で、これがラストという事で
ちょっと試験も近付いてきたので、また鈍足になります。申し訳有りません。
あきらめの12
ちょっと試験も近付いてきたので、また鈍足になります。申し訳有りません。
あきらめの12
毛利興元は、奇声を上げながら村中を駆け回り、ついには皆が叫ぶ中、山の崖から飛び降りた。顔面をかち割って死んだ姿は、何故だか元就によく似ていた。
目撃した人々は皆、興元が「元就」の名を叫んで、逃げ回っていたと言う。彼に元就の霊が見えたのか、それともついに発狂したのか定かではない。ただ、かの男の伝承のように、数日後死体が消えて生き返ったりというような事を、元就がしなかったのは事実だ。修復不可能な遺体は棺桶に入れられて、誰も顔を見る事が出来なかった。
元就の葬儀は、彼の親族という人々が行った。酷く質素だった。親族達は元就の何も知らなかったし、どんな愛着も持っていない風だった。村からは沢山の人が最後の別れに来たから、彼らは困惑したようだった。写真は他にあまり無かったし、それが一番良かったから、いつぞのクリスマスパーティーの時、元就が酒に酔ったおかげで随分幸せそうな顔をしている物が遺影に使われた。
元就は毛利家の墓とやらに入れられた。随分とみすぼらしい墓で、誰も手入れはしていないようだった。元親は沢山の事が悲しかった。だから涙が止まらなくて、ずっとずっと泣いていた。元就に言われたからかどうか、憎しみや怒りは消え失せて、ただただ、底無しの悲しみの中で泣き続けた。光秀は背中を撫でてくれたが、彼の手では癒せなかった。
何日が過ぎても、元親の悲しみは癒えず、むしろ深まっているようにさえ感じた。時折元就の家に行って、一人で泣いた。不思議な事に、庭は誰かが手を入れているのか、荒れ果てては行かなかったし、家もそれなりに綺麗なままだった。。親族達はその資産価値の無い家に興味が無かったらしく、村人達に管理を任せて、元就達が残した貯金通帳だけを取って行った。それから元親が望んだので、居間だけは扉を解放していた。だから居間にはいつも、睡魔とやらに眠らされた猫やヘビやタヌキが居た。
庭には小さな小屋が立っていた。元親は時折それを覗き込む。元就が死ぬ直前に作ったものだ。穴だらけのそれを、元就は手作りしていた。「なんだ?」と尋ねると、「犬小屋だ」と答えた。犬を飼うのか、と問えば、飼わぬ面倒くさいという返事。
「この小屋に犬が住み込めば、これは犬小屋だ。猫が入れば猫小屋。ヘビが入れば蛇小屋だ! 何も入らなければ、たぶん見えないものでも住んでいるんだろう。その時はそうだな……うーん、なんだ、思いつかぬ。まあいい、寺小屋とでも呼ぼう」
それは全然別の物だぞ、と元親は笑った。その小屋にはまだ何も住んでいない。元親は時折その居間に寝転んで、猫やヘビ達と昼寝をした。ふいに眼が覚めた時、咄嗟にその姿を探したが、やはり彼は何処にも居なかった。それを改めて知る度に、元親は泣いた。
「我の事は、忘れろ」
もうその頃には、元就が居ないという事だけははっきり判っていたから、すぐにそれが夢だという事には気付いた。元就が、自分の顔を覗き込んでいるのが見える。元親は居間に仰向けに寝ているらしく、天井も見えた。けれど、元親は口を動かす事が出来ない。だから、心だけで答えた。
「忘れたりなんか」
「我に固執していては、次の段階にいけぬ」
いつかと同じような事を言う。
「いやだ、行きたくなんかない。お前と居たい。ここに居たいんだ」
「そなたは勘違いをしておる。別れを恐れるあまりに、我の存在を否定しているのだ。我はもう何処にも居ないと、そう思っていながら、我と一緒に居たいと願う。叶うはずもない。だがな、元親。違う段階に入れば、事実はそうではなくなる。我はいつでもそなたの側に居る。それに今、この場所、この段階では気付けぬのだ」
「……本当に、側に居るのか?」
「ああ。大丈夫だ。そなたは一人ではない。そなたと幸せに過ごした日々の我が、何処かに欠片として転がっておる。それが我の一部だ。そうであろう? 大丈夫、そなたが忘れたつもりでも、我は常にそなたの中に存在し続ける。そなたを愛し続ける。そなたの幸せを祈り続ける。さあ、立て、目覚めよ元親。いつまでもそうしているから、そなたカエルではなくカメになってしまったではないか。まあいい、カメは海を泳げる故な」
大丈夫、我は去る者を追わぬし、来る者を拒まぬ。だから、来たくなったら来るがいい。それも定めなら仕方ない。全て受け入れるしかないのだ。なあ、元親。
眼を覚ますと、夢の中と全く同じ風景が見えた。元親は居間で仰向けに転がっていて、天井を見上げていた。ば、と飛び起きても、やはり元就は居ない。のろのろと庭に出た。ふとそちらを見ても、やはり元就の小屋には何も入っていなかった。
+++
物置に有ったクラシックギターの弦を取り替えて、元親は週に一度、町に出た。小さな町だ。夜になると店が閉まるから、その前に腰掛けて、静かに歌を歌った。自作の歌も、流行りの歌も。気が向くままに歌ったし、観客が居ようが居まいが関係なく歌った。そうして何かを忘れようとしたのかもしれないし、何かを癒そうとしたのかもしれない。元親は長い間、そうして歌を歌った。
しばらくして、いつも聞いてくれる女が居る事に気付いた。酷く背の小さな、とろんとした眼の女だった。いつも元親の側に座って、元親が帰るまで聞いてくれていた。
その日は寒かったから、観客などは居なかった。けれどその日も彼女は座って、元親の歌を聞いていた。随分と寒そうだったので、元親は彼女にカイロを渡してやった。彼女があんまり嬉しそうに笑ったものだから、元親は彼女に話しかけた。
「あんた、いつも来てくれてるな。気に入ってもらえてるのか?」
彼女は、はい、と大きく頷いた。どうしてだ、と尋ねると、彼女は「とっても温かくて」と答える。
「私、見えるんです。貴方の側に、いつも何かが居るの。でもそれってとても温かくて、見ているだけで幸せな気持ちになるんです」
元親は彼女を所謂電波という種族に分類したが、ニコニコ笑ったまま話を続けたし、彼女がリクエストする歌を歌ってやった。彼女は嬉しそうに笑ったまま聞いていて、時折拍手をしてくれた。その姿が何処か似ていて、元親は彼女を意識し始めた。
歌以外でも交流を持つようになった。二人は楽しくいつまでも喋った。彼女の言う事はいつでも独自の価値観を持っていたし、彼女は元親の話をいつまでも大事に聞いた。そのうち申し訳ないから、元就の話も打ち明けた。彼女はただ元就の存在を認めた。だから元親は、彼女を愛する事が出来た。
間も無く子供が出来た。名前は良く考えれば元が被ってしまうわけで、だから結果的に元就になってしまった。彼女も納得してくれたので、苦労はしなかった。今度は辛い思いはさせられませんね、と言ってくれた。だから二人は精一杯元就を愛した。
子供の頃から、例の山に連れて行って、奔放に遊ばせた。元就は大いに笑って、走り回った。元親も一緒に走って、笑って、泥だらけになった。元就は手を焼くほどに元気に育って、元親はいつまでも子離れ出来そうになかった。だから妻は子供は子供の世界で育つものだ、と元親に言い聞かせなくてはならなかった。
元就はやがて学校へ。最初に出来た友達は、光秀の甥にあたる同級生だった。元就は彼を引っ張って、あの山に行った。そこであまりに自由過ぎる遊びをしてみせて、友達を夢中にさせた。その代わりに、元就は町遊びを教えてもらったらしい。週に一度は友達と遊びに行く、と自転車を走らせた。その度に元親はいつまでも見送って、そして空を見上げた。
消えてしまった者は確かにいる。けれど、それは何らかの形で何処かに存在していた。元親の言動の中には、確かに元就が生きていたし、それを受け取った息子もまた、元就の何かを継いだ。認めてしまえば随分楽だった。それは諦めに似たものだったが、だのに随分と穏やかだった。
光秀は相変わらず自由に生きていたのに、いつの間にか子供が出来ていた。「有りえねえ」と顔をしかめた元親に、光秀も頷いた。
「有りえません。そんなつもりは無かったのに。貴方にしてもそうです。これは毛利殿の策略に違いない。我々は踊らされているのです。貴方にも言ったんじゃあないですか? 子供を作れとか。それのせいです。あの人はやっぱり何か人知を超えた力を持っていたに違いません。だから私は何故だか人を愛する羽目になって、何故だかあんなうるさい生き物を育てなくてはならなくなった。恐ろしい。生きていたら今頃どうなっていたか。もしかしたらあの人、世界征服とかしたかもしれませんよ」
光秀はそう冗談とも本気とも取れない事を言っていた。元親は笑った。仮にそうだとしても、それは何もかもをいい方に運んでいる、と元親は思う。無かったはずの幸せが、沢山見えたのは、彼のおかげなのだ。見えないはずの物を見せてくれた、そういう意味では、元就の力は偉大だった。
元親は彼の家へと赴いた。相変わらず誰かが手入れをしていて、あの日のままだった。流石に家は朽ち始めていたが、いつの間にやら猫もタヌキも蛇も澄みついてしまって、やたら小動物がうろうろしていた。家そのものが、森になろうとしていた。元親はそれを受け入れた。
ただ、元就の小屋には、相変わらず何も住んでいなかった。だから元親はそこに、眼に見えない何かが住んでいるのだと思った。
本当は見えないはずの、何かが、静かに、佇んでいるのだ、と。
+++
おわり
元就の変な生き方と、考え方の事を書きたかったんじゃないかと思います。
恐らく他人の幸せが判る必要は、そんなに無いような気がします。
だから興元が元就の幸せを理解出来なくても、仕方が無んじゃないかなあ。
所詮この世は、殆どの場合が眼に見えない殺し合いですし……。
直接手を下していないなら、死なせていないのか。私には判りません。
そうだと言いながら、誰かに手を差し出しまくるこの社会が
私にはよく判りません。病人には脚がもげるまで働けと言っておきながら
貧困者には施しを与えるこの神経が、今一つ判りません。
長いお話でしたが、最後までお付き合いありがとうございます。
目撃した人々は皆、興元が「元就」の名を叫んで、逃げ回っていたと言う。彼に元就の霊が見えたのか、それともついに発狂したのか定かではない。ただ、かの男の伝承のように、数日後死体が消えて生き返ったりというような事を、元就がしなかったのは事実だ。修復不可能な遺体は棺桶に入れられて、誰も顔を見る事が出来なかった。
元就の葬儀は、彼の親族という人々が行った。酷く質素だった。親族達は元就の何も知らなかったし、どんな愛着も持っていない風だった。村からは沢山の人が最後の別れに来たから、彼らは困惑したようだった。写真は他にあまり無かったし、それが一番良かったから、いつぞのクリスマスパーティーの時、元就が酒に酔ったおかげで随分幸せそうな顔をしている物が遺影に使われた。
元就は毛利家の墓とやらに入れられた。随分とみすぼらしい墓で、誰も手入れはしていないようだった。元親は沢山の事が悲しかった。だから涙が止まらなくて、ずっとずっと泣いていた。元就に言われたからかどうか、憎しみや怒りは消え失せて、ただただ、底無しの悲しみの中で泣き続けた。光秀は背中を撫でてくれたが、彼の手では癒せなかった。
何日が過ぎても、元親の悲しみは癒えず、むしろ深まっているようにさえ感じた。時折元就の家に行って、一人で泣いた。不思議な事に、庭は誰かが手を入れているのか、荒れ果てては行かなかったし、家もそれなりに綺麗なままだった。。親族達はその資産価値の無い家に興味が無かったらしく、村人達に管理を任せて、元就達が残した貯金通帳だけを取って行った。それから元親が望んだので、居間だけは扉を解放していた。だから居間にはいつも、睡魔とやらに眠らされた猫やヘビやタヌキが居た。
庭には小さな小屋が立っていた。元親は時折それを覗き込む。元就が死ぬ直前に作ったものだ。穴だらけのそれを、元就は手作りしていた。「なんだ?」と尋ねると、「犬小屋だ」と答えた。犬を飼うのか、と問えば、飼わぬ面倒くさいという返事。
「この小屋に犬が住み込めば、これは犬小屋だ。猫が入れば猫小屋。ヘビが入れば蛇小屋だ! 何も入らなければ、たぶん見えないものでも住んでいるんだろう。その時はそうだな……うーん、なんだ、思いつかぬ。まあいい、寺小屋とでも呼ぼう」
それは全然別の物だぞ、と元親は笑った。その小屋にはまだ何も住んでいない。元親は時折その居間に寝転んで、猫やヘビ達と昼寝をした。ふいに眼が覚めた時、咄嗟にその姿を探したが、やはり彼は何処にも居なかった。それを改めて知る度に、元親は泣いた。
「我の事は、忘れろ」
もうその頃には、元就が居ないという事だけははっきり判っていたから、すぐにそれが夢だという事には気付いた。元就が、自分の顔を覗き込んでいるのが見える。元親は居間に仰向けに寝ているらしく、天井も見えた。けれど、元親は口を動かす事が出来ない。だから、心だけで答えた。
「忘れたりなんか」
「我に固執していては、次の段階にいけぬ」
いつかと同じような事を言う。
「いやだ、行きたくなんかない。お前と居たい。ここに居たいんだ」
「そなたは勘違いをしておる。別れを恐れるあまりに、我の存在を否定しているのだ。我はもう何処にも居ないと、そう思っていながら、我と一緒に居たいと願う。叶うはずもない。だがな、元親。違う段階に入れば、事実はそうではなくなる。我はいつでもそなたの側に居る。それに今、この場所、この段階では気付けぬのだ」
「……本当に、側に居るのか?」
「ああ。大丈夫だ。そなたは一人ではない。そなたと幸せに過ごした日々の我が、何処かに欠片として転がっておる。それが我の一部だ。そうであろう? 大丈夫、そなたが忘れたつもりでも、我は常にそなたの中に存在し続ける。そなたを愛し続ける。そなたの幸せを祈り続ける。さあ、立て、目覚めよ元親。いつまでもそうしているから、そなたカエルではなくカメになってしまったではないか。まあいい、カメは海を泳げる故な」
大丈夫、我は去る者を追わぬし、来る者を拒まぬ。だから、来たくなったら来るがいい。それも定めなら仕方ない。全て受け入れるしかないのだ。なあ、元親。
眼を覚ますと、夢の中と全く同じ風景が見えた。元親は居間で仰向けに転がっていて、天井を見上げていた。ば、と飛び起きても、やはり元就は居ない。のろのろと庭に出た。ふとそちらを見ても、やはり元就の小屋には何も入っていなかった。
+++
物置に有ったクラシックギターの弦を取り替えて、元親は週に一度、町に出た。小さな町だ。夜になると店が閉まるから、その前に腰掛けて、静かに歌を歌った。自作の歌も、流行りの歌も。気が向くままに歌ったし、観客が居ようが居まいが関係なく歌った。そうして何かを忘れようとしたのかもしれないし、何かを癒そうとしたのかもしれない。元親は長い間、そうして歌を歌った。
しばらくして、いつも聞いてくれる女が居る事に気付いた。酷く背の小さな、とろんとした眼の女だった。いつも元親の側に座って、元親が帰るまで聞いてくれていた。
その日は寒かったから、観客などは居なかった。けれどその日も彼女は座って、元親の歌を聞いていた。随分と寒そうだったので、元親は彼女にカイロを渡してやった。彼女があんまり嬉しそうに笑ったものだから、元親は彼女に話しかけた。
「あんた、いつも来てくれてるな。気に入ってもらえてるのか?」
彼女は、はい、と大きく頷いた。どうしてだ、と尋ねると、彼女は「とっても温かくて」と答える。
「私、見えるんです。貴方の側に、いつも何かが居るの。でもそれってとても温かくて、見ているだけで幸せな気持ちになるんです」
元親は彼女を所謂電波という種族に分類したが、ニコニコ笑ったまま話を続けたし、彼女がリクエストする歌を歌ってやった。彼女は嬉しそうに笑ったまま聞いていて、時折拍手をしてくれた。その姿が何処か似ていて、元親は彼女を意識し始めた。
歌以外でも交流を持つようになった。二人は楽しくいつまでも喋った。彼女の言う事はいつでも独自の価値観を持っていたし、彼女は元親の話をいつまでも大事に聞いた。そのうち申し訳ないから、元就の話も打ち明けた。彼女はただ元就の存在を認めた。だから元親は、彼女を愛する事が出来た。
間も無く子供が出来た。名前は良く考えれば元が被ってしまうわけで、だから結果的に元就になってしまった。彼女も納得してくれたので、苦労はしなかった。今度は辛い思いはさせられませんね、と言ってくれた。だから二人は精一杯元就を愛した。
子供の頃から、例の山に連れて行って、奔放に遊ばせた。元就は大いに笑って、走り回った。元親も一緒に走って、笑って、泥だらけになった。元就は手を焼くほどに元気に育って、元親はいつまでも子離れ出来そうになかった。だから妻は子供は子供の世界で育つものだ、と元親に言い聞かせなくてはならなかった。
元就はやがて学校へ。最初に出来た友達は、光秀の甥にあたる同級生だった。元就は彼を引っ張って、あの山に行った。そこであまりに自由過ぎる遊びをしてみせて、友達を夢中にさせた。その代わりに、元就は町遊びを教えてもらったらしい。週に一度は友達と遊びに行く、と自転車を走らせた。その度に元親はいつまでも見送って、そして空を見上げた。
消えてしまった者は確かにいる。けれど、それは何らかの形で何処かに存在していた。元親の言動の中には、確かに元就が生きていたし、それを受け取った息子もまた、元就の何かを継いだ。認めてしまえば随分楽だった。それは諦めに似たものだったが、だのに随分と穏やかだった。
光秀は相変わらず自由に生きていたのに、いつの間にか子供が出来ていた。「有りえねえ」と顔をしかめた元親に、光秀も頷いた。
「有りえません。そんなつもりは無かったのに。貴方にしてもそうです。これは毛利殿の策略に違いない。我々は踊らされているのです。貴方にも言ったんじゃあないですか? 子供を作れとか。それのせいです。あの人はやっぱり何か人知を超えた力を持っていたに違いません。だから私は何故だか人を愛する羽目になって、何故だかあんなうるさい生き物を育てなくてはならなくなった。恐ろしい。生きていたら今頃どうなっていたか。もしかしたらあの人、世界征服とかしたかもしれませんよ」
光秀はそう冗談とも本気とも取れない事を言っていた。元親は笑った。仮にそうだとしても、それは何もかもをいい方に運んでいる、と元親は思う。無かったはずの幸せが、沢山見えたのは、彼のおかげなのだ。見えないはずの物を見せてくれた、そういう意味では、元就の力は偉大だった。
元親は彼の家へと赴いた。相変わらず誰かが手入れをしていて、あの日のままだった。流石に家は朽ち始めていたが、いつの間にやら猫もタヌキも蛇も澄みついてしまって、やたら小動物がうろうろしていた。家そのものが、森になろうとしていた。元親はそれを受け入れた。
ただ、元就の小屋には、相変わらず何も住んでいなかった。だから元親はそこに、眼に見えない何かが住んでいるのだと思った。
本当は見えないはずの、何かが、静かに、佇んでいるのだ、と。
+++
おわり
元就の変な生き方と、考え方の事を書きたかったんじゃないかと思います。
恐らく他人の幸せが判る必要は、そんなに無いような気がします。
だから興元が元就の幸せを理解出来なくても、仕方が無んじゃないかなあ。
所詮この世は、殆どの場合が眼に見えない殺し合いですし……。
直接手を下していないなら、死なせていないのか。私には判りません。
そうだと言いながら、誰かに手を差し出しまくるこの社会が
私にはよく判りません。病人には脚がもげるまで働けと言っておきながら
貧困者には施しを与えるこの神経が、今一つ判りません。
長いお話でしたが、最後までお付き合いありがとうございます。
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