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めでぃのくの日記
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2009-11-02 (Mon)
 あんまり更新が無いのがアレなんでその
 前に言っていた、オリジナルのやおいをちびちびあげていこうかなと
 興味無ければスルーでお願いします
 時代を感じる陳腐な話です 一次のやおいは初めて書きました……
 ツンデレ生徒×デレデレ教師 です
 で、タイトルは「いぬはひざまずけ」です

 三方一所 勇慈(くつわだ ゆうじ)には現在、悩みが有った。教師となって三年、持ち前の明るさで生徒達からは好かれたし、受け持っている現代文の授業の評価も高い。だが彼は今、教師としての壁にぶち当たっている。
 
 勇慈は今年、二年B組の担任になった。殆どの生徒は勇慈と仲良くしてくれたし、信頼もされているようだ。特別優秀なクラスというわけではなかったが、いいクラスだと思っている。

 ところが、一人だけクラスから孤立している生徒が居る。名を御薗宇 和沙(みそのう かずさ)。黒髪を前で分け、眼鏡をかけた物静かな青年だ。身長はまだ少し成長途中だが、顔立ちも良いし、いじめられるようなタイプではない。実際、クラスにいじめは無い、と勇慈も感じている。だが、和沙はいつも一人で居た。

 休憩時間も予習をするばかりだし、昼休憩も、誰と食事をするでもなく、何処かへ行ってしまう。勉強家なのかと思えばそうでもなく、休憩時間は読書をしたり昼寝をしたりと様々で、放課後は部活にも所属せず、さっさと帰る。それが和沙だ。そして勇慈はそんな彼を心配していた。

 勇慈は赤子の頃に捨てられ、孤児院で育てられた。運が良い事に院長は子供好きな優しい人で、孤児院暮らしとはいえ、勇慈は楽しく毎日を過ごす事が出来た。その後、三方一所家に引き取られたが、そこの二人も本当に良い人で、本当の両親と思ってもいいと常々感じている。

 持ち前の明るい性格から、学校でも特にいじめられたりはしなかった。どんなハンディキャップも明るくさえあれば、ある程度乗り越える事が出来る、と勇慈は信じている。大きな声を出して、笑顔でいれば、相手も笑顔で接してくれる。それが勇慈の社交術だった。

 ところが和沙は違う。こっちが挨拶をしても、ぺこりと頭を下げるだけ。何か話しかけても「そうですね」とか「そうかもしれませんね」とか、そういう返事をしてそれきりだ。会話にならない。クラブ活動をしたらどうか、と言っても、「もう二年生ですし」と話を打ち切ろうとする。

 勇慈は学生時代にテニス部や陸上部、とにかく体育系のクラブに所属していた。ついにどの競技でも才能は芽生えなかったが、それでもその頃に培った、チームワークや、練習に励む忍耐力、悔し涙を流して這い上がる経験はいいものだと思っている。それに、若いとは言い難くなってきた身体を支えるのは、学生時代に鍛えた筋肉だ。今、運動をしておいて損は無い。色んな物が得られると勇慈は思っている。

 だから勇慈は和沙に対して、自分の水泳部に入れと言った。勇慈は水泳が得意な方ではないが、他に適任が居ないという理由で水泳部の顧問になっている。部員も大した人数ではないし、大会にも名を残すような部ではない。だから、二年から参加しても大丈夫だ、と言ってやった。和沙は困ったような顔で、「いいです」と即答した。

 普通ここまでにべもない反応をされたら、自分が疎まれているのだと気付きそうなものだが、勇慈は全く気にしなかった。気にしないどころか、「遠慮なんてしなくていいよ!」とか「大丈夫、皆いい奴だよ!」などとさらに言った。やはり相手にされないので、勇慈もその時は引き下がったが、負ける気はなかった。

 勇慈は気付いていなかったが、彼の生き方はまさに、「大きな声で言った者が勝ち」という形で成り立っていた。言う事が皆に受け入れられるのは、ひとえに彼がすぐ言葉を出したからだ。そして彼の事を悪く思ってはいない人間は、言いだしっぺが自分でない事と、彼の提案が特に害にならない事を判断して、「いいねいいね」と頷いた。その方が周りが楽なのだ。だが勇慈はそんな事情になど少しも気付かない。自分がいい事を提案して、相手に見せれば、快諾してくれるものだと信じていた。

 だから、和沙がなかなか「うん」と言わない事に勇慈は驚いた。何が不満なんだろうか、と考えた末に、そうかこの子は実行する勇気が無いんだ、という結論に至った。俺がこの子の心の窓を開かせてやろう、と意気込み、ある日の放課後、和沙を無理やり引っ張って水泳部に連れて行った。

 ほら恥ずかしくないよ、皆いい奴だから、などと言って、勇慈は和沙を連れ、プールに向かう。後に勇慈はその時の事を思い出して、確かに嫌がってたかもしれないなあ、とは思った。「いいです」「用が有るから」「いいですから!」とだんだん語尾を強めていったのに、勇慈は少しも気にしなかった。

 そして「そーら!」とばかり和沙をプールに投げ込んで。

 浮いてこない事に、しばらくして気付いた。




 カナヅチを無理やりプールに放り込んでしまった事を、勇慈は反省したし、後になって冷静になってみれば、生徒を制服のまま水中に放り投げた事も大いに反省した。校長にしこたま怒られたからだ。びしょ濡れになって、若干青い顔をした和沙は予備の服を貰い、他の教員の車で家まで送られた。そして勇慈はひたすらに怒られた。

 だから勇慈も、自分の強引が過ぎたとか、人にはそれぞれ性質というものが有るし、と反省はしたが、しかし未だに、自分が和沙に嫌われているのでは、あるいは嫌われたのではないかなどという事は一つも考えなかった。

 それだけに、和沙が特に理由も無く、五日も学校を休んだ事に困り果てていた。

 いや、理由も無く、というのは嘘だ。恐らく、プールの事で休んでいるのだ。勇慈にもそれぐらいは判ったし、自分が原因で生徒が登校拒否になったら親御さんにも、和沙にも申し訳無いと思った。放課後、御薗宇家に電話を入れてみたが、誰も出ない。留守番電話に一応、連絡をくれと言ったが、一向に来ない。

 勇慈は元々、待ったり、くよくよしたりするのが大の苦手である。

 だから、彼は和沙の所へ、緊急に家庭訪問する事にした。




 和沙の家は住宅街からは少々外れた、山際に有る。二階建ての、それなりの大きさの家で、右隣は閉店してもう長い文房具屋のようだ。左隣は空き地で、駐車はされたくないのかロープが引かれている。車で来た勇慈は困って、とりあえず道ばたに車を置くと、御薗宇家の玄関に近づいた。家の前には駐車スペースと思わしき部分が空いている。ここに入れさせてもらおう、と考えながら、チャイムを鳴らす。

 何度か押すと、インターホンから返事が有った。「和沙君の担任の者ですが」と言うと、「先生?」と声が返って、それが和沙本人だと悟る。

「ずっと休んでいるから、心配になってね。少し話がしたいんだ。車、ここに置かせてもらってもいいかな?」

 和沙はしばらく答えなかったが、やがて「いいですよ」と答え、「少し部屋を片付けたいので、待ってください」と言った。勇慈も判ったと答えて、ひとまず車を駐車スペースに入れ、玄関前で待つ。

 数分すると、玄関が開いた。Tシャツ姿の和沙が顔を出す。顔色は悪くないので、病気などではないようだ、と勇慈は安心する一方、やはり俺が原因で、と思った。

「どうぞ」

 促されて中に入る。家庭訪問には一度来た事が有る。あの時は各生徒の家庭を回るので、他の教師と一緒に行動していたから、車の事は問題無かった。こうして一人で来るのは初めてだ。玄関には和沙の靴だけが置かれている。酷く質素だった。そういえば、父子家庭だったか、と勇慈は思い出す。男所帯には文字通り花が無い。

 スリッパを出され、和沙について客間へと向かう。和室だ。重厚な木のテーブルが置いてあり、座布団が二枚置かれている。床の間には何も飾られていない。とにかく質素だった。

「先に座っていてください」

 和沙はそう言って、客間から出て行った。仕方なく座布団に座っていると、和沙がお盆にお茶を載せて帰ってきた。ああ、悪いな、と言いながら受取って、飲む。少し緊張していたから、喉に心地良かった。

「うん、美味しい」

「そうですか?」

「うん、先生は好きだな」

「そうですか」

 和沙の返事はとにかく素っ気ない。これはやっぱり強敵だ、と勇慈は気を引き締めて、それから口を開いた。

「この間の事は本当に悪かったよ。まさか和沙君が泳げないとは知らなくて。最近は水泳の授業が無い学校も有るんだね」

「……」

「でも、これだけは判ってほしい。先生は和沙君の事が心配なんだ。学校っていうのは、社会の一部で、クラスで仲良くやれるっていう事は、つまり社会に出ても出来るって事だから。逆に言うと、クラスでそれが出来ないと、社会に出てからきっと苦労する。俺は和沙君にそんな苦労はしてほしくない。だから、クラスの皆と仲良くなってほしいし、それにやっぱり運動部に所属して、組織ってものを体感しておく事はいい事だと思うんだ。これは先生の経験則って奴だけどね」

「……」

「和沙君をプールに落としてしまった事は本当に悪かったと思う。俺は君の事を、まだ何も知らない。だからあんな事も起こってしまった。だから、君の事が知りたいんだ。一緒に頑張って、楽しい高校生活を送りたい。担任として、和沙君の事を放っとけない。だから、なんでもいいから、先生に話してくれないかな……?」

 和沙はしばらく答えなかった。客間を沈黙が満たす。勇慈はいたたまれなくなって、湯呑みの茶を飲み干した。流石にこういう時は、勇慈も緊張をする。不安、という感覚ぐらいは、彼も持ち合わせていた。

 やがて和沙は、静かに口を開く。

「皆仲良くって、皆うわべだけって事でしょう」

「え……?」

「皆笑顔で、取り繕って、本当の事は何もかも蓋をして、くだらない事で信じたり裏切ったり、そういう世界でしょう。そういうの、嫌いです。馬鹿みたいだ」

「そんな事は……」

「それに、先生の事も嫌いです」

 面と向かって言われて、勇慈は流石に背筋が冷たくなった。「な、」という言葉を最後に、勇慈は言葉を失ってしまう。

「いつも笑って、いつも取り繕って、そのくせ優しいようなふりをして。偽善者っていうんですよ、そういうの」

 そういうの、嫌いだ。

 和沙はそう言って、また黙った。勇慈は何と言っていいか判らず、ただ言葉を探すのに、一つも口から出ない。

 取り繕うだなんて、優しいふりだなんて、偽善者だなんて。そんな事を言われたのは初めてで、ましてや嫌いだと言われるなんて。勇慈には理由が判らない。どうして和沙がそんな事を言うのか、判らない。皆が笑っているのはいい事だ。でも皆が笑っているだけの世界は、確かに良くない。だから、だから……と考えても、なかなか言葉が出ない。

「和沙君、あの……」

 言葉を探しながら、喋ろうとする。だのに、悪い事には突然睡魔が襲ってきた。和沙君と大切な話をしているのに、と頭を振るが、どうにも眠くてたまらない。

「和沙君、俺は、これだけは、言える、俺は本当に、君の事考えてるよ、的外れかもしれないけど、でも、でも俺は――……」

 眠くて眼を開けていられない。ついに勇慈は机にうな垂れて、そして眠りに落ちてしまった。そんな勇慈を見ながら、和沙は、

「良く効くな」

 と呟いて、ポケットから瓶を取り出す。

「隠し味が有ると、旨いって言うしな」

 和沙は僅かに笑って、そして勇慈に近寄った。


 +++

 浦崎さんとの協定で、登場人物は難読苗字で頑張っていこうとのこと
 自分でも未だに三方一所はみかたいっしょと読んでいます
 あとは小鳥遊君とかが居るかもしれない

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