注文していたステッパーが来たんで早速やってみたけど
10秒ぐらいやったらひぎぇえってなる
おまけに何故か手首が折れそうだ
すげぇ効きそう
しかもなんだかハイな気分になってくるよ
とてもテレビを見ながらする気にはならんけど
以下、鬼の6 折り返しぐらいかな?
エロ書くんだったらまだ折り返してないけどあまり書く気が無い
10秒ぐらいやったらひぎぇえってなる
おまけに何故か手首が折れそうだ
すげぇ効きそう
しかもなんだかハイな気分になってくるよ
とてもテレビを見ながらする気にはならんけど
以下、鬼の6 折り返しぐらいかな?
エロ書くんだったらまだ折り返してないけどあまり書く気が無い
元親は良い方法を思いついていた。そうする事によって元就が受ける苦しみはそれなりだろうが、痛い思いはさせないし、万が一にも傷付けたり死なせたりはしないだろう。元親はその方法で元就を試す事に決めて、時を待った。
光秀が訪れてからしばらくは、元就の体調が優れないと知っていたので、元就が本調子を取り戻したと判断してから、元親は試す事にした。
光秀が屋敷を訪れて10日が経った雨の日、元親はそろそろいいだろうと思い、決行した。
元就は何も知らず、その日もいつも通りに格子の中に入って来た。「元親、良い物を見せてやろう」と入って来た元就を、元親はじっと見つめていた。元就は気付かないまま、一本の刀を見せてくる。
「明智にもらったのだ。これは妖刀の類でな、刃が付いておらぬが、話によれば持ち主が相手を切りたいと思えば、たちまち光の刃が現れて持ち主を守るのだそうだが……なんとも怪しい話ではないか。見てみよ、刃どころか刀身も付いておらぬのだぞ。……? 元親?」
喋っていた元就に後ろから抱きつく。元就は怪訝な顔で元親を見たが、特に責めたりはしなかった。元就の手元には刀が握られていたが、確かにそれは鞘の長さに不釣合いの小太刀のような刀身だけが付いていて、しかも刃がないように見えた。
「……元就。俺達の事を教えてやる」
「そなたらの? ……鬼の事をか?」
是非聞かせてくれ、と元就は言いながら、刀を静かにしまって、床に置く。それを見ながら、元親は言う。
「前にも言ったとおり、あそこは厳しい土地だ。昼は熱いし夜は寒い。食料も充分じゃないし、楽しい事もそんなに無かった」
「ふむ。それで?」
「だから俺達はいつだって誰かと居た。昼は共に食料を探し、夜は共に暖め合って眠った。俺達は子供の頃からずっと、誰かと二人以上で過ごす。いつも、いつもだ」
「ふむ。それは大変だな」
「だが俺にはこっちに来て以来、そういう仲間が居ない」
「そうであろうな」
「……あんたをそういう相手にしても、いいか?」
「……何?」
「あんたを俺のつがいにするって言ってる」
元親がそう言うと、元就はしばらく考えてから「ああ」と納得したように頷く。
「つまり、我が元親の仲間として、ずっと側に居るという事か」
「あぁ、そうだ」
元親は元就をぎゅっと抱きしめて言った。
「これからあんたは、俺がいいと言うまで、俺のすぐ側に居る。手の届く範囲だ」
「……ふむ、そうか……仕方有るまい」
元就があっさりと納得したのを見てから、元親は静かに告げる。
「言い忘れてたが、俺達鬼は三日ぐらいは腹が減らないし、喉も渇かない。つまり三日は飯も水も要らない」
「……そうだな。確かに可愛がそう言っておった……」
元就はそう呟いて、それからはっと元親の顔を見た。
「俺のつがいでいてくれるんなら、俺の生活に付き合えるよな? ……断るのも、逃げる事も勝手に飯を食う事も許さねぇ。そういう約束だな? 俺を信じさせたかったらここに居ろ。いいな」
それから元就は元親と共に格子の中で過ごす事になった。可愛は元就を心配して食事や茶などを運んで来たが、元就は手を付けなかった。事情を説明された従者達は、仕方なく元就の代わりに仕事などをしていた。
元就は元親の言うとおり大人しく元親の側に居て、時折話などもした。元就が持って来た妖刀は、彼の側に置いてあった。本当に身の危険を感じたなら、元就が刀を抜いて逃げられるようにするためだ。誘惑の為にそれを置いたままにしている。元就もそれは判っているらしく、あえて近付かなかった。
数刻もすると、元就は喉が渇いたらしく、大人しくなってきた。更に数刻すると元就は寝転んで、それきり無闇に起き上がろうとはしなかった。夜になると元親は元就を布団に引きずりこみ抱き込んだが、元就は抵抗しなかった。
なんと弱い生き物だろう、と元親は改めて思った。たった一日飲まず食わずでいただけで、こんなに体力を消耗してしまう。体は小さく、角も爪も牙も無い。服が無ければ肌も守れず、刀が無ければ身も守れない。暗闇では目が見えず、耳は遠く、怪我をすれば傷もろくに塞がらない。
(こんな弱い生き物が、偉そうな顔で俺を自由にして。こんな脆い生き物が、俺を愛そうと必死になって。……人間ってのは、判らねぇ)
そんな事を考えると、ふいに死んだという商人の言葉を思い出す。人間は薄汚く残忍で卑怯だが、時には誠実な人も居る。それがこいつなんだろうか、と考えはするし、薄々感じてはいるけれども、確信は持てないし、持ちようもない。
しかしただ飼おうとしている人間が無防備に檻の中に入って飢え渇いたりするはずがない。食いたいと言われて素直に腕を切ろうとなどしない。古着を与えもしないし、一緒に李を食べたりもしない。
(俺はきっとこいつを信じる。いやもう既に信じている。俺がしているのは単なる確認だ。本当にこいつが最後まで俺を裏切らないか試しているだけで、本当はもうこいつの事を慕ってる。でなけりゃ今すぐこいつをどうにかして、可愛にでも格子を開けさせてやってるだろうに、俺はそれをしない)
元親は元就を撫でた。元就も僅かに笑んで元親を撫で返してきた。
「鬼とは随分と淋しがりの種族なのだな。それこそそなたの申したとおり、鹿の方が似合いの生き物だ。……少々、図体は大きいが」
元就はそう苦笑して眼を閉じた。飢えた時には何もせずにただ眠るのがいい。元親もその事は良く知っていたので、元就の側でただ彼を見守った。
翌朝目を覚ますと、元就は格子の側まで行っていた。さては逃げるか、隠れて飯でも食う気かと元親は眠ったりフリをしながら思ったが、元就は格子から出ず、空の見える場所まで行くと太陽に向かい深々と頭を垂れただけだった。やがて元就はのろのろと元親の側に戻って来て、布団に寝転ぶ。
「……何してたんだ?」
元親が尋ねても、元就は特に驚きもせず「日輪に祈りを」とだけ答えた。
「何か願い事でも有んのか?」
「無いとは言わぬが、それとこれとは関係無い。祈りと言うても、感謝するだけだ」
「感謝」
「今日も朝が訪れた事に」
元就はそう言って笑うと、元親に引っ付いた。朝は少し肌寒いので、互いの体温は心地良い。
「我は長い間、閉じ込められておったから、何年かは朝も昼も夜も無かった。自由になって最初に見た空は雪で、日輪は見えなかった。……山のような屍と雪だけが我の世界だった。屍も雪もあれでいて暖かい、人の心などよりはよほどな。……あのような場所を訪れ、しかも死体を掻き分けて我を拾った明智の気が知れぬが、……明智に拾われて自我を取り戻してからは毎朝、日輪を拝む事にしておるのだ。よほどの事が無い限りは続けておる」
「よほどの事」
「体調が優れぬ時などは無理ゆえな」
「今日は平気なのか?」
「昔はこれくらいの折檻は受けたものよ……さすがに水も無いのは辛いが、まだ平気だ。……存分に我を試せ、元親」
元就はそう言って笑んだが、昨日より力が無くなっているのは明らかで、元親は元就を優しく撫でた。それ以外に何も出来なかった。
その日は心配したらしく元春という従者が時折やって来て、しばらく中を見ていた。その度に元就は手を上げ無事を確認させ、元春は不審そうに元親を睨みつけて帰った。
「気を悪くするな。あれは親兄弟を人外に食い殺された故、そなたの事も警戒しておるのだ。また人外が己から全てを奪うのではないかと心の底で案じておる。こればかりは理屈ではどうにもならぬ。許してやってくれ。そのうちにはお互い心が開けようというものぞ」
元就はそう言ったが、元親もそれはなんとなく感じていた。この屋敷の人間は皆、今まで元親の知らなかった眼で見てきた。元春のそれも単に憎しみだけの眼ではなくて、当然元親の方も手放しで憎む事は出来なかった。
ここの人間は皆、元就を失う事だけを恐れている。それ以外の事を恐れていない。更には当の元就が己の死を恐れていない。
元親は人間は皆、何かを恐れているという事を知っていたが、元就の恐れている事は判らなかった。大抵の人間は自分より強く逞しい元親を征服しているという事実に酔っていて、つまり元親を恐れていたのだ。恐ろしくない物を手に入れ征服したところで喜びは少ないだろう。だから元親は自分を恐れ憎む眼を見慣れていた。なのにここの人間は誰もがそういった眼で見てこない。それが不可解で、しかし心地良かった。
食事時になると可愛がやって来て元就を見たが、やはり彼は手を振って下がらせた。可愛も元親を見て不安そうな顔をしたが、やがて頭を下げて去る。
元就は「お上」というのに仕えているらしく、時折その用件で従者の一人がやって来た。最も古参の従者で名を隆元といい、元就の代理で仕事をしているらしい。その話の内容は難しくて元親には理解出来なかったが、元就が2、3返事をすると隆元は下がって行った。
「仕事、いいのか」
「そのような事を申して我を誘っても無駄ぞ」
「いや、そういうわけじゃ……」
「それにこういう時のために、隆元を育てておる。我が居らずとも一月程度は上手くやれる。あれもいずれ独立させてやろうと思うておるからな」
「……どんな仕事をしてるんだ?」
「頭を使うのが我の役目だ。……これ以上は今のそなたに説明しても判るまい。また後日話す」
元就はそう言うと溜息を吐いて眼を閉じた。大分辛くなってきたらしく、寝転んだまま元就はあまり動かなくなった。時折腹や喉を撫でていたが、それ以上の何もしなかった。
元就が泣いたのは更に翌日だった。朝の祈りもちゃんとして、まだまだ平気そうだと思っていた元親は、戻って来た元就が泣いている事に気付いてぎょっとした。
「どうした?」
「……?」
元就は問われて初めて己の身に起こった事に気付いたらしく、「あぁ」と涙を指で拭いながら言う。
「こんなに水分が有るなら、まだ平気だ」
「そうじゃなくて」
「……昔の事を思い出したのだ、きっと」
「……あんた、本当に大丈夫か?」
酷い目に合わせている張本人がこんな事を心配してどうなる、と元親は思ったが、元就の方は平気そうな顔で元親の側に戻った。昼までは元就も昨日までと変わらない様子だったが、夕方にかけて段々とおかしくなってきた。
時折何事も無いのに、眉を寄せて畳を引っかいたりなどする。震えて呻いたりなどする。元親はその度に心配だったが、しかしまだ止めるわけにはいかなかった。他ならぬ元就がそれを望んでいないようで、元親の顔を見ると無理に笑んでみせて「平気だ」と言うのだ。
どうやらこの状況が元就に一番の地獄だった時期を思い出させているらしい。時折見えもしない「父上」や「兄上」の姿を見て手を伸ばしていた。元親はそれがあまりに哀れで、元就をぎゅっと抱くと放さなかった。元就もされるがままで、時折また呻いた。
さらに翌日、元就は日輪を拝みに行かなかった。何故かぼうっとしているのだ。元就、と声をかけても返事をしない。まだ死ぬような状況ではないだろうし、そこまで身体に負担は掛かっていないと思われた。残すは精神的な負担だ。元親はしばらく考えて、元就を布団に残したまま、格子に近寄った。
「可愛、可愛」
大声で呼ぶと、しばらくすると可愛が駆けて来た。息を切らせている可愛に、元親は
「白湯と、そうだな、重湯でも用意してくれ。元就に食わせる」
「では、元就様を信じていただけるのですか?」
「あぁあいつが生粋の阿呆だって事は良く判った。悪いが急いで用意してやってくれ。俺が食わせるから」
「判りました。……とりあえずお水だけでも差し上げて下さいな」
「急に飲むと腹をやられる。濡らすだけだ。白湯を飲ませたほうがいい」
元親がそう言うと、可愛はまた駆けて戻って行った。元親も元就の所へ水桶を持って行くと、水を指につけてそっと元就の口に運んだ。
元就はじっとしていたが、唇を濡らしてやると水が有る事に気付いたらしい。赤子のように水を舐めてきた。もっと、と言うように元親を見上げてきたが、それには首を振る。
「もうすぐ可愛が持って来てくれるから、それまで我慢しな。あんたのためだ」
元親はそう言って、元就をぎゅっと抱きしめた。
「あんたみたいな阿呆に騙されたんだったら俺がそれを越える馬鹿って事で、それでいい。あんたを信じるよ。あんたに何もかも任せる。……それでいいか? それであんたも満足するか?」
元就は柔らかく笑んで元親の頬を撫でると、小さく頷いた。元親は可愛が白湯を持ってくるまで、元就をぎゅっと抱きしめて、水を与え続けていた。
+++
どうしても可愛が「えの」とは読めません
あとどうしても石見銀山が「いわみ」とは読めません
もっというとどうしても興元が「おきもと」とは読めません
どうにかしてください
温品と書いてぬくしなのほうがまだしっくりくる
光秀が訪れてからしばらくは、元就の体調が優れないと知っていたので、元就が本調子を取り戻したと判断してから、元親は試す事にした。
光秀が屋敷を訪れて10日が経った雨の日、元親はそろそろいいだろうと思い、決行した。
元就は何も知らず、その日もいつも通りに格子の中に入って来た。「元親、良い物を見せてやろう」と入って来た元就を、元親はじっと見つめていた。元就は気付かないまま、一本の刀を見せてくる。
「明智にもらったのだ。これは妖刀の類でな、刃が付いておらぬが、話によれば持ち主が相手を切りたいと思えば、たちまち光の刃が現れて持ち主を守るのだそうだが……なんとも怪しい話ではないか。見てみよ、刃どころか刀身も付いておらぬのだぞ。……? 元親?」
喋っていた元就に後ろから抱きつく。元就は怪訝な顔で元親を見たが、特に責めたりはしなかった。元就の手元には刀が握られていたが、確かにそれは鞘の長さに不釣合いの小太刀のような刀身だけが付いていて、しかも刃がないように見えた。
「……元就。俺達の事を教えてやる」
「そなたらの? ……鬼の事をか?」
是非聞かせてくれ、と元就は言いながら、刀を静かにしまって、床に置く。それを見ながら、元親は言う。
「前にも言ったとおり、あそこは厳しい土地だ。昼は熱いし夜は寒い。食料も充分じゃないし、楽しい事もそんなに無かった」
「ふむ。それで?」
「だから俺達はいつだって誰かと居た。昼は共に食料を探し、夜は共に暖め合って眠った。俺達は子供の頃からずっと、誰かと二人以上で過ごす。いつも、いつもだ」
「ふむ。それは大変だな」
「だが俺にはこっちに来て以来、そういう仲間が居ない」
「そうであろうな」
「……あんたをそういう相手にしても、いいか?」
「……何?」
「あんたを俺のつがいにするって言ってる」
元親がそう言うと、元就はしばらく考えてから「ああ」と納得したように頷く。
「つまり、我が元親の仲間として、ずっと側に居るという事か」
「あぁ、そうだ」
元親は元就をぎゅっと抱きしめて言った。
「これからあんたは、俺がいいと言うまで、俺のすぐ側に居る。手の届く範囲だ」
「……ふむ、そうか……仕方有るまい」
元就があっさりと納得したのを見てから、元親は静かに告げる。
「言い忘れてたが、俺達鬼は三日ぐらいは腹が減らないし、喉も渇かない。つまり三日は飯も水も要らない」
「……そうだな。確かに可愛がそう言っておった……」
元就はそう呟いて、それからはっと元親の顔を見た。
「俺のつがいでいてくれるんなら、俺の生活に付き合えるよな? ……断るのも、逃げる事も勝手に飯を食う事も許さねぇ。そういう約束だな? 俺を信じさせたかったらここに居ろ。いいな」
それから元就は元親と共に格子の中で過ごす事になった。可愛は元就を心配して食事や茶などを運んで来たが、元就は手を付けなかった。事情を説明された従者達は、仕方なく元就の代わりに仕事などをしていた。
元就は元親の言うとおり大人しく元親の側に居て、時折話などもした。元就が持って来た妖刀は、彼の側に置いてあった。本当に身の危険を感じたなら、元就が刀を抜いて逃げられるようにするためだ。誘惑の為にそれを置いたままにしている。元就もそれは判っているらしく、あえて近付かなかった。
数刻もすると、元就は喉が渇いたらしく、大人しくなってきた。更に数刻すると元就は寝転んで、それきり無闇に起き上がろうとはしなかった。夜になると元親は元就を布団に引きずりこみ抱き込んだが、元就は抵抗しなかった。
なんと弱い生き物だろう、と元親は改めて思った。たった一日飲まず食わずでいただけで、こんなに体力を消耗してしまう。体は小さく、角も爪も牙も無い。服が無ければ肌も守れず、刀が無ければ身も守れない。暗闇では目が見えず、耳は遠く、怪我をすれば傷もろくに塞がらない。
(こんな弱い生き物が、偉そうな顔で俺を自由にして。こんな脆い生き物が、俺を愛そうと必死になって。……人間ってのは、判らねぇ)
そんな事を考えると、ふいに死んだという商人の言葉を思い出す。人間は薄汚く残忍で卑怯だが、時には誠実な人も居る。それがこいつなんだろうか、と考えはするし、薄々感じてはいるけれども、確信は持てないし、持ちようもない。
しかしただ飼おうとしている人間が無防備に檻の中に入って飢え渇いたりするはずがない。食いたいと言われて素直に腕を切ろうとなどしない。古着を与えもしないし、一緒に李を食べたりもしない。
(俺はきっとこいつを信じる。いやもう既に信じている。俺がしているのは単なる確認だ。本当にこいつが最後まで俺を裏切らないか試しているだけで、本当はもうこいつの事を慕ってる。でなけりゃ今すぐこいつをどうにかして、可愛にでも格子を開けさせてやってるだろうに、俺はそれをしない)
元親は元就を撫でた。元就も僅かに笑んで元親を撫で返してきた。
「鬼とは随分と淋しがりの種族なのだな。それこそそなたの申したとおり、鹿の方が似合いの生き物だ。……少々、図体は大きいが」
元就はそう苦笑して眼を閉じた。飢えた時には何もせずにただ眠るのがいい。元親もその事は良く知っていたので、元就の側でただ彼を見守った。
翌朝目を覚ますと、元就は格子の側まで行っていた。さては逃げるか、隠れて飯でも食う気かと元親は眠ったりフリをしながら思ったが、元就は格子から出ず、空の見える場所まで行くと太陽に向かい深々と頭を垂れただけだった。やがて元就はのろのろと元親の側に戻って来て、布団に寝転ぶ。
「……何してたんだ?」
元親が尋ねても、元就は特に驚きもせず「日輪に祈りを」とだけ答えた。
「何か願い事でも有んのか?」
「無いとは言わぬが、それとこれとは関係無い。祈りと言うても、感謝するだけだ」
「感謝」
「今日も朝が訪れた事に」
元就はそう言って笑うと、元親に引っ付いた。朝は少し肌寒いので、互いの体温は心地良い。
「我は長い間、閉じ込められておったから、何年かは朝も昼も夜も無かった。自由になって最初に見た空は雪で、日輪は見えなかった。……山のような屍と雪だけが我の世界だった。屍も雪もあれでいて暖かい、人の心などよりはよほどな。……あのような場所を訪れ、しかも死体を掻き分けて我を拾った明智の気が知れぬが、……明智に拾われて自我を取り戻してからは毎朝、日輪を拝む事にしておるのだ。よほどの事が無い限りは続けておる」
「よほどの事」
「体調が優れぬ時などは無理ゆえな」
「今日は平気なのか?」
「昔はこれくらいの折檻は受けたものよ……さすがに水も無いのは辛いが、まだ平気だ。……存分に我を試せ、元親」
元就はそう言って笑んだが、昨日より力が無くなっているのは明らかで、元親は元就を優しく撫でた。それ以外に何も出来なかった。
その日は心配したらしく元春という従者が時折やって来て、しばらく中を見ていた。その度に元就は手を上げ無事を確認させ、元春は不審そうに元親を睨みつけて帰った。
「気を悪くするな。あれは親兄弟を人外に食い殺された故、そなたの事も警戒しておるのだ。また人外が己から全てを奪うのではないかと心の底で案じておる。こればかりは理屈ではどうにもならぬ。許してやってくれ。そのうちにはお互い心が開けようというものぞ」
元就はそう言ったが、元親もそれはなんとなく感じていた。この屋敷の人間は皆、今まで元親の知らなかった眼で見てきた。元春のそれも単に憎しみだけの眼ではなくて、当然元親の方も手放しで憎む事は出来なかった。
ここの人間は皆、元就を失う事だけを恐れている。それ以外の事を恐れていない。更には当の元就が己の死を恐れていない。
元親は人間は皆、何かを恐れているという事を知っていたが、元就の恐れている事は判らなかった。大抵の人間は自分より強く逞しい元親を征服しているという事実に酔っていて、つまり元親を恐れていたのだ。恐ろしくない物を手に入れ征服したところで喜びは少ないだろう。だから元親は自分を恐れ憎む眼を見慣れていた。なのにここの人間は誰もがそういった眼で見てこない。それが不可解で、しかし心地良かった。
食事時になると可愛がやって来て元就を見たが、やはり彼は手を振って下がらせた。可愛も元親を見て不安そうな顔をしたが、やがて頭を下げて去る。
元就は「お上」というのに仕えているらしく、時折その用件で従者の一人がやって来た。最も古参の従者で名を隆元といい、元就の代理で仕事をしているらしい。その話の内容は難しくて元親には理解出来なかったが、元就が2、3返事をすると隆元は下がって行った。
「仕事、いいのか」
「そのような事を申して我を誘っても無駄ぞ」
「いや、そういうわけじゃ……」
「それにこういう時のために、隆元を育てておる。我が居らずとも一月程度は上手くやれる。あれもいずれ独立させてやろうと思うておるからな」
「……どんな仕事をしてるんだ?」
「頭を使うのが我の役目だ。……これ以上は今のそなたに説明しても判るまい。また後日話す」
元就はそう言うと溜息を吐いて眼を閉じた。大分辛くなってきたらしく、寝転んだまま元就はあまり動かなくなった。時折腹や喉を撫でていたが、それ以上の何もしなかった。
元就が泣いたのは更に翌日だった。朝の祈りもちゃんとして、まだまだ平気そうだと思っていた元親は、戻って来た元就が泣いている事に気付いてぎょっとした。
「どうした?」
「……?」
元就は問われて初めて己の身に起こった事に気付いたらしく、「あぁ」と涙を指で拭いながら言う。
「こんなに水分が有るなら、まだ平気だ」
「そうじゃなくて」
「……昔の事を思い出したのだ、きっと」
「……あんた、本当に大丈夫か?」
酷い目に合わせている張本人がこんな事を心配してどうなる、と元親は思ったが、元就の方は平気そうな顔で元親の側に戻った。昼までは元就も昨日までと変わらない様子だったが、夕方にかけて段々とおかしくなってきた。
時折何事も無いのに、眉を寄せて畳を引っかいたりなどする。震えて呻いたりなどする。元親はその度に心配だったが、しかしまだ止めるわけにはいかなかった。他ならぬ元就がそれを望んでいないようで、元親の顔を見ると無理に笑んでみせて「平気だ」と言うのだ。
どうやらこの状況が元就に一番の地獄だった時期を思い出させているらしい。時折見えもしない「父上」や「兄上」の姿を見て手を伸ばしていた。元親はそれがあまりに哀れで、元就をぎゅっと抱くと放さなかった。元就もされるがままで、時折また呻いた。
さらに翌日、元就は日輪を拝みに行かなかった。何故かぼうっとしているのだ。元就、と声をかけても返事をしない。まだ死ぬような状況ではないだろうし、そこまで身体に負担は掛かっていないと思われた。残すは精神的な負担だ。元親はしばらく考えて、元就を布団に残したまま、格子に近寄った。
「可愛、可愛」
大声で呼ぶと、しばらくすると可愛が駆けて来た。息を切らせている可愛に、元親は
「白湯と、そうだな、重湯でも用意してくれ。元就に食わせる」
「では、元就様を信じていただけるのですか?」
「あぁあいつが生粋の阿呆だって事は良く判った。悪いが急いで用意してやってくれ。俺が食わせるから」
「判りました。……とりあえずお水だけでも差し上げて下さいな」
「急に飲むと腹をやられる。濡らすだけだ。白湯を飲ませたほうがいい」
元親がそう言うと、可愛はまた駆けて戻って行った。元親も元就の所へ水桶を持って行くと、水を指につけてそっと元就の口に運んだ。
元就はじっとしていたが、唇を濡らしてやると水が有る事に気付いたらしい。赤子のように水を舐めてきた。もっと、と言うように元親を見上げてきたが、それには首を振る。
「もうすぐ可愛が持って来てくれるから、それまで我慢しな。あんたのためだ」
元親はそう言って、元就をぎゅっと抱きしめた。
「あんたみたいな阿呆に騙されたんだったら俺がそれを越える馬鹿って事で、それでいい。あんたを信じるよ。あんたに何もかも任せる。……それでいいか? それであんたも満足するか?」
元就は柔らかく笑んで元親の頬を撫でると、小さく頷いた。元親は可愛が白湯を持ってくるまで、元就をぎゅっと抱きしめて、水を与え続けていた。
+++
どうしても可愛が「えの」とは読めません
あとどうしても石見銀山が「いわみ」とは読めません
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どうにかしてください
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メディアノクス
性別:
非公開
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妄想と堕落
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浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
二人とも変態。永遠の中二病。
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