家族でパエリヤ作って鶏もも肉貪ったり酒飲んだりしてました
朝から喉が痛かったんですが、酒を飲めば飲むほど痛むが引いて行くんだ……
百薬の長とはよく言ったね! 治っちゃった……すごいねー
でも3000円で買ったケーキはモンブランだったからか美味しくなかった……
割と好き嫌いは激しい方です なのに夢を見るから悲劇が起こる
子供の頃からアップルパイが憧れでね、初めて街に出た時お祝いに
アップルパイ買ってね、わーいわーいって一口食べた瞬間に
この世が終わったのではないかというような衝撃を受けた……びっくりした
あんなまずいもん食った事ねえ
でもきっとまずいの当たっちゃったんだろうな、じゃないとあんな定番にならんし
と未だにアップルパイに憧れていますが、あれ以来食べてません。
怖いもん。一口食ったぐらいで世界が終るわけだし。本当に。
以下、9時間の二次創作 1×2 前回の続きです がっつりネタバレです
朝から喉が痛かったんですが、酒を飲めば飲むほど痛むが引いて行くんだ……
百薬の長とはよく言ったね! 治っちゃった……すごいねー
でも3000円で買ったケーキはモンブランだったからか美味しくなかった……
割と好き嫌いは激しい方です なのに夢を見るから悲劇が起こる
子供の頃からアップルパイが憧れでね、初めて街に出た時お祝いに
アップルパイ買ってね、わーいわーいって一口食べた瞬間に
この世が終わったのではないかというような衝撃を受けた……びっくりした
あんなまずいもん食った事ねえ
でもきっとまずいの当たっちゃったんだろうな、じゃないとあんな定番にならんし
と未だにアップルパイに憧れていますが、あれ以来食べてません。
怖いもん。一口食ったぐらいで世界が終るわけだし。本当に。
以下、9時間の二次創作 1×2 前回の続きです がっつりネタバレです
本郷には客間のベッドを与えて、ライトは彼を受け入れる事にした。ただし「礼に何かしたい」と言うのは丁重に断った。ライトは自分一人で生活出来る状態だ。それより、下手に物を動かされるのが怖い。「もし僕の役に立ちたいのなら、まずこの家の物の位置を覚えて」と言い聞かせて、なんとか引き下がらせる。
いつでもスタンガンは使えるようにはしていたが、本郷は実に大人しくしていた。ただ黙って部屋の隅に居たり、本棚の前に居たり。ライトが食事を用意していると、側に来てただ見ていたりもする。
夜になっても、本郷は何もしなかった。ライトは何度も隙を見せるフリをした。背中を向けて作業をしたり、読書に集中しているように装った。それでも何もしてこない。かといって、容易に警戒を解ける相手でもない。
ライトはリビングで寝るようにしていたから、鍵をかけて身を守る事も出来ない。少し悩んだが、諦めて寝る事にした。情に流されてしまった自分の責任なのだから、何か有ってもそれは仕方ないのだ。
もぞもぞとベッドに潜り、本郷に「おやすみ」と言う。彼もまた「おやすみ」と呟いて、客間に消えた。
しばらくは気配を窺ってみたが、やはり何事も起こらず、やがてライトは眠りに落ちていた。
「ニルス!」
すぐ側で叫ばれて、ライトは飛び起きた。ひとまず今が何時かも、何故起こされたのかも判らず混乱していると、誰かに肩を掴まれた。
「ニ、ニルス、ニルスか!?」
本郷の声だ。ライトは訳が判らないまま頷いた。そうする以外に何も出来なかった。すると本郷が安心したような声を出す。
「良かった……君はニルスなんだな。夢じゃあなかった。私は君とここに居る。良かった、良かった……あぁ、ニルスじゃない、ライトだったな……」
独り言のような言葉。ライトは本郷の苦悩を僅かに理解した。彼は人の見分けがつかない。朝、眼が覚めて同じ家に居る人物が、昨夜と同じなのか判らないのだ。昨日の出来事が全て夢で、今日は見知らぬ人間と一緒に居るかもしれない。そんな可能性は殆ど無いけれど。
自分も二回目のノナリーゲームの後、全てが終わったのだと理解するまでは、目覚めが怖かった。また知らない間に、妙な場所に連れて行かれるのではないか。あるいは……子供の頃は、今日こそ視力が戻っているのではないかと、淡い期待を抱いたものだ。
だから、本郷の気持ちも理解出来ないわけではない。しかし、あまりにも目覚めが悪い。
ライトはごろんとベッドの中に戻って、「今、何時」と尋ねた。「5時だ」と答え。ライトはもぞもぞと布団を被り直す。
「悪いけど、僕はもう少し……」
「あ、あぁ、すまない、確認がしたかったんだ。悪かったね。君はもう少し眠るといい……」
本郷の声がすぐに遠くなる。ライトは睡魔に身を任せて、再び眠りの世界に落ちて行った。
一度は命を狙われ、一度は拉致してきた相手を、何処まで信用しているのか。ライトは改めて眼を覚まし、朝食を摂っている時に、自分で呆れた。
結局ライトが起きたのは9時半で、それまで4時間半、本郷は起きて同じ部屋に居た。ライトがリビングで寝ているのだから仕方ない。ライトが起きるまで、本郷は出来る限り静かにしていたようだ。50にもなる男が、そうして他人の睡眠を妨げないようにコソコソとしている姿を想像して、ライトはため息を吐いた。正気の沙汰ではない。
それでも本郷は、その事について不満は無かったらしい。出て行くというような気にはならなかったようで、朝食が終わると、「ライト」と声をかけてきた。
「手伝わせてほしいんだ。例えば……君は料理や洗濯に苦労していそうだから、そのあたりを」
「……昨日言ったろう? 物の配置を覚えてくれない事には……」
「覚えた、覚えたとも。クラシックのCDはアルファベット順だし、塩の右に砂糖、少し離れて胡椒、本棚はあいうえお順で、ああしかし小説だけはわけてあったな。それに――」
「待って、待って。見て言っているんじゃあないだろうね」
「まさか。そうだな……そう、調味料は左からバジル、ローリエ、パセリ、クミン、ガラムマサラ……」
調味料の棚には蓋がしてあるし、ここからでは遠くて見えない。ライトは「判ったよ」と調味料の名前を言い続けていた本郷を止める。
「判った。確かに覚えているみたいだ。すごいね。ここに来てまだ一日しか経っていないのに」
「する事が無かったしね。それに物覚えはいい方なんだ。……ああ……人の顔、以外はね」
自嘲するように呟く。ライトはしばらく考えて、ため息を吐いた。本郷は病気なのだ。しかも、身どころか心も病んでいる。これは大変そうだ、とライトは内心うんざりもしていたが、かといって彼を見捨てるような気にもならなかった。
「本郷さん、あの……冷静に聞いてほしいんだ。あくまで僕は、事実を聞いているんだと理解してほしい」
「……なんだい」
「その……貴方は何処まで判るの。人の顔が……」
途端に本郷の気配が変わるのを感じた。ライトは慌てて付け足す。
「つまり、どの程度判っているのか、知りたいんだ。例えば僕の――」
「判らんよ、一つも」
本郷の声は怒りに似た激情を含んでいて、ライトは眉を寄せた。そうした問いをかける者も敵だと認識しているらしい。よほど苦労したとみえた。
「君の顔どころか、親の顔だって判らんとも。誰もかれも同じ顔だ。同じ顔で私を嘲り、侮蔑し、憐れみ、見下す――……!」
「でも、……でも少しは、」
「判らないと言っているだろう!」
急にどんと突き飛ばされて、ライトは床に尻もちを着いた。すぐに立ち上がろうとしたが、本郷に痛いぐらい肩を掴まれ、押さえつけられる。
「ぃ……っ」
「判らないし、判りたくもない、私を見下し嘲笑する猿どもの顔など……お前はなんだ、少しくらいは見えるとでも言うのか? 何一つ見えやしないんだろう!? どの口が……何故そんな無意味な事を聞く!? えぇ? ライト。君も、……私を馬鹿に、して……見下して………………そ、…………そう、なのか…………?」
本郷の怒りが急速に収まって、冷静さを取り戻していくのが判る。ゲームの時も思ったが、彼はどうにも心が不安定だ。ライトは一つため息を吐いて、そっと彼の顔に右手を伸ばす。
「あのね、少し触るよ。僕は確かに眼が見えない。でも判る事は有る。貴方の顔に年相応の皺が有る事や、……貴方が今、悲しみと恐怖……そんな感情に、眉を寄せている事ぐらいは、想像出来る」
「想像……?」
「そう、例えば貴方の顔を撫でた感触や、形から。それだけじゃ足りないから、僕の場合は声、匂い、足音の大きさやその速さ、手の大きさ、温かさ、その他諸々の気配と、そして記憶で貴方を認識している。
……貴方は最初に、僕の事をニルスと呼んでくれた。ニルスという名を呼ぶ男は、一宮、サンタ、淳平君、セブンの4人しか居ない。声の低さから、サンタと淳平君が消えてて、セブンとはあれからも交流が有るから、僕をニルスとはもう呼ばない。だから貴方が一宮だと思ったし、そして貴方はそれを否定しなかった。それが無ければ判らない。……判らないのは僕も同じだよ。推測で判断しているんだ。本当は今でも不安さ。もしかしたら違う人かもしれない、ってね」
それに――、とライトは僅かに微笑む。
「僕は本郷さんを見下したり出来ない。見えないんだから。……貴方には、時間が必要なんだ。何でもかんでも怒らなくていいんだよ。貴方は病気だ。認めるのは辛いだろうけど、たぶん一生治らない。僕もそうだ。だから貴方の事を、待つ事が出来る」
「……」
「見て判らないなら、声で、雰囲気で、立ち居振る舞いや癖、その体格や言葉で少しでも判れば、と思っただけなんだ。もし可能なら、貴方は少しでも楽になれるだろう?」
本郷は長い間、黙ったままでいた。気配が変わらないから、怒ってはいないようだ……と、ライトが安心していると、
「――っ」
どん、という衝撃と共に抱きつかれて、ライトは驚いた。
「すまない、すまない、君は私の味方だ、なのに……すまない、ありがとう、ありがとう……」
「……あの」
「君の、……君の顔を、覚えてみせる。必ず、必ず、だ」
「いやあの、無理はしなくても……」
本郷に顔を撫でられ、ライトは困惑したが、彼は「いいや!」と首を振る。
「私は出来なくてはならない。でなければ……でなければまた、知らない間に失ってしまうかもしれん……」
その言葉にライトも納得する。殺意を抱いた方に問題が有るとはいえ、友人を知らぬ間に殺してしまった事実は重い。その事を反省しているようだった。
「……大切な人だったのかい?」
「あぁ……こんな病気でも、それなりに認めてくれた。武蔵堂の方は損得勘定も有ったろうが……虹崎は、……あいつはいい奴だった。私を支えてくれた……なのに、あんな惨い……あぁ、二度とあんな間違いを犯したくは無い。やり直したいんだ。君を、君を覚える。君が判るようになりたい……!」
「はぁ……」
「君の、君の全てを覚えよう。君のように、匂いや声や、体格や……君の全てで、君を知ろう。あぁ、ライト、私に時間を与えてくれて、本当に感謝している。……そうだ、これを」
むぎゅむぎゅと右手に、何か分厚い紙のような物を握らされた。改めて触れてみると、どうやら封筒に入った……札束のようだ。
「……これ」
「世話になるんだから、それぐらいは払わないと。受け取ってくれ。私の気持ちだ」
「はぁ、でも……」
「気にすることはない! 私は、……私は君に感謝している。礼がしたいんだ。判るね」
「はぁ……」
僕はカードで支払うようにしているんだけれど……、とライトは思いながらも口にしなかった。二人の間には随分な温度差が有ったが、本郷はそれが嬉しいようだ。気にされない、気にしなくていいというのは素晴らしい事だとばかり、今度は上機嫌になってきた。
本郷はそれから熱心に料理を手伝い、洗濯物を干した。彼は一人身が長いから、家事もそれなりに出来るようで、ライトは安心した。四葉は何かと世話を焼きたがったが、彼女は全体に乱暴だったので、手伝ってもらって、かえって仕事が増えるような有様だった。
本郷の機嫌は頻繁に変化したが、四葉との暮らしで、情緒不安定な人間と居る事には慣れていたから、一々気にしない事にした。本郷もその距離感が良いらしく、日が経つにつれどんどん懐かれた。
問題は彼の決意に反して、彼が全くライトの事を覚えられなかった事だ。おかげでライトは毎朝5時に「ニルスか!?」あるいは「ライトか!?」と叩き起こされた。毎朝「うん、そう、そうだよ、もう少し寝る」というやりとりをさせられて、ライトは少々寝不足になった。
簡単になんとかなるなら、本郷も苦労はしないだろうから、それだけ難しいという事なのだろう。ライトは怒らないように努めて、本郷の事を待ち続けた。
ややすると、ライトが起きるまで本郷は起こしてこなくなり、代わりに朝食の前に「ライト、だな?」と尋ねるようになった。ようやく朝が楽になって、ライトは安心する。
朝は二人で音や音楽を聴きながら、紅茶を楽しんだ。奇妙な共同生活は不思議と馴染んで、二人は静かに暮らし始めた。本郷の為に、四葉が泊りに来た時用のテレビを出してやり、自分の古いノートパソコンを分け与えもした。
しかし、本郷がライトを判別する事は、いつまで経っても出来るようにならなかった。
+++
スーパー情緒不安定なオッサンとスーパー無頓着なニート
小説版とか設定資料集とかでニルスの本名が明らかになったら、
いやそれどころか色んな事が恥ずかしくなったりするに違いない
妹が四葉で兄がライトは無いから、何かしら漢字なんだと思うんだけど……
とりあえず月じゃない事を祈りたい
いつでもスタンガンは使えるようにはしていたが、本郷は実に大人しくしていた。ただ黙って部屋の隅に居たり、本棚の前に居たり。ライトが食事を用意していると、側に来てただ見ていたりもする。
夜になっても、本郷は何もしなかった。ライトは何度も隙を見せるフリをした。背中を向けて作業をしたり、読書に集中しているように装った。それでも何もしてこない。かといって、容易に警戒を解ける相手でもない。
ライトはリビングで寝るようにしていたから、鍵をかけて身を守る事も出来ない。少し悩んだが、諦めて寝る事にした。情に流されてしまった自分の責任なのだから、何か有ってもそれは仕方ないのだ。
もぞもぞとベッドに潜り、本郷に「おやすみ」と言う。彼もまた「おやすみ」と呟いて、客間に消えた。
しばらくは気配を窺ってみたが、やはり何事も起こらず、やがてライトは眠りに落ちていた。
「ニルス!」
すぐ側で叫ばれて、ライトは飛び起きた。ひとまず今が何時かも、何故起こされたのかも判らず混乱していると、誰かに肩を掴まれた。
「ニ、ニルス、ニルスか!?」
本郷の声だ。ライトは訳が判らないまま頷いた。そうする以外に何も出来なかった。すると本郷が安心したような声を出す。
「良かった……君はニルスなんだな。夢じゃあなかった。私は君とここに居る。良かった、良かった……あぁ、ニルスじゃない、ライトだったな……」
独り言のような言葉。ライトは本郷の苦悩を僅かに理解した。彼は人の見分けがつかない。朝、眼が覚めて同じ家に居る人物が、昨夜と同じなのか判らないのだ。昨日の出来事が全て夢で、今日は見知らぬ人間と一緒に居るかもしれない。そんな可能性は殆ど無いけれど。
自分も二回目のノナリーゲームの後、全てが終わったのだと理解するまでは、目覚めが怖かった。また知らない間に、妙な場所に連れて行かれるのではないか。あるいは……子供の頃は、今日こそ視力が戻っているのではないかと、淡い期待を抱いたものだ。
だから、本郷の気持ちも理解出来ないわけではない。しかし、あまりにも目覚めが悪い。
ライトはごろんとベッドの中に戻って、「今、何時」と尋ねた。「5時だ」と答え。ライトはもぞもぞと布団を被り直す。
「悪いけど、僕はもう少し……」
「あ、あぁ、すまない、確認がしたかったんだ。悪かったね。君はもう少し眠るといい……」
本郷の声がすぐに遠くなる。ライトは睡魔に身を任せて、再び眠りの世界に落ちて行った。
一度は命を狙われ、一度は拉致してきた相手を、何処まで信用しているのか。ライトは改めて眼を覚まし、朝食を摂っている時に、自分で呆れた。
結局ライトが起きたのは9時半で、それまで4時間半、本郷は起きて同じ部屋に居た。ライトがリビングで寝ているのだから仕方ない。ライトが起きるまで、本郷は出来る限り静かにしていたようだ。50にもなる男が、そうして他人の睡眠を妨げないようにコソコソとしている姿を想像して、ライトはため息を吐いた。正気の沙汰ではない。
それでも本郷は、その事について不満は無かったらしい。出て行くというような気にはならなかったようで、朝食が終わると、「ライト」と声をかけてきた。
「手伝わせてほしいんだ。例えば……君は料理や洗濯に苦労していそうだから、そのあたりを」
「……昨日言ったろう? 物の配置を覚えてくれない事には……」
「覚えた、覚えたとも。クラシックのCDはアルファベット順だし、塩の右に砂糖、少し離れて胡椒、本棚はあいうえお順で、ああしかし小説だけはわけてあったな。それに――」
「待って、待って。見て言っているんじゃあないだろうね」
「まさか。そうだな……そう、調味料は左からバジル、ローリエ、パセリ、クミン、ガラムマサラ……」
調味料の棚には蓋がしてあるし、ここからでは遠くて見えない。ライトは「判ったよ」と調味料の名前を言い続けていた本郷を止める。
「判った。確かに覚えているみたいだ。すごいね。ここに来てまだ一日しか経っていないのに」
「する事が無かったしね。それに物覚えはいい方なんだ。……ああ……人の顔、以外はね」
自嘲するように呟く。ライトはしばらく考えて、ため息を吐いた。本郷は病気なのだ。しかも、身どころか心も病んでいる。これは大変そうだ、とライトは内心うんざりもしていたが、かといって彼を見捨てるような気にもならなかった。
「本郷さん、あの……冷静に聞いてほしいんだ。あくまで僕は、事実を聞いているんだと理解してほしい」
「……なんだい」
「その……貴方は何処まで判るの。人の顔が……」
途端に本郷の気配が変わるのを感じた。ライトは慌てて付け足す。
「つまり、どの程度判っているのか、知りたいんだ。例えば僕の――」
「判らんよ、一つも」
本郷の声は怒りに似た激情を含んでいて、ライトは眉を寄せた。そうした問いをかける者も敵だと認識しているらしい。よほど苦労したとみえた。
「君の顔どころか、親の顔だって判らんとも。誰もかれも同じ顔だ。同じ顔で私を嘲り、侮蔑し、憐れみ、見下す――……!」
「でも、……でも少しは、」
「判らないと言っているだろう!」
急にどんと突き飛ばされて、ライトは床に尻もちを着いた。すぐに立ち上がろうとしたが、本郷に痛いぐらい肩を掴まれ、押さえつけられる。
「ぃ……っ」
「判らないし、判りたくもない、私を見下し嘲笑する猿どもの顔など……お前はなんだ、少しくらいは見えるとでも言うのか? 何一つ見えやしないんだろう!? どの口が……何故そんな無意味な事を聞く!? えぇ? ライト。君も、……私を馬鹿に、して……見下して………………そ、…………そう、なのか…………?」
本郷の怒りが急速に収まって、冷静さを取り戻していくのが判る。ゲームの時も思ったが、彼はどうにも心が不安定だ。ライトは一つため息を吐いて、そっと彼の顔に右手を伸ばす。
「あのね、少し触るよ。僕は確かに眼が見えない。でも判る事は有る。貴方の顔に年相応の皺が有る事や、……貴方が今、悲しみと恐怖……そんな感情に、眉を寄せている事ぐらいは、想像出来る」
「想像……?」
「そう、例えば貴方の顔を撫でた感触や、形から。それだけじゃ足りないから、僕の場合は声、匂い、足音の大きさやその速さ、手の大きさ、温かさ、その他諸々の気配と、そして記憶で貴方を認識している。
……貴方は最初に、僕の事をニルスと呼んでくれた。ニルスという名を呼ぶ男は、一宮、サンタ、淳平君、セブンの4人しか居ない。声の低さから、サンタと淳平君が消えてて、セブンとはあれからも交流が有るから、僕をニルスとはもう呼ばない。だから貴方が一宮だと思ったし、そして貴方はそれを否定しなかった。それが無ければ判らない。……判らないのは僕も同じだよ。推測で判断しているんだ。本当は今でも不安さ。もしかしたら違う人かもしれない、ってね」
それに――、とライトは僅かに微笑む。
「僕は本郷さんを見下したり出来ない。見えないんだから。……貴方には、時間が必要なんだ。何でもかんでも怒らなくていいんだよ。貴方は病気だ。認めるのは辛いだろうけど、たぶん一生治らない。僕もそうだ。だから貴方の事を、待つ事が出来る」
「……」
「見て判らないなら、声で、雰囲気で、立ち居振る舞いや癖、その体格や言葉で少しでも判れば、と思っただけなんだ。もし可能なら、貴方は少しでも楽になれるだろう?」
本郷は長い間、黙ったままでいた。気配が変わらないから、怒ってはいないようだ……と、ライトが安心していると、
「――っ」
どん、という衝撃と共に抱きつかれて、ライトは驚いた。
「すまない、すまない、君は私の味方だ、なのに……すまない、ありがとう、ありがとう……」
「……あの」
「君の、……君の顔を、覚えてみせる。必ず、必ず、だ」
「いやあの、無理はしなくても……」
本郷に顔を撫でられ、ライトは困惑したが、彼は「いいや!」と首を振る。
「私は出来なくてはならない。でなければ……でなければまた、知らない間に失ってしまうかもしれん……」
その言葉にライトも納得する。殺意を抱いた方に問題が有るとはいえ、友人を知らぬ間に殺してしまった事実は重い。その事を反省しているようだった。
「……大切な人だったのかい?」
「あぁ……こんな病気でも、それなりに認めてくれた。武蔵堂の方は損得勘定も有ったろうが……虹崎は、……あいつはいい奴だった。私を支えてくれた……なのに、あんな惨い……あぁ、二度とあんな間違いを犯したくは無い。やり直したいんだ。君を、君を覚える。君が判るようになりたい……!」
「はぁ……」
「君の、君の全てを覚えよう。君のように、匂いや声や、体格や……君の全てで、君を知ろう。あぁ、ライト、私に時間を与えてくれて、本当に感謝している。……そうだ、これを」
むぎゅむぎゅと右手に、何か分厚い紙のような物を握らされた。改めて触れてみると、どうやら封筒に入った……札束のようだ。
「……これ」
「世話になるんだから、それぐらいは払わないと。受け取ってくれ。私の気持ちだ」
「はぁ、でも……」
「気にすることはない! 私は、……私は君に感謝している。礼がしたいんだ。判るね」
「はぁ……」
僕はカードで支払うようにしているんだけれど……、とライトは思いながらも口にしなかった。二人の間には随分な温度差が有ったが、本郷はそれが嬉しいようだ。気にされない、気にしなくていいというのは素晴らしい事だとばかり、今度は上機嫌になってきた。
本郷はそれから熱心に料理を手伝い、洗濯物を干した。彼は一人身が長いから、家事もそれなりに出来るようで、ライトは安心した。四葉は何かと世話を焼きたがったが、彼女は全体に乱暴だったので、手伝ってもらって、かえって仕事が増えるような有様だった。
本郷の機嫌は頻繁に変化したが、四葉との暮らしで、情緒不安定な人間と居る事には慣れていたから、一々気にしない事にした。本郷もその距離感が良いらしく、日が経つにつれどんどん懐かれた。
問題は彼の決意に反して、彼が全くライトの事を覚えられなかった事だ。おかげでライトは毎朝5時に「ニルスか!?」あるいは「ライトか!?」と叩き起こされた。毎朝「うん、そう、そうだよ、もう少し寝る」というやりとりをさせられて、ライトは少々寝不足になった。
簡単になんとかなるなら、本郷も苦労はしないだろうから、それだけ難しいという事なのだろう。ライトは怒らないように努めて、本郷の事を待ち続けた。
ややすると、ライトが起きるまで本郷は起こしてこなくなり、代わりに朝食の前に「ライト、だな?」と尋ねるようになった。ようやく朝が楽になって、ライトは安心する。
朝は二人で音や音楽を聴きながら、紅茶を楽しんだ。奇妙な共同生活は不思議と馴染んで、二人は静かに暮らし始めた。本郷の為に、四葉が泊りに来た時用のテレビを出してやり、自分の古いノートパソコンを分け与えもした。
しかし、本郷がライトを判別する事は、いつまで経っても出来るようにならなかった。
+++
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小説版とか設定資料集とかでニルスの本名が明らかになったら、
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