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めでぃのくの日記
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2025-01-19 (Sun)
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2009-11-18 (Wed)
 昨夜19時頃拍手を頂いたのですが
 コメントが途中で切れており内容が判りません……
 事故等の場合でしたらお手数ですがもう一度送っていただけると幸いです……
 ↑望んでそうしたという言葉を表現出来ず……故意というのも違うし……

 そうか、判ったぞ、という事で試しに脇役の位置に元就とアニキを設置してみたら
 思いのほか上手く行きました が、それはまた別の話です

 以下、SF設定の奴の3 タイトル未定
 書き終わってからタイトルつけるほうだからなぁ
 暫定ファイル名は「SFねこ」なんですけどね

 12月28日(L) 気温28度 湿度15%
 研究日誌
 気温調整システムは修復されたようだ。酵素達は無事。しかし被検体G139~G200までの被検体は死亡していた。気付かずC36の投与を続けてしまったが、G188について不可解な現象が起こっている。引き続きG139~G200までの様子を観察する事にする。
 



 これほど最悪な目覚めを経験したのは、久しぶりだった。元就ははっきりと寝不足を感じながらも、アラームが促すので起きるしかなかった。ラボの定期点検の時間である。

 ベッドの上では猫が我が物顔で布団に丸まっている。すぅすぅと気持ちよさそうに寝ているではないか。元就はガリガリと頭を掻いて、不快ため息を吐き出すと被検体達の様子を見に行った。

 ざっと見たところ異常は無い。被検体G139~G200の棚に行き、中を覗いて元就はため息を吐いた。全て「赤」である。生体反応が認められない。また失敗だ、と元就はため息を吐いた。しかも悪い事には、「赤」になったのは前日のようだ。昨日はバタバタしていたから、様子を見られなかった。C36の投与が続いていたようだ。もったいない、という言葉を思い出しながら、元就は踵を返す。後で処理しなければならないだろう。

 元就は猫を起こさないように歩き、ラボを出た。部屋は温まっていて、安心する。温かいという事がこれほどありがたい事だと、元就は知らなかった。メインパネルに行き、何度か操作すると、機械が故障したためだとか、大変申し訳なく、とかそんな曖昧な事情説明が表示された。恐らく原因は未解明なのだろう。今時、機械が故障したぐらいでこれほどの騒ぎにはならない。代えはいくらでも有るのだから。

 元就はそれからしばらく考えて、メインパネルに向かい「清水」と名を呼んだ。パネルに端正な顔立ちの男が映る。いっそ馬鹿らしいほどの笑顔を浮かべた木偶人形だ。尤も、コントロールセンターのそれよりは性能は良い。

『おはようございます、元就様。本日は何を致しましょうか』

「朝食を頼む。いつもので……、……ああ、いや、……清水、猫は何を食べる?」

『語句の定義が曖昧です。第一語意、愛玩動物猫科動物。第二語意、この惑星における原住民の総称及び蔑称』

「第二だ。連中は何を食べる? ……食べ物を用意してほしいのだが」

『第二語意の猫達は、肉、魚、果物、野菜、あらゆるものを食します』

「肉だと? ……まぁいい、用意してくれ。それと子供用の服だ。サイズは……これぐらいの身長だ。太さはまぁ標準だろう」

『かしこまりました。後ほどお届けにあがります』

 モニターから清水が消える。清水は元就専属のアンドロイドだ。研究者達は各々それら生活補助のための人形を持っている。彼らは高性能のA.I.を搭載していて、少なくとも普通に話している分には、相手がコンピューターであると意識はしない程度に作られている。元就は子供の頃から清水を使っていた。清水は「前の元就」が購入した財産だそうだ。元就はそれが気に入らないが、他を調達しようとは思わなかった。

 ラボに戻ると、猫は目を覚ましていた。毛づくろいのつもりなのかどうか、顔や頭をごしごし擦っている。元就に気づくと、「ナァ」と微笑んだ。元就は特に反応せず、「温かくなったぞ」と素っ気なく告げた。猫は首を傾げていたが、やがて元就の側に寄って来る。

「……いいか、猫」

「ナァ?」

「そなたがここに居る事は、秘密にせねばならぬ。研究員はな、許可された物しか持ち込んではいけない。そういうルールが有る。だがな、猫の持ち込みは少々話が複雑でな」

「?」

「……人が来る時、我が隠れろと言ったら……ここに入って、隠れるのだ」

 元就はラボの床をコンコンと蹴ってみせる。猫もそこを見て、首を傾げる。そんな猫に、床の開け方を教えてやる。一定のリズムで床を叩き、ある部分を引っ掻くと、そこから認証システムが顔を出す。そこにパスワードを入れれば、地下収納庫への扉が開く。

「パスは3320だ。判るか」

「?」

「……まぁいい。中にはな、武器や食料が隠してある。自衛手段という奴だ。物騒な世の中故な。そなたも判るだろう。人は酷く他人に対して無遠慮だ」

 猫は返事をしない。判るはずも無いのだ。言い聞かせようとした自分が馬鹿だった、と元就は苦笑して、猫の手を引き、ラボを出る。

 部屋に戻ると、メインモニターに通信が入っていた。手を触れると、清水の顔が浮かび上がる。『お届けにあがりました』と言う清水に、入室許可を出すと、緩やかにエレベーターが上がって行った。

「そなたは物陰に隠れておれ。なに、清水は敵ではないが、そなたを来客扱いするかもしれぬから。そうなると面倒なのだ。とかく世話用アンドロイドというのは気を回し過ぎる」

「?」

「そこに入っていろ」

 机の下に猫を押しこみ、座らせる。「待て」と手で指示し、部屋の入り口へと向かう。清水がカートに食事や服を乗せていた。その食事を見て元就は驚く。

「清水、何だこれは」

「焼いた肉です。それに蒸した野菜。それと果物、合成ミルクです」

「焼いた、肉?」

 元就は不快そうな顔をして食事を見たが、ややして頷き、食事と服を受け取った。清水は深く礼をして、エレベーターに乗り込み去っていく。元就はそのおぞましい食事を運んで、テーブルに乗せた。猫がぴょいと顔を出し、眼の前の御馳走に目を輝かせる。

「……食え、勝手に」

 トレイごと渡してやる。猫は何処で覚えたのか、行儀よく椅子に座り、テーブルに向かった。手づかみでもぐもぐと肉をかじり出す。元就はその光景にため息を吐きながら、乾燥食料をかじった。カロリー、栄養計算されたバーで、それさえ食べていればあとは水だけで生きていける。元就は生まれてからこれしか食べてこなかった。だから、生肉を焼いた物、というとてつもなく不潔な物を、食べ物だとはとても認識出来なかった。

 だのに猫は、夢中で食事を貪っている。あまりに旨そうなので、「美味いか」と尋ねた。猫はニコニコ笑って、それから肉の欠片をちぎって差し出してきた。元就は顔を顰めて、「要らぬ」と答えたが、猫は差し出したままだ。

 元就は長い時間考えて、眉を寄せたままそれを受け取り、まるで汚物でも見るかのような顔のまま、また長い間肉を見つめていた。そんな元就を猫も見つめている。元就は深いため息を吐き、覚悟を決めて目を閉じると、ひと思いに口に放り込んだ。

 筋肉の繊維、油、焼けた香り、ソースの味。元就はその全てを初めて知った。一瞬固まったが、やがてもぐもぐと咀嚼する。しばらくして飲みこむ。猫は「どう?」とばかり首を傾げている。元就は長い間考えてから、

「……何故だろうな、美味い」

 と、首を傾げて答えた。


 

 食事の後、汚れた顔や手を拭ってやり、服を着せる。猫はやはり好奇心旺盛に部屋を歩きまわった。元就がメインモニターで作業をしている間、猫はうろうろしたり何か触ったりで忙しい。ラボに入ろうと扉を押して、そして開かない事に気づくと、「ナァ」と大声で鳴く。

「その扉は我の認証が無ければ開かぬ」

 元就は猫を見ないで言った。

「研究者にとってラボは命と変わらぬからな。内側からは自由に開くが、外側からは認証無しでは開けられぬ。たとえ戦車が来ても平気だと誰かが言っておった。それと、この家の出入りも同様だ。出るのは自由だが、入るには我の認証がいる。…………」

 元就はふと顔を上げて、エレベーターの上に座っている猫を見た。猫は興味深そうに上を見ている。元就はしばらく考えて、「猫」と声をかける。

「ナァ?」

「そなたにここは窮屈だろう。元々外で暮らしていたのだから。……出たいなら出ていけばいいし、そして二度と帰って来なくていい。……さぁ何処へでも行け。そこのボタンを押せば上がるぞ」

 猫は元就の言う事が判らないのかうろうろしていたが、やがてボタンを見つけて押した。上がり始めたエレベーターの上から「ナァナァ」と鳴いていたが、元就は気にしなかった。

 元々気まぐれで家に入れただけだし、昨日同情してしまったのは寒かったからだ。気温が上がった今、元就に猫を守る理由は無い。元々猫は外で生きていける。食べ物も肉や野菜を食うのなら、コロニーの外に出れば有るのだろう。元就はそう自分を納得させた。猫には猫の生き方が有る。それが少々の縁で重なっただけなのだ。

 そう、少し一緒に居ただけで、それ以上ではない。元就はそう言い聞かせ、猫の事はひとまず忘れて、ラボへと向かった。

 G139~G200の棚に向かう。被検体の処分には何かと手続きが必要だが、元就の場合その種類が一定であるため、ラボの奥にあるダストシュートに放り込めばそれで良いと言われている。被検体を捨てようと棚に手をかけ、そして緑のランプが一つだけついている事に気付いた。先ほどは全て赤だったはずだ。

 良く見るとG188の被検体が蘇生している。元就は眉を寄せ、すぐにその他の被検体と別の棚へとそれを移した。このような事象は初めてだ。確かに死んだはずだ。それが生き返っている。何故か? ……C36を投与し続けたからか?

 C36については実験の方法を変えねばならない、もしかしたらとんだ思い違いをしていたのかも、C36の効能はこれではないのか……元就の思考はすぐにC36の事でいっぱいになった。




 C36についての実験の幅を大きく広げる処理をしていたら、随分と時間が経っていたようだ。元就は一息吐こうと部屋に戻った。何気なくメインモニターに触れて、驚く。外のエレベーターの側に、猫が座っている。

「あやつ、何をしているのだ」

 何処へなりと行けと言うたのに。元就は顔を顰めた。そんな所で長い間じっとしていたら、クズどもに何をされても文句は言えぬぞ。モニターに向かってそう言っても、猫には届かない。そうこうしているうちに、本当に二人の男達が猫に向かって来た。猫に対して何か言って笑っている。猫は逃げない。どうせニコニコ笑っているのだろう。ついに男達は猫を捕まえて、殴り始めた。

 元就は咄嗟に立ち上がり、エレベーターへと向かった。しかしそこで立ち止まる。出て行って何が出来る。自分は研究者であり、力も無い。まだ警備隊を呼んだほうがましだろうが、彼らが猫のためになにかするだろうか? いや、恐らくしないだろう。ではどうする、我はそこまでのリスクを犯して、猫を助ける理由を持っているのか。

 持っていない。

 持っていない、が。

 元就は部屋を見渡して、そしてラボへと走った。




 男達は猫をからかい、蹴り飛ばしたり、殴ったりして楽しく遊んでいた。猫は泣きそうな顔をして男達を見ていたが、逃げようとはしなかった。猫には何をしても文句は言われない。だから人間達のストレス解消の的になる。そして猫も諦めているのか、抵抗もしない。

 エレベーターに乗ったまま、元就は眉を寄せ、そして彼らに怒鳴った。

「ここから立ち去れ! それは我の猫だ! 手を出す事は許さぬ! 即刻立ち去らねば、撃つぞ!」

 そういう元就は、ずっしりと重い銃を構えている。自衛手段、という割にそれは酷く武骨で、はっきりと殺意が感じられる物だった。男達も困惑して、手を上げる。

「待てよ、俺達は猫で遊んでただけだ、そんなに怒らなくても……」

「良いから、さっさと立ち去れ! 撃つぞ、本当に撃つぞ」

 元就は必死でそう怒鳴ったが、その様子が彼らには少々滑稽だったらしい。二人して顔を見合わせ笑ったので、威嚇するためにも、元就は一撃撃った。バシッ、と青白く光る玉が射出され、地面が焼け焦げた。それを見て彼らも元就が本気だとようやく悟って、すぐさま逃げ出した。

 元就はその銃を持ったまま、よろよろと猫の所へ向かった。猫はきょとんとしていたが、その腕を引っ掴んで、またエレベーターへ向かった。

 部屋に降りると、元就はすぐさま銃を床に放り出し、自らもへたり込んだ。銃を握るなど、初めてだ。撃ったのも、あんな人間を相手にするのも、何もかも。元就の手は震えていた。ずっと研究をしていたし、生まれてから嫌な人間には沢山会ったが怖い人間には殆ど会わなかった。

 クズのような人間はたくさん居る、こんなに大人しい猫を殴って笑うようなクズは。元就は手を押さえていたが、震えは止まらなかった。そんな元就を、猫が心配そうに触れてくる。元就は苦笑して、猫の顔を撫でた。殴られていたが、傷にはなっていないようで安心する。

「我がそなたを介抱せねばならぬところなのに、そなたに心配されては何をやっているのか判らぬな。………………そなた、ここに居ろ。そなたに不満が無いなら。あんな風に誰かと敵対するなど、もう二度としたくない」

「ナァ?」

「……その銃はな、自衛手段だ。見た目は派手だが、殺傷力は無い。せいぜい相手に痛みを与えて気絶させる程度のものだ。何度もは使えぬ。……こんな思いをするぐらいなら、そなたに寝不足にされた方がましだ。あぁ、疲れた」

 元就はため息を吐き、猫はそんな彼に微笑む。馬鹿なのだな、と元就は改めて思った。


 
 こうして元就は、猫を飼う事になった。


 ++

 元就が銃持ってるシーンは、ナ○シカの某シーンみたいな感じで

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