どうでもいいけど石田受けがとても見たいけど
発売まで見ない事にする
以下、ルゼとトウマの5
発売まで見ない事にする
以下、ルゼとトウマの5
翌日も朝から店を出して、ルゼは接客に勤しんだ。馬車の狭いスペースでは足りないと、外に放り出していたものだから、トウマはそれらの商品や金が盗まれないものかと冷や冷やしながら、眼を光らせていなければならなかった。幸いトウマはそこに居るだけで威圧する事が出来るので、盗みを働こうとする者は現れなかった。
長閑な街であるが、そこそこの金持ちも居るらしく、時折高いドレスなどが売れた。が、主に売れたのは庶民にも手が届くストールや帽子などの小物類だった。午前中は珍しがって人も多く訪れたが、昼を回ると大方の者は店を見たらしく、客足が衰えた。ルゼはそれでも店を開いたまま、のんびりと裁縫をして、客が来ればまた熱心に接客をして、売れるか売れないかは問題にしなかった。
4時ほどになった頃には流石にルゼも店じまいをして、土産を探しに行こうと言った。トウマはそんなルゼを案内して、街を歩いて行く。それだけで皆避けた。トウマの体格は立派で、しかも珍しい白髪に、無愛想な顔をしているから、誰でも怖がる。ふと、ルゼはそういう素振りが全く無かった事を思い出して、トウマは彼を見た。ルゼは物珍しそうに街をきょろきょろと見渡して、ずっと嬉しそうな顔をしていた。
この街は小高い山の上まで続く細長い街だ。山の方には畑や果樹園が広がっていて、山から流れる川に沿って家々が立ち並んでいる。山側は民家が殆どで、店は麓の辺りに集中していた。湿度が高いのか、木と漆喰で作られた家は王都では見ない物で、ルゼは面白そうに家々を見ていた。
「不思議だね。良く見るととても雑に塗ってあるのに、なんだかその方がきれいみたいだ。手を抜いて見た目が良いなんて、素晴らしい事じゃあないか」
「それは怠惰ではないのですか?」
「手を抜いて、手を抜かない時より良い物が作れるなら、それは工夫とか技術とか言うんだよ」
ああ、なるほど。トウマは声には出さずに納得した。そういう考えは、判らないでもない。ただそういう手抜きをしている連中は、ずる賢く、とても評価したい人間では無いのが問題だ。だのに評価されるから、尚更腹が立つ。
ルゼはしかし、そういう考えをしていると言う事は、手抜きについて場合によっては肯定しているのだろう。そして恐らく、自分でもやっているのではないか。まだ若いのにオーナーになれたのだから、相応の事はしたのだろう。きっとずる賢い事も。トウマは少し嫌な気持ちになった。
ルゼはトウマの気持ちにもお構いなしで、店を見つける度に気まぐれに飛び込んで行ったものだったから、トウマは慌ててルゼに着いて行く事を繰り返した。
ルゼは陶磁器も嬉しそうに見て回って、その真っ白な皿を一枚だけ購入し、大事に持って歩いていた。持ちましょうか、と言っても、ルゼは手放さなかったから、自然とトウマはその土産が誰の為の物なのか、悟らざるを得なかった。
そのまま果物の店に向かう。店先には沢山のイチジクが並べられていて、初老の女と、その娘と思わしき若い女が店員を勤めていた。エプロンを着けた質素な二人は、トウマの姿を見て驚いていたが、ルゼが興味津々で果物の加工品などを見ている物だから、すぐに商売人らしく話をするようになった。
「今年は豊作で、それに気候も良かったですから、とても美味しいんですよ」
「そうですか……この実はどれぐらいの間なら、食べられますか?」
「そちらは3、4日が美味しいですかね」
「うーん、もっと長持ちする物は? 干した物とかでもいいんですが……」
「そうですねぇ。干した物なら、半年ぐらいは大丈夫ですけど、どうしても風味が落ちますから……」
「そう、ですか……せめて一年は保存出来たらいいんですが、味が落ちるとなると……」
ルゼが困ったような顔をしていると、娘の方がそそくさと店の奥へと走って行った。しばらくすると、彼女が小さな瓶を持って出て来る。
「あ、あのっ、これなら一年以上大丈夫ですよ。砂糖で煮て、瓶詰めにした物なんですけど……」
「あんた、それは……」
母親の方が困ったような顔をしたが、娘はルゼに瓶を手渡す。瓶の中には赤紫の液体と、中にイチジクの果実が入っている。見た目は少々グロテスクで、トウマは眉を寄せた。
「なんだ、これは。……ジャム、ではないな」
「ええ、イチジクをそのまま砂糖煮したものです。干した物より甘くて美味しいし、密封していますから、蓋を開かなければ一年以上大丈夫です。これをどうぞ」
「それはありがたい! おいくらですか?」
ルゼがそう言って金を出そうとする。それを見て、慌てて母親の方が止めた。
「自宅用に作っている物ですので、お代は……」
「そんな物を私に? 良いんですか?」
「はい、いっぱい有りますし、それにお客さんのご要望に答えられるのは、これだけしか……」
娘もそう言って、金を受け取ろうとしない。ルゼはしばらく考えて、それから「そうだ!」と眼を輝かせる。
「じゃあ、私も自分用の物を差し上げますよ! 物々交換という奴です」
「えっ、あっ、あの……」
「お時間は有りますか? 是非私の店へ来て下さい。お礼をしたいんです」
母親と娘は困ったような顔で互いに見合っていたが、「どうぞ遠慮無く」とルゼが歩き出すと、恐る恐ると言った風に着いて来た。トウマもそれを追う。
ルゼは馬車の中に入って、しばらく中を漁っていたが、やがて一着のドレスを持って出て来た。
「これをどうぞ。サイズもたぶん合うと思います」
「こ、これって……!」
「ドレスじゃあありませんか! こんなお高い物……」
彼女達が驚いているのを見て、ルゼは笑う。
「これは私が考案した特別な布と縫い方を採用しているので、高い物ではありません。試作品ですから、値段も付けていませんしね。でもこのフリルが高級感を出せます。肌触りの良い生地ですが、全体に一級品より安いのでご安心を。自分用ですし」
(……自分用???)
トウマは眉を寄せたが、ルゼは気にせず、娘にドレスを差し出す。
「さ、お嬢さん。どうぞ着てみて下さい」
「でも、私なんかには、そんな……」
「お嬢さん、残念ながら美しさも若さも永遠ではありません。けれど記憶は残り続けます。貴方のその大切な時間に、少し華やかな彩りを添える。それが私の仕事です。怖がる事は有りませんよ。さあ、どうぞ。自分で言うのも変ですが、私の服を来た人達は皆、心から喜んでくれましたから」
ルゼがそうして促すと、娘は恐る恐るドレスを受け取った。彼女をルゼは馬車に乗せ、服の着方を教える。娘が着るのを終えると、何処に隠してあったのやら化粧まで施したようだ。しばらくの時間を置いて娘が出て来た時には、田舎っぽい娘は淑女へと変わっていた。
「まぁ、まぁまぁ! まるで何処かのお姫様みたいだよ、あんた!」
母親がそう言っても、娘は何が起こっているやら判っていないらしい。ただただ困惑している。ルゼが大鏡を見せてやって、始めて娘は悲鳴を上げた。なんとも言えない悲鳴で、トウマは苦笑した。女はどんな事が有っても気軽に悲鳴を上げる。それが喜びのあまりでも、だ。
「こんな、本当に良いんですか、こんなお洋服……」
「ええ、もちろん」
「あ、ありがとうございます。この子の花嫁衣装として、大切にさせてもらいます!」
「お洗濯しても大丈夫ですから、どうぞお気軽に。喜んでいただけてなによりです」
ルゼはそう言って、娘に近寄る。「お気に召しましたか?」と聞かれるまで、娘はぼうっと大鏡に映った自分の姿を見ていたが、彼女は慌ててルゼを見て言う。
「私、私こんな綺麗な格好をしたの、生まれて初めてで……今、もう、どうしていいか判らないぐらい、胸がいっぱいで……! ありがとうございます、本当に、本当に……」
「私がお手伝い出来るのはここまでです。でもどうか、美しい自分の姿を忘れないで。女性の心を支えるのは、その喜びの気持ちです。貴方にお礼が出来て、私も嬉しい。いつまでも健やかで居て下さいね」
ルゼはそして柔らかく微笑んだ。そのわざとらしさが流石にトウマは怖かったが、彼女は本当に嬉しそうな顔をしていたから、あえて何も言わなかった。
「……普段は、あんな感じなのですか」
彼女と別れて。部屋に戻るなり、トウマは尋ねた。ルゼはきょとんとした顔をしてから、苦笑して首を振る。
「とんでもない。セールストークって奴だよ。女子相手にはあれぐらい作った方が、ロマンチックってウケが良くてね。でも私は嘘は一言も言っていないよ。職業柄女性と話す機会も多いけど、彼女らの一番の喜びは、大鏡に映った自分が美しい、という事なんだ。たったそれだけなんだけど、たったそれだけの願いを叶える事が、なかなか出来ない。まだまだ修行の身さ」
そうして華やかな時間に花を添えるのが、私の仕事なんだ。でも嘘だけは言わない。それが私の個人的なポリシーって奴でね。
ルゼはそう言って、ミシンへと向かう。昨日書いていたメモに何か書き足しているルゼに、トウマは率直に言った。
「俺は、彼女は十分美しくなったと、思いましたが」
「そう? 君にそう言ってもらえると嬉しいよ。事実上部外者だからね。そういう人の言葉の方が、よほど信頼出来るから。……そうだ、今度トウマにも何か作るよ。今の服は何だか重々しい感じだし。もっとトウマらしく、優しい感じの服を」
その言葉にトウマは眼を丸くした。ルゼは気付かないまま、メモを書き続けている。
「……優しい? ……俺が、ですか?」
思わず問えば、ルゼは「うん」と即答して、笑った。
「トウマは、優しいよ」
ルゼにそう断言されても、トウマにはとてもそうだとは思えなかった。何を言っているんだ、と呆れて、自分のベッドへと向かう。あわよくば殺そうと思っている相手に、優しいだのと。馬鹿馬鹿しい。トウマは何故だか少々の苛立ちを感じて、ルゼに背を向けた。
+++
商売中は信じられないぐらいキザというか、演技がかってるルゼ
長閑な街であるが、そこそこの金持ちも居るらしく、時折高いドレスなどが売れた。が、主に売れたのは庶民にも手が届くストールや帽子などの小物類だった。午前中は珍しがって人も多く訪れたが、昼を回ると大方の者は店を見たらしく、客足が衰えた。ルゼはそれでも店を開いたまま、のんびりと裁縫をして、客が来ればまた熱心に接客をして、売れるか売れないかは問題にしなかった。
4時ほどになった頃には流石にルゼも店じまいをして、土産を探しに行こうと言った。トウマはそんなルゼを案内して、街を歩いて行く。それだけで皆避けた。トウマの体格は立派で、しかも珍しい白髪に、無愛想な顔をしているから、誰でも怖がる。ふと、ルゼはそういう素振りが全く無かった事を思い出して、トウマは彼を見た。ルゼは物珍しそうに街をきょろきょろと見渡して、ずっと嬉しそうな顔をしていた。
この街は小高い山の上まで続く細長い街だ。山の方には畑や果樹園が広がっていて、山から流れる川に沿って家々が立ち並んでいる。山側は民家が殆どで、店は麓の辺りに集中していた。湿度が高いのか、木と漆喰で作られた家は王都では見ない物で、ルゼは面白そうに家々を見ていた。
「不思議だね。良く見るととても雑に塗ってあるのに、なんだかその方がきれいみたいだ。手を抜いて見た目が良いなんて、素晴らしい事じゃあないか」
「それは怠惰ではないのですか?」
「手を抜いて、手を抜かない時より良い物が作れるなら、それは工夫とか技術とか言うんだよ」
ああ、なるほど。トウマは声には出さずに納得した。そういう考えは、判らないでもない。ただそういう手抜きをしている連中は、ずる賢く、とても評価したい人間では無いのが問題だ。だのに評価されるから、尚更腹が立つ。
ルゼはしかし、そういう考えをしていると言う事は、手抜きについて場合によっては肯定しているのだろう。そして恐らく、自分でもやっているのではないか。まだ若いのにオーナーになれたのだから、相応の事はしたのだろう。きっとずる賢い事も。トウマは少し嫌な気持ちになった。
ルゼはトウマの気持ちにもお構いなしで、店を見つける度に気まぐれに飛び込んで行ったものだったから、トウマは慌ててルゼに着いて行く事を繰り返した。
ルゼは陶磁器も嬉しそうに見て回って、その真っ白な皿を一枚だけ購入し、大事に持って歩いていた。持ちましょうか、と言っても、ルゼは手放さなかったから、自然とトウマはその土産が誰の為の物なのか、悟らざるを得なかった。
そのまま果物の店に向かう。店先には沢山のイチジクが並べられていて、初老の女と、その娘と思わしき若い女が店員を勤めていた。エプロンを着けた質素な二人は、トウマの姿を見て驚いていたが、ルゼが興味津々で果物の加工品などを見ている物だから、すぐに商売人らしく話をするようになった。
「今年は豊作で、それに気候も良かったですから、とても美味しいんですよ」
「そうですか……この実はどれぐらいの間なら、食べられますか?」
「そちらは3、4日が美味しいですかね」
「うーん、もっと長持ちする物は? 干した物とかでもいいんですが……」
「そうですねぇ。干した物なら、半年ぐらいは大丈夫ですけど、どうしても風味が落ちますから……」
「そう、ですか……せめて一年は保存出来たらいいんですが、味が落ちるとなると……」
ルゼが困ったような顔をしていると、娘の方がそそくさと店の奥へと走って行った。しばらくすると、彼女が小さな瓶を持って出て来る。
「あ、あのっ、これなら一年以上大丈夫ですよ。砂糖で煮て、瓶詰めにした物なんですけど……」
「あんた、それは……」
母親の方が困ったような顔をしたが、娘はルゼに瓶を手渡す。瓶の中には赤紫の液体と、中にイチジクの果実が入っている。見た目は少々グロテスクで、トウマは眉を寄せた。
「なんだ、これは。……ジャム、ではないな」
「ええ、イチジクをそのまま砂糖煮したものです。干した物より甘くて美味しいし、密封していますから、蓋を開かなければ一年以上大丈夫です。これをどうぞ」
「それはありがたい! おいくらですか?」
ルゼがそう言って金を出そうとする。それを見て、慌てて母親の方が止めた。
「自宅用に作っている物ですので、お代は……」
「そんな物を私に? 良いんですか?」
「はい、いっぱい有りますし、それにお客さんのご要望に答えられるのは、これだけしか……」
娘もそう言って、金を受け取ろうとしない。ルゼはしばらく考えて、それから「そうだ!」と眼を輝かせる。
「じゃあ、私も自分用の物を差し上げますよ! 物々交換という奴です」
「えっ、あっ、あの……」
「お時間は有りますか? 是非私の店へ来て下さい。お礼をしたいんです」
母親と娘は困ったような顔で互いに見合っていたが、「どうぞ遠慮無く」とルゼが歩き出すと、恐る恐ると言った風に着いて来た。トウマもそれを追う。
ルゼは馬車の中に入って、しばらく中を漁っていたが、やがて一着のドレスを持って出て来た。
「これをどうぞ。サイズもたぶん合うと思います」
「こ、これって……!」
「ドレスじゃあありませんか! こんなお高い物……」
彼女達が驚いているのを見て、ルゼは笑う。
「これは私が考案した特別な布と縫い方を採用しているので、高い物ではありません。試作品ですから、値段も付けていませんしね。でもこのフリルが高級感を出せます。肌触りの良い生地ですが、全体に一級品より安いのでご安心を。自分用ですし」
(……自分用???)
トウマは眉を寄せたが、ルゼは気にせず、娘にドレスを差し出す。
「さ、お嬢さん。どうぞ着てみて下さい」
「でも、私なんかには、そんな……」
「お嬢さん、残念ながら美しさも若さも永遠ではありません。けれど記憶は残り続けます。貴方のその大切な時間に、少し華やかな彩りを添える。それが私の仕事です。怖がる事は有りませんよ。さあ、どうぞ。自分で言うのも変ですが、私の服を来た人達は皆、心から喜んでくれましたから」
ルゼがそうして促すと、娘は恐る恐るドレスを受け取った。彼女をルゼは馬車に乗せ、服の着方を教える。娘が着るのを終えると、何処に隠してあったのやら化粧まで施したようだ。しばらくの時間を置いて娘が出て来た時には、田舎っぽい娘は淑女へと変わっていた。
「まぁ、まぁまぁ! まるで何処かのお姫様みたいだよ、あんた!」
母親がそう言っても、娘は何が起こっているやら判っていないらしい。ただただ困惑している。ルゼが大鏡を見せてやって、始めて娘は悲鳴を上げた。なんとも言えない悲鳴で、トウマは苦笑した。女はどんな事が有っても気軽に悲鳴を上げる。それが喜びのあまりでも、だ。
「こんな、本当に良いんですか、こんなお洋服……」
「ええ、もちろん」
「あ、ありがとうございます。この子の花嫁衣装として、大切にさせてもらいます!」
「お洗濯しても大丈夫ですから、どうぞお気軽に。喜んでいただけてなによりです」
ルゼはそう言って、娘に近寄る。「お気に召しましたか?」と聞かれるまで、娘はぼうっと大鏡に映った自分の姿を見ていたが、彼女は慌ててルゼを見て言う。
「私、私こんな綺麗な格好をしたの、生まれて初めてで……今、もう、どうしていいか判らないぐらい、胸がいっぱいで……! ありがとうございます、本当に、本当に……」
「私がお手伝い出来るのはここまでです。でもどうか、美しい自分の姿を忘れないで。女性の心を支えるのは、その喜びの気持ちです。貴方にお礼が出来て、私も嬉しい。いつまでも健やかで居て下さいね」
ルゼはそして柔らかく微笑んだ。そのわざとらしさが流石にトウマは怖かったが、彼女は本当に嬉しそうな顔をしていたから、あえて何も言わなかった。
「……普段は、あんな感じなのですか」
彼女と別れて。部屋に戻るなり、トウマは尋ねた。ルゼはきょとんとした顔をしてから、苦笑して首を振る。
「とんでもない。セールストークって奴だよ。女子相手にはあれぐらい作った方が、ロマンチックってウケが良くてね。でも私は嘘は一言も言っていないよ。職業柄女性と話す機会も多いけど、彼女らの一番の喜びは、大鏡に映った自分が美しい、という事なんだ。たったそれだけなんだけど、たったそれだけの願いを叶える事が、なかなか出来ない。まだまだ修行の身さ」
そうして華やかな時間に花を添えるのが、私の仕事なんだ。でも嘘だけは言わない。それが私の個人的なポリシーって奴でね。
ルゼはそう言って、ミシンへと向かう。昨日書いていたメモに何か書き足しているルゼに、トウマは率直に言った。
「俺は、彼女は十分美しくなったと、思いましたが」
「そう? 君にそう言ってもらえると嬉しいよ。事実上部外者だからね。そういう人の言葉の方が、よほど信頼出来るから。……そうだ、今度トウマにも何か作るよ。今の服は何だか重々しい感じだし。もっとトウマらしく、優しい感じの服を」
その言葉にトウマは眼を丸くした。ルゼは気付かないまま、メモを書き続けている。
「……優しい? ……俺が、ですか?」
思わず問えば、ルゼは「うん」と即答して、笑った。
「トウマは、優しいよ」
ルゼにそう断言されても、トウマにはとてもそうだとは思えなかった。何を言っているんだ、と呆れて、自分のベッドへと向かう。あわよくば殺そうと思っている相手に、優しいだのと。馬鹿馬鹿しい。トウマは何故だか少々の苛立ちを感じて、ルゼに背を向けた。
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商売中は信じられないぐらいキザというか、演技がかってるルゼ
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