今日、病院であまりに待ち時間が長かったので
ちょっとだけ書いた短文。
やまもおちもいみもないしエロでもないしCPでもない。
おまけに中途半端に終わる。
ちょっとだけ書いた短文。
やまもおちもいみもないしエロでもないしCPでもない。
おまけに中途半端に終わる。
「なんとも美しいものだ。厳島神社はやはり水があってこそだな。満月の夜など殊更だろう。いや、今日は曇っているのが実に残念だ。卿もそうは思わぬかね」
問いかける男は一人、月の薄明かりの下。海水の満ちた神社に立ち、手すりに手をかけて空を見上げている。声に対する返事は無い。
「美しい物は好きだ。美が数字へと変わる事も無い。そう、美とは命を懸けて守りそして奪い合うものだ。そして命は美しい。命が美で美が命なら、どちらもいずれは朽ちる。愛でるべきものだ。
……卿は醜悪だ。まるで命のこもらぬ人形のようだ……いや、人形でさえ、職人に命を吹き込まれるだろうに、卿の中はまるで虚、何も無い。人形にも劣る卿の中にはしかし命がある。卿は醜悪だ、そして美しい。何故なら卿は今、怒りに打ち震えている。
怒るのは良い事だ、大いに怒ればいい。怒る卿は愛でるべき存在だ、その愛しさに私は眩暈すら感じるよ。いや、心地よい事だ」
そして男はゆるりと己の足元を見た。闇の中に黒々と渦巻く水面。その中に、白い顔が浮かんでいる。わずかな光を反射する目は、しかしぎらぎらと男をしっかり睨み付けた。
首から下が海に浸かったその人物は、舌を噛み切らぬように棒を咥えさせられ、そして逃げられぬように杭につながれている。潮の満ちた今、彼は揺らめく波に呼吸も遮られるようだったが、その表情には苦悶よりも憎悪が多く見て取れた。
「苦しいかね。卿の背丈がもう少し低いか、あるいは高ければ良かったのだがね。生きるも死ぬもままならぬとは辛い事だろう。どうかね、海から見る厳島神社は。美しいか」
問いに答えるように、海面に顔だけ出した男はぎりと睨みつけてくる。それに笑って、男は踵を返した。
「せいぜい生きていたまえ。卿がそうして人らしい浅はかな生にしがみついている間ぐらいは、愛でてやるとしよう」
男はゆったりとした足取りでその場を去った。彼は松永久秀という。
そして取り残され、海に沈みかける男の名は、毛利元就である。
乱世の梟雄、松永久秀が中国を攻め落とした理由は、極単純なものだった。
厳島神社の美しい景観をほんの一月ほど見たいと思ったこと、それを押し通すのに何故だが抵抗を受けたので攻め滅ぼしたに過ぎない。さらにあえて付け足してみれば、乞食から成り上がったという毛利家当主がどれほどな悪党かを見たかった、その2点だけだった。
それ以外に特に理由も無く、久秀自身はもとより攻め滅ぼしても統治するような気も無かった。飽いたら捨てて行こうとさえ思っていた程だった。
毛利元就は父母、兄、甥、義弟や部下まで己の邪魔になる者は悉く殺す非人道な男と聞いたものだから、久秀は「どれほどの妖怪が出てくるか」と怪談でも聞く子供のように胸を躍らせもした。
が、蓋を開けてみて久秀は酷く落胆した。毛利元就は「毛利家」に全てを捧げる「統治者」であり、それ以外ではなかった。彼は兵を「捨て駒」と言って憚らなかったが、何のことは無い。彼は弱い人間であったから、戦を将棋に、兵を駒に当てはめ、より早く玉を奪うために歩を犠牲にする事を厭わぬだけであった。
その証拠に彼は予定に無い兵の死に酷くうろたえた。毛利の兵を捕まえて、一日一人ずつ、戯れに惨殺してみれば、特に人質にした覚えも無いのに救助隊が送り込まれてきた。その存在が酷く滑稽は、そして呆れるものだった。
「善人にも悪人にも成りきれない、小さな男だ」
久秀はつまらなそうに言い捨てて、そして本格的に中国を攻めた。梟雄は楽しむ余裕があるだけに神出鬼没に兵を動かし、そして翻弄され続けた毛利の頭を取った。
……毛利はあまりにもあっけなく落ちた。それがまた久秀には不快だった。
毛利は「統治者」としての己を、そして「被統治者」としての民を徹底していた。毛利は「人」ではなく「組織」であり、中国の民は「国民」ではなく「共通概念」であった。久秀にはそれがたまらなく面白くない。
捕まえてみた毛利元就その人も、特に何も考えていないかのように振舞うのだ。これは生き物ではない、と久秀は思うと同時に、壊すべきだと思った。生き物のくせに死んでいるような顔をするのなら、いっそ死ねばいいと思った。
実際首を落としてやろうとしたのだが、ふいに久秀は気が変わった。こんなつまらない存在でも、生きようと願ったりするのだろうか、と興味を持ったのだ。久秀は彼を神社の浜に杭を打たせて縛り付けた。潮が満ちると呼吸が出来難くなるようにした。
そうすると彼は生き物らしく、地上に打ち上げられた魚のように生きようとするので、久秀はようやっと元就を愛でる気持ちに目覚めた。
ただそれから久秀は元就の事を忘れて、茶碗の収拾をしていたものだから、部下から報告を受けた時には元就は殆ど死に掛けていた。仕方無しに久秀は元就を医者に見せ、布団に入れる事を許したのだった。
「なに、飢え苦しむ動物を見たなら愛でるのは人の性。もっとも、健常な生き物が何処でのたれ死のうと知ったことではないのも人の性。熱が下がり飯が食らえるようになったら、身包みを剥いで追い出せ」
久秀は部下にそう命じて、そしてしばしの間、元就を愛でた。が、元就が生気を取り戻し、一人で歩けるようになるにまで回復すると、久秀は勧告通り、元就の全てを奪って、海に放り出した。
ここまで。久秀という方がいまいちわからない。
問いかける男は一人、月の薄明かりの下。海水の満ちた神社に立ち、手すりに手をかけて空を見上げている。声に対する返事は無い。
「美しい物は好きだ。美が数字へと変わる事も無い。そう、美とは命を懸けて守りそして奪い合うものだ。そして命は美しい。命が美で美が命なら、どちらもいずれは朽ちる。愛でるべきものだ。
……卿は醜悪だ。まるで命のこもらぬ人形のようだ……いや、人形でさえ、職人に命を吹き込まれるだろうに、卿の中はまるで虚、何も無い。人形にも劣る卿の中にはしかし命がある。卿は醜悪だ、そして美しい。何故なら卿は今、怒りに打ち震えている。
怒るのは良い事だ、大いに怒ればいい。怒る卿は愛でるべき存在だ、その愛しさに私は眩暈すら感じるよ。いや、心地よい事だ」
そして男はゆるりと己の足元を見た。闇の中に黒々と渦巻く水面。その中に、白い顔が浮かんでいる。わずかな光を反射する目は、しかしぎらぎらと男をしっかり睨み付けた。
首から下が海に浸かったその人物は、舌を噛み切らぬように棒を咥えさせられ、そして逃げられぬように杭につながれている。潮の満ちた今、彼は揺らめく波に呼吸も遮られるようだったが、その表情には苦悶よりも憎悪が多く見て取れた。
「苦しいかね。卿の背丈がもう少し低いか、あるいは高ければ良かったのだがね。生きるも死ぬもままならぬとは辛い事だろう。どうかね、海から見る厳島神社は。美しいか」
問いに答えるように、海面に顔だけ出した男はぎりと睨みつけてくる。それに笑って、男は踵を返した。
「せいぜい生きていたまえ。卿がそうして人らしい浅はかな生にしがみついている間ぐらいは、愛でてやるとしよう」
男はゆったりとした足取りでその場を去った。彼は松永久秀という。
そして取り残され、海に沈みかける男の名は、毛利元就である。
乱世の梟雄、松永久秀が中国を攻め落とした理由は、極単純なものだった。
厳島神社の美しい景観をほんの一月ほど見たいと思ったこと、それを押し通すのに何故だが抵抗を受けたので攻め滅ぼしたに過ぎない。さらにあえて付け足してみれば、乞食から成り上がったという毛利家当主がどれほどな悪党かを見たかった、その2点だけだった。
それ以外に特に理由も無く、久秀自身はもとより攻め滅ぼしても統治するような気も無かった。飽いたら捨てて行こうとさえ思っていた程だった。
毛利元就は父母、兄、甥、義弟や部下まで己の邪魔になる者は悉く殺す非人道な男と聞いたものだから、久秀は「どれほどの妖怪が出てくるか」と怪談でも聞く子供のように胸を躍らせもした。
が、蓋を開けてみて久秀は酷く落胆した。毛利元就は「毛利家」に全てを捧げる「統治者」であり、それ以外ではなかった。彼は兵を「捨て駒」と言って憚らなかったが、何のことは無い。彼は弱い人間であったから、戦を将棋に、兵を駒に当てはめ、より早く玉を奪うために歩を犠牲にする事を厭わぬだけであった。
その証拠に彼は予定に無い兵の死に酷くうろたえた。毛利の兵を捕まえて、一日一人ずつ、戯れに惨殺してみれば、特に人質にした覚えも無いのに救助隊が送り込まれてきた。その存在が酷く滑稽は、そして呆れるものだった。
「善人にも悪人にも成りきれない、小さな男だ」
久秀はつまらなそうに言い捨てて、そして本格的に中国を攻めた。梟雄は楽しむ余裕があるだけに神出鬼没に兵を動かし、そして翻弄され続けた毛利の頭を取った。
……毛利はあまりにもあっけなく落ちた。それがまた久秀には不快だった。
毛利は「統治者」としての己を、そして「被統治者」としての民を徹底していた。毛利は「人」ではなく「組織」であり、中国の民は「国民」ではなく「共通概念」であった。久秀にはそれがたまらなく面白くない。
捕まえてみた毛利元就その人も、特に何も考えていないかのように振舞うのだ。これは生き物ではない、と久秀は思うと同時に、壊すべきだと思った。生き物のくせに死んでいるような顔をするのなら、いっそ死ねばいいと思った。
実際首を落としてやろうとしたのだが、ふいに久秀は気が変わった。こんなつまらない存在でも、生きようと願ったりするのだろうか、と興味を持ったのだ。久秀は彼を神社の浜に杭を打たせて縛り付けた。潮が満ちると呼吸が出来難くなるようにした。
そうすると彼は生き物らしく、地上に打ち上げられた魚のように生きようとするので、久秀はようやっと元就を愛でる気持ちに目覚めた。
ただそれから久秀は元就の事を忘れて、茶碗の収拾をしていたものだから、部下から報告を受けた時には元就は殆ど死に掛けていた。仕方無しに久秀は元就を医者に見せ、布団に入れる事を許したのだった。
「なに、飢え苦しむ動物を見たなら愛でるのは人の性。もっとも、健常な生き物が何処でのたれ死のうと知ったことではないのも人の性。熱が下がり飯が食らえるようになったら、身包みを剥いで追い出せ」
久秀は部下にそう命じて、そしてしばしの間、元就を愛でた。が、元就が生気を取り戻し、一人で歩けるようになるにまで回復すると、久秀は勧告通り、元就の全てを奪って、海に放り出した。
ここまで。久秀という方がいまいちわからない。
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