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めでぃのくの日記
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2008-08-11 (Mon)
 一応完結したっぽいのでアップします……
 どうしたものか悩んだ結果こうなりましたが……
 とりあえずしばらく休もうかと思います。

 以下、緋扇10 あとで11も

 多くの命の闇を吸い取ったお市の刃は鋭く、濃い黒は光秀を捕縛せんと地面から無数に立ち昇り、四方八方から伸びてきた。それは幻覚に過ぎないのに妙にはっきりと形を持ち、やがて人の手の姿になると光秀に掴みかかる。光秀はそれらを鎌で切り崩し、接近してくるお市との距離を保つ以外に何も出来なかった。

 切られた手はまた黒に戻り、地面から生え出てくる。埒が明かない、と光秀は眉を寄せた。残念だが、勝てる気はしなかった。元々同じ闇、ただでさえ相性が悪いのに加えて、これほどまでに強化された黒を消し去る術を、光秀は持っていない。闇を消すのは光だ。だが元就はまだ戦える状態ではなく、まして全ては織田家中の問題であり、光秀は己だけで彼女をなんとかしようとしていた。

 しかしこれほどまで強力な闇を、どうやって払うのか。光秀には見当がつかなかった。そもそも、黒に阻まれて近付く事も出来ないのだ。光秀はとにかく逃げ、黒を払いながら考えるしかなかったが、彼の体力も無限ではなく、このままでは負けてしまうだろう事は判っていた。光秀は焦った。

 焦りは人を弱くする。光秀も長年戦場に出た武将であるから、それは判っている。しかし冷静になる時間も、お市は与えなかった。ひっきりなしに飛んで来る手を逃れ、ただ生き続ける事しか、光秀には出来なかった。





 ふと馬が止まった。元就は痛みを堪えて眉を寄せていたが、気付いて顔を上げる。小太郎が元就を見ていた。「平気だ」と言っても、小太郎は動かない。元就は一度怪訝な顔をして、それから「着いたのか」と問うた。小太郎は一つ頷いた。そして元就は辺りを見渡して、眼を見開いた。

 傷口の痛みを堪え、ずっと目を閉じていた元就は、景色がどのように変化したか、判らなかった。馬の揺れと風の音で、何も聞こえていなかった。

 焼き崩れた建物や、切り捨てられた人間が眼に入る。肉の焼ける嫌な臭いがした。町は焼け、そこかしこから煙が上がり、そして時折かすかな悲鳴が聞こえた。道にはぽつりぽつりと黒変した人間が転がって、がたがた震えている。

 元就はしばらく唖然としていたが、ややして馬を下りた。その際、身体を支えるために手を着いたので元就の左肩は酷く痛んだが、なんとか堪えて地に立つ。小太郎は降りなかった。

 馬の向いている方を見ると、特別大きな建物が燃えているのが見えた。元就は「そうか」と頷いて、小太郎を見る。

「あそこだな」

 小太郎は一つ頷いて、己の小太刀を取り出すと元就に差し出してきた。それで初めて、自分が武器になる物を何も持って来なかった事に気付いた。元就は小太刀をしばらく見ていたが、やがて首を振る。

「武将にとって刀や槍が己の全てであるのと同じで、そなたにとっても武器は大切なものであろう。我は我でなんとかするゆえ、心配するでない。ここまで世話になった。そなたの主にも礼を言うておいてくれ」

 小太郎はそう言われてもしばらくそのままの姿勢で居たが、元就があくまで受け取らないので諦めたように小太刀をしまった。代わりに馬から降りようとするので、元就はもう一度「よい」と留める事になった。

「そなたが主から命じられたのは、我をこの場所に厄介払いする事だけだ。そんな事は起こりえないとは思うが、万が一そなたが戦い、怪我をしたならお節介を焼いた事が知れてしまう。そなたには充分世話をかけた。後は己でなんとかするゆえ、そなたは帰るがよい。それが我のためと思うて」

 小太郎はまた困ったような顔をしていたが、やはり今度も諦めて、手綱に手をかけた。ぽくぽくと軽く歩かせて、来た方へ戻ったが、そこでまた止まって元就を見る。それに軽く手を振って、元就は踵を返し、本能寺へと歩き始めた。小太郎はしばらくその背を見ていたが、やがてその場を去った。


 
 酷く左肩が痛んだ。元就は歩くたびに鈍痛が走るのに耐え切れず、着物の中を覗きこんだ。白かった布がじわりと赤黒く変色しているのを見て、元就は、ああ、と頷いた。忍は我を手当てしたかったのかもしれない、と。

 だが元就には時間が無かった。どうしてそう思うのか、元就にも良く判らなかったが、とにかく光秀の元に急がねばならない、と足を速めた。そこら中で人間が助けを求めるように手を伸ばし、呻き声を出したが、元就は気に留めなかった。気付いてもいなかった。どうしようもない焦りと左肩の痛みに何もかもが判らなくなってきて、仕舞いには自分が何故こんな所を歩いているのかも理解出来なくなってきたが、それでも元就は歩き続けた。

 ふと、ぬるぬると油のように黒が地面を滑って来た。元就は気付いたが、止まりはしなかった。黒は元就の側まで来ると、がばりと元就に飛び掛り覆いかぶさった。が、元就は動じなかった。

「我が何度も同じ手を食うと思うか。散れ!」
 
 力強く声を発すると、黒は途端に元就から弾かれて、地面に戻った。元就はそれを無視して歩み続ける。黒はしつこく元就を追って来たが、あと少しという所まで近寄るとまるで火でも浴びたようにくしゅくしゅになってしまい、元就に触れる事も出来なかった。そんな物を元就が気に留めるわけも無く、彼はずいずいと進んで行く。

 本能寺周辺は地面も何もかも黒で塗りつぶされていたが、どうした事か元就が歩く場所だけ、自然と黒が避けて道が出来た。元就から一定の距離を保って手がうぞうぞと動いていたが、元就がそちらに歩みだすと途端に折れ曲がって黒に戻ってしまった。

「明智!」

 名を呼んだ。返事は無い。黒が濃いので、近くだろうが、どうにもこの寺は存外広い、と元就は顔を顰めた。見上げると寺が轟々と音を建てて燃えていたが、不思議と熱さを感じなかった。恐らくこの黒が放つ冷気が、熱気を遮っているのだろうと元就は思った。

「明智、何処だ」

 声を張り上げると傷が痛んだので、元就は今度は小さく名を呼び、そしてまた歩き始めた。





 つう、と額から汗が流れた。が、それを拭う暇も無い。光秀はしきりに飛び、払い、黒から身を守っていた。体力ばかりが奪われて、お市に接近する事も叶わない。対する彼女は邂逅して以来、光秀ににじり寄る以外の事をしておらず、平然としている。

 これは、どうにもなりませんね。

 判っていたが、光秀は鎌を振るう事を止めなかった。これほど戦い続け、これほど疲れたのは初陣の時以来で、光秀は何もかも投げ出してしまいたいと思うほどだった。大鎌は重く、次第に両腕の感覚が無くなってきている。放り捨てて寝転がってしまいたい気分だったが、それは何もかもの終わりを意味するので、それだけは出来ないと光秀は動き続けた。

「大丈夫……? もう疲れた……?」

 お市に問われた。途端、黒い手は一度全てが黒に戻り、一時の平穏が訪れた。光秀は鎌の先端を地面に着け、一時的に身体を休める。鼓動と、自らの呼吸音だけが、やけに大きく響いて聞こえた。

「もっと楽しみましょう……あなたと私は同じだもの……ね……?」

 お市がそう微笑んで言うので、光秀は苦笑して言う。

「貴方と同じ物扱いを受けるとは不本意な事です。ご安心なさい、貴方を公の元に送って差し上げます」

「……私を……? 兄様の所に……? あなた、が?」

 お市はそう言って、それから狂ったように笑い出した。

「あなた、如きが!? ……うつけが!」

 お市がそう叫んだ途端、黒から無数の手が飛び出す。光秀は目を細めて、再び鎌を構えた。

「あなたこそ、兄様の所に行っていいのよ……! 逝かせてあげる……! あなた、兄様の事、好きだったものね……だから、死んでいいのよ……!」

 今度は手が動かなかった。お市が自ら、薙刀を構えて光秀に駆けて来る。光秀はその姿が間合いに入ると同時に鎌を振った。だが刃はお市を捉えなかった。代わりに切れたのは黒い腕で、その手に放り上げられたお市が、頭上から薙刀を振るって来た。咄嗟に左で受けたが、全体重をかけたその力は強く、光秀は左鎌を弾かれ、そのまま腕を切られた。咄嗟に身を引いたので取られはしなかったが、その衝撃で重心がずれた。地面に降り立った途端、お市が第二撃を放つ。

 大きく振った薙刀を右で受けたが、左腕に思うように力が入らない。弾かれ、光秀は完全に無防備になってしまった。お市が笑うのが見えた。光秀はそれでも諦めず、弾かれた鎌を握り直し、お市に向って振るう。間に合わない。お市の方が早いのが判った。それでも相討ちに持っていけるかもしれない、と、光秀は渾身の力で、鎌を振るった。お市の刃が、光秀を捕らえた。







「明智!」

 その姿に気付いた時、光秀は追い詰められていた。いつも冷静で静かな光秀が、肩で息をしているのを見つけた。このままでは間に合わない、と元就は瞬時に悟った。まだ見えるだけで距離が有る。走って行っても、武器も無しに何が出来るはずもない。

 元就はきょろと辺りを見渡したが、一面黒ばかりで武器になりそうな物も見つからない。ふ、と気付いて空を見上げた。このような大惨事が起こっているというのに、空ばかり阿呆のように清んで青々としていた。その中天に、日輪が眩く輝いている。

 元就は咄嗟に、手を伸ばした。それでどうなるでもないのに、縋らずにはいられなかった。

「我は、我はもう逃げぬぞ!」

 声を出すたびに身体が痛んだ。じわ、と身が濡れるのが判った。腕を高く上げた負担のかかる格好で、しかし元就は顔を顰めながらも叫んだ。

「認める、我はそなたと同じ物、光、我はもう逃げぬ、戦ってみせよう! だから我の影を守ってくれ、我はそなたの子、そなたの申し子! 我はもう逃げぬ、戦う、だから我に力を、今だけでよい、そなたの力を貸してくれ!」

 その時元就は天から何かが降って来るのが見えた。酷くゆっくりと落ちて来る。しかもそれは光を反射して、日輪そのもののように輝いていた。元就は眩さに目を細めながらも、それに手を差し伸べる。次第に近付いてくるそれは、どうやら円形の金属のようだった。それが武器であると咄嗟に判断した元就はより強く手を伸ばした。

 指先がそれに触れた途端、眩い光が辺りを照らした。元就は思わず目を閉じたが、それをしかと掴んで放さなかった。




 
 光秀は相討ちか己の負けを確信していた。だが、お市は驚いたように目を見開き、動きを止めた。そのせいで、光秀が放った渾身の一撃が、お市を切り裂く事になった。

「あ……」

 お市は何が起こったのか判らないという顔をして、その勢いのまま地面に倒れた。光秀も何故お市が止まったのか判らず、後ろを振り返る。太陽のような眩い光が地上に有り、しかもそれがなにやら人影を映し出していた。光秀はもしや、と気付いて、お市を見る。

 彼女の傷は深く、死が迫っていた。だがお市は幸せそうに微笑んで、空に手を伸ばしている。

「な、がまさ、さま、……むかえに、きて、くれたんだね……!」

 お市の頬を幾筋も涙が伝った。それすらも眩い光に照らされて、新たに光を作り出していた。

「まぶしい……ながまささま、……いちの、……ひかり……」

 やがて延ばされていた手が、すとんと力を失って地に落ちる。それと同時に、地面を満たしていた黒がじりじりとお市へと戻って行った。

 地面が色を戻し始めた時、眩い光がやんで、どさりと人の倒れる音がした。光秀は振り返って、そしてそこに倒れている人影を見て、驚いた。

「毛利殿!?」

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