うぶめを読み始めました。なるほど、江戸時代だと勘違いした描写は
うぶめには無かったので、同時期に読んだ陰陽の京と記憶が混同した
という事ではないでしょうか。
しかも読んでみましたが、冒頭の関口君と京極堂が意識についての
話をして、関口君が恐くなったところで恐らく読むのをやめているので
ほとんど内容については知らなかったようです。
難しい時期の私には京極堂のお話は少々ショッキングだったんですな
ソフィーの世界とか読んでた時期だからな……
昨日の続き。続けるべきか続けられるか
うぶめには無かったので、同時期に読んだ陰陽の京と記憶が混同した
という事ではないでしょうか。
しかも読んでみましたが、冒頭の関口君と京極堂が意識についての
話をして、関口君が恐くなったところで恐らく読むのをやめているので
ほとんど内容については知らなかったようです。
難しい時期の私には京極堂のお話は少々ショッキングだったんですな
ソフィーの世界とか読んでた時期だからな……
昨日の続き。続けるべきか続けられるか
毛利元就は物語の後半で死ぬ。
学園ものであるからには、青春ものでもあるわけで、ストーリーを通して登場人物達は少しづつ大人になっていく。その一番著しい変化を起こすのが元就の役で、そしてそれゆえに死ぬのだ。
どんくさい警察に変わって俺達が事件を解決するのだ、と意気込む元親や政宗の役に振り回されるうち、元就は次第に彼らに協力し、感謝される喜びを覚え、自分への自信を取り戻していく。そのあまりの急速さに、元就に警鐘を鳴らすべき者さえ、止める暇も無く彼は死んでしまう予定だ。
まだ仮の台本しか上がっていないが、元就はとある殺人事件の動かぬ証拠を手に入れるため、危ない橋を渡り、そしてその橋が危ないと気付かないまま、真犯人に殺され、しかも手に入れた証拠と彼の愛していたノートパソコンは奪われ、破壊され、つまるところ元就は犬死をする予定だった。
そして元親と政宗は元就を探偵ごっこに付き合わせた事を後悔し、もうやめようと思うが、元就の家族の言葉に再び事件解決にむけ立ち上がる……つまり物語全体における「挫折」の権化として、元就は登場しているのだ。
製作側から見てみればなんて事は無い話だ。だが見ている若年層はショックを受けるかもしれないな、と元親は思う。そうでなくても各話で誰かがピンチに陥り、それを皆で助け出すというパターンはお約束のように続いていく。劇中で元就は3回ほど敵に捕まり殺されそうになるが、それを元親達が助け出す。友情が深まる。なのに4回目は、人知れず殺され、元親達が気付いた時には無残な死体になって発見されるのだ。
それもあって、元就には高度な演技力が要求される。引きこもりの青年が自発的な人間へと変わっていくその変化、そしてその羽根が開く直前に殺される悲惨な姿。台本も少しづつ変わっているが、それはセリフの量や言い回し、表情などのメモでしかない。元就が変わらなくてはいけないのだ。
そんな事は俺は出来ない、と元親は思った。
元就は今、本番直前のリハーサルをやっている。元就だけのシーンなので、元親達は側の椅子で休憩中だ。政宗あたりは全く覚えていない次の台本を必死で読んでいるが、元親は頭に入っているので元就の挙動を見る余裕があった。
次のシーンは、元就が放課後の教室で一人、グラウンドを見下ろしているところだ。この場面は劇中で2回使われる。初回、元就が元親達に協力すると言い出す直前の場面、そして、彼が死ぬ回、証拠を手に入れる直前の場面だ。同じシーンを同時に撮る為、元就は変化前の「彼」と変化後の「彼」をこの場で作らなくてはいけない。しかもどちらもセリフが無い。表情と姿勢、音楽と目線だけで全てを表現するシーンだ。元親はとてもこんなシーンは出来ないと思った。
本番が始まる。政宗も顔を上げた。監督の織田信長が厳しい顔で見守っている。ディレクターの明智光秀が、最後に元就に何か囁き、元就は小さくうなづいて、そして風景の無い窓辺に立ち、そっと桟に手を置いた。スタッフのカウントダウンが始まり、そして元就はその間に、気弱な青年へと変化した。
それは理科の授業で見た、早回しの映像に似ていた。花が咲くまでの時間を、早回しで見るのだ。じっと見ていれば判らないような変化が、じわりと、しかし確実に起こって、最終的に全く違うものになる過程。元就は何もかもを僅かに変えた。僅かで十分だった。大きく変えればわざとらしい。例えば、少しだけうつむくところ、両足を揃えて立たないところ、指が少し曲がったところで止まるところ……つまり元就は「彼」のクセを演じていた。それに、一人の時はちゃんと顔を上げるところ。
本番は静かに始まった。セリフも何も無い。効果音もBGMも後から入れる。元就がただ静かに、窓辺に立っている。それをカメラがゆっくりと回り込み、表情を映している。元親は少しイライラした。もっと近くで、彼が今どんな表情を浮かべて「彼」を演じているのか知りたかった。台本に書かれているメモは「グラウンドを歩く4人を複雑な表情で見守る→やがて決意したように手を握り、頷く」だけだ。その複雑な表情とやらでテレビの向こうに何を伝えているのか、元親は知りたかった。だが今動くと邪魔になる。
カット、と撮影が止まる。元親はそっと立ち上がって、監督の方へと向かっていった。政宗も慌ててついてくる。監督は元親達を一瞥しただけで、何も言わなかった。側に有るテレビを、他のスタッフ達と一緒に見る。先ほど撮った映像が流れている。
何も無いはずの窓から、彼はグラウンドを見下ろしていた。確かに彼は、なにか羨ましいものを見ている。だが手に入らないだろうものを見ている。それが表情で判る。僅かに口を結ぶ。垂れていた左手が、ぎゅっと握られる。元就は僅かに表情を引き締めて、小さく頷く。それだけのシーンだ。
なのに判る。「彼」が何を考えたのか。元親はため息を吐いた。これが演技というなら、俺達がやってるのはおままごとだ。政宗を見ると、彼もまた感心したようにテレビに食い入っていた。こいつもこいつなりにやる気はあるんだな、と元親はその事に感心した。
OKが出て、すぐに次のシーンの撮影が始まる。殆ど変わらないシーンだ。撮影はすぐに終わって、テレビに映像が映る。
その「彼」は先ほどまでと変わらぬ人物なのに、表情がまるで違った。陰気で気弱な「彼」は爽やかな青年へと変わりつつあった。表情が違う。うつむかない。何か自信を持って、今度はグラウンドではなく、遠い町並みを見つめている。そこに「それ」が有るのだ。元就は自信を持って一人で笑む。そして彼はばっと窓から離れて、教室から出て行く。その背中が、元就が生きている最後のシーンになる。次は死体だ。
これもOKが出て、しばらく休憩になった。元就も椅子に戻ってきて、静かに座る。すぐに本を開いたので台本かと思いきや、数学の参考書だった。元親はまた感心を忘れて不愉快な気持ちになった。台本なんか読まなくても平気ってか。ふと横を見ると、政宗が立ったまま台本に釘付けになっていた。ブツブツ言っているので必死でセリフを覚えているようなので、邪魔をしないようにと元親は元就のほうとは反対の椅子に向かって歩いた。
と、女が手招きしている。あれは確か、毛利のマネージャーだ、と元親は考えてから、彼女の側に行った。彼女は困ったような笑みを浮かべて、
「長曾我部君、お願いが有るんですけど……」
と言う。敬語を使われるのは慣れていなくて、思わず元親も「なんですか?」と丁寧に返した。
「元就と仲良くしてやって下さいませんか」
との事。元親は怪訝な顔をした。そんなのは個人の自由だ。それにあいつは俺の事、見下してるに違いない。
元親が考えた事に気付いているのか、彼女は「無理ならいいんです」と付け足す。
「ただ元就は、今まで……小さな頃は演技に打ち込んで、今は勉強の虫で、つまり……同世代の友人が一人も居ないんです。一人も、ですよ。元就に私から言っても、あの子は自分では動かないし、……もちろん、長曾我部君の自由ですから、嫌ならいいんです。でも、……あの子、君の事が気に入っているみたいだから……」
「俺の事を?」
元親は驚いた。気に入られるような事は何もしていない。彼女は笑って頷いた。
「貴方の事や、伊達君の事、よく話してくれるんですよ。確かに演技は素人だけど、本気でやろうっていう気持ちが伝わって来ていいって。演技の上手い下手は確かに重要なことだろうけど、でもそこに気持ちがこもっていないなら結局人の心は捉えられないって。貴方達にはそういう、真剣にやろうっていう気持ちがあるから、元就は貴方達を気に入っているみたいなんです。そういう事って、今まで無かったんですよ。ほら、元就は昔っから変なドラマや映画に引っ張られて、おふざけとしか思えないような芸人相手に仕事をしてきたから……」
だから、良かったら、元就と……一緒に居てあげてくださいませんか。
彼女に頭を下げられては、元親も断りようが無かった。女は卑怯だ、と元親は改めて思った。
元就は数学ⅡBの参考書を読んでいた。
「あんた、一年だろ。なんで二年の参考書なんか」
元親が隣に腰掛けながら尋ねると、元就は一瞬驚いたような顔をして、そして参考書を閉じた。
「この仕事と学問を両立させようと思うたら、人の二倍の速さでこなさねばならぬ」
「両立させる気なのか? あんたの腕なら、演技一本でいっても大丈夫なんだじゃないか?」
元親の問いに元就は少し考えてから、静かに言った。
「演技一本で食っていけるほど、我は卓越した才能は持っておらぬ。今こそ若いから評価されておるが、成人してしまえばこの程度の演技は普通にこなさねばなるまい。勉強をするのはその時の保険のためでもあるし、それに同時に演技の幅を広げるためでもある」
「演技に?」
「知らないものは想像で演じるしかないが、知っておるなら容易い事であろう?」
「あぁ、つまり……何か知ってれば知ってるほど、演技に説得力が出るってことか? 勉強しかり、学校しかり」
「そういう事だ」
今、家ではパソコンの通信講座をやっておる。元就はそう言ってまた参考書に目を落とした。元親は元就が必死でダブルクリックの勉強をしているのかと思うと、少しおかしくて笑った。
なあんだ、こいつは天才なんかじゃない。馬鹿みたいな努力家なんだな。
そう考えると先ほどまでの嫌悪感も少し薄れ、元親は元就に少しづつ話かけた。勉強教えてくれよと言うと、元就はよいぞと快く受け入れてくれた。ついでに演技も、と言うと、彼は苦笑して首を振ったが、どういう意味だろうか。気付くと政宗も席に戻ってきて、「元就サン、これなんて読むの?」と台本のセリフのルビふりを手伝わせていた。
+++
やっぱ長ぇええ
学園ものであるからには、青春ものでもあるわけで、ストーリーを通して登場人物達は少しづつ大人になっていく。その一番著しい変化を起こすのが元就の役で、そしてそれゆえに死ぬのだ。
どんくさい警察に変わって俺達が事件を解決するのだ、と意気込む元親や政宗の役に振り回されるうち、元就は次第に彼らに協力し、感謝される喜びを覚え、自分への自信を取り戻していく。そのあまりの急速さに、元就に警鐘を鳴らすべき者さえ、止める暇も無く彼は死んでしまう予定だ。
まだ仮の台本しか上がっていないが、元就はとある殺人事件の動かぬ証拠を手に入れるため、危ない橋を渡り、そしてその橋が危ないと気付かないまま、真犯人に殺され、しかも手に入れた証拠と彼の愛していたノートパソコンは奪われ、破壊され、つまるところ元就は犬死をする予定だった。
そして元親と政宗は元就を探偵ごっこに付き合わせた事を後悔し、もうやめようと思うが、元就の家族の言葉に再び事件解決にむけ立ち上がる……つまり物語全体における「挫折」の権化として、元就は登場しているのだ。
製作側から見てみればなんて事は無い話だ。だが見ている若年層はショックを受けるかもしれないな、と元親は思う。そうでなくても各話で誰かがピンチに陥り、それを皆で助け出すというパターンはお約束のように続いていく。劇中で元就は3回ほど敵に捕まり殺されそうになるが、それを元親達が助け出す。友情が深まる。なのに4回目は、人知れず殺され、元親達が気付いた時には無残な死体になって発見されるのだ。
それもあって、元就には高度な演技力が要求される。引きこもりの青年が自発的な人間へと変わっていくその変化、そしてその羽根が開く直前に殺される悲惨な姿。台本も少しづつ変わっているが、それはセリフの量や言い回し、表情などのメモでしかない。元就が変わらなくてはいけないのだ。
そんな事は俺は出来ない、と元親は思った。
元就は今、本番直前のリハーサルをやっている。元就だけのシーンなので、元親達は側の椅子で休憩中だ。政宗あたりは全く覚えていない次の台本を必死で読んでいるが、元親は頭に入っているので元就の挙動を見る余裕があった。
次のシーンは、元就が放課後の教室で一人、グラウンドを見下ろしているところだ。この場面は劇中で2回使われる。初回、元就が元親達に協力すると言い出す直前の場面、そして、彼が死ぬ回、証拠を手に入れる直前の場面だ。同じシーンを同時に撮る為、元就は変化前の「彼」と変化後の「彼」をこの場で作らなくてはいけない。しかもどちらもセリフが無い。表情と姿勢、音楽と目線だけで全てを表現するシーンだ。元親はとてもこんなシーンは出来ないと思った。
本番が始まる。政宗も顔を上げた。監督の織田信長が厳しい顔で見守っている。ディレクターの明智光秀が、最後に元就に何か囁き、元就は小さくうなづいて、そして風景の無い窓辺に立ち、そっと桟に手を置いた。スタッフのカウントダウンが始まり、そして元就はその間に、気弱な青年へと変化した。
それは理科の授業で見た、早回しの映像に似ていた。花が咲くまでの時間を、早回しで見るのだ。じっと見ていれば判らないような変化が、じわりと、しかし確実に起こって、最終的に全く違うものになる過程。元就は何もかもを僅かに変えた。僅かで十分だった。大きく変えればわざとらしい。例えば、少しだけうつむくところ、両足を揃えて立たないところ、指が少し曲がったところで止まるところ……つまり元就は「彼」のクセを演じていた。それに、一人の時はちゃんと顔を上げるところ。
本番は静かに始まった。セリフも何も無い。効果音もBGMも後から入れる。元就がただ静かに、窓辺に立っている。それをカメラがゆっくりと回り込み、表情を映している。元親は少しイライラした。もっと近くで、彼が今どんな表情を浮かべて「彼」を演じているのか知りたかった。台本に書かれているメモは「グラウンドを歩く4人を複雑な表情で見守る→やがて決意したように手を握り、頷く」だけだ。その複雑な表情とやらでテレビの向こうに何を伝えているのか、元親は知りたかった。だが今動くと邪魔になる。
カット、と撮影が止まる。元親はそっと立ち上がって、監督の方へと向かっていった。政宗も慌ててついてくる。監督は元親達を一瞥しただけで、何も言わなかった。側に有るテレビを、他のスタッフ達と一緒に見る。先ほど撮った映像が流れている。
何も無いはずの窓から、彼はグラウンドを見下ろしていた。確かに彼は、なにか羨ましいものを見ている。だが手に入らないだろうものを見ている。それが表情で判る。僅かに口を結ぶ。垂れていた左手が、ぎゅっと握られる。元就は僅かに表情を引き締めて、小さく頷く。それだけのシーンだ。
なのに判る。「彼」が何を考えたのか。元親はため息を吐いた。これが演技というなら、俺達がやってるのはおままごとだ。政宗を見ると、彼もまた感心したようにテレビに食い入っていた。こいつもこいつなりにやる気はあるんだな、と元親はその事に感心した。
OKが出て、すぐに次のシーンの撮影が始まる。殆ど変わらないシーンだ。撮影はすぐに終わって、テレビに映像が映る。
その「彼」は先ほどまでと変わらぬ人物なのに、表情がまるで違った。陰気で気弱な「彼」は爽やかな青年へと変わりつつあった。表情が違う。うつむかない。何か自信を持って、今度はグラウンドではなく、遠い町並みを見つめている。そこに「それ」が有るのだ。元就は自信を持って一人で笑む。そして彼はばっと窓から離れて、教室から出て行く。その背中が、元就が生きている最後のシーンになる。次は死体だ。
これもOKが出て、しばらく休憩になった。元就も椅子に戻ってきて、静かに座る。すぐに本を開いたので台本かと思いきや、数学の参考書だった。元親はまた感心を忘れて不愉快な気持ちになった。台本なんか読まなくても平気ってか。ふと横を見ると、政宗が立ったまま台本に釘付けになっていた。ブツブツ言っているので必死でセリフを覚えているようなので、邪魔をしないようにと元親は元就のほうとは反対の椅子に向かって歩いた。
と、女が手招きしている。あれは確か、毛利のマネージャーだ、と元親は考えてから、彼女の側に行った。彼女は困ったような笑みを浮かべて、
「長曾我部君、お願いが有るんですけど……」
と言う。敬語を使われるのは慣れていなくて、思わず元親も「なんですか?」と丁寧に返した。
「元就と仲良くしてやって下さいませんか」
との事。元親は怪訝な顔をした。そんなのは個人の自由だ。それにあいつは俺の事、見下してるに違いない。
元親が考えた事に気付いているのか、彼女は「無理ならいいんです」と付け足す。
「ただ元就は、今まで……小さな頃は演技に打ち込んで、今は勉強の虫で、つまり……同世代の友人が一人も居ないんです。一人も、ですよ。元就に私から言っても、あの子は自分では動かないし、……もちろん、長曾我部君の自由ですから、嫌ならいいんです。でも、……あの子、君の事が気に入っているみたいだから……」
「俺の事を?」
元親は驚いた。気に入られるような事は何もしていない。彼女は笑って頷いた。
「貴方の事や、伊達君の事、よく話してくれるんですよ。確かに演技は素人だけど、本気でやろうっていう気持ちが伝わって来ていいって。演技の上手い下手は確かに重要なことだろうけど、でもそこに気持ちがこもっていないなら結局人の心は捉えられないって。貴方達にはそういう、真剣にやろうっていう気持ちがあるから、元就は貴方達を気に入っているみたいなんです。そういう事って、今まで無かったんですよ。ほら、元就は昔っから変なドラマや映画に引っ張られて、おふざけとしか思えないような芸人相手に仕事をしてきたから……」
だから、良かったら、元就と……一緒に居てあげてくださいませんか。
彼女に頭を下げられては、元親も断りようが無かった。女は卑怯だ、と元親は改めて思った。
元就は数学ⅡBの参考書を読んでいた。
「あんた、一年だろ。なんで二年の参考書なんか」
元親が隣に腰掛けながら尋ねると、元就は一瞬驚いたような顔をして、そして参考書を閉じた。
「この仕事と学問を両立させようと思うたら、人の二倍の速さでこなさねばならぬ」
「両立させる気なのか? あんたの腕なら、演技一本でいっても大丈夫なんだじゃないか?」
元親の問いに元就は少し考えてから、静かに言った。
「演技一本で食っていけるほど、我は卓越した才能は持っておらぬ。今こそ若いから評価されておるが、成人してしまえばこの程度の演技は普通にこなさねばなるまい。勉強をするのはその時の保険のためでもあるし、それに同時に演技の幅を広げるためでもある」
「演技に?」
「知らないものは想像で演じるしかないが、知っておるなら容易い事であろう?」
「あぁ、つまり……何か知ってれば知ってるほど、演技に説得力が出るってことか? 勉強しかり、学校しかり」
「そういう事だ」
今、家ではパソコンの通信講座をやっておる。元就はそう言ってまた参考書に目を落とした。元親は元就が必死でダブルクリックの勉強をしているのかと思うと、少しおかしくて笑った。
なあんだ、こいつは天才なんかじゃない。馬鹿みたいな努力家なんだな。
そう考えると先ほどまでの嫌悪感も少し薄れ、元親は元就に少しづつ話かけた。勉強教えてくれよと言うと、元就はよいぞと快く受け入れてくれた。ついでに演技も、と言うと、彼は苦笑して首を振ったが、どういう意味だろうか。気付くと政宗も席に戻ってきて、「元就サン、これなんて読むの?」と台本のセリフのルビふりを手伝わせていた。
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