明後日から大寒波?
死ぬ。出でよ、冬の人食い悪魔、こたつ!
背中のみかんをエサに、人にばっくり食らいついて放さぬ魔物。
以下、かけつき
死ぬ。出でよ、冬の人食い悪魔、こたつ!
背中のみかんをエサに、人にばっくり食らいついて放さぬ魔物。
以下、かけつき
かけつき 5
ちゅらちゅら、しづしづ、がだがだ、ざぢざぢ、……びちゃびちゃ。
父上、父上、父上、父上、
「おお松寿は賢いのぉ。碁の腕も父より上になるのではないか?」
父上、父上、父上、
「ははは、我が子にも追いつかれるようでは、これはワシが毛利の長として務まるはずもないのぉ」
父上、父上、
「そうじゃ我が子にさえ、追いつかれるのに、そうじゃ、奴らワシを毛利の座から引き摺り下ろすつもりじゃ。いつもワシの言う事を聞きもせず、あちらはあちらの、こちらはこちらの利権ばかり、ワシを殺す気じゃのぉ。そうにきまっておる……毛利を消す気に決まっておる」
父上、
「のぉ、松寿……」
ちちうえ、
「お前もワシを殺したいと思うか? 思うか、思うか!」
ちゅらちゅら、しづしづ、がだがだ、ざぢざぢ、……びちゃびちゃ。
「長曾我部」
声をかけられて、元親は飛び起きた。
は、と周りを見渡せば、元親は駕籠の中に座っていて、開けられた引き戸からは眩しい日光が注いでおり、元就が中を覗き込んでいる。
「着いたそうだぞ。早う出て来い。我は道が判らぬ」
そう言う元就の顔を、元親はまじまじと見た。それが不愉快だったらしい元就は眉を顰める。元親は慌てて「悪い悪い、寝ちまってた」と明るく言って、駕籠から飛び出た。
「かような山道を越えて、よう寝られるものよ。我は腰が痛いぞ」
「そりゃあちょうどいい、水に慣れるついでに腰も治してもらえ、ここは温泉だからな」
元親がそう切り返すと、元就は困ったような顔をして、「湯治は万能と言う故、期待はしておる」とだけ答えた。
二人は伊予の温泉地に来ていた。
水が恐ければ湯ならどうだ、という提案が最終的に、ではせっかく四国の主となられたのですから湯治といきましょう、という話になって道後に来る事になった。
元親も平定時に一度入っただけで、その温泉のありがたさなどは良く知らない。だが道後の湯には治癒の力が有るというのは定説であるので、元親も期待はしていた。海を髣髴とさせる水と、湯では大きな違いだろうし、湯に浸かる事が出来るなら治る可能性は有ると言い切れる。
供を引き連れてのろのろと町並みを歩く。元親の足取りが重いのは、先ほどの夢が尾を引いているからだった。
昔から不思議と、元親は他人の夢を見た。
それも他人が、奥深くに隠しておきたいような恐ろしく禍々しい夢ばかり見た。それが元で姫若子呼ばわりされるまで臆病になってしまったのだ。何しろ誰とも知らぬ人間の、戦場の恐怖が夢を伝って入って来るのだ。幼子にはその地獄絵図が恐ろしくてたまらなかった。
その力に感謝出来るようになったのは、元服してからの事だった。相手の奥深い闇が判るだけに、相手に適切に接する事が出来たのだ。それが故の元親の人望だった。相手の全てを判っているから、上手くうわべだけの付き合いが出来るのだ。
そして今回は元就の夢が流れ込んできた。運が良いのか悪いのか、彼の夢は途中で途切れてしまったけれど。
(嫌な感じの夢だぜ、こりゃもっと恐ろしい続きがあるな)
始終響いていた嫌な音といい、元就の異常な家族への執着、父親の疑心暗鬼といい、元親は不快だった。
毛利の長は悉く酒の害で亡くなった、と元親も聞いている。酒は土佐では皆、毎晩飲むようなものだったが、代わりに溺れるような者はあまり居なかった。土佐の者は水にも酒にも溺れない。溺れた者がどうなるか、良く良く知っているからでもある。
酒に食われた者は、次第に妖怪に憑かれたようになっていくのだ。表情は恐ろしく鋭くなり、目線はぎらぎら光る。かわいらしいような顔の赤さではなく、酒の香りは湯気を噴くかの如く、手足は震え、言動は無茶苦茶になる。最後には有る事無い事叫びながら勝手に死ぬか、あるいは誰かを道連れに死んで行くのだ。
そんな壊れていく父や兄を、元就は見てしまったんだろう、そしてその害を受けたのかもしれない。
元親はそう思ったが、本人に聞くわけにもいかない。先ほどから元就は神妙な面持ちで、元親の後を追って来ているのだ。これでだめなら二度と、中国には戻れないかもしれない……そんな恐れを抱いている表情だった。
「毛利、気楽に行けよ。温は体を癒すもんだぜ。そんなに気を張ってちゃあ治るもんも治らねぇよ」
そう言ってやると、元就は苦い顔をして、「それはそうだが」とだけ返した。
ちゅらちゅら、しづしづ、がだがだ、ざぢざぢ、……びちゃびちゃ。
父上、父上、父上、父上、
「おお松寿は賢いのぉ。碁の腕も父より上になるのではないか?」
父上、父上、父上、
「ははは、我が子にも追いつかれるようでは、これはワシが毛利の長として務まるはずもないのぉ」
父上、父上、
「そうじゃ我が子にさえ、追いつかれるのに、そうじゃ、奴らワシを毛利の座から引き摺り下ろすつもりじゃ。いつもワシの言う事を聞きもせず、あちらはあちらの、こちらはこちらの利権ばかり、ワシを殺す気じゃのぉ。そうにきまっておる……毛利を消す気に決まっておる」
父上、
「のぉ、松寿……」
ちちうえ、
「お前もワシを殺したいと思うか? 思うか、思うか!」
ちゅらちゅら、しづしづ、がだがだ、ざぢざぢ、……びちゃびちゃ。
「長曾我部」
声をかけられて、元親は飛び起きた。
は、と周りを見渡せば、元親は駕籠の中に座っていて、開けられた引き戸からは眩しい日光が注いでおり、元就が中を覗き込んでいる。
「着いたそうだぞ。早う出て来い。我は道が判らぬ」
そう言う元就の顔を、元親はまじまじと見た。それが不愉快だったらしい元就は眉を顰める。元親は慌てて「悪い悪い、寝ちまってた」と明るく言って、駕籠から飛び出た。
「かような山道を越えて、よう寝られるものよ。我は腰が痛いぞ」
「そりゃあちょうどいい、水に慣れるついでに腰も治してもらえ、ここは温泉だからな」
元親がそう切り返すと、元就は困ったような顔をして、「湯治は万能と言う故、期待はしておる」とだけ答えた。
二人は伊予の温泉地に来ていた。
水が恐ければ湯ならどうだ、という提案が最終的に、ではせっかく四国の主となられたのですから湯治といきましょう、という話になって道後に来る事になった。
元親も平定時に一度入っただけで、その温泉のありがたさなどは良く知らない。だが道後の湯には治癒の力が有るというのは定説であるので、元親も期待はしていた。海を髣髴とさせる水と、湯では大きな違いだろうし、湯に浸かる事が出来るなら治る可能性は有ると言い切れる。
供を引き連れてのろのろと町並みを歩く。元親の足取りが重いのは、先ほどの夢が尾を引いているからだった。
昔から不思議と、元親は他人の夢を見た。
それも他人が、奥深くに隠しておきたいような恐ろしく禍々しい夢ばかり見た。それが元で姫若子呼ばわりされるまで臆病になってしまったのだ。何しろ誰とも知らぬ人間の、戦場の恐怖が夢を伝って入って来るのだ。幼子にはその地獄絵図が恐ろしくてたまらなかった。
その力に感謝出来るようになったのは、元服してからの事だった。相手の奥深い闇が判るだけに、相手に適切に接する事が出来たのだ。それが故の元親の人望だった。相手の全てを判っているから、上手くうわべだけの付き合いが出来るのだ。
そして今回は元就の夢が流れ込んできた。運が良いのか悪いのか、彼の夢は途中で途切れてしまったけれど。
(嫌な感じの夢だぜ、こりゃもっと恐ろしい続きがあるな)
始終響いていた嫌な音といい、元就の異常な家族への執着、父親の疑心暗鬼といい、元親は不快だった。
毛利の長は悉く酒の害で亡くなった、と元親も聞いている。酒は土佐では皆、毎晩飲むようなものだったが、代わりに溺れるような者はあまり居なかった。土佐の者は水にも酒にも溺れない。溺れた者がどうなるか、良く良く知っているからでもある。
酒に食われた者は、次第に妖怪に憑かれたようになっていくのだ。表情は恐ろしく鋭くなり、目線はぎらぎら光る。かわいらしいような顔の赤さではなく、酒の香りは湯気を噴くかの如く、手足は震え、言動は無茶苦茶になる。最後には有る事無い事叫びながら勝手に死ぬか、あるいは誰かを道連れに死んで行くのだ。
そんな壊れていく父や兄を、元就は見てしまったんだろう、そしてその害を受けたのかもしれない。
元親はそう思ったが、本人に聞くわけにもいかない。先ほどから元就は神妙な面持ちで、元親の後を追って来ているのだ。これでだめなら二度と、中国には戻れないかもしれない……そんな恐れを抱いている表情だった。
「毛利、気楽に行けよ。温は体を癒すもんだぜ。そんなに気を張ってちゃあ治るもんも治らねぇよ」
そう言ってやると、元就は苦い顔をして、「それはそうだが」とだけ返した。
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浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
二人とも変態。永遠の中二病。
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