父ちゃんもオンライン始めました。楽しいですね。オンも。
一人でやってると画面が理解不能な感じになるんだぜ。
以下、斬撃の短文。何事も起こりませんが。繋ぎという事で。
一人でやってると画面が理解不能な感じになるんだぜ。
以下、斬撃の短文。何事も起こりませんが。繋ぎという事で。
誰かが、叫んだ。撤退だと。負けたんだと。殺されると。悲鳴にも似た声で、誰かが叫んだのがきっかけだ。それから兵士達は示し合わせたように、統制を失って逃げ出した。崩れるようにブルグント兵が逃げ惑い、南へと走り去る。残ろうにも、残れなかった。人の流れに押されながら、後退するしかなかった。
シグムンドともはぐれ、ヘルギは3人の仲間と一緒に、ブルグント兵の流れに入っていた。彼らは鉄の甲冑を付けているから、長時間走れないと泣き事を言う。だからヘルギは、彼らを鼓舞した。生きて帰らないと、あいつらに踏み潰されるんだぞ、そんな死に方嫌じゃないのか、俺は嫌だ、お前達どうした、北の民に足で負けるのか、俺達はまだまだ走れるぞ。そうしてブルグント兵達を元気づけて、共に王都へと帰る。
王都の高い壁が見えた時、ブルグント兵達は安堵のあまり崩れて泣き始めた。だからヘルギも彼らと手をとりあい、抱き合って泣いた。生き残ったのだ。生きて帰ったのだ。ついこの間まで憎かったブルグントの連中だったが、今はどうでもよかった。圧倒的な数の違い。絶望的な運命に押し潰されそうなのはお互いさまで、そう考えると人種などという違いは些細な事になった。ブルグント兵達もヘルギと泣き、笑い、肩を並べて王都へと帰る。
他にも無事に逃げ帰っている者が居た。ヘルギはその中にシグムンドの姿を探したが、何処にも見当たらない。まさか、と思っていると、代わりにヴェルンドの姿を見つけた。幸い、目立った怪我もなさそうだ。
「ヴェルンド!」
「ヘルギ。戻ったか」
声をかけてから判ったが、彼は何故か戦支度を解いていなかった。皆逃げ帰れた事に安心して、ブルグント兵などは鎧も剣も捨てて寝そべっているというのに。ヘルギが不思議に思っているとヴェルンドは「後を頼む」と言う。
「頼む? 何を?」
「俺は戻る。シグムンド達がまだ帰っていない。救援が必要だろう」
「も、……っ、戻る!? 馬鹿言ってんじゃねえ、命からがら逃げて来たんだぞ、戻ったからってシグムンドが生きてるとも限らないし、……第一お前一人で何が出来るってんだ!」
「撤退を促す事ぐらいは出来る。まだ前線を維持しようと戦っているのかもしれない。ブルグントは近く、王都に防衛線を敷くそうだ。戦力を集結しなくてはならない。その為にシグムンドや、それにフレイ、フレイヤの存在は不可欠だろう」
「でも、……でもそいつらが生きているとは、」
「彼らは生きている。……俺は行く。村の者には、俺は死んだと思えと言っておいた。俺がどうなろうが関係無い。好きにする」
「お、おい……」
ヴェルンドはそのまま王都の出口へと向かってしまった。ヘルギは彼の正気を疑ったが、しかし放っておくわけにもいかない。しばらくあれこれ考えて、「ああ、もう」と溜息を吐くと、村の仲間に声をかけた。
一人で行かせてはいけない。ヘルギの中で一番大きかったのは、それだけだ。一人で行かせて、彼が何処かで苦しんでいるのを考えたくない。ヘルギは十数人の戦士達を何とかかき集めて、急いでヴェルンドの元へと向かった。彼はまだ、門番に止められて口論しているところだった。誰でも無謀と思うのは当然らしい。ブルグント兵に心配されているようでは終わりだ。
「ヴェルンド! 俺達も行く。皆でシグムンドを助けに行こう」
ヴェルンドは驚いたようにヘルギを見て、それから「いいのか」と問う。だからヘルギは笑って「いいさ」とただそれだけ答えた。
王都を出る時、一人のブルグント兵が声をかけてきた。それは砦で見た男だ。ヘルギは自然と嫌な顔をしたが、彼は小さな声で、「気を付けて行け」と呟く。
「皆死んじまった。皆。奴らに虫けらみたいに殺されたよ……」
悲しげな声。以前のような嘲りの欠片も無い、ただ意気消沈している男。ヴェルンドを足蹴にしていたのと同じにはとても見えなかった。ヘルギはなんと言っていいか判らず、ヴェルンドを見る。彼もまたなんとも言えない表情をしていたが、やがて彼に、「お前も気を付けて。国を守れ」とそれだけ言った。
北へ。北へと走る。時折逃げ帰る兵達を見つけた。南へ、王都へと促し、励まし、必要なら食料や薬を分け与えながら、北上し続ける。そのうちシグムンド達に会えるのか、それとも会えないまま、巨神達の群れにぶつかるのか。ヘルギには判らない。ただ祈る事しか出来ない。
ヴェルンドは一切の迷い無く、駆けて行く。彼は脚が速い。そして迷いが無い。それが少々不安だった。こいつは自棄になってるんじゃあないか。ヘルギはヴェルンドの背中を追いながら、少し思う。
何故だか、彼の背中を見ているのは落ち着かなかった。これまでずっと、誰かの背中を見続ける事で安心して来たのに。何故か、彼の前に立たなければと思う。なのにヴェルンドの脚があんまり早いものだから、ヘルギにはついていく事しか出来なかった。
空が薄暗い。夜が来るのか。朝は来るのか。遥か彼方に光が見える。ナグルファルからの爆撃で、平原が、山が燃える。何もかも壊される。世界は終わりだ。何もかも終わりだ。そう絶望しながらも、ヘルギは走り続ける。眼の前の背中が、走り続ける限りは、追わないわけにはいかなかった。
+++
既にどうかし始めているヴェルンドさん でけぇ独り言言うしな。
レギンの「戦って戦ってそして死ねぇ! いいな!?」
にいつも返事がないのは何故なんだろう。
シグムンドともはぐれ、ヘルギは3人の仲間と一緒に、ブルグント兵の流れに入っていた。彼らは鉄の甲冑を付けているから、長時間走れないと泣き事を言う。だからヘルギは、彼らを鼓舞した。生きて帰らないと、あいつらに踏み潰されるんだぞ、そんな死に方嫌じゃないのか、俺は嫌だ、お前達どうした、北の民に足で負けるのか、俺達はまだまだ走れるぞ。そうしてブルグント兵達を元気づけて、共に王都へと帰る。
王都の高い壁が見えた時、ブルグント兵達は安堵のあまり崩れて泣き始めた。だからヘルギも彼らと手をとりあい、抱き合って泣いた。生き残ったのだ。生きて帰ったのだ。ついこの間まで憎かったブルグントの連中だったが、今はどうでもよかった。圧倒的な数の違い。絶望的な運命に押し潰されそうなのはお互いさまで、そう考えると人種などという違いは些細な事になった。ブルグント兵達もヘルギと泣き、笑い、肩を並べて王都へと帰る。
他にも無事に逃げ帰っている者が居た。ヘルギはその中にシグムンドの姿を探したが、何処にも見当たらない。まさか、と思っていると、代わりにヴェルンドの姿を見つけた。幸い、目立った怪我もなさそうだ。
「ヴェルンド!」
「ヘルギ。戻ったか」
声をかけてから判ったが、彼は何故か戦支度を解いていなかった。皆逃げ帰れた事に安心して、ブルグント兵などは鎧も剣も捨てて寝そべっているというのに。ヘルギが不思議に思っているとヴェルンドは「後を頼む」と言う。
「頼む? 何を?」
「俺は戻る。シグムンド達がまだ帰っていない。救援が必要だろう」
「も、……っ、戻る!? 馬鹿言ってんじゃねえ、命からがら逃げて来たんだぞ、戻ったからってシグムンドが生きてるとも限らないし、……第一お前一人で何が出来るってんだ!」
「撤退を促す事ぐらいは出来る。まだ前線を維持しようと戦っているのかもしれない。ブルグントは近く、王都に防衛線を敷くそうだ。戦力を集結しなくてはならない。その為にシグムンドや、それにフレイ、フレイヤの存在は不可欠だろう」
「でも、……でもそいつらが生きているとは、」
「彼らは生きている。……俺は行く。村の者には、俺は死んだと思えと言っておいた。俺がどうなろうが関係無い。好きにする」
「お、おい……」
ヴェルンドはそのまま王都の出口へと向かってしまった。ヘルギは彼の正気を疑ったが、しかし放っておくわけにもいかない。しばらくあれこれ考えて、「ああ、もう」と溜息を吐くと、村の仲間に声をかけた。
一人で行かせてはいけない。ヘルギの中で一番大きかったのは、それだけだ。一人で行かせて、彼が何処かで苦しんでいるのを考えたくない。ヘルギは十数人の戦士達を何とかかき集めて、急いでヴェルンドの元へと向かった。彼はまだ、門番に止められて口論しているところだった。誰でも無謀と思うのは当然らしい。ブルグント兵に心配されているようでは終わりだ。
「ヴェルンド! 俺達も行く。皆でシグムンドを助けに行こう」
ヴェルンドは驚いたようにヘルギを見て、それから「いいのか」と問う。だからヘルギは笑って「いいさ」とただそれだけ答えた。
王都を出る時、一人のブルグント兵が声をかけてきた。それは砦で見た男だ。ヘルギは自然と嫌な顔をしたが、彼は小さな声で、「気を付けて行け」と呟く。
「皆死んじまった。皆。奴らに虫けらみたいに殺されたよ……」
悲しげな声。以前のような嘲りの欠片も無い、ただ意気消沈している男。ヴェルンドを足蹴にしていたのと同じにはとても見えなかった。ヘルギはなんと言っていいか判らず、ヴェルンドを見る。彼もまたなんとも言えない表情をしていたが、やがて彼に、「お前も気を付けて。国を守れ」とそれだけ言った。
北へ。北へと走る。時折逃げ帰る兵達を見つけた。南へ、王都へと促し、励まし、必要なら食料や薬を分け与えながら、北上し続ける。そのうちシグムンド達に会えるのか、それとも会えないまま、巨神達の群れにぶつかるのか。ヘルギには判らない。ただ祈る事しか出来ない。
ヴェルンドは一切の迷い無く、駆けて行く。彼は脚が速い。そして迷いが無い。それが少々不安だった。こいつは自棄になってるんじゃあないか。ヘルギはヴェルンドの背中を追いながら、少し思う。
何故だか、彼の背中を見ているのは落ち着かなかった。これまでずっと、誰かの背中を見続ける事で安心して来たのに。何故か、彼の前に立たなければと思う。なのにヴェルンドの脚があんまり早いものだから、ヘルギにはついていく事しか出来なかった。
空が薄暗い。夜が来るのか。朝は来るのか。遥か彼方に光が見える。ナグルファルからの爆撃で、平原が、山が燃える。何もかも壊される。世界は終わりだ。何もかも終わりだ。そう絶望しながらも、ヘルギは走り続ける。眼の前の背中が、走り続ける限りは、追わないわけにはいかなかった。
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にいつも返事がないのは何故なんだろう。
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二人とも変態。永遠の中二病。
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