ついでに6。書き忘れた事が有ったのを思い出したがまぁ後に書き足そう……
ファイル数10を越えた辺りぐらいからウザそうなので
別にアップするとこ用意しようかなと思います
ファイル数10を越えた辺りぐらいからウザそうなので
別にアップするとこ用意しようかなと思います
ルゼは部屋で裁縫をしていたし、やる事も無い。トウマは渡されている金を持って、ぶらりと宿を出た。何か暇を潰せる物が無いか、と店を彷徨って、大衆本を数冊買った。中はやれ何処で妖精が出ただの、ドラゴンの卵が見つかっただの呆れるような与太話ばかりだったが、暇は潰せる。ぼうっとそれを宿のロビーで読んでいると、昼間の娘がやって来た。手には何やら籠を持っている。
「あの、あの人は、居ますか?」
彼女は恐る恐るトウマに声をかけて来る。トウマは一度考えて、それから答えた。
「今裁縫をしておられるが、火急の用件なら呼んでくる」
「あっ、いいんです。やっぱり、あのお洋服は、私には贅沢すぎるんじゃないかと思って……お返しした方がいいんじゃないかと……」
トウマはまた少し考えて、「いや」と首を振る。
「あの方は望んでいないと思う。お前の機転と思いやりで手に入れた物だ。大切にするといい」
そう言ってやると、娘は困ったように笑って、それから「じゃあ」と籠を差し出してきた。そこにはイチヂクがいくつかと、大輪の花が数本入っていた。
「これをお礼に。この辺りの山に咲く花なんです。あの人の髪の色によく似ているでしょう? ……あ、私、シーナと言います」
「シーナか。あの方はルゼ様だ」
そう言いながら籠を受け取る。確かに、花の色は上品な黄色で、日の光を受けたルゼの髪の色によく似ていた。
「ルゼ様に、トウマさん。本当に嬉しかったんです、私。でも……でもルゼ様は不思議な人ですね。言葉がすごくきれいすぎて、何だか不自然というか……なんでしょう。気を張ってるっていうか……」
「気を張っている?」
トウマが眉を寄せると、シーナも「うーん」と首を傾げる。
「なんでしょう。とっても優しいし、好意を持っていただけてる事は判るんです。でも……でも何か、壁って言うか……まぁ今日会ったばかりだし、そういうものでしょうけど、何か、不思議な雰囲気なんです。もっと気を抜いていたら、女の人にももてると思うんですけど……何か判りませんが、……何か、何か深入りが出来ないというか……不思議な人です」
(……? 女っ気は無い、という事なのか?)
トウマにはよく判らない。ルゼは最初に会った日から、警戒心の欠片も無いと思っていた。だのにシーナは、何か壁を感じたという。トウマは何も感じなかった。女にしか判らないのだろうか、とトウマは思う。そう言えば先ほど、シーナに与えた服は自分用だとか言っていたが、まさか……とトウマは眉を寄せた。
色々考えたがやはり結論は出なかった。変な大衆雑誌などより、シーナと話しているほうがよほど楽しかった。最初こそシーナはトウマを怖がっていたが、次第に和やかに接してくれるようになった。結局夜遅くまで話し込んでしまったので、トウマは彼女を家まで送って、それから宿に戻る。
部屋に帰ると、ルゼは画用紙に絵を描いていた。また風景画か、と思いながら、シーナに渡された籠の件を話すと、ルゼは喜んで花を部屋に飾った。イチジクは明日食べる事にして、ルゼはトウマに画用紙を見せて来る。
「トウマ、こんな感じにしてみようと思うんだけど、どうかな」
そこには服が描かれていた。青を基調としたゆったりした服のデザインで、裾の方には細かな幾何学模様が入っている。トウマはそれを見ても意味が理解出来なかった。
「どうかな、というのは……」
「君の服だよ」
「俺の服、ですか? 随分派手ですね……」
「そうかな。これでも地味にしたほうなんだけれど……」
ルゼは困った顔でデザインを見直す。その幾何学模様に見覚えが有る気がして、トウマはしばらく考えて、思い出す。
「それは砂漠地方の……」
「そう、よく知っているね。彼らはいつも旅をしているから、動きやすくて着心地の良い服を好み、遠くからでも見つかるように濃い色に装飾を施す。トウマの好きなヤマアヤメの色も入れてみるよ。トウマは護衛だし、戦うかもしれないから丈夫に作らないとね」
「……ルゼ様は、何故このようなデザインを? 失礼ですが、貴方の作る服はどれも斬新で……」
ルゼは「そうかもしれないね」と笑って、デザインをしまう。ベッドの用意をしながら、彼は言う。
「私は幼少の頃、母に連れられて、各地を旅していたんだ。色んな所で色んな物を見たから、そのせいだろうね。私の生まれは砂漠なんだ。だから生まれた場所や、一度は住んだ場所の事を調べていたら、すっかり物知りになってしまったよ。砂の民は派手好きだし、東の酪農地帯は穏やかな色が主流で、蒸すから風通しの良いデザインが多い。西の海周辺では、漁師達はいつも半裸、陸の民は逆にゴテゴテと着飾る。……子供の頃から色んな文化に触れたからかな、私のデザインが新しいと言われるのは」
でもね。ルゼは少し笑って、ベッドに腰掛ける。
「どんなに新しい物も、いずれは飽きられる。勝手に誰かが量産化したり、機械化したりと理由は様々だけど、あらゆる物は目新しくなどなくなるものさ。旅先に永住する者が、滅多に居ないようにね」
だからこそ、私は旅をする事にしたのさ。ルゼはそう言って、ベッドに横になる。トウマには服飾業界の事情は判らない。ただ、流行り廃りが早い事は知っている。ルゼにはルゼの苦しみが有るのかもしれない、と少し考えたが、それ以上の事はやはり判らなかった。
会話が途切れると部屋に静けさが戻る。仕方無く自分のベッドに向かっていると、「面白かったかい?」と問われる。何の事か、と振り返ると、ルゼは大衆雑誌を見ていた。
「ああ……下らない事ばかりでしたよ。何処には妖精が出る、何処にはドラゴンの卵が出る、とか、そんな与太話ばかりです」
「どんな与太話も、根拠が無ければ発生しないさ。きっと何かは有るんだろうね。不思議な場所、とか。私達に見つけられないだけで、本当に不思議な動物は居るかもしれないだろう? ほら、例えば角狼とか」
角狼は伝説上の生き物だと長い間思われていた。額から鹿の角を生やした狼達だ。人と同じ知能を持っていて、フェンリル達の部下として森を守っている、と伝えられていた。その角狼が本当に生息しているという事が確認されたのだ。北方の山脈地帯の入口に村が有る。その奥地の、深い森の中に群れが居たのだ。ただ彼らは伝承と違い、フェンリルの側には居なかったし、人の言葉を喋る事はしなかった。
この世界では今、魔法と伝承、科学と夢が混在している。昨日まで有った物が呆気無く否定され、昨日まで無かった物が溢れ出す。そういう不安定な世情で、商売をするのは大変だろう。ミシンもごく最近主流になって、そのおかげで服も大量生産が可能になり、全体に値段が下がっている。今でこそ職人技が機械の進出を阻んでいるが、それも時間の問題だと言われていた。
「まぁ、不安要素はたくさん有る時代だけど、でもその分、希望や夢もいっぱい有るから。ただ嘆くだけの暮らしはしたくないんだ。だから私は旅をしている。……これからもよろしくお願いするよ、トウマ」
ルゼはそう言って、布団に潜る。トウマはのろのろと寝支度を整えて、ベッドに入った。
ルゼに対しては、色々な感情を持ってしまう。今までの主人は、無条件で嫌えば良かったが。ルゼにはどうもそれが出来ない。たくさんの事を考えてしまって、トウマは酷く疲れた。ただそれは嫌な事ではないので、トウマはますます考えてしまうのだ。
+++
一応ここまで書いたので、また続きは後日。
次でちょっとだけ動くかな……どうかな……
「あの、あの人は、居ますか?」
彼女は恐る恐るトウマに声をかけて来る。トウマは一度考えて、それから答えた。
「今裁縫をしておられるが、火急の用件なら呼んでくる」
「あっ、いいんです。やっぱり、あのお洋服は、私には贅沢すぎるんじゃないかと思って……お返しした方がいいんじゃないかと……」
トウマはまた少し考えて、「いや」と首を振る。
「あの方は望んでいないと思う。お前の機転と思いやりで手に入れた物だ。大切にするといい」
そう言ってやると、娘は困ったように笑って、それから「じゃあ」と籠を差し出してきた。そこにはイチヂクがいくつかと、大輪の花が数本入っていた。
「これをお礼に。この辺りの山に咲く花なんです。あの人の髪の色によく似ているでしょう? ……あ、私、シーナと言います」
「シーナか。あの方はルゼ様だ」
そう言いながら籠を受け取る。確かに、花の色は上品な黄色で、日の光を受けたルゼの髪の色によく似ていた。
「ルゼ様に、トウマさん。本当に嬉しかったんです、私。でも……でもルゼ様は不思議な人ですね。言葉がすごくきれいすぎて、何だか不自然というか……なんでしょう。気を張ってるっていうか……」
「気を張っている?」
トウマが眉を寄せると、シーナも「うーん」と首を傾げる。
「なんでしょう。とっても優しいし、好意を持っていただけてる事は判るんです。でも……でも何か、壁って言うか……まぁ今日会ったばかりだし、そういうものでしょうけど、何か、不思議な雰囲気なんです。もっと気を抜いていたら、女の人にももてると思うんですけど……何か判りませんが、……何か、何か深入りが出来ないというか……不思議な人です」
(……? 女っ気は無い、という事なのか?)
トウマにはよく判らない。ルゼは最初に会った日から、警戒心の欠片も無いと思っていた。だのにシーナは、何か壁を感じたという。トウマは何も感じなかった。女にしか判らないのだろうか、とトウマは思う。そう言えば先ほど、シーナに与えた服は自分用だとか言っていたが、まさか……とトウマは眉を寄せた。
色々考えたがやはり結論は出なかった。変な大衆雑誌などより、シーナと話しているほうがよほど楽しかった。最初こそシーナはトウマを怖がっていたが、次第に和やかに接してくれるようになった。結局夜遅くまで話し込んでしまったので、トウマは彼女を家まで送って、それから宿に戻る。
部屋に帰ると、ルゼは画用紙に絵を描いていた。また風景画か、と思いながら、シーナに渡された籠の件を話すと、ルゼは喜んで花を部屋に飾った。イチジクは明日食べる事にして、ルゼはトウマに画用紙を見せて来る。
「トウマ、こんな感じにしてみようと思うんだけど、どうかな」
そこには服が描かれていた。青を基調としたゆったりした服のデザインで、裾の方には細かな幾何学模様が入っている。トウマはそれを見ても意味が理解出来なかった。
「どうかな、というのは……」
「君の服だよ」
「俺の服、ですか? 随分派手ですね……」
「そうかな。これでも地味にしたほうなんだけれど……」
ルゼは困った顔でデザインを見直す。その幾何学模様に見覚えが有る気がして、トウマはしばらく考えて、思い出す。
「それは砂漠地方の……」
「そう、よく知っているね。彼らはいつも旅をしているから、動きやすくて着心地の良い服を好み、遠くからでも見つかるように濃い色に装飾を施す。トウマの好きなヤマアヤメの色も入れてみるよ。トウマは護衛だし、戦うかもしれないから丈夫に作らないとね」
「……ルゼ様は、何故このようなデザインを? 失礼ですが、貴方の作る服はどれも斬新で……」
ルゼは「そうかもしれないね」と笑って、デザインをしまう。ベッドの用意をしながら、彼は言う。
「私は幼少の頃、母に連れられて、各地を旅していたんだ。色んな所で色んな物を見たから、そのせいだろうね。私の生まれは砂漠なんだ。だから生まれた場所や、一度は住んだ場所の事を調べていたら、すっかり物知りになってしまったよ。砂の民は派手好きだし、東の酪農地帯は穏やかな色が主流で、蒸すから風通しの良いデザインが多い。西の海周辺では、漁師達はいつも半裸、陸の民は逆にゴテゴテと着飾る。……子供の頃から色んな文化に触れたからかな、私のデザインが新しいと言われるのは」
でもね。ルゼは少し笑って、ベッドに腰掛ける。
「どんなに新しい物も、いずれは飽きられる。勝手に誰かが量産化したり、機械化したりと理由は様々だけど、あらゆる物は目新しくなどなくなるものさ。旅先に永住する者が、滅多に居ないようにね」
だからこそ、私は旅をする事にしたのさ。ルゼはそう言って、ベッドに横になる。トウマには服飾業界の事情は判らない。ただ、流行り廃りが早い事は知っている。ルゼにはルゼの苦しみが有るのかもしれない、と少し考えたが、それ以上の事はやはり判らなかった。
会話が途切れると部屋に静けさが戻る。仕方無く自分のベッドに向かっていると、「面白かったかい?」と問われる。何の事か、と振り返ると、ルゼは大衆雑誌を見ていた。
「ああ……下らない事ばかりでしたよ。何処には妖精が出る、何処にはドラゴンの卵が出る、とか、そんな与太話ばかりです」
「どんな与太話も、根拠が無ければ発生しないさ。きっと何かは有るんだろうね。不思議な場所、とか。私達に見つけられないだけで、本当に不思議な動物は居るかもしれないだろう? ほら、例えば角狼とか」
角狼は伝説上の生き物だと長い間思われていた。額から鹿の角を生やした狼達だ。人と同じ知能を持っていて、フェンリル達の部下として森を守っている、と伝えられていた。その角狼が本当に生息しているという事が確認されたのだ。北方の山脈地帯の入口に村が有る。その奥地の、深い森の中に群れが居たのだ。ただ彼らは伝承と違い、フェンリルの側には居なかったし、人の言葉を喋る事はしなかった。
この世界では今、魔法と伝承、科学と夢が混在している。昨日まで有った物が呆気無く否定され、昨日まで無かった物が溢れ出す。そういう不安定な世情で、商売をするのは大変だろう。ミシンもごく最近主流になって、そのおかげで服も大量生産が可能になり、全体に値段が下がっている。今でこそ職人技が機械の進出を阻んでいるが、それも時間の問題だと言われていた。
「まぁ、不安要素はたくさん有る時代だけど、でもその分、希望や夢もいっぱい有るから。ただ嘆くだけの暮らしはしたくないんだ。だから私は旅をしている。……これからもよろしくお願いするよ、トウマ」
ルゼはそう言って、布団に潜る。トウマはのろのろと寝支度を整えて、ベッドに入った。
ルゼに対しては、色々な感情を持ってしまう。今までの主人は、無条件で嫌えば良かったが。ルゼにはどうもそれが出来ない。たくさんの事を考えてしまって、トウマは酷く疲れた。ただそれは嫌な事ではないので、トウマはますます考えてしまうのだ。
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