試しに書いてみた淮覇。30代前半郭淮×大学生夏侯覇です。
本番というほどじゃないですけど、アレな描写有るのでR18。
郭淮さんって思ってる事言わなそう。怒ってない限りは。
本番というほどじゃないですけど、アレな描写有るのでR18。
郭淮さんって思ってる事言わなそう。怒ってない限りは。
近頃の郭淮には悩みが有った。それはとある青年の事だ。
彼と出会った時、彼はまだ中学生で、郭淮は二十代後半だった。恩師は仕事が忙しく、また妻と死別してしまい、息子の事を見てやれなかった。だから家庭教師兼、家政婦役を買って出たのは、随分前の事のように思える。一人では大変だろうと、友人の張郃も協力してくれて、3日交替で世話をしたのだ。
どうしてそうなったのか、というと、理由は色々有った。若い頃、郭淮は病弱で、それを苦に暗く生きていた。それを励まし、前向きな生き方を教えてくれたのは、恩師の夏侯淵と、友人の張郃だ。だから郭淮はずっと恩返しがしたいと思っていて、新卒で入社した会社に愛想が尽きた頃、声をかけられたものだから、喜んで引き受けた。
一方の少年は明るい子だったが、学校でいじめを受けたようだ。知り合った頃には不登校になっていて、それでも心の傷を懸命に隠そうとしているのが、酷く切なかった。だから郭淮は彼――夏侯覇――に本当の家族のように接したつもりだ。時に優しく、時に厳しく。そうしているうちに彼も心を許してくれたように思えた。実際、そうだったのではないかと思う。
それまでも少々勉強嫌いで、郭淮の言う事を何でも素直に聞いていたわけではない。それでも成績は悪くなかったし、高校にも大学にも行った。ところがそれからが少しおかしい。郭淮を煙たがって言う事を聞かない。眼を合わせない。その割に作った物は何も言わずに全て食べた。張郃とは変わらず仲良くしているようなのに、自分の事を避けるようになったのだ。
それは少々不可解だったが、年頃であるし、多少理解出来ない事もするだろうと、半ば諦めていた。だがついには朝帰りをし始める。面倒を見ている以上、流石に見過ごせない。だから郭淮はそれについて小言を言ったが、すぐに逃げられるし、一向に止めない。どころか、その頻度は増しているようにも思えた。
このままでは、夏侯淵殿に申し訳が立たない。何とかしなければ。
そして郭淮は車を走らせた。
明るい夏侯覇だったが、過去の経験からか、誰とでも仲良くするわけではないと知っている。大学の友人は数える程しか居ない。少なくとも、友人と言える人間は、司馬昭、鍾会、姜維ぐらいで、この辺りの家をウロウロしている事が殆どだった。
夜10時、車を走らせ、彼らの家に向かう。司馬昭の家で、目的の人物を見つけた。
ただそれも少々おかしな事だったと、今にして思う。いつもなら彼の友人達は本当の事を言ってくれなかった。いつも探し回った末に、夏侯覇から「帰る」と一言メールが届く。きっと回った何処かの家には居たのだろうが、その時は皆嘘を吐いて、教えてくれなかったのだ。
ところがその日は、司馬昭が夏侯覇を家から連れ出して来た。文句を言っている夏侯覇を、司馬昭は笑いながら郭淮に引き渡したのだ。そして大人しく夏侯覇は助手席に座った。
家に着いたら逃げられる。そう判っていたから、郭淮は車を運転しながら尋ねる事にした。
「夏侯覇殿」
「ん」
「何か気に入らない事でも有るのですか」
「……別に」
素っ気ない返事。郭淮は溜息を吐いて言う。
「私は……私なりに努力してきたつもりです。まだ若かった貴方と向き合ってきたつもり、でした。しかし今は貴方の気持ちが判らない。何か不満が有るのなら言ってもらわないと、私には判らないんです」
「……」
「張郃殿とは変わらず仲良くしているでしょう。問題は私に有るという事です。何か気に障るなら言って下さい、直せる事は直しますし、努力もします。けれど今は、どうしていいかも判らないんです。お願いですから、夜に遊び回るのは止めて下さい。もちろん貴方がもう子供ではないという事は、十分理解していますよ、それでも、もし何か有ったら――」
「してるし」
「……はい?」
「子供扱い、してるし」
小さな声。ちらりと夏侯覇を見たが、彼は助手席側の窓に顔を向けていて、表情が見えない。ただ、声が不満げだった。
「私は子供扱いをしているわけではありません、ただ貴方の事が心配なんです」
「自分の事ぐらい、自分で出来るし。心配するって時点で子供扱いっしょ」
「大人の事を心配しないなんて事は有りませんよ、ましてや貴方は過去にもあんな事が有ったのだし……」
「俺が小さいから、子供だから心配なんだろ」
さて、これは困った。会話になっていない。違う、と言ったところで意味は無いだろう。どうやら夏侯覇は子供扱いされていると感じていて、それが不服のようだ。知らないうちにそういう接し方をしているのかもしれない。
「……貴方に不快な思いをさせたなら、謝らなければいけません。ですが、夏侯覇殿、判ってほしいのです。私は貴方が好きで、愛しているからこそ、こうして心配したりするのだという事を」
「違うし」
ぽつり、と返事。郭淮は何を否定されたのか判らず、素直に「何がですか?」と問うた。どうもこの青年は言葉が足りない。引き出してやらないと、笑ってはぐらかしたりもするから、慎重にならねばいけなかった。
「好きとか、違うし」
「本当ですよ。私は貴方が好きです」
「違うって言ってるっしょ」
どうも意味が判らない。少し考えて、一つの推測に辿り着く。
「つまり、貴方は私が好きではない?」
「どうしてそうなるんだよ」
ふむ、とまた考える。ちょうど赤信号で車を停めた。ゆっくり考える。この信号はいつも長い。
「……貴方は私が好きで、私も貴方が好きだが、違う」
「……」
否定しない。という事は、合っている。
「……好きの種類が違う、という事ですか?」
「……」
「具体的にどう違うと思うのです? 貴方は」
夏侯覇は答えない。信号は変わらない。車のエンジン音しかしない中で、次の言葉を待っていると。
「あー、もう!」
夏侯覇が急に声を上げて、シートベルトを外した。だから降りて何処かに行くのだと思って、そちらを見た。ところが夏侯覇は、こちらを向いていて。
乱暴に唇を、郭淮のそれに重ねて、すぐ離れた。
「こういう、違い!」
夏侯覇はそう怒鳴るように言い捨てて、また窓の方を向いた。郭淮は呆気に取られて、何も出来ない。
信号は、まだ変わらない。
+++
夏侯覇はいじめられた。それも少々、屈折した形で。
中学生は成長期の来るタイミングの問題で、特に同世代でも体格差が大きい。その頃夏侯覇はまだ小さくて(まあ、結局男としては小さいままだったが)クラス一体格の良い男にいじめられた。それだけでも夏侯覇のトラウマになるだろうに、あろう事かその男に犯されそうになった。
薄暗い空き家に連れ込まれて、服を半分脱がされた。荒い息遣いと汗ばんだ熱い手は、今思い出しても気持ち悪い。渾身の力で、相手の股を蹴り上げ、気が済むまで殴り倒してなんとか逃げたが、それきり学校に行けなくなった。
男が怖い、と思う。屈強で馬鹿な男が、特に。父は学校に行けとは言わず、変わった家庭教師を呼んでくれた。オカマではないが、中性じみた張郃と、少々健康的には見えない郭淮。彼らも一応男で、夏侯覇よりはよほど体格も良かったが、それでも治療にはなった。彼らが無害だと判って、それから少しづづ外に出られるようにもなり、高校にも行けた。普通の学生生活を送れたと思う。
問題は、親身になってくれた郭淮に、夏侯覇が不埒な思いを抱いた事に有る。
性的な欲求を満たしたい、と思う。郭淮と。いけない事だと思えば思う程、気持ちが昂った。郭淮を抱きたいと思った。けれど自分があの気持ち悪い男と同類なのかと思うと、とても嫌な気持ちになり、次第に郭淮に抱かれたいと思うようになる。そうしてあの事も忘れて、郭淮に愛されたいと願う。
思えば思う程、無理なのだと考えて、胸が痛くなった。
郭淮は保護者として自分を愛している。それを性的な目で見るなど、裏切り以外の何者でもない。伝えたとしても、上手くいくはずがない。嫌われるかもしれない。そう思って泣いたりもした。どうしていいか判らなくて、悪友達の家に逃げ込み、グズグズと落ち込んだりしながら、郭淮と離れようともした。そうして何かすればするほど、苦しくなる。
そんな色々なものが、爆発してしまったのだ。気付いたら、郭淮にキスしてしまっていた。
(いやいやいや、もう、もうだめっしょこれ、絶対に嫌われたって)
顔が真っ赤なような、真っ青なような。ドキドキして倒れそうだった。苦しくてたまらない。殺すなら殺してくれ、と叫びたいような気持ちになった。悪い事には、郭淮が何も言わない。
(何か、何か言ってよ郭淮、こんなの辛いし、殺すなら殺してくれってホント、俺もうやだなんか死にたい)
そう心の中で叫んでいると、ぐいっと肩を掴まれた。郭淮の方に向かされて、何事かと思ったら、次の瞬間にはキスされていた。
(……!!??)
あまりの事に、意味が判らず、何も考えられなかった。「口を開けて」と言われたから、素直に少し開けたら舌まで入れられた。
(……ちょ、ちょちょちょ、い、意味、意味判んねーし!)
心の中で叫んでいると、やがて郭淮が離れて、ハンドルを握る。信号は青に変わっていた。
「続きは帰ってからにしましょう。とりあえずシートベルトを締めて下さい」
(つ、続きって、続きって、何!?)
言えないまま、夏侯覇はシートベルトを締めて、それでも落ち着かなかったから、ぎゅっとベルトを胸の前で握りしめていた。
「いつからか判りません。貴方をそういう目で見始めてしまったのが、いつからか」
(う、うえ?)
「ただ愛しい子供か弟だと思っていた筈なのに、いつの間にやら自分の物にしたいと感じるようになっていました」
そう言われても、眼を丸くするしかない。失礼な話だが、郭淮にそんな欲求が有るとさえ、思っていなかったのだ。
「けれど私は以前、貴方に何が起きたのかお父上から聞いていましたし、それによって貴方がどれ程傷付けられたか、よく知っていました。だから私はこの気持ちや欲求を、見て見ぬふりで通す事に決めました。私は貴方を愛していて、貴方が幸せになれればと思えばこそ、です。もちろん簡単な事ではありません。私ときたら、張郃殿にまで嫉妬する焼きもち焼きですから」
郭淮が、嫉妬!? もう何もかも、わけが判らない。車が家に着いたが、シートベルトも外さないまま、ただ硬直していた。
「夏侯覇殿」
いつの間にか、郭淮の顔が目の前に。びくりとした夏侯覇に「続きは中で」と郭淮が言う。だからのろのろとベルトを外して、家に入った。
二階建ての一軒家。結構な大きい家の部類らしいが、人は夏侯覇と郭淮しか居ない。電気を付けたり、荷物を置いたり、上着を脱いだりした後に、リビングへ。
ソファに座って、俯く。隣に腰掛けられて、またびくりとした。
「私が怖いですか」
そう問われたから、慌てて首を振った。「怖いとかじゃなくて」「今すごい、びっくりしてて」「何て言うか」としどろもどろに言うと、郭淮が微笑んだ。良かった、と声。
「貴方に嫌われたらどうしようかと思っていました」
「嫌いになんか……」
「ずっと怖かったんですよ、私は。貴方に嫌われていないかとね」
「俺だって、……」
「……触っても?」
こくりと頷くと、夏侯覇の手に、郭淮の手が重なる。少し冷たくて大きい手。いつも頭や背中を撫でてくれた。それが大好きだった。
「つまり私達は相思相愛だった、という事でよろしいですか。お父上には申し訳ないですが。私も少々動揺しています。こんな事になるとは思ってもみなかったですから」
「う、ん……」
「……キスを、しても?」
「……いいよ」
「抱きしめても、いいですか」
「……」
答えない事で受け入れた。そっと背中に手が回される。頬を撫でられて、郭淮を見ると、そのままゆっくりと口づけられた。恥ずかしくて目を閉じる。口を、と言われて、おずおず開くと、舌が潜りこんで来る。
キスは上手いのかもしれない。随分長い間、何度もキスをされていた。舌を絡められたり、吸われたり、初めての事ばかりでずっと驚きっぱなしだった。ぎゅう、と抱き寄せられて、涙が出そうなほど幸せだと思った。
このまま何をされてもいい、と思った。確かに。
腰に手を置かれて、ゆっくりとソファに押し付けられる。そのまま耳や首筋にキスを落とされる事、数回。
「……っ」
ぞわり、と寒気がして、夏侯覇は郭淮を押しのけてしまった。怖い、とそれだけ感じた。それから自分のした事に気付く。郭淮は少し悲しげな表情を浮かべていた。
「ち、違う、違うんだ」
「何が、ですか?」
「郭淮が嫌なんじゃない、俺、俺本当に郭淮の事、大好きなんだぜ、だから、だけど身体が言う事聞かなくて、」
「身体と心は一つ、と言います」
「そうじゃなくて! 俺、俺ホント、嫌なんじゃなくてっ」
「夏侯覇殿」
焦って泣きそうになっている頭を、優しく撫でられる。それは心地良いのに。郭淮の顔を恐る恐る見た。彼は優しく微笑んでいて、少し安心する。
「何も、私は貴方を疑っているわけではありません。これは貴方にとって辛かった事でもある、だから怖くて当たり前なんです。無理をしてはいけません。ね?」
「でも、……でも俺は、郭淮と、その……その、……し、したい、から……」
「……なら時間をかけるべきでしょうね。貴方にとって、辛くないように」
キスは平気ですか、と問われたから頷いた。そして何度も口付けられる。優しく唇を吸われたり、舌で口内を探られたり。それは怖くなかった。むしろ気持ち良い。
というより、気持ち良くてたまらない。
「ん、ふ、……っ、ぁ、か、郭、わ、い……っ」
頬を撫でられ、首筋を撫でられながら、何度も、何度も。もどかしい快感に熱が溜まってしかたない。なのに、郭淮は一向に、それ以上の事をしてこない。
「郭淮……っ」
「はい?」
「さ、……触って、いい、から」
恥ずかしくてたまらないが、そう言うと、郭淮はまた優しく頭を撫でて、それからそっと抱きしめてきた。体温が心地良い。先ほどのように、怖くはならなかった。大丈夫ですか、と問われて、コクコク頷いた。とにかく、どうにかしてほしくてたまらない。
「お、俺、俺もう、まずい、から……っ」
「大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫、ダメならダメって言うし、だから……っ」
「……判りました。……触りますよ?」
そっと前を触られて、恥ずかしくてたまらなくなった。既にどうしようもない状態になっている。キスだけでこんな風になってしまったのが、なんとも恥ずかしい。それだけ郭淮が上手いのだか、待ちわびていたのだか、とにかく何か言い訳せずには居られなかったが、またキスをされて何も言えなくなった。
んん、と声が郭淮の口に塞がれて出せないまま、ゆっくりとズボンを開かれ、直に触られる。冷たい指が絡んで来て、ビクリとした。郭淮は一瞬動きを止めたが、拒絶が無い事を確認して、上下に擦り始める。
「ん、ん、……っ、ぅ、うーっ」
他人に触れられるのは初めてで、ましてやそれが大好きな郭淮で、夏侯覇は頭が真っ白になってしまった。ぎゅう、と郭淮に抱き付いて、身を任せる。郭淮は夏侯覇の弱いところを的確に探し出して、指でいじめた。それがあまりに気持ち良くて、腰が震える。その腰をやんわり掴まれて、そのまま先端を擦られたりして、もうたまらなかった。
「か、かくわ、……っ、も、もだめ、だめ……っで、出る、から!」
「ええ」
「ええ、じゃなく、て……っぁ、ア!」
グリグリと先端を擦られて、たまらず郭淮の手の平に出してしまった。びくびくと身体が震えて、郭淮に強くしがみつく。胸に顔をうずめて震えている間も、郭淮は優しくキスを落としたり、撫でたりしていた。
「ぅ、……っ、あ、……郭、淮……」
「お疲れ様です」
頭を撫でられて、疲れたのもあって急速に眠くなってくる。それでも、「郭淮も」と言った。けれど郭淮は苦笑して首を振る。
「私は遠慮しておきます」
「なんで……?」
「今日は少し、驚いたので、疲れてしまいましたから」
いやいやいや、意味判んねえし、遠慮してんなら、別に大丈夫だし、俺、俺大丈夫だし。
そう言ったつもりだったが、言えたかどうか。とにかく、夏侯覇は眠くてたまらなくて、それに身を任せてしまった。
ひとまず、今日は沢山の事が変わった。だから、とりあえずはそれでいいと、思った。
+++
そして張郃姉さんの性感マッサージ編へ
彼と出会った時、彼はまだ中学生で、郭淮は二十代後半だった。恩師は仕事が忙しく、また妻と死別してしまい、息子の事を見てやれなかった。だから家庭教師兼、家政婦役を買って出たのは、随分前の事のように思える。一人では大変だろうと、友人の張郃も協力してくれて、3日交替で世話をしたのだ。
どうしてそうなったのか、というと、理由は色々有った。若い頃、郭淮は病弱で、それを苦に暗く生きていた。それを励まし、前向きな生き方を教えてくれたのは、恩師の夏侯淵と、友人の張郃だ。だから郭淮はずっと恩返しがしたいと思っていて、新卒で入社した会社に愛想が尽きた頃、声をかけられたものだから、喜んで引き受けた。
一方の少年は明るい子だったが、学校でいじめを受けたようだ。知り合った頃には不登校になっていて、それでも心の傷を懸命に隠そうとしているのが、酷く切なかった。だから郭淮は彼――夏侯覇――に本当の家族のように接したつもりだ。時に優しく、時に厳しく。そうしているうちに彼も心を許してくれたように思えた。実際、そうだったのではないかと思う。
それまでも少々勉強嫌いで、郭淮の言う事を何でも素直に聞いていたわけではない。それでも成績は悪くなかったし、高校にも大学にも行った。ところがそれからが少しおかしい。郭淮を煙たがって言う事を聞かない。眼を合わせない。その割に作った物は何も言わずに全て食べた。張郃とは変わらず仲良くしているようなのに、自分の事を避けるようになったのだ。
それは少々不可解だったが、年頃であるし、多少理解出来ない事もするだろうと、半ば諦めていた。だがついには朝帰りをし始める。面倒を見ている以上、流石に見過ごせない。だから郭淮はそれについて小言を言ったが、すぐに逃げられるし、一向に止めない。どころか、その頻度は増しているようにも思えた。
このままでは、夏侯淵殿に申し訳が立たない。何とかしなければ。
そして郭淮は車を走らせた。
明るい夏侯覇だったが、過去の経験からか、誰とでも仲良くするわけではないと知っている。大学の友人は数える程しか居ない。少なくとも、友人と言える人間は、司馬昭、鍾会、姜維ぐらいで、この辺りの家をウロウロしている事が殆どだった。
夜10時、車を走らせ、彼らの家に向かう。司馬昭の家で、目的の人物を見つけた。
ただそれも少々おかしな事だったと、今にして思う。いつもなら彼の友人達は本当の事を言ってくれなかった。いつも探し回った末に、夏侯覇から「帰る」と一言メールが届く。きっと回った何処かの家には居たのだろうが、その時は皆嘘を吐いて、教えてくれなかったのだ。
ところがその日は、司馬昭が夏侯覇を家から連れ出して来た。文句を言っている夏侯覇を、司馬昭は笑いながら郭淮に引き渡したのだ。そして大人しく夏侯覇は助手席に座った。
家に着いたら逃げられる。そう判っていたから、郭淮は車を運転しながら尋ねる事にした。
「夏侯覇殿」
「ん」
「何か気に入らない事でも有るのですか」
「……別に」
素っ気ない返事。郭淮は溜息を吐いて言う。
「私は……私なりに努力してきたつもりです。まだ若かった貴方と向き合ってきたつもり、でした。しかし今は貴方の気持ちが判らない。何か不満が有るのなら言ってもらわないと、私には判らないんです」
「……」
「張郃殿とは変わらず仲良くしているでしょう。問題は私に有るという事です。何か気に障るなら言って下さい、直せる事は直しますし、努力もします。けれど今は、どうしていいかも判らないんです。お願いですから、夜に遊び回るのは止めて下さい。もちろん貴方がもう子供ではないという事は、十分理解していますよ、それでも、もし何か有ったら――」
「してるし」
「……はい?」
「子供扱い、してるし」
小さな声。ちらりと夏侯覇を見たが、彼は助手席側の窓に顔を向けていて、表情が見えない。ただ、声が不満げだった。
「私は子供扱いをしているわけではありません、ただ貴方の事が心配なんです」
「自分の事ぐらい、自分で出来るし。心配するって時点で子供扱いっしょ」
「大人の事を心配しないなんて事は有りませんよ、ましてや貴方は過去にもあんな事が有ったのだし……」
「俺が小さいから、子供だから心配なんだろ」
さて、これは困った。会話になっていない。違う、と言ったところで意味は無いだろう。どうやら夏侯覇は子供扱いされていると感じていて、それが不服のようだ。知らないうちにそういう接し方をしているのかもしれない。
「……貴方に不快な思いをさせたなら、謝らなければいけません。ですが、夏侯覇殿、判ってほしいのです。私は貴方が好きで、愛しているからこそ、こうして心配したりするのだという事を」
「違うし」
ぽつり、と返事。郭淮は何を否定されたのか判らず、素直に「何がですか?」と問うた。どうもこの青年は言葉が足りない。引き出してやらないと、笑ってはぐらかしたりもするから、慎重にならねばいけなかった。
「好きとか、違うし」
「本当ですよ。私は貴方が好きです」
「違うって言ってるっしょ」
どうも意味が判らない。少し考えて、一つの推測に辿り着く。
「つまり、貴方は私が好きではない?」
「どうしてそうなるんだよ」
ふむ、とまた考える。ちょうど赤信号で車を停めた。ゆっくり考える。この信号はいつも長い。
「……貴方は私が好きで、私も貴方が好きだが、違う」
「……」
否定しない。という事は、合っている。
「……好きの種類が違う、という事ですか?」
「……」
「具体的にどう違うと思うのです? 貴方は」
夏侯覇は答えない。信号は変わらない。車のエンジン音しかしない中で、次の言葉を待っていると。
「あー、もう!」
夏侯覇が急に声を上げて、シートベルトを外した。だから降りて何処かに行くのだと思って、そちらを見た。ところが夏侯覇は、こちらを向いていて。
乱暴に唇を、郭淮のそれに重ねて、すぐ離れた。
「こういう、違い!」
夏侯覇はそう怒鳴るように言い捨てて、また窓の方を向いた。郭淮は呆気に取られて、何も出来ない。
信号は、まだ変わらない。
+++
夏侯覇はいじめられた。それも少々、屈折した形で。
中学生は成長期の来るタイミングの問題で、特に同世代でも体格差が大きい。その頃夏侯覇はまだ小さくて(まあ、結局男としては小さいままだったが)クラス一体格の良い男にいじめられた。それだけでも夏侯覇のトラウマになるだろうに、あろう事かその男に犯されそうになった。
薄暗い空き家に連れ込まれて、服を半分脱がされた。荒い息遣いと汗ばんだ熱い手は、今思い出しても気持ち悪い。渾身の力で、相手の股を蹴り上げ、気が済むまで殴り倒してなんとか逃げたが、それきり学校に行けなくなった。
男が怖い、と思う。屈強で馬鹿な男が、特に。父は学校に行けとは言わず、変わった家庭教師を呼んでくれた。オカマではないが、中性じみた張郃と、少々健康的には見えない郭淮。彼らも一応男で、夏侯覇よりはよほど体格も良かったが、それでも治療にはなった。彼らが無害だと判って、それから少しづづ外に出られるようにもなり、高校にも行けた。普通の学生生活を送れたと思う。
問題は、親身になってくれた郭淮に、夏侯覇が不埒な思いを抱いた事に有る。
性的な欲求を満たしたい、と思う。郭淮と。いけない事だと思えば思う程、気持ちが昂った。郭淮を抱きたいと思った。けれど自分があの気持ち悪い男と同類なのかと思うと、とても嫌な気持ちになり、次第に郭淮に抱かれたいと思うようになる。そうしてあの事も忘れて、郭淮に愛されたいと願う。
思えば思う程、無理なのだと考えて、胸が痛くなった。
郭淮は保護者として自分を愛している。それを性的な目で見るなど、裏切り以外の何者でもない。伝えたとしても、上手くいくはずがない。嫌われるかもしれない。そう思って泣いたりもした。どうしていいか判らなくて、悪友達の家に逃げ込み、グズグズと落ち込んだりしながら、郭淮と離れようともした。そうして何かすればするほど、苦しくなる。
そんな色々なものが、爆発してしまったのだ。気付いたら、郭淮にキスしてしまっていた。
(いやいやいや、もう、もうだめっしょこれ、絶対に嫌われたって)
顔が真っ赤なような、真っ青なような。ドキドキして倒れそうだった。苦しくてたまらない。殺すなら殺してくれ、と叫びたいような気持ちになった。悪い事には、郭淮が何も言わない。
(何か、何か言ってよ郭淮、こんなの辛いし、殺すなら殺してくれってホント、俺もうやだなんか死にたい)
そう心の中で叫んでいると、ぐいっと肩を掴まれた。郭淮の方に向かされて、何事かと思ったら、次の瞬間にはキスされていた。
(……!!??)
あまりの事に、意味が判らず、何も考えられなかった。「口を開けて」と言われたから、素直に少し開けたら舌まで入れられた。
(……ちょ、ちょちょちょ、い、意味、意味判んねーし!)
心の中で叫んでいると、やがて郭淮が離れて、ハンドルを握る。信号は青に変わっていた。
「続きは帰ってからにしましょう。とりあえずシートベルトを締めて下さい」
(つ、続きって、続きって、何!?)
言えないまま、夏侯覇はシートベルトを締めて、それでも落ち着かなかったから、ぎゅっとベルトを胸の前で握りしめていた。
「いつからか判りません。貴方をそういう目で見始めてしまったのが、いつからか」
(う、うえ?)
「ただ愛しい子供か弟だと思っていた筈なのに、いつの間にやら自分の物にしたいと感じるようになっていました」
そう言われても、眼を丸くするしかない。失礼な話だが、郭淮にそんな欲求が有るとさえ、思っていなかったのだ。
「けれど私は以前、貴方に何が起きたのかお父上から聞いていましたし、それによって貴方がどれ程傷付けられたか、よく知っていました。だから私はこの気持ちや欲求を、見て見ぬふりで通す事に決めました。私は貴方を愛していて、貴方が幸せになれればと思えばこそ、です。もちろん簡単な事ではありません。私ときたら、張郃殿にまで嫉妬する焼きもち焼きですから」
郭淮が、嫉妬!? もう何もかも、わけが判らない。車が家に着いたが、シートベルトも外さないまま、ただ硬直していた。
「夏侯覇殿」
いつの間にか、郭淮の顔が目の前に。びくりとした夏侯覇に「続きは中で」と郭淮が言う。だからのろのろとベルトを外して、家に入った。
二階建ての一軒家。結構な大きい家の部類らしいが、人は夏侯覇と郭淮しか居ない。電気を付けたり、荷物を置いたり、上着を脱いだりした後に、リビングへ。
ソファに座って、俯く。隣に腰掛けられて、またびくりとした。
「私が怖いですか」
そう問われたから、慌てて首を振った。「怖いとかじゃなくて」「今すごい、びっくりしてて」「何て言うか」としどろもどろに言うと、郭淮が微笑んだ。良かった、と声。
「貴方に嫌われたらどうしようかと思っていました」
「嫌いになんか……」
「ずっと怖かったんですよ、私は。貴方に嫌われていないかとね」
「俺だって、……」
「……触っても?」
こくりと頷くと、夏侯覇の手に、郭淮の手が重なる。少し冷たくて大きい手。いつも頭や背中を撫でてくれた。それが大好きだった。
「つまり私達は相思相愛だった、という事でよろしいですか。お父上には申し訳ないですが。私も少々動揺しています。こんな事になるとは思ってもみなかったですから」
「う、ん……」
「……キスを、しても?」
「……いいよ」
「抱きしめても、いいですか」
「……」
答えない事で受け入れた。そっと背中に手が回される。頬を撫でられて、郭淮を見ると、そのままゆっくりと口づけられた。恥ずかしくて目を閉じる。口を、と言われて、おずおず開くと、舌が潜りこんで来る。
キスは上手いのかもしれない。随分長い間、何度もキスをされていた。舌を絡められたり、吸われたり、初めての事ばかりでずっと驚きっぱなしだった。ぎゅう、と抱き寄せられて、涙が出そうなほど幸せだと思った。
このまま何をされてもいい、と思った。確かに。
腰に手を置かれて、ゆっくりとソファに押し付けられる。そのまま耳や首筋にキスを落とされる事、数回。
「……っ」
ぞわり、と寒気がして、夏侯覇は郭淮を押しのけてしまった。怖い、とそれだけ感じた。それから自分のした事に気付く。郭淮は少し悲しげな表情を浮かべていた。
「ち、違う、違うんだ」
「何が、ですか?」
「郭淮が嫌なんじゃない、俺、俺本当に郭淮の事、大好きなんだぜ、だから、だけど身体が言う事聞かなくて、」
「身体と心は一つ、と言います」
「そうじゃなくて! 俺、俺ホント、嫌なんじゃなくてっ」
「夏侯覇殿」
焦って泣きそうになっている頭を、優しく撫でられる。それは心地良いのに。郭淮の顔を恐る恐る見た。彼は優しく微笑んでいて、少し安心する。
「何も、私は貴方を疑っているわけではありません。これは貴方にとって辛かった事でもある、だから怖くて当たり前なんです。無理をしてはいけません。ね?」
「でも、……でも俺は、郭淮と、その……その、……し、したい、から……」
「……なら時間をかけるべきでしょうね。貴方にとって、辛くないように」
キスは平気ですか、と問われたから頷いた。そして何度も口付けられる。優しく唇を吸われたり、舌で口内を探られたり。それは怖くなかった。むしろ気持ち良い。
というより、気持ち良くてたまらない。
「ん、ふ、……っ、ぁ、か、郭、わ、い……っ」
頬を撫でられ、首筋を撫でられながら、何度も、何度も。もどかしい快感に熱が溜まってしかたない。なのに、郭淮は一向に、それ以上の事をしてこない。
「郭淮……っ」
「はい?」
「さ、……触って、いい、から」
恥ずかしくてたまらないが、そう言うと、郭淮はまた優しく頭を撫でて、それからそっと抱きしめてきた。体温が心地良い。先ほどのように、怖くはならなかった。大丈夫ですか、と問われて、コクコク頷いた。とにかく、どうにかしてほしくてたまらない。
「お、俺、俺もう、まずい、から……っ」
「大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫、ダメならダメって言うし、だから……っ」
「……判りました。……触りますよ?」
そっと前を触られて、恥ずかしくてたまらなくなった。既にどうしようもない状態になっている。キスだけでこんな風になってしまったのが、なんとも恥ずかしい。それだけ郭淮が上手いのだか、待ちわびていたのだか、とにかく何か言い訳せずには居られなかったが、またキスをされて何も言えなくなった。
んん、と声が郭淮の口に塞がれて出せないまま、ゆっくりとズボンを開かれ、直に触られる。冷たい指が絡んで来て、ビクリとした。郭淮は一瞬動きを止めたが、拒絶が無い事を確認して、上下に擦り始める。
「ん、ん、……っ、ぅ、うーっ」
他人に触れられるのは初めてで、ましてやそれが大好きな郭淮で、夏侯覇は頭が真っ白になってしまった。ぎゅう、と郭淮に抱き付いて、身を任せる。郭淮は夏侯覇の弱いところを的確に探し出して、指でいじめた。それがあまりに気持ち良くて、腰が震える。その腰をやんわり掴まれて、そのまま先端を擦られたりして、もうたまらなかった。
「か、かくわ、……っ、も、もだめ、だめ……っで、出る、から!」
「ええ」
「ええ、じゃなく、て……っぁ、ア!」
グリグリと先端を擦られて、たまらず郭淮の手の平に出してしまった。びくびくと身体が震えて、郭淮に強くしがみつく。胸に顔をうずめて震えている間も、郭淮は優しくキスを落としたり、撫でたりしていた。
「ぅ、……っ、あ、……郭、淮……」
「お疲れ様です」
頭を撫でられて、疲れたのもあって急速に眠くなってくる。それでも、「郭淮も」と言った。けれど郭淮は苦笑して首を振る。
「私は遠慮しておきます」
「なんで……?」
「今日は少し、驚いたので、疲れてしまいましたから」
いやいやいや、意味判んねえし、遠慮してんなら、別に大丈夫だし、俺、俺大丈夫だし。
そう言ったつもりだったが、言えたかどうか。とにかく、夏侯覇は眠くてたまらなくて、それに身を任せてしまった。
ひとまず、今日は沢山の事が変わった。だから、とりあえずはそれでいいと、思った。
+++
そして張郃姉さんの性感マッサージ編へ
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浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
二人とも変態。永遠の中二病。
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