本日2つめ。これで鬼は完結にします。
色々蛇足的な説明もつけておきます。疲れました……。
色々蛇足的な説明もつけておきます。疲れました……。
しばらくすると元就が静かになった。怪訝に思って見ると、眠っている。首を傾げていると、半兵衛が歩いてやって来た。
「ああ、心配する事は無いよ、どうせこんな事になるだろうと思って、君にあげたのと同じのを盛っておいたんだ。まったく、人の家で泣いたり叫んだりうるさいんだから。帰ってからやってくれたまえ」
半兵衛はそうつまらなそうに言うと、元親に絡めていた鎖を解き始めた。
「どうせって……前にもこんな事が?」
「殆どの連中はこんな感じさ。いざ死ぬって時になって相手の大切さを思い知って泣き喚いて止めろ止めろって怒りだすんだ。人間と言うのは本当に愚鈍だ。こんな状況にならなければ何も判らないんだからね。全く」
半兵衛は溜息を吐いて言う。
「ま、僕はいいけどね、秀吉に会うついでだし。お代は前払いだし。どうしようとね」
「……ひでよし?」
「ああ気にしないで。あっちに住んでる人なんだ。長い人生には潤いが必要だけど、まあ正直言って人間模様なんて何処もかしこも大体同じで、楽しくはなくなってきたけどね。誰かが泣いて誰かが笑ってる、ただそれだけ」
元親の体から鎖が外された。元親は元就を抱きとめてやりながら、半兵衛に尋ねる。
「あんた、人間じゃないのか」
「まあね」
「じゃあ、なんだ?」
「どうだっていい事じゃあないか、そんな事」
半兵衛はそうつまらなそうに言ったが、元親は首を振る。
「俺達は鬼って呼ばれてる、でも何故なのか知らない。なあ、あんた知ってるんなら教えてくれ。人外ってのはなんなんだ?」
「その名の通り、人でないものだよ。見分けは簡単。神仏交じりの髪は白い。……君や僕のようにね」
「白い? ……でも元就は……」
「元就君は人と混じりあってかなり長い人外だ。あと3代も混じれば完全に人になってしまうだろう。外見は既に人と変わらないし、力も極僅か、精々火事場の馬鹿力が出せるぐらいのものだろうね。僕は君よりも混じりが少ない。殆ど原種だ。だから色々知っている事は知っている」
半兵衛は部屋の隅に行き、道具を片付けながら言う。
「神仏はその昔、人と近くにあった。愚かな人間を導き愛する為に、側に暮らした。そのうち人が成長し、精神的に成熟し始めると、神仏の中に人と愛し合うものが現れた。不老不死と神通力を捨てる事になったが、彼らは人との間に子を成し、より人間に近付いた。そうこうするうちに人は歴史の中に事実を忘れ、その人間よりも特化した人外達を恐れ、敬い、時に捕まえ、殺し、迫害した。
人外はおろか本物の神仏にまで手を出そうとした人間達から神仏は逃げた。彼らは酷く優しい。天罰を加えるような真似はしなかった。だが人間は彼らを憎んだ。祈っても何もしないとね。不毛な事だよ。純粋な神仏は人界を離れ天や地に戻った。残ったのは人外だけさ。それらもそのうち淘汰され、血を交えてやがて人だけかこの世に残るだろう。
……だがね、元親君。既に僕ぐらいしか知らないこの事実を知ったからなんだというんだい。もうどうでもいい事なんだよ、理由も原因も過去もね。大切なのは今、そして明日だ。そうだろう。まぁ僕はどうでもいいけどね。こうして時々人間のつまらない欲求に付き合ってるだけの生だ。何も望まないし何も考えないよ」
さあ、お帰り。店じまいだ。
半兵衛はそう言って元親を洞窟の外へと促した。元親は元就を負ぶって、のろのろと半兵衛の後を追って行く。
しばらくすると森に出た。半兵衛はじゃあ、と言って洞窟に戻っていく。彼が穴に入った途端、穴は塞がってただの岸壁になってしまった。試しに触れてみたが、それはただの穴で、洞窟が有った気配も無い。
と、半兵衛が顔を出して来た。元親がぎょっとしていると、彼は「なんだい?」と尋ねてくる。
「まだ何か用?」
「いや、……ただ、驚いたから」
「ああ……人間には出来ないんだよね。まあ気にしないで。もう店じまいだよ。店は客が来る時に開けるものだろう? だから閉めるよ。じゃあね」
出来たら二度と来ないでね。
半兵衛はそう言って戻って行った。
元親が元就を負ぶったまま屋敷に戻ると、何故だか門の前で待っていたらしい可愛が大声を上げて元親に近付いて来て、ぼかぼかと叩いてきた。何事か、と慌てて逃げながら可愛の言う事をまとめてみると、どうやら、なんで秘密にしていたんですか、このお馬鹿さん達、と言いたいらしい。
「男の方ってどうしてこう回りくどくて、大事な事を言いたがらないんですか! なんで相談してくれなかったんです! 判ってたら元就様の事を引っぱたいてでも説得したのに!」
可愛はそう怒鳴りながら元親を追い掛け回す。元親は庭を逃げ惑ったが、物陰に隠れたほかの男衆達は恐々と言った様子で元親や可愛を見ていて、助けを求めて近付くと慌てて逃げて行った。
どうやら、女が一番怖いという俺の判断は間違って無さそうだ。
元親はそう確信しながら逃げ回ったが、ついに壁際に追い詰められてしまった。せめて元就は守ってやろうと背を壁に向けて可愛を見ると、彼女は叩いてくるどころかその場に泣き崩れてわぁわぁ言っていて、元親は何をどうしていいのかさっぱり判らなくなった。
「元親さんは優しすぎます! 元就様は貴方を殺そうとなさった方ですよ! そんなの放り出して逃げればいいんです! 元就様は大馬鹿の大悪党です! 私が殴り飛ばしてやるから出しなさい!」
そう言いつつも可愛はその場でわんわん泣くばかりで、元親は一つ溜息を吐くと、しゃがみ込んで言った。
「いいよ、馬鹿の躾は俺がしておくから。だから元就の事をそんなに悪く言わないでくれよ、こちとら命を差し出してもいいと思うぐらい惚れてるんだ、この大悪党によ」
すると可愛はきっと元親を睨んで、「勝手になさいな! でももう秘密は許しませんからね! 次にこんな事が有ってごらんなさい、ちょん切って女にさせてやります!」と叫ぶと、どたどたと走り去って行ってしまった。全く女ってのは本当におっかない、と元親は思いながら、元就を部屋まで運んだ。
元就は本当に良く眠っていて、死んでいるのではないかと思うほどだった。なるほど、こんな眠り方をしている人間を縛り上げて鍋に入れようとされたら、誰だって怖くなって考え直すだろう。元就を布団の中に入れてやりながら、元親はこれからの事を考える。
自由も元就も手に入れてしまった。俺はこれから幸せになる。元就と一緒に。元就の行く先に幸せが有るとは限らないが、せめて彼がもう泣かずにすめばいい。
ふと元就が眼を開いた。覗き込んでみると、元就は少ししてから元親の顔を見て、「女は怖い」と呟いた。
「なんだ、起きてたのか」
「あんな恐ろしい女の前では狸寝入りぐらいしか出来ぬ」
「だな」
元親は笑って、元就の隣に座り込む。元就は布団に入ったまま、「元親」と名を呼んだ。
「どした?」
「……本当に良いのか。我はそなたに酷い仕打ちをした」
「……言ったろ。俺はあんたが幸せなのが良いんだって。だから、良いんだよ」
「……そうか」
元就は静かに溜息を吐いて、そして言った。
「……我も、そなたが幸せになれればと思うて、色々してきたつもりだが……見当違いをしておったようだな、我は……」
「……、……あ、……そうだ」
「……?」
「あの世の親父さんとお兄さんから伝言だぜ。馬鹿息子、30年以内にこっちに来たら勘当するから、俺に尻を叩かれろだとよ」
「……しり?」
元就はきょとんとした顔をして、しばらく考えて「ああ」と笑った。
「そうか、父上と兄上は……我がまだ子供だと思うておるのか」
「いや、それは……」
「……そうだな、我はまだ子供だ。家族の腕に縋る事ばかり考える幼子と変わらぬ。……そうだ、……どのような子も親の側を離れるものだ。……そしていつしかつがいを成すもの。……元親。……そなたを我のつがいにしてもよいか」
元就がそう言うので、元親は「ばか」と元就を撫でながら言う。
「最初に言ったろ、あんたを俺のつがいにするって」
「そうだな……我は馬鹿だ。そなたその気があるなら、それこそ我の尻を叩いても良いのだぞ」
「遠慮しとくよ。叩くぐらいなら他の事がしたい」
「……」
「あ、……変な意味じゃねえぜ、誤解するな」
「……ふふ、そなたは本当に優しいな」
元就は元親に手を伸ばす。元親はその手を取って、引き上げるとそのまま抱きしめた。
「俺は優しくなんかねえよ。俺だって俺が幸せになるのが目的なだけだ。そのためにはあんたが笑ってなきゃいけない、それだけだから……」
元親はそう言ったが、元就は首を振って言う。
「そなたは穏やかで温かで、静かで、滑らかで、……そなたと居ると妙に安らかな気持ちになる。知っていたのに、判っていたのに、な……。……神仏とはそなたのような者なのだろうな。そよ風のように柔らかく、日輪のように揺らめき、手を伸ばさずには居られぬのだ……」
どうか浅はかな我をそなたの所へ導いてくれ、そこがどんな場所でも構わぬ。我とてそなたが健やかに笑んでくれるならそれが一番幸せだ。
元就はそう言って元親の頬に口付けた。元親は苦笑しながら元就をぎゅうぎゅう抱きしめて、布団に転がして。
そしていつの間に来たのか、力いっぱい戸を開けた可愛に、
「殿方が! 昼間っから! 仕事もせずに! 盛ってるんじゃありません!」
そう怒鳴られて、二人は慌てて離れて、そして顔を見合わせて笑った。
おわり
++++
あまり書くもんではないですが、あまりに疲れたので設定など。
政宗ははぐれ龍で人間に捕まっていたけど、その旨を龍神から聞いた
小十郎が探し出して天に返したようです。小十郎は神宮の辺りの人
政宗は無事に天に帰れたようですが、その後小十郎に会いに
しょっちゅう地上に降りてくる上についでに火の神とか連れて来るから
大騒ぎでちょっと困ってる小十郎とかです
好事家さんはもちろん久秀で、飼っているのは小太郎です
冒頭で元親や政宗と一緒に店で売られているのは小太郎です
小太郎は神仏交じりではなく獣交じりなので髪は赤い
途中で例の事件が有ってそれでなんだか影響は受けてます
また時間を置いていじってから再掲載しようと思います。
長いお話にお付き合いいただきありがとうございました。
「ああ、心配する事は無いよ、どうせこんな事になるだろうと思って、君にあげたのと同じのを盛っておいたんだ。まったく、人の家で泣いたり叫んだりうるさいんだから。帰ってからやってくれたまえ」
半兵衛はそうつまらなそうに言うと、元親に絡めていた鎖を解き始めた。
「どうせって……前にもこんな事が?」
「殆どの連中はこんな感じさ。いざ死ぬって時になって相手の大切さを思い知って泣き喚いて止めろ止めろって怒りだすんだ。人間と言うのは本当に愚鈍だ。こんな状況にならなければ何も判らないんだからね。全く」
半兵衛は溜息を吐いて言う。
「ま、僕はいいけどね、秀吉に会うついでだし。お代は前払いだし。どうしようとね」
「……ひでよし?」
「ああ気にしないで。あっちに住んでる人なんだ。長い人生には潤いが必要だけど、まあ正直言って人間模様なんて何処もかしこも大体同じで、楽しくはなくなってきたけどね。誰かが泣いて誰かが笑ってる、ただそれだけ」
元親の体から鎖が外された。元親は元就を抱きとめてやりながら、半兵衛に尋ねる。
「あんた、人間じゃないのか」
「まあね」
「じゃあ、なんだ?」
「どうだっていい事じゃあないか、そんな事」
半兵衛はそうつまらなそうに言ったが、元親は首を振る。
「俺達は鬼って呼ばれてる、でも何故なのか知らない。なあ、あんた知ってるんなら教えてくれ。人外ってのはなんなんだ?」
「その名の通り、人でないものだよ。見分けは簡単。神仏交じりの髪は白い。……君や僕のようにね」
「白い? ……でも元就は……」
「元就君は人と混じりあってかなり長い人外だ。あと3代も混じれば完全に人になってしまうだろう。外見は既に人と変わらないし、力も極僅か、精々火事場の馬鹿力が出せるぐらいのものだろうね。僕は君よりも混じりが少ない。殆ど原種だ。だから色々知っている事は知っている」
半兵衛は部屋の隅に行き、道具を片付けながら言う。
「神仏はその昔、人と近くにあった。愚かな人間を導き愛する為に、側に暮らした。そのうち人が成長し、精神的に成熟し始めると、神仏の中に人と愛し合うものが現れた。不老不死と神通力を捨てる事になったが、彼らは人との間に子を成し、より人間に近付いた。そうこうするうちに人は歴史の中に事実を忘れ、その人間よりも特化した人外達を恐れ、敬い、時に捕まえ、殺し、迫害した。
人外はおろか本物の神仏にまで手を出そうとした人間達から神仏は逃げた。彼らは酷く優しい。天罰を加えるような真似はしなかった。だが人間は彼らを憎んだ。祈っても何もしないとね。不毛な事だよ。純粋な神仏は人界を離れ天や地に戻った。残ったのは人外だけさ。それらもそのうち淘汰され、血を交えてやがて人だけかこの世に残るだろう。
……だがね、元親君。既に僕ぐらいしか知らないこの事実を知ったからなんだというんだい。もうどうでもいい事なんだよ、理由も原因も過去もね。大切なのは今、そして明日だ。そうだろう。まぁ僕はどうでもいいけどね。こうして時々人間のつまらない欲求に付き合ってるだけの生だ。何も望まないし何も考えないよ」
さあ、お帰り。店じまいだ。
半兵衛はそう言って元親を洞窟の外へと促した。元親は元就を負ぶって、のろのろと半兵衛の後を追って行く。
しばらくすると森に出た。半兵衛はじゃあ、と言って洞窟に戻っていく。彼が穴に入った途端、穴は塞がってただの岸壁になってしまった。試しに触れてみたが、それはただの穴で、洞窟が有った気配も無い。
と、半兵衛が顔を出して来た。元親がぎょっとしていると、彼は「なんだい?」と尋ねてくる。
「まだ何か用?」
「いや、……ただ、驚いたから」
「ああ……人間には出来ないんだよね。まあ気にしないで。もう店じまいだよ。店は客が来る時に開けるものだろう? だから閉めるよ。じゃあね」
出来たら二度と来ないでね。
半兵衛はそう言って戻って行った。
元親が元就を負ぶったまま屋敷に戻ると、何故だか門の前で待っていたらしい可愛が大声を上げて元親に近付いて来て、ぼかぼかと叩いてきた。何事か、と慌てて逃げながら可愛の言う事をまとめてみると、どうやら、なんで秘密にしていたんですか、このお馬鹿さん達、と言いたいらしい。
「男の方ってどうしてこう回りくどくて、大事な事を言いたがらないんですか! なんで相談してくれなかったんです! 判ってたら元就様の事を引っぱたいてでも説得したのに!」
可愛はそう怒鳴りながら元親を追い掛け回す。元親は庭を逃げ惑ったが、物陰に隠れたほかの男衆達は恐々と言った様子で元親や可愛を見ていて、助けを求めて近付くと慌てて逃げて行った。
どうやら、女が一番怖いという俺の判断は間違って無さそうだ。
元親はそう確信しながら逃げ回ったが、ついに壁際に追い詰められてしまった。せめて元就は守ってやろうと背を壁に向けて可愛を見ると、彼女は叩いてくるどころかその場に泣き崩れてわぁわぁ言っていて、元親は何をどうしていいのかさっぱり判らなくなった。
「元親さんは優しすぎます! 元就様は貴方を殺そうとなさった方ですよ! そんなの放り出して逃げればいいんです! 元就様は大馬鹿の大悪党です! 私が殴り飛ばしてやるから出しなさい!」
そう言いつつも可愛はその場でわんわん泣くばかりで、元親は一つ溜息を吐くと、しゃがみ込んで言った。
「いいよ、馬鹿の躾は俺がしておくから。だから元就の事をそんなに悪く言わないでくれよ、こちとら命を差し出してもいいと思うぐらい惚れてるんだ、この大悪党によ」
すると可愛はきっと元親を睨んで、「勝手になさいな! でももう秘密は許しませんからね! 次にこんな事が有ってごらんなさい、ちょん切って女にさせてやります!」と叫ぶと、どたどたと走り去って行ってしまった。全く女ってのは本当におっかない、と元親は思いながら、元就を部屋まで運んだ。
元就は本当に良く眠っていて、死んでいるのではないかと思うほどだった。なるほど、こんな眠り方をしている人間を縛り上げて鍋に入れようとされたら、誰だって怖くなって考え直すだろう。元就を布団の中に入れてやりながら、元親はこれからの事を考える。
自由も元就も手に入れてしまった。俺はこれから幸せになる。元就と一緒に。元就の行く先に幸せが有るとは限らないが、せめて彼がもう泣かずにすめばいい。
ふと元就が眼を開いた。覗き込んでみると、元就は少ししてから元親の顔を見て、「女は怖い」と呟いた。
「なんだ、起きてたのか」
「あんな恐ろしい女の前では狸寝入りぐらいしか出来ぬ」
「だな」
元親は笑って、元就の隣に座り込む。元就は布団に入ったまま、「元親」と名を呼んだ。
「どした?」
「……本当に良いのか。我はそなたに酷い仕打ちをした」
「……言ったろ。俺はあんたが幸せなのが良いんだって。だから、良いんだよ」
「……そうか」
元就は静かに溜息を吐いて、そして言った。
「……我も、そなたが幸せになれればと思うて、色々してきたつもりだが……見当違いをしておったようだな、我は……」
「……、……あ、……そうだ」
「……?」
「あの世の親父さんとお兄さんから伝言だぜ。馬鹿息子、30年以内にこっちに来たら勘当するから、俺に尻を叩かれろだとよ」
「……しり?」
元就はきょとんとした顔をして、しばらく考えて「ああ」と笑った。
「そうか、父上と兄上は……我がまだ子供だと思うておるのか」
「いや、それは……」
「……そうだな、我はまだ子供だ。家族の腕に縋る事ばかり考える幼子と変わらぬ。……そうだ、……どのような子も親の側を離れるものだ。……そしていつしかつがいを成すもの。……元親。……そなたを我のつがいにしてもよいか」
元就がそう言うので、元親は「ばか」と元就を撫でながら言う。
「最初に言ったろ、あんたを俺のつがいにするって」
「そうだな……我は馬鹿だ。そなたその気があるなら、それこそ我の尻を叩いても良いのだぞ」
「遠慮しとくよ。叩くぐらいなら他の事がしたい」
「……」
「あ、……変な意味じゃねえぜ、誤解するな」
「……ふふ、そなたは本当に優しいな」
元就は元親に手を伸ばす。元親はその手を取って、引き上げるとそのまま抱きしめた。
「俺は優しくなんかねえよ。俺だって俺が幸せになるのが目的なだけだ。そのためにはあんたが笑ってなきゃいけない、それだけだから……」
元親はそう言ったが、元就は首を振って言う。
「そなたは穏やかで温かで、静かで、滑らかで、……そなたと居ると妙に安らかな気持ちになる。知っていたのに、判っていたのに、な……。……神仏とはそなたのような者なのだろうな。そよ風のように柔らかく、日輪のように揺らめき、手を伸ばさずには居られぬのだ……」
どうか浅はかな我をそなたの所へ導いてくれ、そこがどんな場所でも構わぬ。我とてそなたが健やかに笑んでくれるならそれが一番幸せだ。
元就はそう言って元親の頬に口付けた。元親は苦笑しながら元就をぎゅうぎゅう抱きしめて、布団に転がして。
そしていつの間に来たのか、力いっぱい戸を開けた可愛に、
「殿方が! 昼間っから! 仕事もせずに! 盛ってるんじゃありません!」
そう怒鳴られて、二人は慌てて離れて、そして顔を見合わせて笑った。
おわり
++++
あまり書くもんではないですが、あまりに疲れたので設定など。
政宗ははぐれ龍で人間に捕まっていたけど、その旨を龍神から聞いた
小十郎が探し出して天に返したようです。小十郎は神宮の辺りの人
政宗は無事に天に帰れたようですが、その後小十郎に会いに
しょっちゅう地上に降りてくる上についでに火の神とか連れて来るから
大騒ぎでちょっと困ってる小十郎とかです
好事家さんはもちろん久秀で、飼っているのは小太郎です
冒頭で元親や政宗と一緒に店で売られているのは小太郎です
小太郎は神仏交じりではなく獣交じりなので髪は赤い
途中で例の事件が有ってそれでなんだか影響は受けてます
また時間を置いていじってから再掲載しようと思います。
長いお話にお付き合いいただきありがとうございました。
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