タイトルに意味は無い。
個人的にそういう時代に生まれたからには
やけくそになるほか無いような気もします。
以下、かけつき。
個人的にそういう時代に生まれたからには
やけくそになるほか無いような気もします。
以下、かけつき。
「呪い師?」
元就が怪訝な顔で聞き返す。元親は努めて明るく、「おうよ」と頷く。
「その、弟がよ。どうにも最近、体が弱くてな。なんかこう……お払いとか、呪いとか、陰陽とか、そういう方面に詳しい奴を紹介して欲しいかなってよ」
「四国にも居るであろう。大体、湯治は万能だと言ったのは何処の誰だ」
「いやそれはお前だけど。やっぱり四国よりは、本土かなーってよ」
「ほう、己が田舎者だとようやく認める気になったか」
元就は皮肉げに笑って、それから「近くに相応しい者がおる。部下に案内させよう」と言った。
紹介された陰陽師はまだ初老ほどの、物静かな男だった。
人払いをしてもらい、元親は陰陽師に尋ねる。
「夢を書き換える事は出来ねぇか」
その質問に陰陽師は少し驚いたような顔をした。
「夢を渡られるのですか? なんと、生来から会得しているのは珍しいのですよ」
「だろうな、他に出来る奴の話は聞かないが……あんたらは出来るのか?」
「修行を積めば。夢を変える事は出来ます。相手の根深い苦しみを取り除くために、我々も時折いたしますが、あれは疲れますよ」
「それは別に構わねぇ。やり方を教えてくれねえか」
「良いですが、その前に一つお聞きしてよろしいですか?」
「なんだ?」
「その夢を見ている人物は、自らを日輪の申し子などと呼ぶ不届き者では?」
その言い方に元親はぎくりとしたが、陰陽師は特に表情を変えず続ける。
「彼は我らの厳島を平気で戦地にする男、我らは彼に何も施す事は出来ませぬ」
「いや、俺は、」
「ですが、貴方様が誰にどうしようと私どもは知った事ではないのです。もし貴方様が相手の夢に触れて、相手を呪い殺すような事があれば、必ず貴方様に呪いが返って来るだけの事。良いですか、夢の書き換えは治療以外ではしてはなりませぬぞ」
陰陽師はそう静かに言って、引き出しから薬を取り出すと、元親に手渡す。
「相手に飲ませると、相手は夢も見れぬ程に深く寝入ります。その間に中に入って、貴方の好きなように書き換えてしまえばいい」
「……これが毒じゃないって、信じて良いのか?」
「もし毒であれば、我らも明日には死にます」
「……なんで、俺がその、あんたらの嫌いな人間を治療しても、気にしないんだ?」
尋ねると、陰陽師はにこりと笑んで答えた。
「人を癒し人を守るのが本分でございますゆえ、宗派として彼を許す事は出来ませぬが、彼個人を憎んではいないのです。彼が何か煩っているならば、それを癒すのが我らの役目、しかしそれが出来ない以上、誰かがそれをするのをただ待つしかありますまい?」
だから私は貴方を止めようとはしないのです。それに彼はこの島を、神社をないがしろにまではしませんから、それほど嫌っているわけでもないのですよ。もしそこまで酷い男ならば、すでに彼は死んでいるでしょうしね。
元就様は頑なに、信じようとはしてくれませぬが。
弘元様も、興元様も、そして元就様も。長い間、毒を盛られ続けておったのでございます。
それは死に到るほどではなく、さりとて無害でもなく、毒はかの方々を蝕んでいったのでございます。
最後には幻覚や妄想にとりつかれてしまい、弘元様は元就様を手にかけようとまでなさいました。弘元様は我らが止めるのも聞かず、元就様を殺そうとなさったのでございます。運悪く興元様が元就様を庇った折、弘元様は柱に頭を打ち付けて……。
それから興元様にも毒が盛られ始めたのでございましょう。我らも興元様と元就様のご様子がおかしいと気付いてから、あれこれ調べたのですが、間に合わなかったのでございます。毒を盛っていたのは、一番忠義に厚いと思われていた重臣で、我々も疑うのに時間がかかってしまったのです。
ついには元就様にも毒が盛られましたが、元就様は酒を飲む事があまりございませんでしたので、効きが悪かったのでしょう。最後には興元様が元就様に無理に酒を飲ませたため、急激に様態は悪化して、ご兄弟揃って錯乱なさっていたのでございます。
興元様は元就様が自分を毒殺しようとしていると、元就様は興元様を妖怪化何かだと信じてしまったのでございます。
ついには元就様は本当に興元様を毒殺しようと、家臣の者に毒を所望したのです。それは我々が事前に食い止め、元就様には米粉を毒と偽って渡しましたゆえ、元就様が興元様を手にかける事はついになかったのでございます。
ところがその粉を元就様が使う所を見たと女中から聞いた興元様は、元就様は敵だと確信してしまい、元就様を自ら切り捨てに行ったのでございます。
そして自らの弟君を斬られた興元様は、我に返り、元就様を助けようと海に飛び込んだのです。しかし夜の海は冷たく、暗く、酒と毒に犯された興元様の体は限界を超え、あっという間に死んでしまったのでございます。我らが元就様を見つけ、助け出した時にはもう、興元様は……。
それが事実であるとお伝えし、なんとか特定した、毒を盛っていた家臣を打ち首にしても、元就様は自分が見た物が事実だと頑なに信じておられるのです。即ち、兄君を殺したのは自分だと信じて疑いもしないのです。
何度もお伝えするうちに元就様は逆上し、家臣を殺そうとまでなさいました。なんとかその場は抑えましたが、次は誰かが死ぬだろうと思うと、誰も言い出せず、しかも言葉でいくら伝えても伝わらないのでございます。
貴方様も、どうかこの事は内密に、胸にしまってくださいませ。くれぐれも、言葉で元就様に真の事を伝えようとなさいませぬよう……。何か言葉でない方法で、元就様に本当の事をお伝えできればよいのですが……。
元就が怪訝な顔で聞き返す。元親は努めて明るく、「おうよ」と頷く。
「その、弟がよ。どうにも最近、体が弱くてな。なんかこう……お払いとか、呪いとか、陰陽とか、そういう方面に詳しい奴を紹介して欲しいかなってよ」
「四国にも居るであろう。大体、湯治は万能だと言ったのは何処の誰だ」
「いやそれはお前だけど。やっぱり四国よりは、本土かなーってよ」
「ほう、己が田舎者だとようやく認める気になったか」
元就は皮肉げに笑って、それから「近くに相応しい者がおる。部下に案内させよう」と言った。
紹介された陰陽師はまだ初老ほどの、物静かな男だった。
人払いをしてもらい、元親は陰陽師に尋ねる。
「夢を書き換える事は出来ねぇか」
その質問に陰陽師は少し驚いたような顔をした。
「夢を渡られるのですか? なんと、生来から会得しているのは珍しいのですよ」
「だろうな、他に出来る奴の話は聞かないが……あんたらは出来るのか?」
「修行を積めば。夢を変える事は出来ます。相手の根深い苦しみを取り除くために、我々も時折いたしますが、あれは疲れますよ」
「それは別に構わねぇ。やり方を教えてくれねえか」
「良いですが、その前に一つお聞きしてよろしいですか?」
「なんだ?」
「その夢を見ている人物は、自らを日輪の申し子などと呼ぶ不届き者では?」
その言い方に元親はぎくりとしたが、陰陽師は特に表情を変えず続ける。
「彼は我らの厳島を平気で戦地にする男、我らは彼に何も施す事は出来ませぬ」
「いや、俺は、」
「ですが、貴方様が誰にどうしようと私どもは知った事ではないのです。もし貴方様が相手の夢に触れて、相手を呪い殺すような事があれば、必ず貴方様に呪いが返って来るだけの事。良いですか、夢の書き換えは治療以外ではしてはなりませぬぞ」
陰陽師はそう静かに言って、引き出しから薬を取り出すと、元親に手渡す。
「相手に飲ませると、相手は夢も見れぬ程に深く寝入ります。その間に中に入って、貴方の好きなように書き換えてしまえばいい」
「……これが毒じゃないって、信じて良いのか?」
「もし毒であれば、我らも明日には死にます」
「……なんで、俺がその、あんたらの嫌いな人間を治療しても、気にしないんだ?」
尋ねると、陰陽師はにこりと笑んで答えた。
「人を癒し人を守るのが本分でございますゆえ、宗派として彼を許す事は出来ませぬが、彼個人を憎んではいないのです。彼が何か煩っているならば、それを癒すのが我らの役目、しかしそれが出来ない以上、誰かがそれをするのをただ待つしかありますまい?」
だから私は貴方を止めようとはしないのです。それに彼はこの島を、神社をないがしろにまではしませんから、それほど嫌っているわけでもないのですよ。もしそこまで酷い男ならば、すでに彼は死んでいるでしょうしね。
元就様は頑なに、信じようとはしてくれませぬが。
弘元様も、興元様も、そして元就様も。長い間、毒を盛られ続けておったのでございます。
それは死に到るほどではなく、さりとて無害でもなく、毒はかの方々を蝕んでいったのでございます。
最後には幻覚や妄想にとりつかれてしまい、弘元様は元就様を手にかけようとまでなさいました。弘元様は我らが止めるのも聞かず、元就様を殺そうとなさったのでございます。運悪く興元様が元就様を庇った折、弘元様は柱に頭を打ち付けて……。
それから興元様にも毒が盛られ始めたのでございましょう。我らも興元様と元就様のご様子がおかしいと気付いてから、あれこれ調べたのですが、間に合わなかったのでございます。毒を盛っていたのは、一番忠義に厚いと思われていた重臣で、我々も疑うのに時間がかかってしまったのです。
ついには元就様にも毒が盛られましたが、元就様は酒を飲む事があまりございませんでしたので、効きが悪かったのでしょう。最後には興元様が元就様に無理に酒を飲ませたため、急激に様態は悪化して、ご兄弟揃って錯乱なさっていたのでございます。
興元様は元就様が自分を毒殺しようとしていると、元就様は興元様を妖怪化何かだと信じてしまったのでございます。
ついには元就様は本当に興元様を毒殺しようと、家臣の者に毒を所望したのです。それは我々が事前に食い止め、元就様には米粉を毒と偽って渡しましたゆえ、元就様が興元様を手にかける事はついになかったのでございます。
ところがその粉を元就様が使う所を見たと女中から聞いた興元様は、元就様は敵だと確信してしまい、元就様を自ら切り捨てに行ったのでございます。
そして自らの弟君を斬られた興元様は、我に返り、元就様を助けようと海に飛び込んだのです。しかし夜の海は冷たく、暗く、酒と毒に犯された興元様の体は限界を超え、あっという間に死んでしまったのでございます。我らが元就様を見つけ、助け出した時にはもう、興元様は……。
それが事実であるとお伝えし、なんとか特定した、毒を盛っていた家臣を打ち首にしても、元就様は自分が見た物が事実だと頑なに信じておられるのです。即ち、兄君を殺したのは自分だと信じて疑いもしないのです。
何度もお伝えするうちに元就様は逆上し、家臣を殺そうとまでなさいました。なんとかその場は抑えましたが、次は誰かが死ぬだろうと思うと、誰も言い出せず、しかも言葉でいくら伝えても伝わらないのでございます。
貴方様も、どうかこの事は内密に、胸にしまってくださいませ。くれぐれも、言葉で元就様に真の事を伝えようとなさいませぬよう……。何か言葉でない方法で、元就様に本当の事をお伝えできればよいのですが……。
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