まぁ、よく言いますけど、頭が良くないと書けない事って沢山有りますよ
私はその点、頭がボァーっとしているので、正直全然駄目だと思います
なんなんでしょう、最近特にボァーっとして記憶が霧散していきます
とても簿記一級の試験とか受けようとしてる奴とは思えないぐらい
ほんと、2、3分前の事もスッカリ忘れてるような事ばかりです
まだ脳はやられてないはずなんですけどね
以下、主従の5
私はその点、頭がボァーっとしているので、正直全然駄目だと思います
なんなんでしょう、最近特にボァーっとして記憶が霧散していきます
とても簿記一級の試験とか受けようとしてる奴とは思えないぐらい
ほんと、2、3分前の事もスッカリ忘れてるような事ばかりです
まだ脳はやられてないはずなんですけどね
以下、主従の5
いっそ賞賛に値するほど、豊臣の侵攻は迅速かつ的確だった。
織田より正式に盟約破棄の旨を記した書が届き、それから間を置かず、豊臣は東より攻め寄せた。毛利側も応戦したが、数で追われて堪えきれない。
毛利は漁夫の利の形で中国を治めた身だ。領土内をまだ知り尽くしているわけでもないし、また防衛線も強力ではない。その上、滅んだ尼子や大内の残党も動いている。中国は毛利の物になったとは言いながら、しっかりと統治出来ているのは、その僅かにすぎない。領地には裂目のように弱い場所が有り、それを巧みに抜けられる。
豊臣の軍師が切れ者であるとは言いながら。これはあまりに巧み過ぎた。内通者が居る事は疑いようもない。が、特定には至れない。
連日、四国に船や鳥が書を運んだが、返事までには何日もかかるだろう。迅速に海を越えて連絡する手段を用意しなかったのは、元就の怠慢でもある。もちろん、恐れも有った。あまり簡便な連絡手段を用いると、時に悪用されかねないという事だ。
領土に隔たりが有り、人員も多い。裏切り者も出現してしかるべきだ。その時に悪用されたくない。そう思うあまりに、行動出来なかった。
正直に言えば、元就は毛利側の人間をあまり信用していない。それは父と兄を毒殺したのが、毛利側の人間だったからだ。故に裏切り者も内通者も、毛利側から出るものと半ば決めつけている節が有る。だから、毛利から長曾我部への伝令は、限られた者にしか決して使えぬ事が好ましかった。たとえその結果、伝達自体が遅延したとしても。
毛利の領土は次々に奪われ、いよいよ本来の防衛線である高松城にまで差し込まれた。そこからは毛利本来の戦い方を教えた将や、兵が守っているため、時間は稼げると元就は思っていた。が、何か嫌な気持ちになるのだ。ここまで易々と攻め込まれたのは、本当に我らが不利だったから、それだけなのか、と。
元就も幾度か戦を経験し、苦い思いをしたから、判る。良くない気配だ。何か見落としが有る時の。元就はしばらく悩んで、自ら最前線である高松城へと赴く事を決めた。
彼が前線に出る事は、さして珍しい事ではない。だから残す兵や将には、元就無しで戦う術が与えられていた。彼らに国を預け、元就は東へと向かう。彼らが裏切る可能性も無くはないが、考えているような時間も無い。それに万が一裏切りが発生したとしても、それは中国内の事であって、四国内の事ではない。元就にとってはその事実が最も重く、大きいのだ。
高松城を見下ろす山中まで来た時、元就はそれに気付いた。高松城を中心とした平原の一帯が、水没しているのだ。元就は思わず眉を寄せる。
「こ、これは……水攻めとは言いながら、このような大規模な物は見た事が有りませぬ!」
連れて来た家臣の一人が、驚きの声を上げる。元就もそれには同意見だった。高松城が攻められ始めて、何日も経ってはいない。短時間で、これほどの規模の水攻めを展開出来る、その速さと力に元就はここにきて思い知らされた。中国、四国を落としたとはいえ、所詮は激戦地でなかったという、それだけなのだ。東の国は長い間戦に明け暮れていたから、あちらの方が何枚も上手のはず。
勝てる気がしない、と元就は一瞬考えて、すぐにそれをかき消した。勝てると思わねば、勝てる筈がない。今必要なのは感情ではなく、方策だ。元就はしばらく考えて、ひとまず水攻めの要となっている、堤防に向かう事にした。
高松城はぐるりと囲うように作られた堤防のせいで水没している。これを一ヶ所でも破壊すれば、一気に水が引くだろう事は予測出来た。しかし相手もそれを判っている。堤防には守備隊がおり、見える範囲でも相当な数の兵が控えていた。こちらは援軍のつもりで来ているから、大した量の兵ではない。守備隊にも敵うかどうか、ましてかなり頑強に作られている堤防を砕くとなると……元就は溜息を吐いた。こうした規模の戦は元就にとっても初めての事である。考える時間が欲しかった。今まさに、孤立した城内に兵や民が居るという事実が、それを許さない。
とにかく策無しで堤防を破るのは無理だろう。ならば山を迂回するしかない。増援も必要だ。高松城は難攻不落の防衛線のはずだった。ここを容易く破られれば、中国奥地にまで攻め込まれる。安芸と四国に向けて伝令を出し、元就達は山へと向かう。
豊臣側のほうが有利な戦だ。彼らは待つだけで勝てるのだから。その為に堤防と本陣さえ守り抜けばいい。一方の毛利は、本陣を落としたところで、堤防を解放しなければ、高松城を救えない。堤防を解放したところで、高松城の者達はもはや戦力にならない。毛利側には援軍を待つ時間も無い。全く手の出しようがなかった。
それでも何かしないわけにはいかない。元就は手勢を率いて敵本陣を目指した。が、何度か小競り合いをして、豊臣の兵がよく訓練されている事が判った。下手に出ればこちらがやられる可能性も有る。加えて、元就達が引いても、彼らは一切追って来ない。戦いようが無い、と元就は思った。
それでも元就はあれこれと画策はして、その一部は成功もした。例えば敵の厩舎に攻撃をしかけて、馬を大層暴れさせた。とはいえ、大した被害は出せない。豊臣の軍勢は何においても冷静で、すぐに対処されてしまう。夜陰に乗じて一部の兵が本陣を狙ったが、引き返して来た。本陣には大将の姿が無いと言う。それに死ぬ前に気付けただけでも評価は出来た。問題は自分達が狙うべきものが、いよいよ無くなってしまった事だ。
そうして八方塞がりの状況で、それでも動きを止めないで居ると、ある時豊臣から使者がやって来た。国主長曾我部元親と話をつけたいという。元就は眉を寄せた。元親は元来、政が苦手だ。前に出したら相手の口車に乗せられて、何を言わされるか判らない。加えて、元親は未だ四国に居る。彼の到着を待っている間に、高松城で何が起こるかも判らない。元就はまたしばらく悩んで、そして使者に返事を伝えた。
それから家臣に、本国に通達を、と頼む。すると彼は困ったような顔で、「いつまでこのような事をなさるのですか」と言う。意味が判らず顔を顰めていると、彼は恐る恐るといった様子で言う。
「我々はいつも四国より先に戦い、前線に赴き、実際に死者も出しております。本国の者達は安穏と暮らし、加えてあのからくりに没頭し財を浪費する始末……元就様はいつまで、この立場に甘んじておられるのですか」
「このような大事に、瑣末な事で我の時間を奪うでない」
元就は言い捨てて、話を終わらせようとした。だが彼は口を閉じない。
「前線に赴いて戦っておられるのは、いつも元就様だけではありませんか。主権は毛利に残すと言いながら、手先として操っているとしか思えませぬ。民達が元就様をどう言っているか、知らないわけではありますまい。織田も豊臣も、好条件で降伏を迫っております。元就様は何故、四国に従っておられるのですか」
何故? 何故従っているのかだと。
元就は眉を寄せ、そして大きく溜息を吐く。
そんな事は、我が聞きたいぐらいだ。
「……主を持ったからには、主に従うのが道理というもの。それが我の理念と相反しない限りは、そうする事に何の疑問も無かろう……」
「では元就様は、四国の意向に何の疑問も無いと、何の不満も無いとおっしゃるのですね」
こやつはいったい、我に何を言わせようとしているのだ。
元就は妙に嫌な気持ちになりながら、素っ気なく頷いて、それで話を終わらせた。
どいつもこいつも、何が言いたいのだ。我に、……我に何をさせたいのだ。
何をさせたいのかは、判っている。四国から離反させたがっている人間が居るのだ。しかし何故そうさせたいのかも、何故そうせねばならないのかも判らない。ましてこうまで遠回しに、自分の機嫌を損ねる事を承知で問うてくるのか、元就には判らない。
判っている事も有る。
彼らの要求に応えない事に、理由は無いという事だ。
僅かな家臣を連れて、豊臣の陣へと向かった。案内されたのは木で造られた砦のようなもので、彼らは一夜城と呼んでいた。城と言うにはあまりに粗末では有るが、僅かな時間で建てたにしては頑強な作りではあった。
内部も辛うじて砦の形を成しているだけで、しかし立派にその機能を果たしていた。元就は静かに感心しながら、奥の間へと向かう。
案内された部屋には白髪の男が立っていた。つくづく色の薄い人間と縁が有る、と元就は少し嫌な気持ちになった。そして色の薄い人間は、元就にとって嫌な相手でもある。癖が強いのだ。
男は竹中半兵衛と名乗った。豊臣秀吉の軍師だと言う。秀吉自身は一夜城にも、前線にも居ないようだった。
「こちらの国主を呼びだしておいて、そちらは一介の軍師のみとは、随分と舐められたものだ」
「気を悪くしないでくれたまえ、元就君。お互い軍師として話を出来るいい機会じゃあないか。僕は君と話がしたかったんだよ」
微笑む顔が気に入らない。元就は努めて表情に出さないままそう思った。話とは、と続きを促すと、半兵衛は微笑んだまま「もう聞いていると思うけど」と言う。
「豊臣も織田も、君の事は高く評価しているよ。今すぐこちらに来てくれるなら、君の領地は保障する。それでどうかな。もちろん高松城の水攻めも止めよう。ただし、長曾我部元親君の首と引き換え……という話だよ」
「ならばこれ以上話す事は無い。我らは織田に頭を垂れぬ。無論、主の首も落とさせぬ」
「そうかい。困ったね。呑んでもらえないと、僕としても困る。後味の悪い仕事になりそうだからね。でも君と話すべき事が無いというのは、同意出来るよ、元就君」
ふいに気配。家臣達も気付いた。部屋を囲まれている。見えないが、気配が有る。大勢の兵に囲まれているのが判った。家臣が刀を抜こうとしたが、元就はそれを制した。
「しかし、このままでは……」
「殺す気が有れば、もっと早くにそうしておる。……殺す事は目的ではない。ならばこちらも死ぬべきではない。生きてこそ何事か成せる。死ねば口を利用される……動くな」
「そうだよ、大人しくしてくれれば、君達に危害を加えたりはしない」
半兵衛は微笑んだまま、兵を部屋に招き入れる。家臣達はやむなく刀を捨て、元就もそうした。
「……我等をどうするつもりだ」
静かに問えば、半兵衛は「教えてあげる義理は無いけれど」とまた笑って、それから元就の顔を覗き込む。
「自らの手を汚すのは嫌いだし、疲れるから。上手く利用しようと思っているんだ。君達にここに居てもらえれば、中国は勝手に落ちる。意味は、判るよね?」
半兵衛が笑った。元就はふと、光秀の言葉を思い出す。確かに、嫌な男だ。あの光秀がそう言うからには、相当な。
+++
高松城跡を見に行った時、いやぁ広い平原だなあと思った記憶が有るので、
堤防とやらも結構な物だったんだろうなぁと思います
5月の高松城は、すげぇ熱かった……
平日だったので、資料館が閉まってたのが残念でした
地元の人は皆「何処からおいでなすった」と聞いてきたので
愛媛と広島と答えたらきょとんとされました
そう言えば大宰府の時もそんな反応されたなあ……
織田より正式に盟約破棄の旨を記した書が届き、それから間を置かず、豊臣は東より攻め寄せた。毛利側も応戦したが、数で追われて堪えきれない。
毛利は漁夫の利の形で中国を治めた身だ。領土内をまだ知り尽くしているわけでもないし、また防衛線も強力ではない。その上、滅んだ尼子や大内の残党も動いている。中国は毛利の物になったとは言いながら、しっかりと統治出来ているのは、その僅かにすぎない。領地には裂目のように弱い場所が有り、それを巧みに抜けられる。
豊臣の軍師が切れ者であるとは言いながら。これはあまりに巧み過ぎた。内通者が居る事は疑いようもない。が、特定には至れない。
連日、四国に船や鳥が書を運んだが、返事までには何日もかかるだろう。迅速に海を越えて連絡する手段を用意しなかったのは、元就の怠慢でもある。もちろん、恐れも有った。あまり簡便な連絡手段を用いると、時に悪用されかねないという事だ。
領土に隔たりが有り、人員も多い。裏切り者も出現してしかるべきだ。その時に悪用されたくない。そう思うあまりに、行動出来なかった。
正直に言えば、元就は毛利側の人間をあまり信用していない。それは父と兄を毒殺したのが、毛利側の人間だったからだ。故に裏切り者も内通者も、毛利側から出るものと半ば決めつけている節が有る。だから、毛利から長曾我部への伝令は、限られた者にしか決して使えぬ事が好ましかった。たとえその結果、伝達自体が遅延したとしても。
毛利の領土は次々に奪われ、いよいよ本来の防衛線である高松城にまで差し込まれた。そこからは毛利本来の戦い方を教えた将や、兵が守っているため、時間は稼げると元就は思っていた。が、何か嫌な気持ちになるのだ。ここまで易々と攻め込まれたのは、本当に我らが不利だったから、それだけなのか、と。
元就も幾度か戦を経験し、苦い思いをしたから、判る。良くない気配だ。何か見落としが有る時の。元就はしばらく悩んで、自ら最前線である高松城へと赴く事を決めた。
彼が前線に出る事は、さして珍しい事ではない。だから残す兵や将には、元就無しで戦う術が与えられていた。彼らに国を預け、元就は東へと向かう。彼らが裏切る可能性も無くはないが、考えているような時間も無い。それに万が一裏切りが発生したとしても、それは中国内の事であって、四国内の事ではない。元就にとってはその事実が最も重く、大きいのだ。
高松城を見下ろす山中まで来た時、元就はそれに気付いた。高松城を中心とした平原の一帯が、水没しているのだ。元就は思わず眉を寄せる。
「こ、これは……水攻めとは言いながら、このような大規模な物は見た事が有りませぬ!」
連れて来た家臣の一人が、驚きの声を上げる。元就もそれには同意見だった。高松城が攻められ始めて、何日も経ってはいない。短時間で、これほどの規模の水攻めを展開出来る、その速さと力に元就はここにきて思い知らされた。中国、四国を落としたとはいえ、所詮は激戦地でなかったという、それだけなのだ。東の国は長い間戦に明け暮れていたから、あちらの方が何枚も上手のはず。
勝てる気がしない、と元就は一瞬考えて、すぐにそれをかき消した。勝てると思わねば、勝てる筈がない。今必要なのは感情ではなく、方策だ。元就はしばらく考えて、ひとまず水攻めの要となっている、堤防に向かう事にした。
高松城はぐるりと囲うように作られた堤防のせいで水没している。これを一ヶ所でも破壊すれば、一気に水が引くだろう事は予測出来た。しかし相手もそれを判っている。堤防には守備隊がおり、見える範囲でも相当な数の兵が控えていた。こちらは援軍のつもりで来ているから、大した量の兵ではない。守備隊にも敵うかどうか、ましてかなり頑強に作られている堤防を砕くとなると……元就は溜息を吐いた。こうした規模の戦は元就にとっても初めての事である。考える時間が欲しかった。今まさに、孤立した城内に兵や民が居るという事実が、それを許さない。
とにかく策無しで堤防を破るのは無理だろう。ならば山を迂回するしかない。増援も必要だ。高松城は難攻不落の防衛線のはずだった。ここを容易く破られれば、中国奥地にまで攻め込まれる。安芸と四国に向けて伝令を出し、元就達は山へと向かう。
豊臣側のほうが有利な戦だ。彼らは待つだけで勝てるのだから。その為に堤防と本陣さえ守り抜けばいい。一方の毛利は、本陣を落としたところで、堤防を解放しなければ、高松城を救えない。堤防を解放したところで、高松城の者達はもはや戦力にならない。毛利側には援軍を待つ時間も無い。全く手の出しようがなかった。
それでも何かしないわけにはいかない。元就は手勢を率いて敵本陣を目指した。が、何度か小競り合いをして、豊臣の兵がよく訓練されている事が判った。下手に出ればこちらがやられる可能性も有る。加えて、元就達が引いても、彼らは一切追って来ない。戦いようが無い、と元就は思った。
それでも元就はあれこれと画策はして、その一部は成功もした。例えば敵の厩舎に攻撃をしかけて、馬を大層暴れさせた。とはいえ、大した被害は出せない。豊臣の軍勢は何においても冷静で、すぐに対処されてしまう。夜陰に乗じて一部の兵が本陣を狙ったが、引き返して来た。本陣には大将の姿が無いと言う。それに死ぬ前に気付けただけでも評価は出来た。問題は自分達が狙うべきものが、いよいよ無くなってしまった事だ。
そうして八方塞がりの状況で、それでも動きを止めないで居ると、ある時豊臣から使者がやって来た。国主長曾我部元親と話をつけたいという。元就は眉を寄せた。元親は元来、政が苦手だ。前に出したら相手の口車に乗せられて、何を言わされるか判らない。加えて、元親は未だ四国に居る。彼の到着を待っている間に、高松城で何が起こるかも判らない。元就はまたしばらく悩んで、そして使者に返事を伝えた。
それから家臣に、本国に通達を、と頼む。すると彼は困ったような顔で、「いつまでこのような事をなさるのですか」と言う。意味が判らず顔を顰めていると、彼は恐る恐るといった様子で言う。
「我々はいつも四国より先に戦い、前線に赴き、実際に死者も出しております。本国の者達は安穏と暮らし、加えてあのからくりに没頭し財を浪費する始末……元就様はいつまで、この立場に甘んじておられるのですか」
「このような大事に、瑣末な事で我の時間を奪うでない」
元就は言い捨てて、話を終わらせようとした。だが彼は口を閉じない。
「前線に赴いて戦っておられるのは、いつも元就様だけではありませんか。主権は毛利に残すと言いながら、手先として操っているとしか思えませぬ。民達が元就様をどう言っているか、知らないわけではありますまい。織田も豊臣も、好条件で降伏を迫っております。元就様は何故、四国に従っておられるのですか」
何故? 何故従っているのかだと。
元就は眉を寄せ、そして大きく溜息を吐く。
そんな事は、我が聞きたいぐらいだ。
「……主を持ったからには、主に従うのが道理というもの。それが我の理念と相反しない限りは、そうする事に何の疑問も無かろう……」
「では元就様は、四国の意向に何の疑問も無いと、何の不満も無いとおっしゃるのですね」
こやつはいったい、我に何を言わせようとしているのだ。
元就は妙に嫌な気持ちになりながら、素っ気なく頷いて、それで話を終わらせた。
どいつもこいつも、何が言いたいのだ。我に、……我に何をさせたいのだ。
何をさせたいのかは、判っている。四国から離反させたがっている人間が居るのだ。しかし何故そうさせたいのかも、何故そうせねばならないのかも判らない。ましてこうまで遠回しに、自分の機嫌を損ねる事を承知で問うてくるのか、元就には判らない。
判っている事も有る。
彼らの要求に応えない事に、理由は無いという事だ。
僅かな家臣を連れて、豊臣の陣へと向かった。案内されたのは木で造られた砦のようなもので、彼らは一夜城と呼んでいた。城と言うにはあまりに粗末では有るが、僅かな時間で建てたにしては頑強な作りではあった。
内部も辛うじて砦の形を成しているだけで、しかし立派にその機能を果たしていた。元就は静かに感心しながら、奥の間へと向かう。
案内された部屋には白髪の男が立っていた。つくづく色の薄い人間と縁が有る、と元就は少し嫌な気持ちになった。そして色の薄い人間は、元就にとって嫌な相手でもある。癖が強いのだ。
男は竹中半兵衛と名乗った。豊臣秀吉の軍師だと言う。秀吉自身は一夜城にも、前線にも居ないようだった。
「こちらの国主を呼びだしておいて、そちらは一介の軍師のみとは、随分と舐められたものだ」
「気を悪くしないでくれたまえ、元就君。お互い軍師として話を出来るいい機会じゃあないか。僕は君と話がしたかったんだよ」
微笑む顔が気に入らない。元就は努めて表情に出さないままそう思った。話とは、と続きを促すと、半兵衛は微笑んだまま「もう聞いていると思うけど」と言う。
「豊臣も織田も、君の事は高く評価しているよ。今すぐこちらに来てくれるなら、君の領地は保障する。それでどうかな。もちろん高松城の水攻めも止めよう。ただし、長曾我部元親君の首と引き換え……という話だよ」
「ならばこれ以上話す事は無い。我らは織田に頭を垂れぬ。無論、主の首も落とさせぬ」
「そうかい。困ったね。呑んでもらえないと、僕としても困る。後味の悪い仕事になりそうだからね。でも君と話すべき事が無いというのは、同意出来るよ、元就君」
ふいに気配。家臣達も気付いた。部屋を囲まれている。見えないが、気配が有る。大勢の兵に囲まれているのが判った。家臣が刀を抜こうとしたが、元就はそれを制した。
「しかし、このままでは……」
「殺す気が有れば、もっと早くにそうしておる。……殺す事は目的ではない。ならばこちらも死ぬべきではない。生きてこそ何事か成せる。死ねば口を利用される……動くな」
「そうだよ、大人しくしてくれれば、君達に危害を加えたりはしない」
半兵衛は微笑んだまま、兵を部屋に招き入れる。家臣達はやむなく刀を捨て、元就もそうした。
「……我等をどうするつもりだ」
静かに問えば、半兵衛は「教えてあげる義理は無いけれど」とまた笑って、それから元就の顔を覗き込む。
「自らの手を汚すのは嫌いだし、疲れるから。上手く利用しようと思っているんだ。君達にここに居てもらえれば、中国は勝手に落ちる。意味は、判るよね?」
半兵衛が笑った。元就はふと、光秀の言葉を思い出す。確かに、嫌な男だ。あの光秀がそう言うからには、相当な。
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高松城跡を見に行った時、いやぁ広い平原だなあと思った記憶が有るので、
堤防とやらも結構な物だったんだろうなぁと思います
5月の高松城は、すげぇ熱かった……
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