最近毎晩トイレを探す夢を見ます トイレ、トイレ、あああったトイレ
って中に何か居るうううう! ひぃいいいい!
で目が覚めます。止めていただきたい。
トイレに行きたくて夢を見ているのは判らないでもないが
目が覚めても恐くてトイレ行きたくないじゃないか。
寝る前に魍魎読むからなおさらへんな夢見るんだな……
以下、例の続き
って中に何か居るうううう! ひぃいいいい!
で目が覚めます。止めていただきたい。
トイレに行きたくて夢を見ているのは判らないでもないが
目が覚めても恐くてトイレ行きたくないじゃないか。
寝る前に魍魎読むからなおさらへんな夢見るんだな……
以下、例の続き
「つまりさぁ、大事な事って、バランスだと思うんだよね」
休憩時間、世間話の途中で、慶次がそう切り出した。
「バランス、ですか?」
幸村はきょとんとした顔をして、慶次を見る。他のメンバーも慶次が突然何を言い出したのか不思議で、彼を見た。
「そう、バランス。世の中の悪い事って、バランスが狂うから起こるんだよね。円高でも円安でも経済は大騒ぎ、つまりバランスの取れた所、が一番いいんだけど、それがどうにも見つけにくいし、維持しにくいって事なんじゃないかな」
「つまり、偏りがいけないって事か?」
「そうそう、例えば子育てとか、甘やかしすぎたらロクデナシになるけど、厳しくしすぎたら引きこもりって感じだろう?」
「随分な極論だが、言いたい事は判らないでもない」
元就が頷いた。元親は思わず元就を見たが、特に嫌そうな顔はしていなかった。
「で、つまりそれって、この世の中にはしちゃいけない事は山ほど有るけど、したらいい事は全然判らないって事なんじゃないかな。しちゃいけない事としちゃいけない事の間に、したらいい事と、してもしなくてもいい事が紛れ込んでてさ、で、したらいい事を運良く見つけた時っていうのは、つまりバランスが取れているって事なんだよ」
「それで何が言いたいんだ、お前は」
政宗が不思議そうに首を傾げる。慶次はいつものとびきり爽やかで明るい笑顔を浮かべて言う。
「つまり、俺達が学校と撮影に追われて忙しくしている状態はバランスが狂ってる! 正常を維持していいバランスを見つけるためにも、反対の状態、つまり遊んでる状態が必要なわけだ」
「ははぁ、判ったぞ、サボろうってか?」
元親がそう言ったが、慶次は「そうじゃなくて」と首を振る。
「明日、オフだろ。日曜日だし。明日、俺ん家の近所で祭りが有るんだよ。だから、この面子でちょっと遊ばないかって事。お忍びでさ、普通にお祭りに行ってさ、綿菓子とか、金魚すくいとか、お面とか、わけわかんねえ光棒とか、楽しまないかって事」
「いいねぇいいねぇ」
政宗はすぐにいい反応をした。続いて幸村も「たまにはいいかもしれない」と頷いた。元親は元就を見たが、彼も「そうだな、明日はオフだし」と呟いたので、元親も頷いた。
そうして彼らは、祭りに行く約束をしたのだった。
「お忍びではなかったのか」
元就は目の前の他の5人を見て呆れたような顔をした。5人は顔を見合わせて、「あんたこそ」と言ったのだった。
祭りの行われる駅に皆で集合した。地元民である慶次は私服のラフな服装だ。だらけたズボンにシャツ、それだけだ。家から数分の駅に最初に着いた。次に着いたのは電車を使って来た政宗と元親だった。元親は目立つ髪を隠すために帽子を被ったが、彼らもまたラフな服装、次に来た幸村とその保護者であり同僚でもあるという猿飛佐助も似たような格好だった。
最後に来たのが元就で、彼は黒塗り窓の車からのろのろと出て来た。駅前にたむろして、既に複数の視線が集まっている彼らのところに向かうと、呆れたような顔をしたのだ。どうやら元就は車の中に芸能人お得意の変装グッズを置いてきたらしく、少々髪が乱れている。元親はそれを直してやりながら、笑った。
「人が多い時は堂々としてる方が目立たないんだよ」
「十分目立っておる」
駅前の噴水にたむろしている6人に、視線はそれなりに集まっている。女子高生らしいのが2、3人、携帯をぴろぴろ鳴らしながら無断で撮影していた。元就は不愉快そうな顔をしたが、慶次はにこにこ笑って言う。
「大丈夫大丈夫、ここ地元だし!」
何が大丈夫なのか、と言いたげな顔で元就が慶次を見たが、やはり彼はヘラヘラ笑っていた。
「でも男6人で祭りってのもねぇ、なんだかむさくるしいけど」
佐助が女子高生に小さく手を振りながら言った。彼も時折、脇役程度にドラマに出演する。幸村とセットで動く事があるので、テレビにはそれなりに映る。女子高生はキャーと奇声を上げて逃げて行った。どういう意味かは判りかねた。
「女の子に声かけようかと思ったんだけどね、俺はともかく、皆さんのスキャンダルになりかねないからさぁ」
慶次はそう言って笑った。女好きでありながら爽やか、というキャラクターを日頃から演じている慶次であるから、女友達と一緒に居てもおかしくは無いが、他のメンバーはモデルやスポーツ青年、硬派な役者であるし、女が隣に居れば必然的に浮いた噂が流れてしまう。それを考慮しての事だろう。
「そりゃよかった、女は苦手でよ」
元親が思わず言うと、5人全員が元親をじっと見た。困惑していると、
「チカちゃん、ホモだったの?」
と慶次が言うので、元親は驚いて首を振った。
「な、なんでそうなるんだよ。苦手ってだけで、男が好きって話にゃならねぇだろうが!」
「そうだよね。チカちゃんってなんとなくだけどホモっぽいから、まさかって思って」
「なんだよ、っぽいって!」
元親は怒ったが、政宗が「まぁまぁ」と抑えに入る。
「いっつも男連中とつるんで、兄貴分やってて、後輩にもアニキって慕われてるからだよ。それにチカって結構ガタいいいだろ? あくまでイメージって奴だから気にすんなよ」
「良かねぇよ、見た目だけでぽいって言われたら終わりだろ、こんな仕事してるんだからよ」
「まーチカちゃんの出てる雑誌って男の人に異様に人気が有るらしいしね」
佐助がそう付け足すと、元親は思わず絶句した。これは意地でも女と浮いた噂でも作らないと、危ないと少し思った。
「……我も、女は苦手だ」
ぽつりと元就が言ったので、今度はそちらに視線が集中した。
「きゃあきゃあ、うるさいから」
「ダメだなあ、元就さん。女の子の何も判ってないんだから」
慶次は元就に女の子講釈を始めようとしたが、「それより早く移動しようぜ」と言った政宗に止められてしまった。慶次は「また今度ね!」と元就に言って、先頭を歩き始めた。
芸能人が6人もブラブラ歩いているのだから、人だかりが出来てもおかしくなかったが、そこは慶次の楽観が正しかった。慶次は地元でもかなり信用と人気が有るらしく、女子高生やおばさん達もきゃあきゃあ声を上げては居たが、どしどし押しかけてくるような事はしなかった。曰く、サインとか写真とかは後であげる、などと言って事前に説得していたらしい。皆少し遠巻きで騒いだり写真を撮ったりをしていたが、それ以上の事は起こらなかった。
祭りは小さなものだった。それゆえに、人の山に埋もれて動けない、というほどは混まない。それでも最低限、出店や活気は有る。金魚すくいなどすると、周りの人間も皆こぞって彼らの周りに来てマネをした。その一挙一動を皆に見られているものだから、下手な撮影より緊張して金魚は全く取れなかった。失敗するたびに周りからは明るい笑い声が飛んできて、しかも何故か拍手された。
不思議な時間だった。
しばらく6人で動いていたが、幸村と佐助は意地でも金魚を取って帰ると金魚すくいに夢中になり、なら俺も負けてられねえと政宗も飛んで行った。慶次はいつの間にか近所の女の子といちゃいちゃし始めていたので、元就と元親は取り残される形になった。
さて金魚すくいに行くべきか、と元親が考えていると、「少し休みたい」と元就が言った。一人にするのもなんなので、元親も一緒に休める場所を探す。幸い、少し開けた場所にベンチが置いてあった。二人はそこに腰掛ける。少し考えてから、元親は席を立ってフライドポテトとジュースを買って来た。元就にも渡すと、彼は少し驚いた顔をしてから、僅かに笑んで受け取る。
賑やかだった。
人通りや店をぼうっと2人で眺める。こうしてぽつんと普通に座っていると、意外なほどにバレなかった。遠くの方では幸村と政宗が大騒ぎをしているので、そのせいかもしれない。あの連中、店の金魚を全部取る気じゃねぇのか、と元親は思った。
「人が多いのは、苦手だ」
元就がまたぽつりと言った。元親は元就に視線を戻す。彼はフライドポテトを馬鹿丁寧に食べながら、途切れ途切れに呟く。
「もみくちゃにされる。天然記念物みたいに崇められて、ぐしゃぐしゃにされるのに、ふっと我に返ると皆そっぽを向いて相手にもしてくれない。……バランスが悪いのだな、きっと」
だから人が多いのは苦手だ。元就はそれだけ言うとまたフライドポテトをもぐもぐやりはじめた。子供のような食べ方だった。大事に大事に食べるのだ。
「……じゃあ、なんで来たんだ?」
単に疑問だっただけだ。誤解されないように、静かに尋ねる。すると元就は少し顔を上げる。元親もつられてそちらを見た。ただ空が広がっているだけだ。夕暮れが近いらしく、色は橙や黄色や青のグラデーションで、妙な物悲しさがあった。
「一度だけ、父と一緒に、祭りに行った事がある」
元就はやはりぽつりぽつりと答える。
「一度だけだ。我は小さかった。たぶん、兄が死ぬ直前ぐらいだろう。あまり覚えていない。僅かなイメージしかない。何処に行って何をしていたのかも判らぬ。我はとにかく父と一緒に、祭りに行った。2人で手を繋いだ。花火が上がった。人ごみの中で我はそれが見えなかった。父は我を肩車してくれて、2人でわぁわぁ言いながら花火を見た。……綺麗だった」
「……」
「はしゃぎ疲れた我を、父はおんぶをして帰った。暗い道を、我と父は静かに帰っていた。父の背は広くて、温かくて、我はその時間が永遠に続くような気がした。幸せだった……」
元就はそこまで言って、またポテトを食べ始めた。つまり、その思い出に惹かれて、ここに来たのだ。ここには花火も、夜も、彼の父も居ないけれど。
賑やかだと思ったのに、元親と元就の周りだけ、随分静かだった。それが心地悪いとは思わなかった。元親も静かにポテトをかじって、そして何故だか母の事を考えた。子供の頃から優しくしてくれたのは父だったのに、何故だか母の事ばかり頭に浮かんで、元親は悲しい気持ちになった。
そうだ、本当はただ愛されたかった、子供にとっては、それ以外の何もいらないのだ、本当は。
「我はお前の事が好きだ」
元就がまた唐突に、しかもとんでもない事を言ったから、元親はぎょっとして元就を見た。
「お前も、伊達も、真田も、前田も、猿飛も、好きだ」
それから、ああそういう事かと元親は安心して、そしてはっと気付いた。じゃあ、俺はこいつがどういうつもりで好きだと言ったと思ったんだ。
「お前達と一緒に居ると、楽しい、何か、満たされたような気持ちになる」
「毛利……」
「幸せだ、我は。……この時間は、また新しく我の思い出になるのだろうな」
なんでそんな、悲しそうに言うんだよ、お前。
元親は言いたかったのに、言えなかった。元就は僅かに笑んでいるのに、それが何故だか悲しげで、元親はどうしようもなく、元就を抱きしめたくなった。馬鹿言うなよ、大丈夫だよ、だからそんな顔をするなよと叫びたくなった。けれど、元親はその一つも実行出来なかった。
「お前達と会えて、良かった」
なんで、そんな事を、俺の前で、俺だけの前で言うんだよ。
元親はたまらない気持ちになっていたから、「ごめんごめん、ついつい」とわけのわからない言い訳をしながら帰ってきた慶次に、救われたような気持ちになった。ふと元就を見たが、彼はいつもと変わらぬ無表情でポテトをもそもそやっているようにしか見えなかった。先ほどまでの雰囲気は何処かに消し飛んで、あたりはすっかり賑やかで、遠くの方からは「たぎるぅううああ!」などという幸村の叫びが聞こえてくるのだった。
結局事務所に置かせてくれ、と政宗が持って帰った金魚は28匹も居て、小十郎は帰って来た政宗を散々に怒り飛ばしていたが、結局その日のうちに大きな水槽が事務所に出現する事になったのだった。
+++
毛利って食べ物を大事に大事に食べそうなイメージなんで……
アニキは見た目に似合わずお上品に食べるけどそれが恥ずかしいので
頑張って荒々しく食べている感じ
幸村は甘いものの時だけ獣になる 政宗は肉の時だけ獣になる
慶次は食い物そっちのけで女の子と喋ってる
そんなイメージ あくまで個人的なイメージです
休憩時間、世間話の途中で、慶次がそう切り出した。
「バランス、ですか?」
幸村はきょとんとした顔をして、慶次を見る。他のメンバーも慶次が突然何を言い出したのか不思議で、彼を見た。
「そう、バランス。世の中の悪い事って、バランスが狂うから起こるんだよね。円高でも円安でも経済は大騒ぎ、つまりバランスの取れた所、が一番いいんだけど、それがどうにも見つけにくいし、維持しにくいって事なんじゃないかな」
「つまり、偏りがいけないって事か?」
「そうそう、例えば子育てとか、甘やかしすぎたらロクデナシになるけど、厳しくしすぎたら引きこもりって感じだろう?」
「随分な極論だが、言いたい事は判らないでもない」
元就が頷いた。元親は思わず元就を見たが、特に嫌そうな顔はしていなかった。
「で、つまりそれって、この世の中にはしちゃいけない事は山ほど有るけど、したらいい事は全然判らないって事なんじゃないかな。しちゃいけない事としちゃいけない事の間に、したらいい事と、してもしなくてもいい事が紛れ込んでてさ、で、したらいい事を運良く見つけた時っていうのは、つまりバランスが取れているって事なんだよ」
「それで何が言いたいんだ、お前は」
政宗が不思議そうに首を傾げる。慶次はいつものとびきり爽やかで明るい笑顔を浮かべて言う。
「つまり、俺達が学校と撮影に追われて忙しくしている状態はバランスが狂ってる! 正常を維持していいバランスを見つけるためにも、反対の状態、つまり遊んでる状態が必要なわけだ」
「ははぁ、判ったぞ、サボろうってか?」
元親がそう言ったが、慶次は「そうじゃなくて」と首を振る。
「明日、オフだろ。日曜日だし。明日、俺ん家の近所で祭りが有るんだよ。だから、この面子でちょっと遊ばないかって事。お忍びでさ、普通にお祭りに行ってさ、綿菓子とか、金魚すくいとか、お面とか、わけわかんねえ光棒とか、楽しまないかって事」
「いいねぇいいねぇ」
政宗はすぐにいい反応をした。続いて幸村も「たまにはいいかもしれない」と頷いた。元親は元就を見たが、彼も「そうだな、明日はオフだし」と呟いたので、元親も頷いた。
そうして彼らは、祭りに行く約束をしたのだった。
「お忍びではなかったのか」
元就は目の前の他の5人を見て呆れたような顔をした。5人は顔を見合わせて、「あんたこそ」と言ったのだった。
祭りの行われる駅に皆で集合した。地元民である慶次は私服のラフな服装だ。だらけたズボンにシャツ、それだけだ。家から数分の駅に最初に着いた。次に着いたのは電車を使って来た政宗と元親だった。元親は目立つ髪を隠すために帽子を被ったが、彼らもまたラフな服装、次に来た幸村とその保護者であり同僚でもあるという猿飛佐助も似たような格好だった。
最後に来たのが元就で、彼は黒塗り窓の車からのろのろと出て来た。駅前にたむろして、既に複数の視線が集まっている彼らのところに向かうと、呆れたような顔をしたのだ。どうやら元就は車の中に芸能人お得意の変装グッズを置いてきたらしく、少々髪が乱れている。元親はそれを直してやりながら、笑った。
「人が多い時は堂々としてる方が目立たないんだよ」
「十分目立っておる」
駅前の噴水にたむろしている6人に、視線はそれなりに集まっている。女子高生らしいのが2、3人、携帯をぴろぴろ鳴らしながら無断で撮影していた。元就は不愉快そうな顔をしたが、慶次はにこにこ笑って言う。
「大丈夫大丈夫、ここ地元だし!」
何が大丈夫なのか、と言いたげな顔で元就が慶次を見たが、やはり彼はヘラヘラ笑っていた。
「でも男6人で祭りってのもねぇ、なんだかむさくるしいけど」
佐助が女子高生に小さく手を振りながら言った。彼も時折、脇役程度にドラマに出演する。幸村とセットで動く事があるので、テレビにはそれなりに映る。女子高生はキャーと奇声を上げて逃げて行った。どういう意味かは判りかねた。
「女の子に声かけようかと思ったんだけどね、俺はともかく、皆さんのスキャンダルになりかねないからさぁ」
慶次はそう言って笑った。女好きでありながら爽やか、というキャラクターを日頃から演じている慶次であるから、女友達と一緒に居てもおかしくは無いが、他のメンバーはモデルやスポーツ青年、硬派な役者であるし、女が隣に居れば必然的に浮いた噂が流れてしまう。それを考慮しての事だろう。
「そりゃよかった、女は苦手でよ」
元親が思わず言うと、5人全員が元親をじっと見た。困惑していると、
「チカちゃん、ホモだったの?」
と慶次が言うので、元親は驚いて首を振った。
「な、なんでそうなるんだよ。苦手ってだけで、男が好きって話にゃならねぇだろうが!」
「そうだよね。チカちゃんってなんとなくだけどホモっぽいから、まさかって思って」
「なんだよ、っぽいって!」
元親は怒ったが、政宗が「まぁまぁ」と抑えに入る。
「いっつも男連中とつるんで、兄貴分やってて、後輩にもアニキって慕われてるからだよ。それにチカって結構ガタいいいだろ? あくまでイメージって奴だから気にすんなよ」
「良かねぇよ、見た目だけでぽいって言われたら終わりだろ、こんな仕事してるんだからよ」
「まーチカちゃんの出てる雑誌って男の人に異様に人気が有るらしいしね」
佐助がそう付け足すと、元親は思わず絶句した。これは意地でも女と浮いた噂でも作らないと、危ないと少し思った。
「……我も、女は苦手だ」
ぽつりと元就が言ったので、今度はそちらに視線が集中した。
「きゃあきゃあ、うるさいから」
「ダメだなあ、元就さん。女の子の何も判ってないんだから」
慶次は元就に女の子講釈を始めようとしたが、「それより早く移動しようぜ」と言った政宗に止められてしまった。慶次は「また今度ね!」と元就に言って、先頭を歩き始めた。
芸能人が6人もブラブラ歩いているのだから、人だかりが出来てもおかしくなかったが、そこは慶次の楽観が正しかった。慶次は地元でもかなり信用と人気が有るらしく、女子高生やおばさん達もきゃあきゃあ声を上げては居たが、どしどし押しかけてくるような事はしなかった。曰く、サインとか写真とかは後であげる、などと言って事前に説得していたらしい。皆少し遠巻きで騒いだり写真を撮ったりをしていたが、それ以上の事は起こらなかった。
祭りは小さなものだった。それゆえに、人の山に埋もれて動けない、というほどは混まない。それでも最低限、出店や活気は有る。金魚すくいなどすると、周りの人間も皆こぞって彼らの周りに来てマネをした。その一挙一動を皆に見られているものだから、下手な撮影より緊張して金魚は全く取れなかった。失敗するたびに周りからは明るい笑い声が飛んできて、しかも何故か拍手された。
不思議な時間だった。
しばらく6人で動いていたが、幸村と佐助は意地でも金魚を取って帰ると金魚すくいに夢中になり、なら俺も負けてられねえと政宗も飛んで行った。慶次はいつの間にか近所の女の子といちゃいちゃし始めていたので、元就と元親は取り残される形になった。
さて金魚すくいに行くべきか、と元親が考えていると、「少し休みたい」と元就が言った。一人にするのもなんなので、元親も一緒に休める場所を探す。幸い、少し開けた場所にベンチが置いてあった。二人はそこに腰掛ける。少し考えてから、元親は席を立ってフライドポテトとジュースを買って来た。元就にも渡すと、彼は少し驚いた顔をしてから、僅かに笑んで受け取る。
賑やかだった。
人通りや店をぼうっと2人で眺める。こうしてぽつんと普通に座っていると、意外なほどにバレなかった。遠くの方では幸村と政宗が大騒ぎをしているので、そのせいかもしれない。あの連中、店の金魚を全部取る気じゃねぇのか、と元親は思った。
「人が多いのは、苦手だ」
元就がまたぽつりと言った。元親は元就に視線を戻す。彼はフライドポテトを馬鹿丁寧に食べながら、途切れ途切れに呟く。
「もみくちゃにされる。天然記念物みたいに崇められて、ぐしゃぐしゃにされるのに、ふっと我に返ると皆そっぽを向いて相手にもしてくれない。……バランスが悪いのだな、きっと」
だから人が多いのは苦手だ。元就はそれだけ言うとまたフライドポテトをもぐもぐやりはじめた。子供のような食べ方だった。大事に大事に食べるのだ。
「……じゃあ、なんで来たんだ?」
単に疑問だっただけだ。誤解されないように、静かに尋ねる。すると元就は少し顔を上げる。元親もつられてそちらを見た。ただ空が広がっているだけだ。夕暮れが近いらしく、色は橙や黄色や青のグラデーションで、妙な物悲しさがあった。
「一度だけ、父と一緒に、祭りに行った事がある」
元就はやはりぽつりぽつりと答える。
「一度だけだ。我は小さかった。たぶん、兄が死ぬ直前ぐらいだろう。あまり覚えていない。僅かなイメージしかない。何処に行って何をしていたのかも判らぬ。我はとにかく父と一緒に、祭りに行った。2人で手を繋いだ。花火が上がった。人ごみの中で我はそれが見えなかった。父は我を肩車してくれて、2人でわぁわぁ言いながら花火を見た。……綺麗だった」
「……」
「はしゃぎ疲れた我を、父はおんぶをして帰った。暗い道を、我と父は静かに帰っていた。父の背は広くて、温かくて、我はその時間が永遠に続くような気がした。幸せだった……」
元就はそこまで言って、またポテトを食べ始めた。つまり、その思い出に惹かれて、ここに来たのだ。ここには花火も、夜も、彼の父も居ないけれど。
賑やかだと思ったのに、元親と元就の周りだけ、随分静かだった。それが心地悪いとは思わなかった。元親も静かにポテトをかじって、そして何故だか母の事を考えた。子供の頃から優しくしてくれたのは父だったのに、何故だか母の事ばかり頭に浮かんで、元親は悲しい気持ちになった。
そうだ、本当はただ愛されたかった、子供にとっては、それ以外の何もいらないのだ、本当は。
「我はお前の事が好きだ」
元就がまた唐突に、しかもとんでもない事を言ったから、元親はぎょっとして元就を見た。
「お前も、伊達も、真田も、前田も、猿飛も、好きだ」
それから、ああそういう事かと元親は安心して、そしてはっと気付いた。じゃあ、俺はこいつがどういうつもりで好きだと言ったと思ったんだ。
「お前達と一緒に居ると、楽しい、何か、満たされたような気持ちになる」
「毛利……」
「幸せだ、我は。……この時間は、また新しく我の思い出になるのだろうな」
なんでそんな、悲しそうに言うんだよ、お前。
元親は言いたかったのに、言えなかった。元就は僅かに笑んでいるのに、それが何故だか悲しげで、元親はどうしようもなく、元就を抱きしめたくなった。馬鹿言うなよ、大丈夫だよ、だからそんな顔をするなよと叫びたくなった。けれど、元親はその一つも実行出来なかった。
「お前達と会えて、良かった」
なんで、そんな事を、俺の前で、俺だけの前で言うんだよ。
元親はたまらない気持ちになっていたから、「ごめんごめん、ついつい」とわけのわからない言い訳をしながら帰ってきた慶次に、救われたような気持ちになった。ふと元就を見たが、彼はいつもと変わらぬ無表情でポテトをもそもそやっているようにしか見えなかった。先ほどまでの雰囲気は何処かに消し飛んで、あたりはすっかり賑やかで、遠くの方からは「たぎるぅううああ!」などという幸村の叫びが聞こえてくるのだった。
結局事務所に置かせてくれ、と政宗が持って帰った金魚は28匹も居て、小十郎は帰って来た政宗を散々に怒り飛ばしていたが、結局その日のうちに大きな水槽が事務所に出現する事になったのだった。
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毛利って食べ物を大事に大事に食べそうなイメージなんで……
アニキは見た目に似合わずお上品に食べるけどそれが恥ずかしいので
頑張って荒々しく食べている感じ
幸村は甘いものの時だけ獣になる 政宗は肉の時だけ獣になる
慶次は食い物そっちのけで女の子と喋ってる
そんなイメージ あくまで個人的なイメージです
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