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2007-12-24 (Mon)
 国富論を読んじゃろうと思ったのですが
 あまりにもなんというか回りくどい日本語過ぎて
 読める気がしないぜ!



 以下 かけつきの3

 一発書きだと語尾が全部「た」になる。

 かけつき 3


 中国はどうも、落ちているらしい、という曖昧な報告を元親が受けた時、元就はまだ目覚めていなかった。

「らしい、ってなぁ、どういう意味だ?」

 元親が怪訝そうな顔をすると、部下も困ったように答える。

「どうやら君主が居なくなったようなんですが、代わりの君主が立つでなし、国が荒れるでなし。簡単に言っちまえば、毛利元就が居なくても、国は何も変わらず動いてるってわけで」

 その言葉に元親はようやく驚いた。

 元親も君主であるが、この国は元は獄であったし、部下もその殆どが海賊だ。自分がもし死んでしまったら、この国は荒れるだろうと自覚していた。部下達はただの海賊に戻り散り散りになって、意味の無い争いを始めるだろうし、国は海賊達に財産を巻き上げられ疲弊するだろう、と。
 
 それを防ぐためにも、元親は嫡男を作りたかったが、あいにく忙しくて母となる女を選ぶ時間もない……と先延ばしにしていたのだ。

 ところがどうだろう。冷酷非道といわれ、誰もが悪と読んだ毛利元就が消えても、中国は何一つ変わらないという。それは長曾我部には考えられないことだった。兵を捨て駒と呼ぶような男に付き従う人間は、恐怖にかられているのだと思っていたから、元就が居なくなれば人々はみな狂喜して、自由を謳歌すると信じていたのだ。

 厳島神社を攻めたのも、それを実証するためだった。悪党であれば、秘宝を奪いに来る者を徹底的に攻撃するだろうと思っての事だったのだ。そして元就を討ってやれば、兵達は喜ぶだろうと、自分達は正義の解放者になるだろうと思って行った。

 そこで思わぬ事に、自らの審美眼を問われた。それに拍子抜けして、元親は元就を見直すに到ったのだ。

 だがそれでも納得はいかず、元就のやり方を責めた。ところがどうだろう。彼の国は他のどの国よりも安定しているのではないか。主君が居なくなっても代わりも立たず、統率が崩れない国など聞いた事が無い。
 
 元親は、もしかしたら元就はある方向で正しいのかもしれない、と思い始めていた。だがそれを語り合うべき相手は、未だ布団の中で眠りに落ちているので、元親は待つしかなかった。

 さらに翌日、毛利家を落とした人間が判った。松永久秀、というそうだ。元親は本土の情勢を良く知らない。松永久秀という酷く移り気な武将が居るとは聞いていたが、毛利家を落とせるほどの大物だとは初耳だった。

 これはますます、毛利に事情を聞かねばならない……そう思っていた頃、元就は静かに目覚めた。あまりの静かさに、誰もみな、しばらく気付かなかった。
 
 最初に気付いたのは偶然にも元親だった。廊下をふらふら歩いている見慣れない姿があるので、不審に思い声をかけたらそれが元就だった。元親はたいそう驚いた。

「お、お前、まだ歩いちゃいけねぇよ!」

 何日寝てたと思ってんだ、と元親が怒鳴っても、元就は聞こえているのか居ないのか、返事もせずに歩き始めた。慌てて引き止めると、元就が小さく「かえる」とぼんやり呟くのが聞こえた。

 こいつはなんだ、正気じゃねえな、寝ぼけてんのかもしれねえ。

 元親は直感して、元就の顔を覗き込むと問うた。

「おい毛利。俺がわかるか? 俺の名前がわかるか?」

「……」

「あんた、今自分が何処にいるか、どういう状況か判ってるか? 帰れると思ってるのか?」

「……」

 元就はしばらく虚空を見ていたが、しばらくしてじわりと視線が交わった。

「……四国の」

「おう」

「……我は、……どうなったのだ」

 厳島神社に不届き者が攻め込んできて、応戦して……。元就はそう呟いて、はっと息を呑むと、元親を振りほどいて走り始めた。

「も、毛利! おい!」

「帰らねば、帰らねばならぬ、国が、兄上の国が、毛利が、……っ」
 
 そして元就は唐突に立ち止まった。追っていた元親はぶつかりそうになって、ようやっと止まると、彼の肩を抱いてその足元を見た。池がある。

「……毛利?」

「……」

「……あんた、……水が恐いのか?」

 恐る恐る尋ねれば、元就はぎっと元親を睨む。水軍の将が、水を恐れてどうなる、と怒鳴るが、元就はそこから一歩も進めない。池に近寄る事さえ出来ない。

「……毛利、そんなんで船には乗れないぜ」

「黙れ……国に帰らねばならぬ……」

「急ぐ必要は無いぜ、あんたの国はちゃんとしてる。あんたの場所は誰も奪って無い。体調が整ってから戻っても、差し支えない。使者は送っておくから、あんたはしばらくじっとしてな」

 元親がそう告げると、元就は一瞬驚いたような表情を見せた。そして次に元就が呟いた言葉に元親は顔をしかめた。

「兄上の国は守られた……兄上の、兄上の……」

 そしてそう呟きながらふいに倒れこむ元就を、元親は慌てて抱きとめる事になった。腕の中の元就は再び眠りに落ちていて、元親は深いため息を吐く意外に何も出来なかった。

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