鬼のログを完結させました。
いや考えてみると大して加筆してませんな……申し訳ない。
自分の目指しとる場所が良く判らなくなってきたんですけど
よく判らんけど今日は、エイリアンみたく、体の内側からぼこぼこ
体が膨らんじゃって、「あっ、ちょっ、今食事中なんだけど!」
って手で押さえて戻しちゃあ違うところから出てっていう
なんとも気持ち悪い夢を見ました
でもその後で言葉の通じないチカナリ 軍隊物な夢を見たのでまぁ
プラマイ0でしょうか……ナリが敵軍の強制連行的な人で
自衛のために武装して逃げ回ってたのをチカが捕虜にしてー
でも言葉が通じないし、ナリが貧弱なんでこりゃ兵隊じゃないって
そういう話になって、とりあえずスパイじゃないかどうか
身体検査(18禁)した後で面倒見てやるみたいな夢でした
以下、緋扇8 疲れています また後々加筆の方向で
いや考えてみると大して加筆してませんな……申し訳ない。
自分の目指しとる場所が良く判らなくなってきたんですけど
よく判らんけど今日は、エイリアンみたく、体の内側からぼこぼこ
体が膨らんじゃって、「あっ、ちょっ、今食事中なんだけど!」
って手で押さえて戻しちゃあ違うところから出てっていう
なんとも気持ち悪い夢を見ました
でもその後で言葉の通じないチカナリ 軍隊物な夢を見たのでまぁ
プラマイ0でしょうか……ナリが敵軍の強制連行的な人で
自衛のために武装して逃げ回ってたのをチカが捕虜にしてー
でも言葉が通じないし、ナリが貧弱なんでこりゃ兵隊じゃないって
そういう話になって、とりあえずスパイじゃないかどうか
身体検査(18禁)した後で面倒見てやるみたいな夢でした
以下、緋扇8 疲れています また後々加筆の方向で
まだ夜も明け切らぬ時間、薄暗い部屋の中、光秀はするりと着物を纏っていた。白い背には無体の跡が残っていたが、すぐにそれは消えて、黒を基調とした着物が彼の全てを包み込む。
「もう少し休んではどうかね」
布団の中から久秀が声をかけたが、光秀は「いえ」と短く返事をしただけで、振り返りもしなかった。
「約束は果たしました。方法を教えて下さい」
「……なに、簡単な事だよ。彼を侵せばいい」
その言葉に光秀は眉を寄せて振り返った。
「彼は既に彼女に侵されています。この上、私が入ったら、あの方は闇に耐え切れず消えてしまうかもしれない」
「だがこのままでは死ぬよ、彼は」
久秀はつまらなそうにそう言う。光秀は眉を寄せて考えていたが、「それしかないのですか」と尋ねた。久秀は、ああ、と短く答えて光秀を見る。
「言ったはずだ、方法は教えるが、助かるとは限らないとね。後は卿の光が強い事を祈るだけだよ。さぁ行きたまえ、私は少し眠るとしよう」
久秀はそう言って目を閉じる。光秀はその顔を蹴り飛ばしたくなったが、そのまま何もせず部屋を出た。今は時間が無い。
元就が寝かせられている部屋に向かう。元就は布団に入れられていた。久秀がそんな事をするとは思えないので、恐らく忍か何かがしてくれたのだろうと光秀は思った。布団を剥ぎ、彼の着物を開く。手当てのために巻かれた布を剥ぎ取る。傷口は黒変し、明らかに最後に見た時よりも広がっていた。元就の体温は低く、それでいて熱に浮かされた子供のように荒い呼吸を繰り返している。
光秀は少しの間悩んでから、元就の傷口に手を触れた。元就は一瞬苦しげに呻いた。光秀は彼を抱き寄せ、耳元で囁く。
「大丈夫、私です。私は貴方の影、影は主人を、光を侵せない。そうでしょう。……貴方の所へ連れて行って下さい、毛利殿……」
そして光秀は元就の傷口に手を触れたまま、目を閉じる。触れていた傷口が、ぐにゃりと沈む感覚を覚えて、光秀は目を開けた。そこには元就は居なかった。自分が触れているのは、黒い油のような、それでいて纏わりつくでない、妙な物で。光秀は顔を上げる。
そこは安土城前の、元就が倒れていた場所だった。地面は黒い物に満たされていたが、それ以外の風景は、そこに元就が倒れていない事以外には変わっていない。目の前には愛した信長の妹、お市が元就を抱いて座り込んでいる。その周りからは無数の黒い手が生え、蠢いているが、それらはただ動くばかりで明確な意思を持ってはいない。
お市は優しく微笑んで元就を撫でている。当の元就は、がたがたと震えながら顔を手で覆っていて、表情は見えなかった。光秀は眉を寄せて、彼女らへと歩み寄った。お市も光秀の姿に気付いたらしい。にこりと笑うと、元就を抱き寄せて光秀に言う。
「いらっしゃい……この子の為に、来たの……?」
「ええ」
「この子……あなたに近いものね……あなたと対になる光かもしれない……私の光……私の長政様……」
「貴方の対を死なせたのは間違いでした、それは信長公も認めておられた。このような結果になると知っていれば、公も迂闊に銃を向けたりなどなさらなかったでしょうとも」
「だからなんだと言うの……? 長政様はもう居ないの……貴方と違って、ね……ふふ」
お市は悲しげに微笑んで、元就の背を撫でた。その身体が戦慄き、何か呟いたが光秀には聞き取れなかった。叱られた子供のように丸くなった背を、黒い手が這い上がるのを見て、光秀は二人に近付く。
「毛利殿を放して下さい。その方は貴方のものではない。まして貴方の幻影のものでも」
「いや……この子、かわいいもの……かわいくて、かわいそうで、……私、この子の事は好き……この子、ずっと泣いていたのよ……ずっとずっと、一人で……あなたは、この子を助けに行かなかった、来なかった……この子はあなたの名前を呼ばなかった、あなたに助けを求めなかった……」
「毛利殿が私に気付いていないだけです。毛利殿を返して下さい」
「この子は蝶、羽根をもがれた哀れな光、……この子も長政様の所に送ってあげる、みんな、みんな……そうしたらあなた、市と一緒ね……一緒の場所に帰れるね」
「黙りなさい」
光秀がそう冷たく言い、黒い手をものともせずに二人に歩み寄る。手は光秀を止めようと動いたが、それは光秀に絡みつく事が出来ずに黒に戻っていった。お市は少し眼を見開いて、目の前まで迫った光秀を見る。
「……そう……そうなのね……判ったわ……私、貴方を待っているわ……貴方に判る場所で……」
「ええ、精々待っていなさい。毛利殿を助けた後に行ってあげますよ」
だから、毛利殿を放しなさい。
光秀にもう一度言われて、お市は小さく笑うとその姿を消した。黒も全て消えうせ、そこには顔を覆い、背を丸めて震える元就だけが残った。光秀は元就に近寄り、そっと背を撫でる。彼はびくりとした後、指の合間から光秀の姿を確認すると、光秀の腕に身を任せた。
「わ、我は、そなたを、知っておる」
「ええ、ご存知でしょうとも」
「だが、名を思い出せぬ。影、としか……」
「それで結構ですよ。貴方には私がそのように見えるのでしょう。ただ黒い、人の形をした影が」
光秀がそう優しく言うと、元就はこくんと頷いて、光秀に抱きつく。
「しかし、何故であろう、先ほどまでの影とは違い、そなたは酷く心地良いのだ……」
「誰しもの足元に控えるのが影というもの。主人を飲み込むようでは影とは言いませんとも。貴方をそっと包み込み、支えるのが私の役目……何か、怖い事がありましたか」
その冷たい背を撫でてやりながら言う。彼の体は未だに震えていたが、少しづつ収まっているように見えた。だが元就は苦しげに眉を寄せて言う。
「あ、兄上が、兄上が死んだのだ」
「ええ、昔の話です」
「あ、兄上、は、死んだのだ。我が殺した……」
「毛利殿が?」
静かに問うと、元就はがくがくと頷いて、そして何処か遠い場所を見詰めたまま続ける。
「兄上は、兄上は、我に毛利家の家督を譲らんと、……遺書が残されておった、次の毛利家当主は幸松丸ではなく元就に、と……幸松丸派の家臣が、それを隠しておった、だが兄上は確かに、死んだのだ、我に全てを譲らんと、……わ、……我が居なければ、そのような事は、起きなかった!」
「……毛利殿。それは、貴方が殺したわけではありませんよ」
「我が! 我が殺したのだ! そうであろう、我が居なければ兄上は、我に家督を譲るはずはなかった、今でも毛利家の当主であられたはずだ、なのに兄上、兄上は、兄上、我は、我はその毛利家も守れず、幸松丸も守れず! 我は、我はなんと罪深い、なんと、なんと……」
元就はそう嘆き続け、また顔を手で覆った。その体にまだ黒が纏わりついているのを見つけて、光秀は元就を抱きしめながら言う。
「毛利殿、出来ればあの時のように、貴方に根気強く付き合って差し上げたいが、このままでは間に合わなくなってしまいます。だから、端的に申し上げるのを許して下さい」
「……」
「貴方は今、自らが持つ死への願望に抗いきれず、死に逝こうとしています。貴方に纏わりつく黒は、誰もがその身の内に持つ負の感情、憎しみ、悲しみ、自虐的な欲求、そして死の望みです。貴方は今、知らず知らずの間にそれらに負け、死のうとしている」
「……我は……」
「ここで死んだなら、貴方の、そして幸松丸殿の、貴方の兄君の死は、まさしく無駄死にでしょうとも。毛利家の血筋は絶え、彼らの望みは貴方の死によって消えてしまう。貴方が悔い、泣き、嘆き、死を望む事に何の価値も意味も無い。……残酷ではありますが、貴方は他ならぬ彼らの、そして貴方の為に、帰らなくてはいけません」
「……帰る……何処へ……?」
「貴方の在るべき場所です」
光秀がそう言うと、元就は顔を上げた。光秀の顔とは少し違う場所を見ていたが、それでも彼は、光秀の言葉を聞いている。
「貴方は光、本来は天高くに在るものです。地上に住まう者を平等に愛し平等に殺す、それが貴方。地を這う全ての者が崇め、全ての者が恐れる、それが貴方。貴方は毛利に帰り、誰が何と言おうと当主としてかの地に君臨しなくては、貴方の形を維持出来ないのです」
「……我が、当主に?」
「そう、それも強い当主に。光は全ての闇を照らし、そこに住まう者達を誘引してしまうのです。もし貴方が火であれば、羽虫達は自ら焼け死に、貴方を傷つけはしませんが、貴方は光、それも地上の光。仮に貴方が蝶だとするなら、蛾達は貴方に光を求めて群がり、やがて貴方は死んでしまう。そうでしょう。現に、そうなろうとしていた。
貴方の姿は羨望と嫉妬を呼び、矮小な家臣達によって理由無く消されようとしていた。彼らは何故、貴方にそうまで引き付けられるのか判らない、だから貴方が恐ろしいのです。貴方は何故彼らをそうまで引きつけるのか判らない、だから身を守れない。ですが、光が相応しい場所、即ち天に有るならば、愚かな彼らも自然と貴方に引き寄せられ、貴方は彼らに傷付けられなくなる。貴方は……怖いでしょうが、……相応しい場所に行かなくてはならないのです」
「……」
「ただ……それは辛い事でしょう、蝶が天まで舞い上がるには相当な力が必要です。その道筋は困難で……だからこそ、私は貴方に、ここから出る事を強要は出来ません。もし貴方が……、……貴方が、このまま己の闇に飲まれ、永久の眠りにつく事を望むならば、……私はそれを止めようが無い。……折角見つけた光ですが、それは仕方無い事です。私はただの貴方の影、影は光を無くせば消えてしまう。……それが道理でしょう」
光秀はそう言って、元就の背を撫でた。元就はしばらく悩んでいたが、やがて問う。
「そなたが、我の、影なら。我の居る場所に、そなたは居るのか」
「ええ。いつでも、お側に。貴方を支え、貴方を見守っています」
「……そなたは、何故我の影になった?」
「なったのではありません。人はそれぞれ、生まれ落ちた時、既に形を持っているのです。その形に相応しい姿になるのが、人なのです。私はその時に誰かの影だった、貴方は光だった。私は貴方を見つけ、自分が貴方の影だと知ったのですよ。……そういう事が、有るでしょう。定めと言うのは陳腐ではありますが、……確かに、有るのですよ。光と影は常に対、揃っていなければ不安定になるのです。まして、……一度出会ったそれらが死に別れるような事が有れば、……光はともかく、影は存在していけません……」
「……それは、先ほどの影の事か?」
「そう思われますか」
「名を、呼んでおった。誰かの名を。しきりに……悲しげに。あまりに哀れで近付いたら、この様だ。そうか、我はあれの光にはなれぬのだな」
「仕方が無いのです。影は持ち主の姿を映すものですからね」
「……哀れな……」
元就はそう小さく呟いて、そして目を閉じる。
「……そなたは、……側に居てくれるのだな?」
「ええ。影ですから」
「……ならば、……ならば我は行く。その場所へ。兄上や、幸松丸のためにも、……毛利を守るためにも」
元就が力強くそう言った。
「そのためには、どうすればいい。まずはここから出なければなるまい」
「そうですね。では、毛利殿。ご自分の背中が見えますか?」
「?」
元就はきょとんとして、そして自分の背を見ようとした。当然首が回るわけではないので、あれこれと試した所、自分の腰の辺りにちらりと、黒い手が纏わりついているのが見えて、ぎょっとする。
「なんだこれは、忌々しい」
「だめですよ、毛利殿。それは貴方自身の闇」
「我の、……これが我の手?」
禍々しく黒い手は、ただ元就に縋りついているだけだったが、その姿を見ているだけで不愉快な気持ちになった。元就は困惑して光秀を見る。
「これをどうすればよいのだ?」
「どうもしません。貴方はただ、己の中にその闇がある事を認めればいい」
「認める?」
「受け入れるのです。己の闇を。闇夜は恐ろしいものですが、そこに何が有るか判っていればそうでもない。闇の中を知らぬが故に、人はそれを恐れるのです。他ならぬ貴方が、貴方自身を闇を知り、認め、受け入れれば、それは貴方にとって脅威でなくなり、貴方の闇は貴方の光を強める要素となる。……さぁ、心を静かに。恐れなければ、闇は静かです。大丈夫。私はずっと、貴方の側に居ますよ」
元就は不安げに己の闇を見たが、やがてそっと、その黒に手を触れた。ひやりと冷たいそれを優しく撫でてやると、その闇がすうと薄まって――。
ふと気付くと光秀は元就の隣に転がっていた。身体を起こして、元就を見る。眠ったままの彼に近寄り、着物を開いてみた。そこには赤黒い傷口が有るだけで、黒の姿は無くなっている。試しに首筋に手を当てても、体温と鼓動が感じられて、光秀は安堵の溜息を吐いた。
「毛利殿」
名を呼んで、優しく頬を撫でる。元就の呼吸は整っていて、これならもう心配は無いだろうと光秀は考え、そして彼に布団を被せると。
「申し訳ありません。約束を破ってしまいますが、どうか許して下さい」
それだけ呟くと立ち上がり、静かに部屋を出て行った。
+++
松永と明智と織田がトリオになったら存在自体が35禁ぐらいですよね、と言ってみる。
「もう少し休んではどうかね」
布団の中から久秀が声をかけたが、光秀は「いえ」と短く返事をしただけで、振り返りもしなかった。
「約束は果たしました。方法を教えて下さい」
「……なに、簡単な事だよ。彼を侵せばいい」
その言葉に光秀は眉を寄せて振り返った。
「彼は既に彼女に侵されています。この上、私が入ったら、あの方は闇に耐え切れず消えてしまうかもしれない」
「だがこのままでは死ぬよ、彼は」
久秀はつまらなそうにそう言う。光秀は眉を寄せて考えていたが、「それしかないのですか」と尋ねた。久秀は、ああ、と短く答えて光秀を見る。
「言ったはずだ、方法は教えるが、助かるとは限らないとね。後は卿の光が強い事を祈るだけだよ。さぁ行きたまえ、私は少し眠るとしよう」
久秀はそう言って目を閉じる。光秀はその顔を蹴り飛ばしたくなったが、そのまま何もせず部屋を出た。今は時間が無い。
元就が寝かせられている部屋に向かう。元就は布団に入れられていた。久秀がそんな事をするとは思えないので、恐らく忍か何かがしてくれたのだろうと光秀は思った。布団を剥ぎ、彼の着物を開く。手当てのために巻かれた布を剥ぎ取る。傷口は黒変し、明らかに最後に見た時よりも広がっていた。元就の体温は低く、それでいて熱に浮かされた子供のように荒い呼吸を繰り返している。
光秀は少しの間悩んでから、元就の傷口に手を触れた。元就は一瞬苦しげに呻いた。光秀は彼を抱き寄せ、耳元で囁く。
「大丈夫、私です。私は貴方の影、影は主人を、光を侵せない。そうでしょう。……貴方の所へ連れて行って下さい、毛利殿……」
そして光秀は元就の傷口に手を触れたまま、目を閉じる。触れていた傷口が、ぐにゃりと沈む感覚を覚えて、光秀は目を開けた。そこには元就は居なかった。自分が触れているのは、黒い油のような、それでいて纏わりつくでない、妙な物で。光秀は顔を上げる。
そこは安土城前の、元就が倒れていた場所だった。地面は黒い物に満たされていたが、それ以外の風景は、そこに元就が倒れていない事以外には変わっていない。目の前には愛した信長の妹、お市が元就を抱いて座り込んでいる。その周りからは無数の黒い手が生え、蠢いているが、それらはただ動くばかりで明確な意思を持ってはいない。
お市は優しく微笑んで元就を撫でている。当の元就は、がたがたと震えながら顔を手で覆っていて、表情は見えなかった。光秀は眉を寄せて、彼女らへと歩み寄った。お市も光秀の姿に気付いたらしい。にこりと笑うと、元就を抱き寄せて光秀に言う。
「いらっしゃい……この子の為に、来たの……?」
「ええ」
「この子……あなたに近いものね……あなたと対になる光かもしれない……私の光……私の長政様……」
「貴方の対を死なせたのは間違いでした、それは信長公も認めておられた。このような結果になると知っていれば、公も迂闊に銃を向けたりなどなさらなかったでしょうとも」
「だからなんだと言うの……? 長政様はもう居ないの……貴方と違って、ね……ふふ」
お市は悲しげに微笑んで、元就の背を撫でた。その身体が戦慄き、何か呟いたが光秀には聞き取れなかった。叱られた子供のように丸くなった背を、黒い手が這い上がるのを見て、光秀は二人に近付く。
「毛利殿を放して下さい。その方は貴方のものではない。まして貴方の幻影のものでも」
「いや……この子、かわいいもの……かわいくて、かわいそうで、……私、この子の事は好き……この子、ずっと泣いていたのよ……ずっとずっと、一人で……あなたは、この子を助けに行かなかった、来なかった……この子はあなたの名前を呼ばなかった、あなたに助けを求めなかった……」
「毛利殿が私に気付いていないだけです。毛利殿を返して下さい」
「この子は蝶、羽根をもがれた哀れな光、……この子も長政様の所に送ってあげる、みんな、みんな……そうしたらあなた、市と一緒ね……一緒の場所に帰れるね」
「黙りなさい」
光秀がそう冷たく言い、黒い手をものともせずに二人に歩み寄る。手は光秀を止めようと動いたが、それは光秀に絡みつく事が出来ずに黒に戻っていった。お市は少し眼を見開いて、目の前まで迫った光秀を見る。
「……そう……そうなのね……判ったわ……私、貴方を待っているわ……貴方に判る場所で……」
「ええ、精々待っていなさい。毛利殿を助けた後に行ってあげますよ」
だから、毛利殿を放しなさい。
光秀にもう一度言われて、お市は小さく笑うとその姿を消した。黒も全て消えうせ、そこには顔を覆い、背を丸めて震える元就だけが残った。光秀は元就に近寄り、そっと背を撫でる。彼はびくりとした後、指の合間から光秀の姿を確認すると、光秀の腕に身を任せた。
「わ、我は、そなたを、知っておる」
「ええ、ご存知でしょうとも」
「だが、名を思い出せぬ。影、としか……」
「それで結構ですよ。貴方には私がそのように見えるのでしょう。ただ黒い、人の形をした影が」
光秀がそう優しく言うと、元就はこくんと頷いて、光秀に抱きつく。
「しかし、何故であろう、先ほどまでの影とは違い、そなたは酷く心地良いのだ……」
「誰しもの足元に控えるのが影というもの。主人を飲み込むようでは影とは言いませんとも。貴方をそっと包み込み、支えるのが私の役目……何か、怖い事がありましたか」
その冷たい背を撫でてやりながら言う。彼の体は未だに震えていたが、少しづつ収まっているように見えた。だが元就は苦しげに眉を寄せて言う。
「あ、兄上が、兄上が死んだのだ」
「ええ、昔の話です」
「あ、兄上、は、死んだのだ。我が殺した……」
「毛利殿が?」
静かに問うと、元就はがくがくと頷いて、そして何処か遠い場所を見詰めたまま続ける。
「兄上は、兄上は、我に毛利家の家督を譲らんと、……遺書が残されておった、次の毛利家当主は幸松丸ではなく元就に、と……幸松丸派の家臣が、それを隠しておった、だが兄上は確かに、死んだのだ、我に全てを譲らんと、……わ、……我が居なければ、そのような事は、起きなかった!」
「……毛利殿。それは、貴方が殺したわけではありませんよ」
「我が! 我が殺したのだ! そうであろう、我が居なければ兄上は、我に家督を譲るはずはなかった、今でも毛利家の当主であられたはずだ、なのに兄上、兄上は、兄上、我は、我はその毛利家も守れず、幸松丸も守れず! 我は、我はなんと罪深い、なんと、なんと……」
元就はそう嘆き続け、また顔を手で覆った。その体にまだ黒が纏わりついているのを見つけて、光秀は元就を抱きしめながら言う。
「毛利殿、出来ればあの時のように、貴方に根気強く付き合って差し上げたいが、このままでは間に合わなくなってしまいます。だから、端的に申し上げるのを許して下さい」
「……」
「貴方は今、自らが持つ死への願望に抗いきれず、死に逝こうとしています。貴方に纏わりつく黒は、誰もがその身の内に持つ負の感情、憎しみ、悲しみ、自虐的な欲求、そして死の望みです。貴方は今、知らず知らずの間にそれらに負け、死のうとしている」
「……我は……」
「ここで死んだなら、貴方の、そして幸松丸殿の、貴方の兄君の死は、まさしく無駄死にでしょうとも。毛利家の血筋は絶え、彼らの望みは貴方の死によって消えてしまう。貴方が悔い、泣き、嘆き、死を望む事に何の価値も意味も無い。……残酷ではありますが、貴方は他ならぬ彼らの、そして貴方の為に、帰らなくてはいけません」
「……帰る……何処へ……?」
「貴方の在るべき場所です」
光秀がそう言うと、元就は顔を上げた。光秀の顔とは少し違う場所を見ていたが、それでも彼は、光秀の言葉を聞いている。
「貴方は光、本来は天高くに在るものです。地上に住まう者を平等に愛し平等に殺す、それが貴方。地を這う全ての者が崇め、全ての者が恐れる、それが貴方。貴方は毛利に帰り、誰が何と言おうと当主としてかの地に君臨しなくては、貴方の形を維持出来ないのです」
「……我が、当主に?」
「そう、それも強い当主に。光は全ての闇を照らし、そこに住まう者達を誘引してしまうのです。もし貴方が火であれば、羽虫達は自ら焼け死に、貴方を傷つけはしませんが、貴方は光、それも地上の光。仮に貴方が蝶だとするなら、蛾達は貴方に光を求めて群がり、やがて貴方は死んでしまう。そうでしょう。現に、そうなろうとしていた。
貴方の姿は羨望と嫉妬を呼び、矮小な家臣達によって理由無く消されようとしていた。彼らは何故、貴方にそうまで引き付けられるのか判らない、だから貴方が恐ろしいのです。貴方は何故彼らをそうまで引きつけるのか判らない、だから身を守れない。ですが、光が相応しい場所、即ち天に有るならば、愚かな彼らも自然と貴方に引き寄せられ、貴方は彼らに傷付けられなくなる。貴方は……怖いでしょうが、……相応しい場所に行かなくてはならないのです」
「……」
「ただ……それは辛い事でしょう、蝶が天まで舞い上がるには相当な力が必要です。その道筋は困難で……だからこそ、私は貴方に、ここから出る事を強要は出来ません。もし貴方が……、……貴方が、このまま己の闇に飲まれ、永久の眠りにつく事を望むならば、……私はそれを止めようが無い。……折角見つけた光ですが、それは仕方無い事です。私はただの貴方の影、影は光を無くせば消えてしまう。……それが道理でしょう」
光秀はそう言って、元就の背を撫でた。元就はしばらく悩んでいたが、やがて問う。
「そなたが、我の、影なら。我の居る場所に、そなたは居るのか」
「ええ。いつでも、お側に。貴方を支え、貴方を見守っています」
「……そなたは、何故我の影になった?」
「なったのではありません。人はそれぞれ、生まれ落ちた時、既に形を持っているのです。その形に相応しい姿になるのが、人なのです。私はその時に誰かの影だった、貴方は光だった。私は貴方を見つけ、自分が貴方の影だと知ったのですよ。……そういう事が、有るでしょう。定めと言うのは陳腐ではありますが、……確かに、有るのですよ。光と影は常に対、揃っていなければ不安定になるのです。まして、……一度出会ったそれらが死に別れるような事が有れば、……光はともかく、影は存在していけません……」
「……それは、先ほどの影の事か?」
「そう思われますか」
「名を、呼んでおった。誰かの名を。しきりに……悲しげに。あまりに哀れで近付いたら、この様だ。そうか、我はあれの光にはなれぬのだな」
「仕方が無いのです。影は持ち主の姿を映すものですからね」
「……哀れな……」
元就はそう小さく呟いて、そして目を閉じる。
「……そなたは、……側に居てくれるのだな?」
「ええ。影ですから」
「……ならば、……ならば我は行く。その場所へ。兄上や、幸松丸のためにも、……毛利を守るためにも」
元就が力強くそう言った。
「そのためには、どうすればいい。まずはここから出なければなるまい」
「そうですね。では、毛利殿。ご自分の背中が見えますか?」
「?」
元就はきょとんとして、そして自分の背を見ようとした。当然首が回るわけではないので、あれこれと試した所、自分の腰の辺りにちらりと、黒い手が纏わりついているのが見えて、ぎょっとする。
「なんだこれは、忌々しい」
「だめですよ、毛利殿。それは貴方自身の闇」
「我の、……これが我の手?」
禍々しく黒い手は、ただ元就に縋りついているだけだったが、その姿を見ているだけで不愉快な気持ちになった。元就は困惑して光秀を見る。
「これをどうすればよいのだ?」
「どうもしません。貴方はただ、己の中にその闇がある事を認めればいい」
「認める?」
「受け入れるのです。己の闇を。闇夜は恐ろしいものですが、そこに何が有るか判っていればそうでもない。闇の中を知らぬが故に、人はそれを恐れるのです。他ならぬ貴方が、貴方自身を闇を知り、認め、受け入れれば、それは貴方にとって脅威でなくなり、貴方の闇は貴方の光を強める要素となる。……さぁ、心を静かに。恐れなければ、闇は静かです。大丈夫。私はずっと、貴方の側に居ますよ」
元就は不安げに己の闇を見たが、やがてそっと、その黒に手を触れた。ひやりと冷たいそれを優しく撫でてやると、その闇がすうと薄まって――。
ふと気付くと光秀は元就の隣に転がっていた。身体を起こして、元就を見る。眠ったままの彼に近寄り、着物を開いてみた。そこには赤黒い傷口が有るだけで、黒の姿は無くなっている。試しに首筋に手を当てても、体温と鼓動が感じられて、光秀は安堵の溜息を吐いた。
「毛利殿」
名を呼んで、優しく頬を撫でる。元就の呼吸は整っていて、これならもう心配は無いだろうと光秀は考え、そして彼に布団を被せると。
「申し訳ありません。約束を破ってしまいますが、どうか許して下さい」
それだけ呟くと立ち上がり、静かに部屋を出て行った。
+++
松永と明智と織田がトリオになったら存在自体が35禁ぐらいですよね、と言ってみる。
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浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
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