ガチの7なんですけど……
ここからどうしようかなぁと考え中です
だもんでちょっと短めです
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店を閉めて、車に乗り込み。元親は溜息を吐いて、今夜どうするか考えているところだった。エンジンをかけないまま、元親はハンドルにもたれている。
用事も無く、特に決まった相手も居ないが、このまま一人で部屋に戻るのも寂しい。何処かで適当な奴を捕まえて、……。
などと考えていると、ふいに携帯が鳴り始める。ポケットから出して見ると、相手は元就のようだ。しかも通話を望んでいるらしい。元就と通話するのは初めての事で、元親はそれだけでも「何か有るのではないか」と身構えた。
そっと電話に出て、「毛利?」と優しく声をかける。元就のほうは、何故だかうろたえている。
「あっ、ちょ、……長曾我部、……今、良いか?」
「あぁ大丈夫だ。……どした?」
「あ、……」
元就は電話をするのにも慣れていないらしく、途切れ途切れに、しかも尋常ではない様子で言う。
「あ、いたい、のだ……。……いまから、……会える、か?」
声が震えている。何かが有ったのだと元親は思う。恐らく元就は、相談相手を求めているのだ。
普段の元親であれば、即座に「ごめん、今日は忙しくて」と嘘を言うところだった。元親は楽しい時間が好きだ。明るく馬鹿な話をしてひたすら盛り上がっているのが好きだ。辛気臭い話などになったら、自分の中に有る澱んだ物まで噴き出してきそうで、元親は愚痴や相談などには付き合わない事にしている。そんな話は別の相手にすればいい。楽しい事だけをしていたい。元親の意思を感じ取るのか、殆どの人間は二度と元親に相談などは持ち掛けなかった。
だから、それが元就でなかったら、元親は相手にしなかったはずなのだ。
だのに、
「あぁ、いいぜ。……うちに来いよ。……迎えに行ってやる。今何処だ?」
その言葉はあまりにもすんなり出てしまって、元親は自分でも驚いて。
「……そなたの、家の、前、だ」
という返事に、ますます驚いたのだった。
元就の様子は普通ではなかった。マンションの玄関まで行くと、いつものようにちっぽけな元就が、スーツのまましゃがみこんでいる。声をかけると、元就は顔を上げた。泣きはらしたような顔をしていて、元親は何故だか悲しくなった。
部屋を開け、中に元就を連れて入る。予定が無くて良かった、と元親は思った。仮に予定が入っていたとしても、あるいは元就の為に駆けつけた可能性も有るが、もし誰かと寝ている時に元就が玄関まで来ていたら、と考えて、元親は何故だか寒気がした。元就には、知られたくなかった。知られていないわけがないのだが。
元親は元就をソファに座らせると、温かいコーヒーを淹れて差し出す。元就は「ありがとう」とそれだけ言ってコーヒーを受け取り、口をつけなかった。
「……何か、有ったのか?」
隣に腰掛け、恐る恐る切り出す。元就はしばらく黙り、やがて小さな声で答えた。
「父が、……」
「親父さんが?」
「……大した事ではないのだ、大した事ではないのだがな、」
「うん」
「……ガンだと、言われて……」
それの何処が大した事じゃないってんだ。
元親は大声を出しそうになったが、なんとか飲み込んだ。元就の感覚が人とずれているのは良くある事だが、恐らくこれはそういう事ではないのだ。大した事ではないのだろう、客観的に見てみれば。
「……大した事ないって?」
「……早期発見でな。……うちの家族は何故だか、神経質なぐらい健康診断をするところがあって、……胃ガンらしいが、まだ小さいし転移の心配もないから、……腹を切る必要も無いとかで、……だから、大した事ではないのだ」
なるほど確かにたいした事ではないだろう。それ自体はたいした事では無いのだ。
問題はその事を受けて、何を考えたか、だ。元親も少し理解して、元就の背を撫でる。
「なら、大丈夫じゃねぇか。心配無いんだろ?」
「そう、なのだが、」
「だが?」
促してやると、ようやっと元就は彼の思いを口にする。
「もし、これが、早期発見ではなくて、……もし、これで、父と別れるような、ことが有ったら、……今まで注いでいただいた愛情を、返せずに、し、死んでしまったらと、思うと、」
どうにもこうにも、ならなくなって、かといってこんな話は、父や兄には出来ないし、胸がいっぱいになって、涙が止まらなくなって、それで、どうしていいか判らないから、そなたに助けを求めずにいられなかったのだ、すまぬ。
元就はそのような事を途切れ途切れに言って、また俯く。泣きはしなかったが、苦しげに呼吸をしているので、そっと背を摩ってやりながら、「大丈夫、大丈夫だよ」と元親は繰り返した。
「まだ時間は有るよ、大丈夫。お父さんは生きてくれてた。な?」
「う、む……」
「お前がそれが恐いなら、今から精一杯恩を返せばいいじゃねぇか。大丈夫だよ。な……」
「……こうして、男と、付き合っている事が、最大の、親不孝のような、気もするがな」
元就はそう苦笑して、それでも「ありがとう」と呟いた。元親は元就を抱き寄せて、その背をずっと撫でていた。
元就のその恐れを、元親も知っている。恐らく誰もが知っているだろう。
命と永遠ではなく、愛した人間であろうとあっけなく死んで消えてなくなってしまう。それは抗いがたい事実であるのに、人はそれを忘れていなくては生きていけない。だから往々にして、親孝行は間に合わない。知っていなくてはいけないのに、考え続けていると生きていけなくなるから忘れなければいけない。人間は不自由な生き物だ、と元親は思う。何をするにも不器用で、無様なのだ。
俺も、と元親は考える。義理の家族とはいえ、彼らが死んでしまったら泣くんだろうか。――泣くだろう、嘆くだろう、もっと孝行をしてやればよかったと、悔やむのだろう。そして恐らくどれほど尽くしても、それは無くならないのだ。それでも、救いを求めずには居られないのがなんとも悲しい。
元親は溜息を吐いて、元就の背を撫でる。それをどう受け取ったのやら、元就は「すまぬ」と笑った。
「こんな辛気臭い話は、したくないだろうな」
「いや、……お前の事だろ。したいとかそうじゃないとか、そういうんじゃねぇんだよ。……なんてーんだろな。……」
「……」
「……にしても、親父さんは幸せだと思うぜ?」
「……そうか?」
「あんたにそんなに思ってもらえてさ。……きっといい親父さんなんだな」
純粋培養された元就を見ていれば、それははっきりと判る。良い父親なのだ。きっと、心根が。元就も僅かに笑んで、「うむ」と頷く。
「いい方だ。優しくて、……賢くて、……時折厳しくて、でもそれは愛情なのだろうな、……素晴らしい方だ。他所の子の我にも、兄上と同じように接してくれて……」
「…………え?」
元親はあまりにもその言葉が淡々と紡がれたものだから、危うく聞き逃すところだった。
「……よそのこ?」
その単語には、自分の知っている以外の意味が有るんだろうか。元親はオウム返しをしたが、元就の方は質問の意図に気付いたのやら、
「あぁ、……言ってなかったな。我は、家族と、血が繋がっていないのだ」
そうあっけなく答えて。
元親は頭が真っ白になってしまった。
+++
半年に一回ぐらい健康診断する一家
用事も無く、特に決まった相手も居ないが、このまま一人で部屋に戻るのも寂しい。何処かで適当な奴を捕まえて、……。
などと考えていると、ふいに携帯が鳴り始める。ポケットから出して見ると、相手は元就のようだ。しかも通話を望んでいるらしい。元就と通話するのは初めての事で、元親はそれだけでも「何か有るのではないか」と身構えた。
そっと電話に出て、「毛利?」と優しく声をかける。元就のほうは、何故だかうろたえている。
「あっ、ちょ、……長曾我部、……今、良いか?」
「あぁ大丈夫だ。……どした?」
「あ、……」
元就は電話をするのにも慣れていないらしく、途切れ途切れに、しかも尋常ではない様子で言う。
「あ、いたい、のだ……。……いまから、……会える、か?」
声が震えている。何かが有ったのだと元親は思う。恐らく元就は、相談相手を求めているのだ。
普段の元親であれば、即座に「ごめん、今日は忙しくて」と嘘を言うところだった。元親は楽しい時間が好きだ。明るく馬鹿な話をしてひたすら盛り上がっているのが好きだ。辛気臭い話などになったら、自分の中に有る澱んだ物まで噴き出してきそうで、元親は愚痴や相談などには付き合わない事にしている。そんな話は別の相手にすればいい。楽しい事だけをしていたい。元親の意思を感じ取るのか、殆どの人間は二度と元親に相談などは持ち掛けなかった。
だから、それが元就でなかったら、元親は相手にしなかったはずなのだ。
だのに、
「あぁ、いいぜ。……うちに来いよ。……迎えに行ってやる。今何処だ?」
その言葉はあまりにもすんなり出てしまって、元親は自分でも驚いて。
「……そなたの、家の、前、だ」
という返事に、ますます驚いたのだった。
元就の様子は普通ではなかった。マンションの玄関まで行くと、いつものようにちっぽけな元就が、スーツのまましゃがみこんでいる。声をかけると、元就は顔を上げた。泣きはらしたような顔をしていて、元親は何故だか悲しくなった。
部屋を開け、中に元就を連れて入る。予定が無くて良かった、と元親は思った。仮に予定が入っていたとしても、あるいは元就の為に駆けつけた可能性も有るが、もし誰かと寝ている時に元就が玄関まで来ていたら、と考えて、元親は何故だか寒気がした。元就には、知られたくなかった。知られていないわけがないのだが。
元親は元就をソファに座らせると、温かいコーヒーを淹れて差し出す。元就は「ありがとう」とそれだけ言ってコーヒーを受け取り、口をつけなかった。
「……何か、有ったのか?」
隣に腰掛け、恐る恐る切り出す。元就はしばらく黙り、やがて小さな声で答えた。
「父が、……」
「親父さんが?」
「……大した事ではないのだ、大した事ではないのだがな、」
「うん」
「……ガンだと、言われて……」
それの何処が大した事じゃないってんだ。
元親は大声を出しそうになったが、なんとか飲み込んだ。元就の感覚が人とずれているのは良くある事だが、恐らくこれはそういう事ではないのだ。大した事ではないのだろう、客観的に見てみれば。
「……大した事ないって?」
「……早期発見でな。……うちの家族は何故だか、神経質なぐらい健康診断をするところがあって、……胃ガンらしいが、まだ小さいし転移の心配もないから、……腹を切る必要も無いとかで、……だから、大した事ではないのだ」
なるほど確かにたいした事ではないだろう。それ自体はたいした事では無いのだ。
問題はその事を受けて、何を考えたか、だ。元親も少し理解して、元就の背を撫でる。
「なら、大丈夫じゃねぇか。心配無いんだろ?」
「そう、なのだが、」
「だが?」
促してやると、ようやっと元就は彼の思いを口にする。
「もし、これが、早期発見ではなくて、……もし、これで、父と別れるような、ことが有ったら、……今まで注いでいただいた愛情を、返せずに、し、死んでしまったらと、思うと、」
どうにもこうにも、ならなくなって、かといってこんな話は、父や兄には出来ないし、胸がいっぱいになって、涙が止まらなくなって、それで、どうしていいか判らないから、そなたに助けを求めずにいられなかったのだ、すまぬ。
元就はそのような事を途切れ途切れに言って、また俯く。泣きはしなかったが、苦しげに呼吸をしているので、そっと背を摩ってやりながら、「大丈夫、大丈夫だよ」と元親は繰り返した。
「まだ時間は有るよ、大丈夫。お父さんは生きてくれてた。な?」
「う、む……」
「お前がそれが恐いなら、今から精一杯恩を返せばいいじゃねぇか。大丈夫だよ。な……」
「……こうして、男と、付き合っている事が、最大の、親不孝のような、気もするがな」
元就はそう苦笑して、それでも「ありがとう」と呟いた。元親は元就を抱き寄せて、その背をずっと撫でていた。
元就のその恐れを、元親も知っている。恐らく誰もが知っているだろう。
命と永遠ではなく、愛した人間であろうとあっけなく死んで消えてなくなってしまう。それは抗いがたい事実であるのに、人はそれを忘れていなくては生きていけない。だから往々にして、親孝行は間に合わない。知っていなくてはいけないのに、考え続けていると生きていけなくなるから忘れなければいけない。人間は不自由な生き物だ、と元親は思う。何をするにも不器用で、無様なのだ。
俺も、と元親は考える。義理の家族とはいえ、彼らが死んでしまったら泣くんだろうか。――泣くだろう、嘆くだろう、もっと孝行をしてやればよかったと、悔やむのだろう。そして恐らくどれほど尽くしても、それは無くならないのだ。それでも、救いを求めずには居られないのがなんとも悲しい。
元親は溜息を吐いて、元就の背を撫でる。それをどう受け取ったのやら、元就は「すまぬ」と笑った。
「こんな辛気臭い話は、したくないだろうな」
「いや、……お前の事だろ。したいとかそうじゃないとか、そういうんじゃねぇんだよ。……なんてーんだろな。……」
「……」
「……にしても、親父さんは幸せだと思うぜ?」
「……そうか?」
「あんたにそんなに思ってもらえてさ。……きっといい親父さんなんだな」
純粋培養された元就を見ていれば、それははっきりと判る。良い父親なのだ。きっと、心根が。元就も僅かに笑んで、「うむ」と頷く。
「いい方だ。優しくて、……賢くて、……時折厳しくて、でもそれは愛情なのだろうな、……素晴らしい方だ。他所の子の我にも、兄上と同じように接してくれて……」
「…………え?」
元親はあまりにもその言葉が淡々と紡がれたものだから、危うく聞き逃すところだった。
「……よそのこ?」
その単語には、自分の知っている以外の意味が有るんだろうか。元親はオウム返しをしたが、元就の方は質問の意図に気付いたのやら、
「あぁ、……言ってなかったな。我は、家族と、血が繋がっていないのだ」
そうあっけなく答えて。
元親は頭が真っ白になってしまった。
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半年に一回ぐらい健康診断する一家
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