美味しい物を食べると筋肉が勝手ににまーってする気がするので
毛利だって無表情で過ごしているんだけど
美味しい物食べた時は気付かない内ににまってしてればいいのにと思う
アニキ硬直
以下、主従の8
毛利だって無表情で過ごしているんだけど
美味しい物食べた時は気付かない内ににまってしてればいいのにと思う
アニキ硬直
以下、主従の8
一度だけ、国親がぽつりと漏らした事がある。彼が隠居を表明して、元親が国を譲り受けた日。酒盛りの後、二人きりになった時。
弘元は、まだ死ぬべきではなかった、と。まだ彼と語るべき事が有ったと。それから国親はしばらく、弘元について淡々と語った。しかし父をよく知っている元親には判った。国親は弘元を、他の全ての人物とは違う眼で見ていたようだ。有り体に言えば、愛していた。
弘元の何がそれほど、父を引きつけたのか、元親にはよく判らない。同じ国主として話が合ったのか、他の人間達と違い、彼が妙に疲れきっていたから、同情したのかもしれない。あるいは、単純にかの人の顔を気に入っただけかもしれなかった。弘元は憂いを帯びた、それなりに美しい男だったから。
いずれにしろ、国親は弘元に特別な感情を抱いていたようだ。それがどれほどの好意になるのかは判らない。ただ、全てを同等に扱う彼が珍しく、特別を作っていたのだ。それに故に、彼を失った時の国親は、自棄を起こしかけていた。
残された元就に対して、国親が何を思ったのかは判らない。疑心渦巻く毛利渦中に誠意を見せるため、眼を抉り出せと言われた時、元親は父の正気を疑ったし、何より怖くてたまらなかった。出来る事なら逃げたかった。
だが元就が泣いている。元就が不安げな顔で自分を見る。それが耐えられなかった。疑われたくない、嫌われたくない。証明の為にはやるしかない。だから、耐えられた。怖くて、痛くて、辛くて。元親はその時の事を覚えていない。
ただ、今にして思えば。
あれは証明だったのではない。国親が、弘元に、詫びたのだ。助けられなかった事を。守れなかった事を。
だから国親は、元親に言った。
お前は悔いを残さないよう、大切な事は伝えれる時に伝えておけ。死んだら、何も聞いちゃくれないんだから。死なせちまったら、何にもしてはやれねぇんだから。
その時の国親の顔は、いつか見た弘元の顔と同じで、深い憂いを帯びていて。元親は、なんともいえない気持ちになり、曖昧な返事だけをして、目を反らした。
+++
考えを巡らせながら過ごして数日。ある日の夕方。どん、という派手な音が砦を揺るがした。元就は窓に飛びつく。「な、何でしょう?」という声。元就は空に眼を向ける。空で何かが弾ける。
元就は眼を細め、そして部下に言う。
「救援だ。多少荒いがな……」
「きゅ、救援? 毛利のですか?」
「長曾我部だ。……出来る限り外を見ておれ、恐らく攻撃してくるぞ」
「そ、それは、我々諸とも殺すと……」
「死なねばそれで良い。あくまで救援だ。我を、長曾我部を信じるがいい……来るぞ」
元就はそう言い、身構える。遙か彼方より、無数の砲弾が飛来するのが見えた。
+++
竹中半兵衛にとって、命とは短い物であり、儚い物だった。つい最近までそんな事は無かったのだが、いつしか半兵衛は病に身を侵され、半兵衛に確実な死を見せつけ始めた。
半兵衛にとって大事だった物の殆どは、その意味を失った。戦場に出なければ死なないという概念も消え、半兵衛は長い苦しみの末に、一つの結論を出す。
古くからの友が、野心と理想を抱いている事は知っていた。だからそれに託す事にした。秀吉の美しい夢を、理想を、現実の物にする事。そうして、そこに残る何かに、自分を記す事。それを自らの夢とした。
ならば死ぬわけにはいかない。見届けなければ、死ねない。友の夢が叶った時に、初めて半兵衛は死を受け入れられる。それまでは決して負ける事は許されなかった。
より強固な軍を求めて、優秀な人材は惜しみなく引き抜いたつもりだ。それでも、相手側にも理想や夢や忠義が有る。多くの者と殺し合った。希に仲間が増える程度だった。
毛利元就は優秀な人材であったし、それにその理想を持っていないようだった。揺さぶれば簡単に落ちると思った。帰る場所が無いと判れば、こちらにつくだろうと。四国は中国を信用しないだろうし、また中国もしかり……前任はよほど手を抜いたと見える。半兵衛はこの中国攻めを楽な仕事だと思っていた。
だから、目の前で起こっているあらゆる事が、信じられない。
半兵衛はその時、砦の外に出て兵達の様子を確かめていた。ちょうどその時、敵が襲撃してくる。
山中からは確認しただけでも3つの家紋を掲げた兵が、砦に向かってきている。応戦している兵は突然の事に揃わなかった。だが時間の問題だ。こちらのほうが兵の数も、訓練の質も良い。体勢を持ち直せば、敵ではないと思われた。
矢先、空で何かが弾ける。轟音は大筒のそれに似ていた。空を見上げ、続いて海に眼をやれば、見た事もない大きな船が……いや、もはや島というべきか。こちらに砲台を向けているのが、僅かに見える。
「あ、あれはなんだ!?」
狼狽える兵を落ち着かせるので手いっぱいだった。やがてそれが砲弾を打ち出す。巨大なそれは砦を狙っていた。半兵衛はすぐさま、これは長曾我部からの攻撃だと思い、そして彼は毛利元就を殺す気なのだと思った。しかし弾は砦を僅かに掠めるように飛び、弾ける。その恐るべき精度よりも、半兵衛はその狙いに驚いた。
もろとも殺す気ならば、砦を直撃させる。奴らの狙いは砦の破壊と、それに伴って捕らわれた者を逃がす事だ。
楽な仕事だと思っていた。中国は毛利家の物で、四国の配下に甘んじているようなものではないと思っていた。四国は中国を虐げているのだから、決して不穏な動きを許さないと思っていた。だのに、なんだこの状況は。
また砲弾が砦を掠める。壁が吹き飛んだ。そして中から、幾人かが飛び出すのを見る。兵達は砲撃を恐れて、物陰に隠れてしまったようだ。半兵衛はぎりとそれを睨みつけて、側にいた弓隊を連れ、駆けた。
敵になると言うのなら、僕はそのすべてを決して許さない。秀吉の為に、秀吉の夢の為に、秀吉の国の為に、秀吉の天下の為に。
その執念が何に由来しているのか、半兵衛も知っている。その歪んだ心が、矛盾している事も知っている。知っていても、駆けずにはいられない。背後から、死という名を持つ深い闇が、手を伸ばしているのだから。止まるわけには、いかないのだ。
+++
砲撃の間隔を長くさせ、元親は碇槍片手に、部下の制止も聞かず上陸した。目指すは元就である。毛利の兵は、元就に着いて逃げる。元就を見つければ、全員見つける事が出来るだろう。助け出すのだ。元親は後を追ってくる部下に目もくれず、駆けた。
助け出したら。無事に帰ったら。説教をしてやるのだ。相変わらずろくでもない事を勝手に決めやがって、だからこんな事になったんだ、馬鹿野郎。やっぱり俺も中国に居るよ、そうしたらお前をこんな危ない目に合わせなくてすむんだから。
どれぐらい駆けたろう。それほど長い時間ではなかった気がする。一息に駆けたから、部下達は追いついてこれなかった。一人で駆けていると、前方に懐かしい姿を見た。
少し捕らわれていただけなのに、随分会わなかったような気がした。元就! と名を呼んだ。答えの代わりに、彼は僅かに笑んだ。
ど、と。
離れているのに。音が聞こえた気がした。
元就の胸から。矢が、生えた。
彼が姿勢を崩す。元親は目を見開く。叫ぶ暇もなく、また元就の体に矢が突き立つ。貫く。
元就が、片方の手だけ、こちらに伸ばして。
妙にゆっくりと、大地に伏した。
もう、動かなかった。
+++
ちなみにこの弘元もまた黒です
弘元は、まだ死ぬべきではなかった、と。まだ彼と語るべき事が有ったと。それから国親はしばらく、弘元について淡々と語った。しかし父をよく知っている元親には判った。国親は弘元を、他の全ての人物とは違う眼で見ていたようだ。有り体に言えば、愛していた。
弘元の何がそれほど、父を引きつけたのか、元親にはよく判らない。同じ国主として話が合ったのか、他の人間達と違い、彼が妙に疲れきっていたから、同情したのかもしれない。あるいは、単純にかの人の顔を気に入っただけかもしれなかった。弘元は憂いを帯びた、それなりに美しい男だったから。
いずれにしろ、国親は弘元に特別な感情を抱いていたようだ。それがどれほどの好意になるのかは判らない。ただ、全てを同等に扱う彼が珍しく、特別を作っていたのだ。それに故に、彼を失った時の国親は、自棄を起こしかけていた。
残された元就に対して、国親が何を思ったのかは判らない。疑心渦巻く毛利渦中に誠意を見せるため、眼を抉り出せと言われた時、元親は父の正気を疑ったし、何より怖くてたまらなかった。出来る事なら逃げたかった。
だが元就が泣いている。元就が不安げな顔で自分を見る。それが耐えられなかった。疑われたくない、嫌われたくない。証明の為にはやるしかない。だから、耐えられた。怖くて、痛くて、辛くて。元親はその時の事を覚えていない。
ただ、今にして思えば。
あれは証明だったのではない。国親が、弘元に、詫びたのだ。助けられなかった事を。守れなかった事を。
だから国親は、元親に言った。
お前は悔いを残さないよう、大切な事は伝えれる時に伝えておけ。死んだら、何も聞いちゃくれないんだから。死なせちまったら、何にもしてはやれねぇんだから。
その時の国親の顔は、いつか見た弘元の顔と同じで、深い憂いを帯びていて。元親は、なんともいえない気持ちになり、曖昧な返事だけをして、目を反らした。
+++
考えを巡らせながら過ごして数日。ある日の夕方。どん、という派手な音が砦を揺るがした。元就は窓に飛びつく。「な、何でしょう?」という声。元就は空に眼を向ける。空で何かが弾ける。
元就は眼を細め、そして部下に言う。
「救援だ。多少荒いがな……」
「きゅ、救援? 毛利のですか?」
「長曾我部だ。……出来る限り外を見ておれ、恐らく攻撃してくるぞ」
「そ、それは、我々諸とも殺すと……」
「死なねばそれで良い。あくまで救援だ。我を、長曾我部を信じるがいい……来るぞ」
元就はそう言い、身構える。遙か彼方より、無数の砲弾が飛来するのが見えた。
+++
竹中半兵衛にとって、命とは短い物であり、儚い物だった。つい最近までそんな事は無かったのだが、いつしか半兵衛は病に身を侵され、半兵衛に確実な死を見せつけ始めた。
半兵衛にとって大事だった物の殆どは、その意味を失った。戦場に出なければ死なないという概念も消え、半兵衛は長い苦しみの末に、一つの結論を出す。
古くからの友が、野心と理想を抱いている事は知っていた。だからそれに託す事にした。秀吉の美しい夢を、理想を、現実の物にする事。そうして、そこに残る何かに、自分を記す事。それを自らの夢とした。
ならば死ぬわけにはいかない。見届けなければ、死ねない。友の夢が叶った時に、初めて半兵衛は死を受け入れられる。それまでは決して負ける事は許されなかった。
より強固な軍を求めて、優秀な人材は惜しみなく引き抜いたつもりだ。それでも、相手側にも理想や夢や忠義が有る。多くの者と殺し合った。希に仲間が増える程度だった。
毛利元就は優秀な人材であったし、それにその理想を持っていないようだった。揺さぶれば簡単に落ちると思った。帰る場所が無いと判れば、こちらにつくだろうと。四国は中国を信用しないだろうし、また中国もしかり……前任はよほど手を抜いたと見える。半兵衛はこの中国攻めを楽な仕事だと思っていた。
だから、目の前で起こっているあらゆる事が、信じられない。
半兵衛はその時、砦の外に出て兵達の様子を確かめていた。ちょうどその時、敵が襲撃してくる。
山中からは確認しただけでも3つの家紋を掲げた兵が、砦に向かってきている。応戦している兵は突然の事に揃わなかった。だが時間の問題だ。こちらのほうが兵の数も、訓練の質も良い。体勢を持ち直せば、敵ではないと思われた。
矢先、空で何かが弾ける。轟音は大筒のそれに似ていた。空を見上げ、続いて海に眼をやれば、見た事もない大きな船が……いや、もはや島というべきか。こちらに砲台を向けているのが、僅かに見える。
「あ、あれはなんだ!?」
狼狽える兵を落ち着かせるので手いっぱいだった。やがてそれが砲弾を打ち出す。巨大なそれは砦を狙っていた。半兵衛はすぐさま、これは長曾我部からの攻撃だと思い、そして彼は毛利元就を殺す気なのだと思った。しかし弾は砦を僅かに掠めるように飛び、弾ける。その恐るべき精度よりも、半兵衛はその狙いに驚いた。
もろとも殺す気ならば、砦を直撃させる。奴らの狙いは砦の破壊と、それに伴って捕らわれた者を逃がす事だ。
楽な仕事だと思っていた。中国は毛利家の物で、四国の配下に甘んじているようなものではないと思っていた。四国は中国を虐げているのだから、決して不穏な動きを許さないと思っていた。だのに、なんだこの状況は。
また砲弾が砦を掠める。壁が吹き飛んだ。そして中から、幾人かが飛び出すのを見る。兵達は砲撃を恐れて、物陰に隠れてしまったようだ。半兵衛はぎりとそれを睨みつけて、側にいた弓隊を連れ、駆けた。
敵になると言うのなら、僕はそのすべてを決して許さない。秀吉の為に、秀吉の夢の為に、秀吉の国の為に、秀吉の天下の為に。
その執念が何に由来しているのか、半兵衛も知っている。その歪んだ心が、矛盾している事も知っている。知っていても、駆けずにはいられない。背後から、死という名を持つ深い闇が、手を伸ばしているのだから。止まるわけには、いかないのだ。
+++
砲撃の間隔を長くさせ、元親は碇槍片手に、部下の制止も聞かず上陸した。目指すは元就である。毛利の兵は、元就に着いて逃げる。元就を見つければ、全員見つける事が出来るだろう。助け出すのだ。元親は後を追ってくる部下に目もくれず、駆けた。
助け出したら。無事に帰ったら。説教をしてやるのだ。相変わらずろくでもない事を勝手に決めやがって、だからこんな事になったんだ、馬鹿野郎。やっぱり俺も中国に居るよ、そうしたらお前をこんな危ない目に合わせなくてすむんだから。
どれぐらい駆けたろう。それほど長い時間ではなかった気がする。一息に駆けたから、部下達は追いついてこれなかった。一人で駆けていると、前方に懐かしい姿を見た。
少し捕らわれていただけなのに、随分会わなかったような気がした。元就! と名を呼んだ。答えの代わりに、彼は僅かに笑んだ。
ど、と。
離れているのに。音が聞こえた気がした。
元就の胸から。矢が、生えた。
彼が姿勢を崩す。元親は目を見開く。叫ぶ暇もなく、また元就の体に矢が突き立つ。貫く。
元就が、片方の手だけ、こちらに伸ばして。
妙にゆっくりと、大地に伏した。
もう、動かなかった。
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ちなみにこの弘元もまた黒です
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