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めでぃのくの日記
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2025-01-19 (Sun)
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2010-06-01 (Tue)
 あんまり更新が無いので申し訳無いけれども、
 本当にバサラのお話のストックが切れているので、
 これでは誰もお喜びにならないかもしれませんが、
 とりあえず、件のオリジナルホモ話になる予定の話の
 書き始めた1話を投下してみます
 もともとノーマルなオリジナル話の脇役として設定されている二人なのに
 設定を考えるあまりこっちが主体になってしまったという
 一応カップリング的にはいつも通り
 でかい男×細い男です

 ただひたすら何事も起こらない予感です

 私の生まれは南の砂漠地帯だと、母から聞いております。砂漠は日照りが強く、しかも夜には凍える寒さになる、地獄のような場所であり、それでいて砂がきらきらと光り、人を魅了する天国のような場所でもあるとの事です。私には記憶が有りませんが、そのような場所で生まれた私はとても貴重なのだそうです。天国も地獄も、生有る者が辿り着けないという点では、同じですから、私はそうした特殊な場所に生まれたというだけで価値が有りました。

 母は父を探して方々歩き回っておりましたから、何処の生まれか存じません。私も幼い頃より母と共に旅を続けましたが、つまり私は砂漠で生まれましたが、砂漠の民ではありません。かの民は肌の色が日に焼けて濃く、黒髪の者が多いと申しますが、私は生まれつき白い肌ですし、髪も橙に近い色で、日に当たると金色に輝くと、幼い頃より評判は上々でした。

 いつの間にか母には妹が出来ており、旅の途中に立ち寄った筈の、この王国にしばらく住む事になりました。母は妹を大層大事にしておりましたが、育てるだけのお金も有りませんし、私は見目ばかり良くて、体格もあまり良くなかったので、働く事も出来ず、つまりはそういう道しかなかったのです。母と妹を守るためには、そうするしかなかった、というわけです。

 幸い私は自分で言うのもどうかと思いますが、見た目は良いし、大層高く売れるだろうと、売り手の方も喜んでおられました。彼は親切にも、私のような奴隷が買い取られた場合、どのように使われるかを丁寧に教えて下さいました。可愛がられるのだそうです。考えただけでぞわぞわと寒気がいたしました。怖くて泣いた夜もありました。けれど受け入れる事にしました。私は母と妹を愛しておりますから、彼女らの助けになるのならと、何もかも諦めたのです。その末に私がどうなったとしても、私には一つの希望が残るのです。それは幸せな事なのだろうと、信じるしかありませんでした。

 数日を経て、私の買い手が決まりました。シャニアという貴族様の家だそうです。私は隷属名の「イル」を付けられまして、ルゼ=イル=シャニアという名を頂きました。ルゼは私の名で、イルは、後ろに付く家名の召使という意味です。シャニア家の召使、という名です。イルの名は他にも牛や調度品にもつけられる、所有物の証です。この名を持つ限り、私は人ではなく、シャニア家の資産の一つという事になります。

 荷馬車に揺られて、これ以上無いほど美しい着物を着せてもらい、私はシャニアのお屋敷に参りました。その時の光景は今でも忘れられません。石畳の広い道、白い壁の家々、花壇には花が咲き乱れておりました。私の門出を祝うようであり、最後の餞のようでもありました。どちらも別れを意味する事に変わりは有りません。蔦の絡んだ白い塀は高く、私を閉じ込める牢に来たかのようにも感じられました。侵入者を防ぐための鉄柵は鋭く、槍のように天を突き、輝いていました。広い広いお庭は芝が生え揃い、薔薇の花が静かに咲いておりました。白いお屋敷はとても大きく感じ、私は自然と恐れました。

 私はこれから死ぬまで一生、この囲いの中で、家畜にように暮らすのだ。

 そう諦めを胸に抱いて、私はシャニア家の中へと、入って行ったのです。まだ何も知らなかった私は、ただ、この先に幸福などは無いと信じて。



 +++



 
 トウマは北方山脈の生まれだ。幼い頃から体格もよく健康だったため、彼は内乱のどさくさで奴隷商人に買い取られても、いい扱いをされた方だろう。今までに4人の主に仕えたが、最後の主を暴漢から守り抜いた褒美として、自由を授かった。そうしてトウマは、トウマ=イル=キャリバという名を失い、ただのトウマになる事を許された。

 ただトウマはそれまでの経験から大層人嫌いになっていた。最初の主に引き取られた時、トウマはまだ13で、成長期の彼に主は焼けた鉄を押しつけたり、鞭で打ったりした。そうして反抗心を削ぐのが目的だったようだが、トウマは表面で彼らに従い、内心で背くという事を覚えた。トウマは従者としてよく主に仕えたし、人として彼らを心から軽蔑し、隙有らば裏切った。普通ならば処分されていてもおかしくないが、トウマは人並み外れて屈強な身体であったし、誰もが猛獣を飼い慣らすような気分で次の主になった。

 そうして何度かの隷属と裏切りを経て、トウマはついに自由を手に入れた。まだ26だったが、心は随分と疲れて歳を取ったような気分だった。加えて自由を手に入れたところで、今度は生活していくという事に時間を奪われる。何が幸せなのか、トウマには判らなくなっていた。

 あまりに体格が良すぎるため、普通の仕事にはつけそうにもなかった。それにトウマは外見があまりよくない。醜い、とまでは言わないが、がっしりとした身体とそれに相応しい顔に小さな眼は、相手に警戒心を与えたし、北方生まれの特徴である銀の髪はむしろ白髪に近く、歳老いて見えるようだ。トウマは自由を得ても、何処にも馴染めなかった。長年育てて来た人嫌いも手伝って、トウマはずっと一人で居た。

 そうは言っても、生活する為には金が要る。どうしたものか、と思っていた時、声をかけられた。護衛の仕事をしないか、という話だ。トウマがその話を受けたのにはいくつか理由が有る。もちろん、生活に困っていた事と、その仕事の給金がとんでもない額だったという事も有るし、仕事の内容にも心が動いた。

 リフィトル、というブランド名の、服飾店のオーナーである、ルゼ=リヴァーインの護衛である。内容は至極簡単、ルゼを護衛し、共に旅をするだけ。ルゼは新しい文化の見聞を目的に一人旅を試みたらしいが、周りが危険だからという理由で、護衛をつけるよう説得したようだ。トウマに声がかかったのは、その体格と、戦う技術が有る事、それに主に従うところあたりが理由のようだ。トウマは喜んでその仕事を受けた。

 トウマの本心は、ルゼを殺すという事に有った。服飾店のオーナー、といえば名門貴族あたりとの繋がりも深い。それなりの屑だろうとトウマは思った。旅先で殺してしまえばバレる事も無いだろうし、そんな身分の人間であるから、結構な資産を持って旅をするだろうと踏んでの事だ。ルゼの身ぐるみを剥いで売れば、自分はしばらく暮らしていけるだろう、と。旅先でいい土地を見つければ、そこに永住しても良い。……トウマはそのように考えていた。

 ただトウマにも多少の希望は有った。彼はリフィトルブランドの服や装飾品を見た事が有る。貴族の間でもその衣装は好かれていた。トウマもそのデザインが好きだった。落ち着いた色が多く、派手な物は作らないのに、何処か煌びやかで、どんな貴婦人が着ても清楚な美しさを作り出したし、どんな下衆も紳士に変わる。柔らかいディティールがトウマもそれなりに気に入っていた。そして、そういう物を作り出せる人間は、きっとそういう、柔らかい人かもしれない、と、少しの希望を持っていた。彼がやはり屑なら殺せばいいし、そうでないのなら、側で見ていたい、と。

 約束の日の早朝、トウマがリフィトルの店へと向かうと、店の前に馬車が用意してあり、何やら一人の青年が、その中に荷物を放り込んでいた。

 白いブラウスに、淡い色の細身のズボン、膝より上まである革のブーツは、少々ヒールがついているようだ。橙に近い髪は、日の光を受けると金色に輝いて見えた。

 トウマはぼうっとその後ろ姿を見ていたが、やがて青年が振り返り、きょとんとした顔をした後で、微笑んだ。

「えーっと……護衛の方ですか?」

 静かな声音。トウマが黙って頷くと、彼は「ちょうど良かった!」と歩み寄ってくる。

「荷物を馬車に入れていたんですが、あんまり多くて運ぶのが大変で。手伝ってもらえますか?」

「……もう、出立の準備を? 今日はご挨拶と伺っていましたが……」

「ああ、だって早い方がいいでしょう。善は急げという奴ですよ。あまり時間をかけると、皆の気が変わるかもしれないし……あ、もしかして貴方の都合がつきませんか? なら日を改めますが……」

「いや、俺は……」

 別にかまわない、と言いかけたところで、トウマは違和感を覚えた。確か旅に出たがっているのはオーナーのルゼである。それを従業員達は嘆きながらも、仕方なく護衛をつける事で許した、という経緯の筈だ。彼が「皆の気が変わる」と言うのなら、それはつまり、彼こそがルゼだという事ではないか。

「……失礼ですが、……ルゼ様、ですか」

 恐る恐る尋ねると、青年は「そうですよ」とあっさり頷いた。

「ああ、ご挨拶が遅れてしまいましたね。私はルゼ=イル=シャニアと申します。貴方に護衛をして頂くのですが……貴方のお名前は?」

「……」

「……あの?」

「あ、……いえ……失礼ですがその……俺は貴方の部下になるわけですから、そう丁寧な言葉をお使いにならなくても……」

「ああ……そうですね。一応私が主という形ですから……威張らないといけないんでしたね」

 ルゼは一つ笑って、トウマを見る。顔立ちは整っていて、体の小ささも手伝い、男装の麗人のように見えなくもなかった。肉付きや骨格が違うから、よく見れば判るが。

「貴方の……いや、君の名は?」

「……トウマ、です。……本日からは、トウマ=イル……になりますか」

「いいや。ならないよ。君は私の所有物なんかじゃないからね。仕事上のお付き合い、という事になる。よろしく、トウマ。私の事はルゼでいいよ」

「いえ、そういうわけにはいきません。ルゼ様、と呼ばせていただきます」

「……そう。まぁいいや。じゃあ早速だけど、荷物を運ぶのを手伝ってほしいんだ。私はその……あまり重い物は運べなくてね」

 ルゼは苦笑して、トウマを手招いた。店の中へと入って行く。トウマは店の外観を少し眺めた。石造りの店先には落ち着いた色の布がいくつか飾られていて、リフィトル、と金糸の刺繍で書かれている。一番目立つ、入口の扉の上には、黄金色の金属で描かれたドラゴンのプレートが嵌められている。これは王宮が認めた職人や店に与えられる称号で、信用出来る店の証でもある。ドラゴンの翼には通り番号が書かれていて、偽造出来ないようにされていた。

 店に入ると、中は薄暗い。他の店員はまだ来ていないようだった。ルゼは服が沢山並べられた棚や机に触れ、あれこれと鞄に放り込む。そうしながら、「アレをお願いするよ」と指差した。見ると、布に包まれた大きな板のような物が置かれている。

「これは?」

「大鏡。割れにくいように細工はしてあるけど、流石に落としたら割れちゃうから。馬車に運びこんで、壁に固定してほしいんだ。それと奥に調理器具とか、そういうのが置いてあるから、それもよろしく」

 ルゼはそう言いながら、机の引き出しを開けて帳簿のような物やいくつかの本を鞄に放り込む。トウマは仕方なく大鏡を持った。それほど重くはない。まぁルゼにとっては重い物かもしれないが、無理な重さではない。押しつけられたのだな、とトウマは思った。

 馬車に鏡を運び、壁に固定する。ルゼはその間に何往復かして、馬車に衣類や装飾品の入った箱を据えていた。何に使うのか、と問えば「行商もついでにね」との答え。

「地方貴族とかに売れるかもしれないし。万が一お金が足りなくなった時に、換金出来るかもしれないしね。……ああ、ありがとう。鏡はそれでいいよ」

 ルゼはまた店へと入っていく。トウマはふと馬車の中を見渡した。御者台への出口にはカーテンがしてあり、すぐ側には簡易ベッドが置かれていた。布団はかなり柔らかく、寝心地は悪くなさそうだ。が、トウマは寝られないだろう。これはルゼ用の物だ。ベッドの下には箱が入れてあったが、中身は空だった。

 ベッドの反対側にはいくつかの箱が置かれて、ちょっとした棚のようになっている。中には布や白紙の本や、色鉛筆などが入っている。仕事用の道具がしまわれているらしい。入口側には服の入った箱が積まれつつある。

 このまま放っておくと、調理器具を置いたまま、馬車を服でいっぱいにしそうだったので、トウマは急いで必需品の箱を運びこんだ。ルゼはまだ鞄や箱を用意していたが、馬車の中の様子を見て、半分に荷物を減らした。

 そうこうしているうちにはすっかり朝になって、通りにも人が歩きだし、店員達もやってきた。若い男の店員はずっと不安そうな顔で、「本当に行くんですか」「早く帰って来て下さい」と何度も言っていたし、女の店員は「身体に気をつけて」「温かくして」「いざとなったらこれを」と何か小物類を際限なく押し付け続けた。ルゼは困ったような顔で、それに逐一頷いていた。店員達はやはりルゼを旅に行かせたくないようだったが、ルゼの決意は固いようだ。

 昼までに出立する予定だが、そちらの準備は有るのか、とルゼに問われたが、トウマは首を振った。荷物も無いし、金も家も無い。トウマには何も無かった。だからルゼとトウマは馬車に乗り込んで、出立する事になった。何故だかルゼも御者台に乗って来て、トウマの隣で店員達に手を振り続けていた。

 +++

 まだ色んな事が仮決定なので、色々矛盾有るかもしれませんが。

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