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めでぃのくの日記
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2010-01-16 (Sat)
 ぷらだをきたあくまを昨日初めてみたわけですが……面白かったです
 悪魔なナリ様と助手のアニキとかすげー似合いそうですね
 最後まで全くデレなさそう


 以下、あきらめの9
 ほのぼのモードはここで終わりです

 元就は村に受け入れられる事となった。容疑者にされた事で、その道が開かれた事は皮肉な話だったが、凝り固まったものを打ち砕くためには、それなりの力が必要だという事なのだろう。村の多くの者が元就に同情し、彼を許した。即ち、村の一員とすると決めた。

 元就は容易に信じなかった。が、無事だった我が家や、車に乗せてくれた若者や、それに嘘を吐いていた娘とその親が土下座して謝罪したのを見て、少しづつ理解し始めたようだ。自分は救われたのかもしれない、と。

 元親はようやっと元就の何かを支えられた事を喜んだ。元就は解放されたのだ。彼の中ではちっぽけだった、深い深い闇から。

 元就はそれでもなかなか心を開かず、自分の家の敷地から出ようとはしなかった。他の村人は時折、彼の家を訪れて、食べ物を分ける。その度に元就は困ったような顔をして、森で取れた果実を手渡した。元親が家に招いたから、元就は時折外出するようになった。元就は酷く居心地が悪そうに縮こまっていたが、元親の父や母に優しくされるうち、徐々に身も心も解放した。

 そうして少しづつ慣らさせて、元親は元就をクリスマスパーティーに呼ぶ。村の若い衆が20人ほど集まって、飲んで騒いでするイベントだ。元就は最初とてつもない勢いで断ったが、根気強く説得すると、「長曾我部と明智の側に居ていいのなら」と渋々了承した。

 パーティーは村の集会場で行われた。パーティーとは名ばかりで、食べて飲んで暴れて笑うだけのものだ。最初は村の若い衆も元就に気を遣っていたが、やがて自由に笑って踊った。元就はやはり縮こまっていたが、生まれて初めて飲まされた酒がえらく利いたらしい。しばらくすると光秀や元親にもたれかかって、ニコニコしていた。

 毛利さんも飲め、食え、と色んな物を差し出されて、元就は貪欲にそれらを口にしたものだから、最終的に泥酔してしまった。しばらくすると復活してきて、元親に「おい」と声をかける。

「ん?」

「歌を歌え」

「え? う、歌?」

 元親が困っていると、「そうだそうだ」と周りの連中も促した。

「チカは歌が上手いからな。そうだカラオケセットも有るんだし、チカなんか歌えよ」

「え、い、いや、でも俺は……」

「歌え」

 元就は完全に命令形で、そう言いながら笑っている。「毛利ぃ」と困った声を出すと、「そなたの歌が聞きたい。そなたの歌は好きだ」と言われて、もうどうしようもなくなった。

 それからはもう、元親はひっきりなしに歌わされた。童謡から今時の歌までなんでも歌わされた。その度に皆は笑ったし、元就は妙に嬉しそうな顔で拍手をしていた。まるで子供だ。光秀はそんな元就を撫でてやりながら、ずっと微笑んでいた。





 元親は元就を背負って帰った。随分気持ち良くなったらしい元就は、いつからかずっと眠っていた。だからのろのろと背負って帰る。帰り道はひんやりしていて、気持ちが良かった。

 とぼとぼと暗い道を、懐中電灯を照らしながら進む。と、元就が眼を覚ます。ううん、と耳元で呻いて、それから「長曾我部、歌え」と言った。

「ダメだよ。近所迷惑だろ」

「近所なんか無い」

「そりゃそうだけど……毛利、お前相当酔ってんな……」

 苦笑して背負い直してやる。元就もぎゅっと元親に縋りついた。

「歌え」

「何を」

「きよしこのよる」

「ほしはひかり、ってか? お前はキリシタンじゃねえだろ」

「我は信じておる」

「何を?」

「全てを平等に見るものが、この世の何処かには居ると」

「それがキリストだって?」

「かもしれぬし、違うかもしれぬ。だがキリストの伝承はその一つではある。歌おう、讃えよう、少なくとも奴のおかげで文明は発展し多くの血が流れ、多くの者が救われ泣いた。偉大だ。少なくとも、他の多くの者よりは」

 そういえば、彼はキスで眼病を直したとか、なんとか……唾液だったか。元親はそんな事を考えながら、仕方無く歌った。元就も合わせて歌っていた。非常に不安定な音程で、元親は笑った。元就も笑っていた。そういえば元就は、光秀や元親を癒そうとキスをした。光秀はあれから元気になって、元親は今、心は安らかだった。眼は治らなかったが。

「お前、そういう力、有るんじゃねえの?」

「ん?」

「特殊能力っつーか、なんつーか」

「そんなもの有ったら、こんなクソ田舎に住んでいるものか、阿呆」

 酔いきっている元就の言葉は、実に乱暴だった。元親は「それもそうだな」と笑って、空を見上げる。星が輝いていた。澄んだ空気は、呆れるほどの星を見せてくれる。迫って来るような、圧倒的な数の輝きだった。

「我は権利が有るのだ」

「権利ぃ?」

「普通の人間は、神とやらにお願いをたくさんするだろう? 今年も良い年になりますように、とか。彼と一緒に居られますように、とか。そういう馬鹿げた事に使わないで、大事に取っておくのだ。何年もな。それで、本気で願いを叶えて欲しい事を、必死で祈る。そうしたら、何年か分のお願いを、何かが聞き取ってくれるのだ。たぶん」

「そっか。そういうもんかもな」

「うむ」

 元親は適当に返事をしたし、元就は真剣な事は言っていなかった。また二人して歌って、歩いて、笑って、しばらくすると元就が、「ありがとう」と呟いた。

「ん?」

「そなたに会えて、我は幸せだ。こんな楽しい事が有るなんて、思いもよらなかった。我は幸せだ。とても、とても。とてつもなく! ……ありがとう、長曾我部」

「なんだよ、照れるだろ」

「なあ長曾我部、子供を作れ」

 急にそんな事を言うものだから、元親は飛び上がりそうになった。

「な、なんだよ急に」

「我は男だ。そなたと子を作れん。そなたが我を大事にしてくれるのは嬉しいが、家が絶えてはならん。女を愛して、子を作れ。親に心配をかけるな」

「お前こそ、」

「我には兄が居る。兄が子孫を作る。我の血は我で終わる。それで良いのだ」

「……でも俺、……お前が一番好きなんだ」

「今はそれでもいいが、いつかは必ず」

「ああ、ああ判った判った。いつか、女と子供を作るよ。……そうだな、そん時はお前の名前を一つ貰って元でも就でもつけてやる。そしたら、二人の子供みてえなもんだ」

「……そうだな」

 やがて二人は元就の家に着いた。元親は元就を寝室に運んでやり、それから布団の中に押し入った。

「ま、今はお前としたい」

 元就は呆れたような顔をしていたが、やはり元親を拒みはせず、その背に手を回した。





 平穏な日々が続いた。

 光秀は相変わらず自由に生きていたし、元親は農業片手に自作の歌を作り始めた。なるほど、認められなくていいのなら、歌手になるのは簡単だ。そしてとてつもなく気が楽だった。自由に書いて、自由に歌った。元就はやはり手を叩いて喜んでくれた。

 元就は次第に自分から村に出るようになってきた。最初こそお互いにぎこちなかったが、やがて交流を深めるようになった。元就はあちこちでブラブラして、時々笑った。いつも彼は元親に「ありがとう」「我は幸せだ」「そなたのおかげだ」と微笑んだ。

 元就は本当の幸せを手に入れたのだ。諦めから得られるようなものではなく、本質的なそれを。

 元親はそう思っていたし、気が向いたら元就にキスをして、抱いた。元就もまた同じように元親と接した。幸せだった。満ち足りていた。ひたすらに穏やかだった。

 +++

 ほのぼのモードはここで終わりです。

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