書きかけの短編を保存する前にパソを離れたら
帰ってきたら親父に消されていた……ががーんです(笑)
悔しいので書き直しました。大した内容ではないですが……
帰ってきたら親父に消されていた……ががーんです(笑)
悔しいので書き直しました。大した内容ではないですが……
彼はいつでも愛されていた。
裕福な家庭に生まれ、育ち、いつでも誰にでもちやほやされた。誰もが彼を、長曾我部元親を大層可愛がった。
元親が良いと言う物は、皆も良いと言った。元親の進む方に皆着いて歩き、元親が笑えば皆も笑った。彼が嫌う物を皆も嫌い、蔑んだ。
彼はいつでも愛されていた。
元親は金を惜しまなかった。幼い頃からずっとそうしていた。友人が困ったといえばすぐに現金を渡した。皆で遊ぼうといえば、食事の代金は元親が払った。皆元親に感謝し、元親を愛した。彼はそれが心地良かった。
彼はいつでも愛されていた。愛されている自分が好きだった。人に好かれている自分が好きだった。人が好きなわけではない。自分が好きなのだ。愛するために人を愛した。それで構わなかった。元親は幸せだった。
大学に入り、寮生活を始めても、元親は変わらなかった。変わったのは彼の両親だ。父親が経営していた会社が破綻したと言う。しかし元親には実感が湧かず、またその事実がどういう意味を持つのが理解も出来ず、そして生活を変える事も出来なかった。変わらずコンパに行き、食事を取り、カラオケに行って歌を歌った。
年の瀬も迫ったある日、元親はようやっと気付いた。通帳に金が無い。年は越せるだろうが、来年はどうなるか解らない。元親は困った。そして友人達に尋ねた。金は、どうすれば手に入るのかと。
そうして、元親は友人と言う友人を失った。
元親は途方に暮れていた。
携帯でメールを送っても返事が来ない。電話をかけても出てくれない。相手の家を尋ねれば、今ちょっと忙しくて、と追い返されてしまう。
元親は一人、途方に暮れていた。
大学の寮の前、ぽつんと置かれたベンチに、元親は腰掛けている。雨が降っていた。濡れる元親に、誰も声をかけない。冬の雨は酷く冷たい。元親は寒かった。冷たかった。それでも、そこを離れようとは思わなかった。
どうしていいのか判らないのだ。誰も元親を助けてもくれないし、手伝ってもくれない。年は越せるが、来年はどうにもならない。大学も辞めなくてはいけないかもしれない。実家に帰って事情を知りたいが、電車代も無い。そもそも帰ってどうなるのかも判らない。
元親は途方に暮れていた。
と。
雨が止んだ。俯いた視線の先に、誰かの足が見えた。ふと顔を上げる。そこには男が居た。もうりもとなり、と元親は頭の中で名を呼んだ。小さな男は、己の傘をずいと突き出して、元親の上にかざしている。そのせいで、元就は濡れている。
「毛利」
名を呼んだが、元就は特に反応しなかった。元親は困惑した。
「毛利、濡れちまう」
そう言えば、「我も濡れたくはない」とだけ返事。傘はそのまま。元親は困ってしまった。
元親と元就は知り合いだ。それ以上ではない。高校の時、1年間だけ同じクラスだった。クラスの全てから愛された元親と、唯一係わらなかったのが元就だ。元親から声をかけても、元就は彼になびかなかった。
その彼が、誰からも見捨てられた元親に、唯一傘を差し出している。
元親は訳が判らなくなった。
「なぁ、毛利。濡れちまうよ」
「そなたも濡れておる」
「俺は平気、」
「そなたがここで濡れておると思うと、落ち着いて勉強が出来ぬ」
そういえば、と元親は思う。年の瀬だというのに、大学寮に残っている人間は少ない。元就は正月も寮で過ごすのだろうか、と元親は考える。一人の正月は、寂しい。元親はただ漠然と思った。毎年馬鹿騒ぎをしていた自分を思い出しそうになって、涙がこみ上げてきた。慌てて堪えて、そして、
「じゃあ、……あんたの部屋、行っていい? 俺の部屋、……すげぇ寒いんだ」
そう、恐る恐る尋ねて。
「ならば、そなたが傘を持つといい。そなたのほうが背が高い」
それだけ答えた元就に、元親は酷く縋り付きたい気持ちになった。
元就の言葉は冷たいのに、何故だか温かかった。
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裕福な家庭に生まれ、育ち、いつでも誰にでもちやほやされた。誰もが彼を、長曾我部元親を大層可愛がった。
元親が良いと言う物は、皆も良いと言った。元親の進む方に皆着いて歩き、元親が笑えば皆も笑った。彼が嫌う物を皆も嫌い、蔑んだ。
彼はいつでも愛されていた。
元親は金を惜しまなかった。幼い頃からずっとそうしていた。友人が困ったといえばすぐに現金を渡した。皆で遊ぼうといえば、食事の代金は元親が払った。皆元親に感謝し、元親を愛した。彼はそれが心地良かった。
彼はいつでも愛されていた。愛されている自分が好きだった。人に好かれている自分が好きだった。人が好きなわけではない。自分が好きなのだ。愛するために人を愛した。それで構わなかった。元親は幸せだった。
大学に入り、寮生活を始めても、元親は変わらなかった。変わったのは彼の両親だ。父親が経営していた会社が破綻したと言う。しかし元親には実感が湧かず、またその事実がどういう意味を持つのが理解も出来ず、そして生活を変える事も出来なかった。変わらずコンパに行き、食事を取り、カラオケに行って歌を歌った。
年の瀬も迫ったある日、元親はようやっと気付いた。通帳に金が無い。年は越せるだろうが、来年はどうなるか解らない。元親は困った。そして友人達に尋ねた。金は、どうすれば手に入るのかと。
そうして、元親は友人と言う友人を失った。
元親は途方に暮れていた。
携帯でメールを送っても返事が来ない。電話をかけても出てくれない。相手の家を尋ねれば、今ちょっと忙しくて、と追い返されてしまう。
元親は一人、途方に暮れていた。
大学の寮の前、ぽつんと置かれたベンチに、元親は腰掛けている。雨が降っていた。濡れる元親に、誰も声をかけない。冬の雨は酷く冷たい。元親は寒かった。冷たかった。それでも、そこを離れようとは思わなかった。
どうしていいのか判らないのだ。誰も元親を助けてもくれないし、手伝ってもくれない。年は越せるが、来年はどうにもならない。大学も辞めなくてはいけないかもしれない。実家に帰って事情を知りたいが、電車代も無い。そもそも帰ってどうなるのかも判らない。
元親は途方に暮れていた。
と。
雨が止んだ。俯いた視線の先に、誰かの足が見えた。ふと顔を上げる。そこには男が居た。もうりもとなり、と元親は頭の中で名を呼んだ。小さな男は、己の傘をずいと突き出して、元親の上にかざしている。そのせいで、元就は濡れている。
「毛利」
名を呼んだが、元就は特に反応しなかった。元親は困惑した。
「毛利、濡れちまう」
そう言えば、「我も濡れたくはない」とだけ返事。傘はそのまま。元親は困ってしまった。
元親と元就は知り合いだ。それ以上ではない。高校の時、1年間だけ同じクラスだった。クラスの全てから愛された元親と、唯一係わらなかったのが元就だ。元親から声をかけても、元就は彼になびかなかった。
その彼が、誰からも見捨てられた元親に、唯一傘を差し出している。
元親は訳が判らなくなった。
「なぁ、毛利。濡れちまうよ」
「そなたも濡れておる」
「俺は平気、」
「そなたがここで濡れておると思うと、落ち着いて勉強が出来ぬ」
そういえば、と元親は思う。年の瀬だというのに、大学寮に残っている人間は少ない。元就は正月も寮で過ごすのだろうか、と元親は考える。一人の正月は、寂しい。元親はただ漠然と思った。毎年馬鹿騒ぎをしていた自分を思い出しそうになって、涙がこみ上げてきた。慌てて堪えて、そして、
「じゃあ、……あんたの部屋、行っていい? 俺の部屋、……すげぇ寒いんだ」
そう、恐る恐る尋ねて。
「ならば、そなたが傘を持つといい。そなたのほうが背が高い」
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元就の言葉は冷たいのに、何故だか温かかった。
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二人とも変態。永遠の中二病。
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