こちらはガチの番外編と言うか、兄上の語りのみとなっております
最終話は一つ下です
ところで一捨て駒としては、せっかく買うなら
新色のグリーンを買うべきなのでしょうか PSP
最終話は一つ下です
ところで一捨て駒としては、せっかく買うなら
新色のグリーンを買うべきなのでしょうか PSP
毛利興元としてこの世に生まれ落ちた時、俺には「前の俺」の記憶が確かに有った。
酷い時代に「前の俺」は生きていた。俺は酷い弱虫で、鬱病で、結局酒をかっくらって急死した。ダメな奴だった。死んでから、俺は後悔した。あまりに無念だったのか、俺はそれからずっと、地上を見て暮らしていた。だからその後に何が起こったのかも知っている。
酷い時代だった。人を殺して給料を貰うような時代だ。今なら考えられないが、あの頃はそれが正義だった。殺して殺されて、奪って奪われて、それだけの時代だ。いつでも何かが燃えていた、誰かが苦しんでいた、酷い時代だった。
俺には弟が居た。元就という。大層、俺に懐いていた。元就は兄上のために、兄上と共に、この国を支えますと、いつも俺に微笑んでくれた。
俺が死んでから、元就は一度も笑わなかった。死ぬまで、一度も笑わなかった。
元就は兄上のために、という言葉をいつも繰り返して、国を守るためになんでもした。卑劣な事も、残忍な事も平気でやった。皆からは氷の面だと言われ、誰からも恐れられ、ずっと一人だった。一人で、苦しんでいるのを俺は知っていた。あいつの心は壊れかけていた。俺はずっとあいつを抱きしめていたけれど、死んだ身体で何が出来るだろう。加えてあいつは霊感の欠片も無かった。ずっと側に居て、もういい、もういいんだよと言っても、あいつは気付きもしなかった。
元就を救おうとする男が現れた。彼は元就を助けようとしていた。愛そうとしていた。元就はそれと敵との区別もつかなかった。元就は彼の言う事に耳を傾ける事さえせず、彼を切り殺してしまった。
もうだめだ、と俺は思った。元就を抱きしめていたけれど、もうだめだと判った。俺には何も出来ない、死んだ俺には、元就を幸せにする事は出来ないのだ。どんどん元就は不幸になっていった。方々から命を狙われ、家臣からもよく裏切られた。その度に、元就の心が冷えていく。本当に氷のように、冷たく、寒い場所に元就は生きていた。
そんなのはだめなんだ、元就、俺は、俺はお前を愛していたよ、だから俺は、お前にそんなふうになって欲しかったわけじゃあ、無いんだ。だから、頼むよ、もう止めてくれよ。なぁ。
大声で叫んでも、元就は気付かない。気付きもしない。いつの間にか彼も一緒に元就を見守り始めた。彼は何も言わず、ただ元就を見ていた。俺は彼に言った。
なぁ俺達は一人じゃ無力だ、だけど二人なら、なんとかなるかもしれない。二人であいつを助けてやろう、幸せにしてやろう。
けれど霊魂には何も出来ない。背後霊が二人に増えたというのに、元就はとんと気付く気配も無い。元就はどんどん不幸になっていった。止めようもない。やがて元就は心労から体を壊したが、その末に謀殺された。誰もが元就の死を望んでいた。暗殺者は英雄になった。元就は、ただ暗君として葬られた。俺は泣いた。
俺がしっかりしていれば、俺がもっと強ければ、元就をあんな目に合わすことは無かったのだ。
生まれ変わったら、俺は強くなる。強く生きる。元就を守る。だから、その後の事は、あんたに任せたぞ。
俺はそう言って、彼を見た。彼はこくんと頷いて消えた。俺もまた、何かに引っ張られるように、何処かに飛ばされて――。
目が覚めたら、ここに居た。俺は毛利興元で、長男だった。毛利家の嫡男だ。俺は嬉しかった。同じ状況なのだ。時代は違うから、あの頃に比べればなんとも気楽だ。これなら俺も耐えられる、いや耐えなければいけない、と覚悟を決める。ひとまず、成人しても酒は飲むまい。
父にも酒は飲むなとうるさく言って、それで家族の禁酒に成功した。父にも多少は記憶が有るのかもしれない。さぁ後は元就が生まれてくるのを待つばかり……そう思っている時に、母が死んでしまった。俺は母の死以上に、元就の消滅を嘆いた。元就は、転生さえ許されなかったのか、と。
それから二年、俺は無気力に過ごした。何のために意気込んできたのか、判らなくなった。前世の記憶は現世を生きるのに不都合だ、という理屈は良く判る。だが俺は、今度こそ元就を幸せにしなくてはいけなかったのだ。それなのにその元就が居ないだなんて、そんな馬鹿な話が有ってたまるか。
違和感を覚えていたのは父も同じだったらしい。義母の杉とも再会し、家庭が落ち着いた頃、その子がうちにやって来た。元就だ。
それは確かに元就だった。血は全く繋がっていない。父の友人が作った子らしいが、事故で死んでしまい、元就だけが取り残されたという。それを引き取ったのが、父だった。俺は元就との再会を喜んだ。元就は前世の記憶など全く無いらしい。幼子らしいあどけない笑みを浮かべて、俺に手を伸ばしてきた。
ああ、元就。俺が、必ず、今度こそ。いや、俺と彼で、今度こそお前を、幸せにしてやるからな。
温かく柔らかな元就を抱きしめて、俺は泣いた。これから俺達の新しい運命が始まるのだ。俺達の新しい幸せが始まるのだ。
それから20年以上経った。やはり俺以外に前世の記憶がはっきり有る人間は居ないらしい。元親君とも再会したが、彼もまた約束の事など一つも覚えていないようだった。けれど、彼は元就と再会し、懇意にしている。つまり、覚えていなくても、知っているのだ。きっと。
あぁ元就、元就が幸せになりますように。毎日を笑って過ごせるような、そんな優しさに包まれますように。
俺はただそれだけを願って、そして今日も、ネクタイをきつく締めるのだ。
+++
見える人に時々徐霊されかけた兄上とアニキ
酷い時代に「前の俺」は生きていた。俺は酷い弱虫で、鬱病で、結局酒をかっくらって急死した。ダメな奴だった。死んでから、俺は後悔した。あまりに無念だったのか、俺はそれからずっと、地上を見て暮らしていた。だからその後に何が起こったのかも知っている。
酷い時代だった。人を殺して給料を貰うような時代だ。今なら考えられないが、あの頃はそれが正義だった。殺して殺されて、奪って奪われて、それだけの時代だ。いつでも何かが燃えていた、誰かが苦しんでいた、酷い時代だった。
俺には弟が居た。元就という。大層、俺に懐いていた。元就は兄上のために、兄上と共に、この国を支えますと、いつも俺に微笑んでくれた。
俺が死んでから、元就は一度も笑わなかった。死ぬまで、一度も笑わなかった。
元就は兄上のために、という言葉をいつも繰り返して、国を守るためになんでもした。卑劣な事も、残忍な事も平気でやった。皆からは氷の面だと言われ、誰からも恐れられ、ずっと一人だった。一人で、苦しんでいるのを俺は知っていた。あいつの心は壊れかけていた。俺はずっとあいつを抱きしめていたけれど、死んだ身体で何が出来るだろう。加えてあいつは霊感の欠片も無かった。ずっと側に居て、もういい、もういいんだよと言っても、あいつは気付きもしなかった。
元就を救おうとする男が現れた。彼は元就を助けようとしていた。愛そうとしていた。元就はそれと敵との区別もつかなかった。元就は彼の言う事に耳を傾ける事さえせず、彼を切り殺してしまった。
もうだめだ、と俺は思った。元就を抱きしめていたけれど、もうだめだと判った。俺には何も出来ない、死んだ俺には、元就を幸せにする事は出来ないのだ。どんどん元就は不幸になっていった。方々から命を狙われ、家臣からもよく裏切られた。その度に、元就の心が冷えていく。本当に氷のように、冷たく、寒い場所に元就は生きていた。
そんなのはだめなんだ、元就、俺は、俺はお前を愛していたよ、だから俺は、お前にそんなふうになって欲しかったわけじゃあ、無いんだ。だから、頼むよ、もう止めてくれよ。なぁ。
大声で叫んでも、元就は気付かない。気付きもしない。いつの間にか彼も一緒に元就を見守り始めた。彼は何も言わず、ただ元就を見ていた。俺は彼に言った。
なぁ俺達は一人じゃ無力だ、だけど二人なら、なんとかなるかもしれない。二人であいつを助けてやろう、幸せにしてやろう。
けれど霊魂には何も出来ない。背後霊が二人に増えたというのに、元就はとんと気付く気配も無い。元就はどんどん不幸になっていった。止めようもない。やがて元就は心労から体を壊したが、その末に謀殺された。誰もが元就の死を望んでいた。暗殺者は英雄になった。元就は、ただ暗君として葬られた。俺は泣いた。
俺がしっかりしていれば、俺がもっと強ければ、元就をあんな目に合わすことは無かったのだ。
生まれ変わったら、俺は強くなる。強く生きる。元就を守る。だから、その後の事は、あんたに任せたぞ。
俺はそう言って、彼を見た。彼はこくんと頷いて消えた。俺もまた、何かに引っ張られるように、何処かに飛ばされて――。
目が覚めたら、ここに居た。俺は毛利興元で、長男だった。毛利家の嫡男だ。俺は嬉しかった。同じ状況なのだ。時代は違うから、あの頃に比べればなんとも気楽だ。これなら俺も耐えられる、いや耐えなければいけない、と覚悟を決める。ひとまず、成人しても酒は飲むまい。
父にも酒は飲むなとうるさく言って、それで家族の禁酒に成功した。父にも多少は記憶が有るのかもしれない。さぁ後は元就が生まれてくるのを待つばかり……そう思っている時に、母が死んでしまった。俺は母の死以上に、元就の消滅を嘆いた。元就は、転生さえ許されなかったのか、と。
それから二年、俺は無気力に過ごした。何のために意気込んできたのか、判らなくなった。前世の記憶は現世を生きるのに不都合だ、という理屈は良く判る。だが俺は、今度こそ元就を幸せにしなくてはいけなかったのだ。それなのにその元就が居ないだなんて、そんな馬鹿な話が有ってたまるか。
違和感を覚えていたのは父も同じだったらしい。義母の杉とも再会し、家庭が落ち着いた頃、その子がうちにやって来た。元就だ。
それは確かに元就だった。血は全く繋がっていない。父の友人が作った子らしいが、事故で死んでしまい、元就だけが取り残されたという。それを引き取ったのが、父だった。俺は元就との再会を喜んだ。元就は前世の記憶など全く無いらしい。幼子らしいあどけない笑みを浮かべて、俺に手を伸ばしてきた。
ああ、元就。俺が、必ず、今度こそ。いや、俺と彼で、今度こそお前を、幸せにしてやるからな。
温かく柔らかな元就を抱きしめて、俺は泣いた。これから俺達の新しい運命が始まるのだ。俺達の新しい幸せが始まるのだ。
それから20年以上経った。やはり俺以外に前世の記憶がはっきり有る人間は居ないらしい。元親君とも再会したが、彼もまた約束の事など一つも覚えていないようだった。けれど、彼は元就と再会し、懇意にしている。つまり、覚えていなくても、知っているのだ。きっと。
あぁ元就、元就が幸せになりますように。毎日を笑って過ごせるような、そんな優しさに包まれますように。
俺はただそれだけを願って、そして今日も、ネクタイをきつく締めるのだ。
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見える人に時々徐霊されかけた兄上とアニキ
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二人とも変態。永遠の中二病。
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