ!」と叫ぶ。
勇慈は和沙を見る。眼が涙で濡れていた。視線が和沙とぶつかると、勇慈はそのまま和沙に抱きついた。
「――っ」
あまりの強さに、和沙は床に尻もちを着く。その腹に顔をうずめて、勇慈はまだ震えていた。まるで迷子の子供が母親を見つけた時のように、勇慈はただただ和沙に縋って泣き続ける。
「……なんなんだよ……ほら、大丈夫だから……な?」
和沙は訳も分からず、その背を摩ってやる。勇慈はそれでもしばらく震え、泣いていたが、やがて顔を上げると僅かに笑みを浮かべた。
「……何、笑ってんだよ」
和沙が不機嫌そうな顔になる。「ごめん」と小さく謝ったが、勇慈はまだ和沙から離れようとはしなかった。
「だってさ、……和沙君、撫でてくれたし……」
「ば、馬鹿、違ぇよ! 俺はただ、あんたの様子がおかしかったから……」
「心配かけてごめんね、和沙君」
「心配なんか!」
和沙はムキになって否定するが、それがなんとも可愛いもので、勇慈はまたクスクス笑った。和沙はしまいには「もういいだろ!」と勇慈を突き放す。落ち着き始めていた勇慈も素直に従って、また客間の柱にもたれた。
「本当に、ごめんね。ちょっと、暗いの苦手なんだ」
「ちょっと、ね……」
ちょっとどころじゃないだろ、と和沙は言いたげだった。勇慈も苦笑して、口を開く。
「……俺、捨て子だったって言ったろ? 赤ちゃんの頃、コインロッカーの中に捨てられてたらしいんだ。勇慈って名前と一緒にね。ギャアギャア泣いてるのがあんまり耳触りで、職員さんが探し当ててくれたんだって」
それまで何時間も、コインロッカーの中で泣いてたんだって。
和沙もまた無表情に戻って、勇慈の話を聞いてくれている。勇慈は出来るだけ深刻に聞こえないよう、笑みを浮かべたまま静かに続ける。
「でもまぁ赤ちゃんの頃の事だし、俺は覚えてないんだ。孤児だったけど、俺は幸せなほうだったし。孤児院の先生も、三方一所の新しい両親も良い人で、俺は幸せだった。ちょっと暗いのは苦手だったけどね。でも楽しかったよ。それで、たぶん馬鹿だったんだ。
小学生の頃、近所に優しいお兄さんが居てね、よく遊んでくれたんだ。大学生くらいだと思う、歳は離れてたけど、仲良くしてくれた。ある日お兄さんが、二人っきりで遊ぼうって言ってね。近所の山の中に、古い小屋が有って、そこで落ち合って探検しようって言ったんだ。俺はもう、大喜びでね」
「……」
「昼間にその小屋に着いて、お兄さんを待ってたんだけど、なかなか来なくてさ。気付いたら寝ちゃってて、もう夜でね。外も中も真っ暗で、狭くて、出ようにも出られなくて、山の中に一人で取り残されてね。怖くて、怖くてしょうがなくて、ずっと泣いて謝ってたみたい。きっとお兄さんを怒らせたんだ、だから来てくれなかったんだ、ってね。結局消防隊の人に見つけてもらってさ。母さんも父さんも泣いて俺を抱きしめてさ。でももう、お兄さんが誰だったのか、判らなかったんだ、結局」
まぁそんなこんなで、それ以来、暗いのと狭いのが、本格的にダメになっちゃって。
そう苦笑して和沙を見る。和沙は酷い顔をしていた。
「……先生、思うんだけど、それってさ……」
「ん?」
勇慈があんまり見当のついていない顔をしたものだから、和沙は深いため息を吐いて、首を振る。
「いや、何でも無い。……今日はもう止めだ」
「え? いいの?」
「弱い者いじめしてるみたいで、嫌だし……。……なんだよ、その顔」
勇慈がきょとんとしているのに、和沙はまた不愉快そうな顔をする。
「だって、つまり、普段のアレは、いじめじゃないって事だよね」
「……」
和沙は不愉快そうな顔のまま、またため息を吐いて、客間から出て行った。勇慈はなんだか嬉しくなって、身体を摩ってから起き上がる。今日は服も着たままで、特にまだ何も行われていないようだった。
一緒にカレーを食べられるかもしれない。勇慈はそう思って廊下に出る。
と、玄関を開けて人影が入って来た。
「和沙、表に車が停めてあったけど、誰か来て……」
目が合う。スーツ姿の中年男性は、顔立ちが和沙に似ていた。その顔を見て、彼が和沙の父親だと思い出すと、勇慈は慌てて頭を下げた。
「えーと、貴方は確か……」
「あ、担任の三方一所です、お邪魔してます……」
「ああ、あの読みにくい名字の! いつも息子がお世話に……和沙!」
急に彼が和沙の名を呼ぶ。振り返ると、和沙は廊下を突っ切って、階段を登っていた。
「いや、すいません。どうも反抗期というか、なんというか、難しい時期のようで……」
「いえ、仕方ないですよ。……それで、あの、……和沙君、何か有ったんですか?」
「……先生こそ、和沙が何か、したんでしょうか……?」
不安そうに勇慈を見てくる。勇慈は慌てて「いえ」と首を振って続ける。
「ただ、クラスメイトと馴染めていないようなので、心配で……」
彼は「ああ」と納得したように頷いて、それから和沙の姿が無い事を確かめると、小さな声で言った。
「実は、先生も御存じでしょうが、あれが中学生の時、離婚をしまして……その時に、少し」
詳しい話は長くなりますので、ひとまず客間にどうぞ。
また客間か、と勇慈は複雑な気持ちになったが、素直に従った。
ようやっと、核心に迫れるのだ、と、そう思った。
+++
次からは和沙サイドになります
勇慈はどちらかと言えば甘党なほうだったから、まずは和沙に好みの辛さを聞いた。中辛だそうだ。中辛のルーを用意して、ひとまず一般的なカレーを作り上げた。和沙は何が面白いのか、ずっと勇慈が調理するのを後ろから見ていて、時々勇慈が話しかけても、特に返事はしなかった。
煮込みも終わり、味をみて良い具合と判断した勇慈は、コンロの火を止めて振り返る。
和沙が、何やら茶の入ったコップを差し出していた。
「先生、これ飲んで」
「……これ、……何か入ってるの?」
いつぞの事を思い出して問うが、和沙は「いいから」と突き出すばかり。勇慈は諦めてそれを受け取ると、ひと思いに飲んだ。相変わらず、妙に旨いお茶だった。
和沙に促され、先に客間へ移動する。そのうちまた眠ってしまうんだろうな、と勇慈はため息を吐いた。いつまでこんな事が続くんだろうか、と思わなくもない。和沙がどんな事情を抱えているのか知らないが、早く突き止めないと、こちらの身がもたない。
客間に座りこんでいると、和沙がやって来た。特に何も用意はしていない。勇慈が眠るまでの間、監視しているようにも見えた。勇慈はふぅと柱に背を持たれて、またため息を吐く。逃げたりなどするものか、逃げたりなど。
「……先生さ。誰とでも、こういう事、するの」
「え?」
「ドミニクとか、女子生徒とか、俺じゃなくても、こういう事されて、文句も言わないの?」
勇慈は素直にそういう状況を想像した。ドミニクには尻を撫でられてばかりだが、果たしてそれ以上となると、どうだろうか。あのような事を、と想像しようとしたが、どうにも判らない。女子生徒についても考えたが、まさか自分が生徒を犯すような事は無いだろうし……。勇慈はあれこれ考え、そして首を振る。
「判らない。でも……でもそうだな、和沙君は特別かもしれない」
「特別?」
和沙は相変わらずの無表情だ。勇慈は言葉を選んでいたが、強い眠気に襲われ始めて、慌てて言葉を紡ぐ。
「うん、なんだろう、放って、おけないんだ。和沙君は、迷惑かも、しれないけど、でも、でも……」
でも、とそればかりしか出なくなる。瞼が重くてたまらない。ぐら、と身体が揺れて、あぁ倒れると思ったが、いつの間にか和沙が手を差し伸べていて、身体は倒れなかった。
ああやっぱり、と勇慈は何故かそう思いながら、目を閉じた。
そこは、とてつもなく狭く、暗かった。
やだ、やだ、と何度言っても、強い手がその狭い空間に押し込もうとする。いやだ、と手を振り払っても、四本も有る腕が伸びて、どんどん押し込まれてしまう。
止めて、お願い、僕が何をしたっていうの。そう叫んでも、答えは無く、ただただ、ぎゅうぎゅうと押し潰される。
真っ暗闇と、ぎゅうぎゅうしたその空間で、ただ命の限り泣き続ける以外に、何も出来なかった。
「……え……?」
は、と目を覚ましたのに、そこは真っ暗で。首を振っても、身じろぎしても、真っ暗のままで。
「あ、……か、和沙君、和沙君!」
勇慈は助けを求めて声を上げ、身を揺らす。が、床に倒れた身体は後ろ手に縛られているらしく、動かない。
暗い、身体が自由にならない。何を言っても聞いてもらえない。誰も、来てくれない。
「あ、あ、や、やだ……っ」
息が苦しくなる。何故だか判らない。何故こうなったのか判らない。ここが何処なのか判らない。かずさくん、かずさくんとそれだけ繰り返しても、何も変わらない。
怖い。
勇慈は身体を丸めて震えていた。そこが酷く狭い場所で、閉じ込められていると思うと、身体の震えが止まらない。呼吸もままならなくなってきた。
実際には、そこは和沙の家の客間で、彼は目隠しをされ、後ろ手に縛られて転がっているだけだった。しばらくすると和沙が部屋にやって来る。「うるさいな」と不機嫌そうだった和沙も、勇慈のただならぬ様子に驚き、側に駆け寄る。
「先生? おい、どうしたんだよ」
身体に触れ、揺さぶってもろくな返事をしない。ただ泣いていて、震えているばかりで、和沙は慌てて勇慈の拘束を解いた。それでもがたがた震えるばかりの勇慈から目隠しを取ってやると、彼は和沙から逃げようとした。何か怖いものでも見たように、手で和沙を遠ざけようとする。それに眉を寄せた和沙は、勇慈の手を取って「俺だよ!」と叫ぶ。
勇慈は和沙を見る。眼が涙で濡れていた。視線が和沙とぶつかると、勇慈はそのまま和沙に抱きついた。
「――っ」
あまりの強さに、和沙は床に尻もちを着く。その腹に顔をうずめて、勇慈はまだ震えていた。まるで迷子の子供が母親を見つけた時のように、勇慈はただただ和沙に縋って泣き続ける。
「……なんなんだよ……ほら、大丈夫だから……な?」
和沙は訳も分からず、その背を摩ってやる。勇慈はそれでもしばらく震え、泣いていたが、やがて顔を上げると僅かに笑みを浮かべた。
「……何、笑ってんだよ」
和沙が不機嫌そうな顔になる。「ごめん」と小さく謝ったが、勇慈はまだ和沙から離れようとはしなかった。
「だってさ、……和沙君、撫でてくれたし……」
「ば、馬鹿、違ぇよ! 俺はただ、あんたの様子がおかしかったから……」
「心配かけてごめんね、和沙君」
「心配なんか!」
和沙はムキになって否定するが、それがなんとも可愛いもので、勇慈はまたクスクス笑った。和沙はしまいには「もういいだろ!」と勇慈を突き放す。落ち着き始めていた勇慈も素直に従って、また客間の柱にもたれた。
「本当に、ごめんね。ちょっと、暗いの苦手なんだ」
「ちょっと、ね……」
ちょっとどころじゃないだろ、と和沙は言いたげだった。勇慈も苦笑して、口を開く。
「……俺、捨て子だったって言ったろ? 赤ちゃんの頃、コインロッカーの中に捨てられてたらしいんだ。勇慈って名前と一緒にね。ギャアギャア泣いてるのがあんまり耳触りで、職員さんが探し当ててくれたんだって」
それまで何時間も、コインロッカーの中で泣いてたんだって。
和沙もまた無表情に戻って、勇慈の話を聞いてくれている。勇慈は出来るだけ深刻に聞こえないよう、笑みを浮かべたまま静かに続ける。
「でもまぁ赤ちゃんの頃の事だし、俺は覚えてないんだ。孤児だったけど、俺は幸せなほうだったし。孤児院の先生も、三方一所の新しい両親も良い人で、俺は幸せだった。ちょっと暗いのは苦手だったけどね。でも楽しかったよ。それで、たぶん馬鹿だったんだ。
小学生の頃、近所に優しいお兄さんが居てね、よく遊んでくれたんだ。大学生くらいだと思う、歳は離れてたけど、仲良くしてくれた。ある日お兄さんが、二人っきりで遊ぼうって言ってね。近所の山の中に、古い小屋が有って、そこで落ち合って探検しようって言ったんだ。俺はもう、大喜びでね」
「……」
「昼間にその小屋に着いて、お兄さんを待ってたんだけど、なかなか来なくてさ。気付いたら寝ちゃってて、もう夜でね。外も中も真っ暗で、狭くて、出ようにも出られなくて、山の中に一人で取り残されてね。怖くて、怖くてしょうがなくて、ずっと泣いて謝ってたみたい。きっとお兄さんを怒らせたんだ、だから来てくれなかったんだ、ってね。結局消防隊の人に見つけてもらってさ。母さんも父さんも泣いて俺を抱きしめてさ。でももう、お兄さんが誰だったのか、判らなかったんだ、結局」
まぁそんなこんなで、それ以来、暗いのと狭いのが、本格的にダメになっちゃって。
そう苦笑して和沙を見る。和沙は酷い顔をしていた。
「……先生、思うんだけど、それってさ……」
「ん?」
勇慈があんまり見当のついていない顔をしたものだから、和沙は深いため息を吐いて、首を振る。
「いや、何でも無い。……今日はもう止めだ」
「え? いいの?」
「弱い者いじめしてるみたいで、嫌だし……。……なんだよ、その顔」
勇慈がきょとんとしているのに、和沙はまた不愉快そうな顔をする。
「だって、つまり、普段のアレは、いじめじゃないって事だよね」
「……」
和沙は不愉快そうな顔のまま、またため息を吐いて、客間から出て行った。勇慈はなんだか嬉しくなって、身体を摩ってから起き上がる。今日は服も着たままで、特にまだ何も行われていないようだった。
一緒にカレーを食べられるかもしれない。勇慈はそう思って廊下に出る。
と、玄関を開けて人影が入って来た。
「和沙、表に車が停めてあったけど、誰か来て……」
目が合う。スーツ姿の中年男性は、顔立ちが和沙に似ていた。その顔を見て、彼が和沙の父親だと思い出すと、勇慈は慌てて頭を下げた。
「えーと、貴方は確か……」
「あ、担任の三方一所です、お邪魔してます……」
「ああ、あの読みにくい名字の! いつも息子がお世話に……和沙!」
急に彼が和沙の名を呼ぶ。振り返ると、和沙は廊下を突っ切って、階段を登っていた。
「いや、すいません。どうも反抗期というか、なんというか、難しい時期のようで……」
「いえ、仕方ないですよ。……それで、あの、……和沙君、何か有ったんですか?」
「……先生こそ、和沙が何か、したんでしょうか……?」
不安そうに勇慈を見てくる。勇慈は慌てて「いえ」と首を振って続ける。
「ただ、クラスメイトと馴染めていないようなので、心配で……」
彼は「ああ」と納得したように頷いて、それから和沙の姿が無い事を確かめると、小さな声で言った。
「実は、先生も御存じでしょうが、あれが中学生の時、離婚をしまして……その時に、少し」
詳しい話は長くなりますので、ひとまず客間にどうぞ。
また客間か、と勇慈は複雑な気持ちになったが、素直に従った。
ようやっと、核心に迫れるのだ、と、そう思った。
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