今更ですけど
31 × 29 って
ボーイズ ラブ なんでしょうか
むしろ
おっさんず らぶ 略して OLなんじゃないでしょうか
でも31や29は おっさんと呼ぶには若いし
この辺りの年齢層って なんなんだろう
31 × 29 って
ボーイズ ラブ なんでしょうか
むしろ
おっさんず らぶ 略して OLなんじゃないでしょうか
でも31や29は おっさんと呼ぶには若いし
この辺りの年齢層って なんなんだろう
カイと遊馬の不思議な関係はその後も続いた。ゲームではいつもカイが優位で、いつも上から目線の物言いだったが、リアルで会うとめっぽう遊馬に弱かった。惚れた弱みという奴なのかどうか。時々は体を重ねて、カイは「遊馬さんは意地悪です」とか「卑怯です、変態なんじゃないですか」とか文句を言う事も有ったが、「でもカイちゃん、ああいうの好きでしょ?」と問うと黙りこくった。
要するにカイは、遊馬に惚れている。恐らく、恋をしているのだ。遊馬も悪い気はしなかった。普段すましたカイが、リアルで身もだえたり泣いたりするのを見るのも、楽しいというか、そそるというか。遊馬もこの生活をそれなりに気に入っていた。
合鍵を渡されたのもその頃で、変なキャラクターのキーホルダーが付いたソレを使う事は無かったが、そういう小さな事が起こる度に、遊馬は少しだけ考える。
これは恋人ごっこなのか、それとも、本当に恋人なのか。
その日は映画館デートに行く事になっていた。カイが全て決めたから、遊馬はチケットに書かれたタイトルを見て初めて今日見る映画を知った。CMを見たから判る。恋愛映画だ。
「……カイちゃん、こういうの好きなの?」
「社会勉強みたいなものです」
いつの間にやら、やたら高いキャラメルポップコーンと、オレンジジュースをLサイズで二つ買ったカイが無表情で答える。面白くなさそうだなあ、と思いながら、遊馬はポップコーンとジュースを受け取った。どうせならアクション映画が良かった。ついでに言えばポップコーンは塩味が良かったし、オレンジジュースではなくコーラが良かった。
遊馬はカイの独断専行っぷりに慣れて(諦めて、かもしれない)何も言わずに席に着いた。カイも隣に座る。
結論から言えば、キャラメルポップコーンは旨かったが、オレンジジュースとの相性は絶望的だった。苦いわ酸っぱいわ。ついでに恋愛映画はその有り得ないご都合主義をツッコむ作業が、ちょっとぐらいは面白かった。
とはいえ、そんな楽しみ方がいつまでも出来るわけではない。ついに暇になって、遊馬はカイの方を見た。カイはこちらに気付かず、じっと映画に見入っている。
(カイちゃんなんか……変なトコで乙女だよなァ)
遊馬は心の中でそう呟いて、またスクリーンに目を移した。
「カイちゃん、映画すげー見てたけど、面白かったの?」
安いレストランに入って食事をしている時に、なんとなく尋ねた。カイは無表情のまま、彼の頼んだちゃんぽんを食べていたが、少しして答える。
「僕、接客業です」
「? うん」
「客の大半は、女性客です」
「……で?」
「仕事に必要な知識、ですよ」
あぁ、と遊馬は納得しながら、からあげ定食の漬物を口に入れる。女性対手に商売をする以上、女性のセンスや考え方、流行等、沢山の事を知らなければいけないのかもしれない。遊馬には面白くなかったが、人気の映画とかテレビで言っていたし、女性客は泣いていたりもしていた。映画を見ているだけでも、話題にはなるかもしれない。
と、いう事は、だ。
「……カイちゃん、仕事熱心なんだね。休みの日も仕事の事、考えてんだ」
「別に、ついでですし」
「例の恋愛ゲーム買ったのも、その辺が理由? 女の子のキュンキュンするツボの勉強、みたいな」
「ゲームは趣味ですから、関係無いですよ。アレをやったのは、単に興味が有ったからです、時期的に、……」
何か言いかけて止めた。それは判ったが、追及はしないでおいた。大体予想はついたからだ。カイは妙なところで、恋する乙女のような言動をしているから、たぶんその辺が理由だろう。
「でも大変だよな。俺は喋らなくて良いから楽だけど」
「……遊馬さんは何の仕事をしてるんです」
「ん~、自動車整備。裏方だから、接客もしないし」
「同僚の方とは喋るでしょう?」
「うんにゃ、全然」
そうキッパリ言うと、カイが眉を寄せた。その反応がよく理解出来なくて、遊馬は少々焦った。
「ほら、技術屋だし、同僚との仲はあんまり関係無いだろ? 挨拶ぐらいはしてるけど、でもお喋りとか、そういうのは必要無いし……」
「……遊馬さん、僕あんまり人のやり方にとやかく言うつもりは無いですけど」
言うつもりは無いんだ。言ってないつもりなんだ。
遊馬は思ったが、ツッコめなかった。
「仕事仲間とは話した方が良いです。世間話程度でも構いませんから」
「何で? 時間の無駄だよ、俺早く帰ってゲームしたいし」
「いいですか、信頼は得難い物です。どんなに時間を割いてでも手に入れなければいけない物です。無駄には感じると思います、実際無駄になるかもしれません。でもそうした時間はいずれ遊馬さんの為になります。だから試しに話してみて下さい」
カイにだけは、人間関係について言われたくない、と遊馬は思った。信頼どころかゲーム中はやりたい放題しているのに。しかもいつも上から目線で偉そうに物を言って、特に男のフレンドからは距離も取られているのに。色々と思うところは有ったが、遊馬はカイの言葉を聞き流しはしなかった。
一つにはカイがあれ程長い時間、人に説明するのを聞いた事が無かった。カイはいつも言葉が少なく、通じなければあっさり「もういいです」と投げ出す。なのに、その時のカイは真剣な様子だった。だからきっと、カイにとっては大事な、伝えたい事だったのだろう。
遊馬は半信半疑ながら、同僚と言葉を交わしてみた。最初は何を話していいか判らず、お互いにギクシャクしていたが、我慢して三日も続けると、少々楽になってきた。しばらくすると笑い話や趣味の話もして、同僚のうち数人もゲームをしていると判り、今度一緒にやろう、などと意気投合も出来た。
そうこうするうちに、遊馬は何故、カイがあれ程同僚と話す事を勧めたのか理解した。確かに仕事の役にも立たない無駄な時間が殆どだ。しかし時折ポロリと、遊馬の知らない重要な話が出てくる。整備の技術の事や会社の事、新しい車の事。そうした事を自力で調べるのがどれ程面倒で、そして恐らく知らないまま過ごすだろう事を考えると、うんざりする。それを楽しい息抜きの会話で得られるのだ。こんな便利な事は無い。
そうか、カイちゃんはこれを伝えたかったんだ。
遊馬はそう考えて、改めてカイという人物を不思議に感じた。そういう人づきあいの大切さを知りながら、ゲーム内でのあの態度。もしかして、カイはかなり無理をして仕事仲間と過ごしているのだろうか、女は嫌いだと言っていたし。だからその反動で、ゲームの中では全く出来ないのかもしれない。
(不器用な奴だなあ)
そう考えて、遊馬は笑った。
不器用なのはお互い様だ。こんな簡単な事に今まで気付かなかった。仕事は好きだったが、人づきあいは苦手なほうだ。何故仕事が好きかと言えば、きちんと整備すれば、車はちゃんと応えてくれるから。
(あぁ、俺とカイちゃん、同じなんだ)
絶対的な正解を、ゲームに求めるカイと、仕事に求めた遊馬。そんな二人が、相対的な正解しかない人付き合いの末に、抱き合ったりしている。
(……こりゃ近いうちに、何か起こっても仕方ないな)
お互い慣れていないのに、手と手を重ねて、触れあってしまった。急速に近付いた物同士は、ぶつかると激しく散るものだ。しかしそれもまた仕方ない事だろう。それで終わるならそれまでの縁、終わらないなら、長い縁。それだけだ。
だから、既に遊馬はある程度の事が起こるのは予想していた。
要するにカイは、遊馬に惚れている。恐らく、恋をしているのだ。遊馬も悪い気はしなかった。普段すましたカイが、リアルで身もだえたり泣いたりするのを見るのも、楽しいというか、そそるというか。遊馬もこの生活をそれなりに気に入っていた。
合鍵を渡されたのもその頃で、変なキャラクターのキーホルダーが付いたソレを使う事は無かったが、そういう小さな事が起こる度に、遊馬は少しだけ考える。
これは恋人ごっこなのか、それとも、本当に恋人なのか。
その日は映画館デートに行く事になっていた。カイが全て決めたから、遊馬はチケットに書かれたタイトルを見て初めて今日見る映画を知った。CMを見たから判る。恋愛映画だ。
「……カイちゃん、こういうの好きなの?」
「社会勉強みたいなものです」
いつの間にやら、やたら高いキャラメルポップコーンと、オレンジジュースをLサイズで二つ買ったカイが無表情で答える。面白くなさそうだなあ、と思いながら、遊馬はポップコーンとジュースを受け取った。どうせならアクション映画が良かった。ついでに言えばポップコーンは塩味が良かったし、オレンジジュースではなくコーラが良かった。
遊馬はカイの独断専行っぷりに慣れて(諦めて、かもしれない)何も言わずに席に着いた。カイも隣に座る。
結論から言えば、キャラメルポップコーンは旨かったが、オレンジジュースとの相性は絶望的だった。苦いわ酸っぱいわ。ついでに恋愛映画はその有り得ないご都合主義をツッコむ作業が、ちょっとぐらいは面白かった。
とはいえ、そんな楽しみ方がいつまでも出来るわけではない。ついに暇になって、遊馬はカイの方を見た。カイはこちらに気付かず、じっと映画に見入っている。
(カイちゃんなんか……変なトコで乙女だよなァ)
遊馬は心の中でそう呟いて、またスクリーンに目を移した。
「カイちゃん、映画すげー見てたけど、面白かったの?」
安いレストランに入って食事をしている時に、なんとなく尋ねた。カイは無表情のまま、彼の頼んだちゃんぽんを食べていたが、少しして答える。
「僕、接客業です」
「? うん」
「客の大半は、女性客です」
「……で?」
「仕事に必要な知識、ですよ」
あぁ、と遊馬は納得しながら、からあげ定食の漬物を口に入れる。女性対手に商売をする以上、女性のセンスや考え方、流行等、沢山の事を知らなければいけないのかもしれない。遊馬には面白くなかったが、人気の映画とかテレビで言っていたし、女性客は泣いていたりもしていた。映画を見ているだけでも、話題にはなるかもしれない。
と、いう事は、だ。
「……カイちゃん、仕事熱心なんだね。休みの日も仕事の事、考えてんだ」
「別に、ついでですし」
「例の恋愛ゲーム買ったのも、その辺が理由? 女の子のキュンキュンするツボの勉強、みたいな」
「ゲームは趣味ですから、関係無いですよ。アレをやったのは、単に興味が有ったからです、時期的に、……」
何か言いかけて止めた。それは判ったが、追及はしないでおいた。大体予想はついたからだ。カイは妙なところで、恋する乙女のような言動をしているから、たぶんその辺が理由だろう。
「でも大変だよな。俺は喋らなくて良いから楽だけど」
「……遊馬さんは何の仕事をしてるんです」
「ん~、自動車整備。裏方だから、接客もしないし」
「同僚の方とは喋るでしょう?」
「うんにゃ、全然」
そうキッパリ言うと、カイが眉を寄せた。その反応がよく理解出来なくて、遊馬は少々焦った。
「ほら、技術屋だし、同僚との仲はあんまり関係無いだろ? 挨拶ぐらいはしてるけど、でもお喋りとか、そういうのは必要無いし……」
「……遊馬さん、僕あんまり人のやり方にとやかく言うつもりは無いですけど」
言うつもりは無いんだ。言ってないつもりなんだ。
遊馬は思ったが、ツッコめなかった。
「仕事仲間とは話した方が良いです。世間話程度でも構いませんから」
「何で? 時間の無駄だよ、俺早く帰ってゲームしたいし」
「いいですか、信頼は得難い物です。どんなに時間を割いてでも手に入れなければいけない物です。無駄には感じると思います、実際無駄になるかもしれません。でもそうした時間はいずれ遊馬さんの為になります。だから試しに話してみて下さい」
カイにだけは、人間関係について言われたくない、と遊馬は思った。信頼どころかゲーム中はやりたい放題しているのに。しかもいつも上から目線で偉そうに物を言って、特に男のフレンドからは距離も取られているのに。色々と思うところは有ったが、遊馬はカイの言葉を聞き流しはしなかった。
一つにはカイがあれ程長い時間、人に説明するのを聞いた事が無かった。カイはいつも言葉が少なく、通じなければあっさり「もういいです」と投げ出す。なのに、その時のカイは真剣な様子だった。だからきっと、カイにとっては大事な、伝えたい事だったのだろう。
遊馬は半信半疑ながら、同僚と言葉を交わしてみた。最初は何を話していいか判らず、お互いにギクシャクしていたが、我慢して三日も続けると、少々楽になってきた。しばらくすると笑い話や趣味の話もして、同僚のうち数人もゲームをしていると判り、今度一緒にやろう、などと意気投合も出来た。
そうこうするうちに、遊馬は何故、カイがあれ程同僚と話す事を勧めたのか理解した。確かに仕事の役にも立たない無駄な時間が殆どだ。しかし時折ポロリと、遊馬の知らない重要な話が出てくる。整備の技術の事や会社の事、新しい車の事。そうした事を自力で調べるのがどれ程面倒で、そして恐らく知らないまま過ごすだろう事を考えると、うんざりする。それを楽しい息抜きの会話で得られるのだ。こんな便利な事は無い。
そうか、カイちゃんはこれを伝えたかったんだ。
遊馬はそう考えて、改めてカイという人物を不思議に感じた。そういう人づきあいの大切さを知りながら、ゲーム内でのあの態度。もしかして、カイはかなり無理をして仕事仲間と過ごしているのだろうか、女は嫌いだと言っていたし。だからその反動で、ゲームの中では全く出来ないのかもしれない。
(不器用な奴だなあ)
そう考えて、遊馬は笑った。
不器用なのはお互い様だ。こんな簡単な事に今まで気付かなかった。仕事は好きだったが、人づきあいは苦手なほうだ。何故仕事が好きかと言えば、きちんと整備すれば、車はちゃんと応えてくれるから。
(あぁ、俺とカイちゃん、同じなんだ)
絶対的な正解を、ゲームに求めるカイと、仕事に求めた遊馬。そんな二人が、相対的な正解しかない人付き合いの末に、抱き合ったりしている。
(……こりゃ近いうちに、何か起こっても仕方ないな)
お互い慣れていないのに、手と手を重ねて、触れあってしまった。急速に近付いた物同士は、ぶつかると激しく散るものだ。しかしそれもまた仕方ない事だろう。それで終わるならそれまでの縁、終わらないなら、長い縁。それだけだ。
だから、既に遊馬はある程度の事が起こるのは予想していた。
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