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めでぃのくの日記
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2025-01-06 (Mon)
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2009-02-21 (Sat)
 どうにでもなれじゃー 試験の半分は運で出来とるんじゃー

 という事でガチの6

「いらっしゃーい……ってぇ、お、お兄さぁあん!」

「だから、君にお兄さんなんて呼ばれる筋合いは無いって」

 店の掃除をしていたら誰かが入って来たので、元親は振り返って仰天した。そこには元就の兄である興元が居た。しかもきっちりスーツを着込んだ、間違ってもこんな店に来る格好ではない。

「あ、あの、……ついに、最後通告ですか……?」

 元親が恐る恐る尋ねると、興元は

「は? 君は何を言っているんだ? 今日は俺の服を買いに来たんだ」

 と言ったものだから、元親はますます訳が判らなくなってしまった。


 
 コーヒーを淹れて、飴を出して。服を探しがてら色々と話したところ、どうやら本当に興元は元親を嫌っていないという事が判った。しかもどうやらそれなりに気に入られているようである。

「俺はね、芸術家っていうのはあんまり好きじゃないんだ。正確には芸術家気取りの人間、というべきかな。創造性だ独創性だって言い逃れして、何もしない奴も多いし、仮に芸術を真面目にやったとしたって、勘違いしてる連中の方が多い」

「勘違い……」

「芸術なんていうのは見て共感する人間が居て成立するものだろ? そうでなけりゃそれは自己満足、悪く言って自慰に過ぎないって事だ。しかもおおっぴらにしている。そりゃ犯罪寸前だぞ」

「はぁ……」

「でも君は聞くところによれば、いい会社に勤めていたようだし、こうしてお店を持ってやりくりしている。とても現実的だ。それにね、弟のファッションに対する無頓着なところにはほとほと困り果てていたんだが、……いや、君は弟に似合うように服を考えてくれただろう? それはとてもいい事だ。しかも着ている弟が大層喜んでいる。人を喜ばせる仕事をしているという事は、素晴らしい事だよ。だから俺は君の事を気に入ってる」

「……ありがとう、ございます、……あの、じゃあ、その、毛利と、お付き合いを続けても、いいって事、ですか……?」

 あくまで下手に尋ねる。興元は怪訝そうな顔をして「もちろん」と大きく頷いた。

「よほど酷い人間じゃなければ、弟が誰と付き合おうと止める気は無いよ。今までろくに友人も居なかった子だから、仲良くしてやってくれて嬉しいぐらいだ。……まぁ、前に仲良くしていた友人とやらよりは、君のほうが常識的だしな」

 興元は何か思い出したのか大きな溜息を吐いて、そして「だから今日は俺にいい服を売ってくれないかな」と本題を口にした。



 結局元親は興元の上から下までコーディネートして、興元も大層喜んで現金を多めに元親に押し付けると、お釣りも待たずにさっさと店を出て行ってしまった。元親が呼び止めても、「それはコーヒー代だ!」とかそんな事を言って、相手にしてくれなかった。

 なんつー情緒不安定な兄弟だ。

 元親は呆れたが、それでも悪い気はしなくて、少し笑ってカップや菓子を片付け始める。

 そういえば、と元親はカップを洗いながら思う。興元は元就の相手の事を知っていた。ろくに友人を作らない元就が付き合っていたというのなら、例の元就のたった一人のお相手だった人間なのだろう。つまり、元就をとんでもないやり方で抱いた人間だ。

 そいつさえ居なけりゃあ、俺はもうちょっと楽に元就と付き合えたのになあ。

 元親は先日からの元就との出来事を振り返って溜息を吐く。こんなストイックな恋愛をするのは初めてだ。まだキスしかしていないだなんて、子供じゃあるまいし。けれどやはりその事が不快ではない。

 不思議と元就と出会ってから、眠るために無理をして人と体を重ねる事が減った。元就と会えない日はやはり寂しくて人と寝たが、それをなんとなく後ろめたくは感じても、止められるほど解放はされなかった。元就は特別な存在だが、それでも大きく変われるような事は無い。

 元親はカップを洗い流し、乾燥機に放り込むと、溜息を吐いて椅子に腰掛けた。

 さて、とりあえずお兄さんからお許しはもらえたけど、……付き合うとなったら、……。

 元親はそう考えて、

「……もしかして、俺達……恋人になったり、するのかなあ……」

 ぽつりと呟いた。



 +++



「毛利殿」

 平積みされたビジネス書を見ていると、声をかけられた。低く落ち着いた声に、元就はびくりとして顔を上げ、そして目を見開く。

「明智、帰って来ていたのか?」

 そこには明智光秀が立っていた。白く長い髪をゆったりと結んで、少々ラフな服装をしている。「休暇をね」と光秀は短く答えて、そして微笑む。

「2、3日はこちらに居ますが、また向こうに行かなくてはいけません」

「そう、なのか……」

「……それで、毛利殿……これからの、ご予定は?」

「……」

 元就は一瞬呆けた顔をして、それから「あ」と何かに気付き、俯く。

「……と、くに、ない……」

「……では、……これから、よろしいですか?」

 光秀に微笑みかけられて、元就はただ頷く以外に、何も出来なかった。



 だから、

「毛利殿」

 椅子に座ったところを、後ろからそっと抱かれても、元就は身を引きつらせる以外に何も出来なかった。

「……そんなに身構えて。……私は貴方にそんな顔をさせてばかりですね……」

「明智、」

「ご心配無く。もうしませんからね」

 光秀はそう笑うと、そろりと元就から離れていく。元就は深く息を吐き出して、改めて彼を見る。

 光秀の家は広い。庭付き二階建て、上品な西洋風の家だったが、光秀以外に誰も住んでいないし、かつて住んでいたような様子も無い。白い部屋はただ広く、家具類もあまり置かれていない。生活感が無いのだ。この家には二階と地下が有るが、元就はそのどちらにも二度と行きたくないと思っている。二階は寝室だし、地下の事を元就は拷問室としか形容出来ない。聞いた話では自分がされた事は拷問ではなくハードプレイだそうだったが、元就にとってはどっちも大して変わらなかった。

 光秀はキッチンで紅茶を淹れている。チョコレートケーキも用意しているようだ。光秀はいつでも元就の気に入るものを用意してくれた。だからあの晩も、光秀が望むならと了承して、そして酷い目にあった。だから元就はあれ以来、光秀に警戒心を持ってしまう。光秀もそれを判っていて、触ったり抱きしめたりして元就が恐がるのを楽しんでいるのだから始末におけない。

 尤も、一番どうしようもないのは、それが判っていて光秀と過ごしてしまう自分だと元就は思っている。

「例の店には行ったのですか?」

 光秀に優しく問われて、元就も頷く。

「うむ。良い店だ。静かで」

「マスターの方とね。どうも反りが合わないんです」

「そうなの、か?」

「でもいいお店ですよ。……それで、新しい友人は出来ましたか?」

「……う、む」

 元就が頷くと、光秀は「ほう」と意外そうに笑い、紅茶とケーキを運んで来る。

「どんな方ですか? 貴方と新しくお付き合いする方は」

「付き合いとか、そういうのではない。……ただ……一緒に居ると、楽しい」

 元就はそう言い、それから光秀が自分を見ている事に気付いた。は、として顔を押さえる。知らない間に、顔が綻んでいたらしい。

「……貴方がそういう幸せそうな顔をする事は、私も好きです」

 それで、貴方と共に居てくれる方はどんな人なのです?

 光秀に優しく問われ、元就は苦笑して、

「パプリカのような奴だ」

 と答えた。


 +++

 まさかのパプリカ2回目

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