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めでぃのくの日記
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2010-05-14 (Fri)
 勢いに任せてガンガン書いちゃってます
 ちなみにタイトルは「あくたのせかい」でした。
 ここからは本編との間を縫っての飛び飛びです。


 以下、斬撃 短めですが。

 痛みと恥辱ばかりの行為は随分長い物に感じられたが、それでも加減されたほうらしい。医師にも命に関わるような事は無いと言われ、包帯を巻かれただけですんだ。身体は洗ってもどうにもならない痣が残っていたが、幸い服が無事なので、隠す事が出来るだろう。口は切れているが、これは疲れていたから転んだとでも言えばいい。

 ヴェルンドはそんな風に考えながら、廊下を歩いていた。医師もシグムンドも休んでいろと言ったが、そういうわけにもいかない。彼は族長であり、皆をまとめなくてはいけないのだから。自分だけ休んでいる事は出来ない。少々体中が痛んだが、我慢出来ない範囲ではなかった。

 ただ、一つだけ我慢ならない事が有るとしたら、それはシグムンドにこの醜態を見られた事だった。

 これはヴェルンド自身、自覚の無かった事だが、彼はシグムンドにある種の憧れを抱いていた。自分は幼い頃から職人達と触れあい、村を豊かにする事を考えていたからかもしれない。狩人として、戦士として強いシグムンドに、何処か惹かれていた。尊敬していた、と言えるかもしれない。そういう相手に自分の最も情けない姿を見られた事は、彼にとって悲しい事だった。

 憂鬱な気持ちで歩いていると、ヘルギに出会った。彼はヴェルンドを見て一瞬眼を丸くしてから、「お、お前」とうろたえた様な声を出す。

「休んでろって、言われてなかったか?」

「そういうわけにもいくまい。皆が待っている。俺だけ休んでいるというわけにもいかんさ」

 苦笑して答えると、ヘルギは困惑したように眉を寄せる。その表情の意味を計りかねて、ヴェルンドも眉を寄せた。それを見てヘルギの方が何か気付いたらしい。「ああ、いや」と慌てて首を振る。何が「いや」なのかは判らなかった。

「その、なんだ……お前の村には、他に頼りになる奴は居ないのか? 全部お前がしなきゃいけないってわけじゃあないだろ」

「……生憎、頼りになりそうな奴は……」

「マジかよ……。その、……あの、……俺が言うのもなんだけど、……こんな状況でどうかと思うけど、その……村の奴らの事は、踊らせてりゃあいいんだぜ」

 ヴェルンドが怪訝な顔をすると、またヘルギは「ああいや」と何かを否定する。

「言い方は悪いけど、その、何もしない奴らってのも絶対居るだろ、そういう奴らにいちいち何か言ったって、疲れるだけなんだ。だからその、持ち上げたり、逃げ道塞いだりして、泳がせといたほうが楽なんだよ。こんな事言うのもなんだけど……お前、ちょっと疲れてるだろ? だから、そうやって休むのもどうかって……」

「……」

「あ、そ、そう、そうだ。シグムンドも言ってたぜ、お前一人じゃあ大変だろうってよ! だから北の民は北の民で、皆一緒にって……そうそう! 後で宴会をやるんだ。ヴェルンドの村の連中も、来させればいい! 歌って踊れば不安も吹き飛ぶってもんだよ」

「……宴会?」

「そう、宴会だ。皆無事で生きてる事。明日も戦う事。いずれ俺達が勝つって事。死んだ連中は賑やかに送ってやろう……って事。酒もなんとか用意出来てる。ここだけの話……肉も少しだけど有るんだぜ。ブルグントの奴らには秘密だけどな。……だから、さ」

 ヘルギは不自然なぐらい明るく言う。気を遣われているのだな、とヴェルンドは思った。だが悪くない。そうして誰かに手助けされる事は、殆ど無かった。ヴェルンドは知らぬ間に、僅かに微笑んでいた。

「ヴェ、ヴェルンド……」

「すまない。……そうだな、世話になろう。帰ったら皆に、そちらに行くよう言っておく。……悪いな、気を遣わせて。俺は大丈夫だ。……」

「お、おう。………………あ、……でも、お前も来いよ」

「……俺も?」

「当ったり前だろうが! 今一番疲れてるのはお前だぜ。笑って吹き飛ばそう。……あ、いや、もちろん、嫌ならいいんだけど……」

 ヘルギの表情はコロコロと変わって、ヴェルンドは少々愉快な気持ちになった。疲れていた心が、ほんの少しほころぶのを感じる。優しいな、と呟いて、それから頷いた。

 シグムンドとは交流も有ったが、ヴェルンドはヘルギの事をよく知らなかった。やけにデカい男だ、という程度の印象で、その割にいつもこそこそと誰かの陰に回るような男だと思っていた。けれど少々見直した。人の中で自分がどうあるべきか、判っているのだ。そういう意味ではヴェルンドよりよほど器用と言える。まして、本気で心配してくれているようだから、きっと良い奴なのだろう、とヴェルンドは思う。

 ヘルギに見送られて部屋に戻る。村の皆は心配そうだったが、宴会の事を話すと喜んでシグムンド達の部屋へと遊びに行った。こんな騒ぎだというのに、民の何人かは楽器を持って来ていたし、干し肉や干し葡萄、酒なども持ち込んでいた。女達は音楽に合わせて踊り、スカートを翻し、男達は歌って笑い、叫びまわった。とても陽気な夜になって、ヴェルンドは不思議な気持ちになった。

 シグムンドの周りは、こんなにも明るい。それが何によるものなのか判らない。ずっと不安げだった自分の村の連中が、笑って踊っているのを見て、ヴェルンドは僅かに表情を翳らせた。

 結局、全てにおいて、自分はシグムンドに劣るのだ、と。

 +++

 フレイは綾波、フレイヤは天然、シグムンドはカリスマ過ぎる、と分類しても
 ヴェルンドとヘルギに関しては一言で分類できない妙なところがある
 ヘルギは発言は常にネガティブというか、ヘタレなのに
 いつも最前線に居る所とかもよく判らない
 次は時系列的に女神フレイヤの最後の直前ぐらいに飛びます 

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