テンパってるときには、好きなことをやって発散しようと思って。
松永と風魔の現パラ短文です。
風魔のキャラ性がまだ決まってない。初書きです。
松永と風魔の現パラ短文です。
風魔のキャラ性がまだ決まってない。初書きです。
人に嫌われようと努力しているつもりはないのだが、何故だかよく嫌われる。それが辛くないわけではないのだが、だからといって自分を変えようとは思わない。近所の歯科医などは「憎しみもまた格別!」と平然と笑うサディストであるが、自分はそうではない、と久秀本人だけは思っていた。
久秀は欲の尽きない男と揶揄されるほど気まぐれで、しかもかなり強引な手段で数々の物や者を手に入れてきた。だがその主目標は「奪う」事や「相手を陥れる」事ではなく、あくまで己の欲求を満たす事。だから久秀自身は自分の行動は極々普遍的な物であると考えていたし、平均よりもそれが少々強いのだろう、と思っていた。
久秀はこの頃、一人の青年を買って楽しんでいたが、それもそろそろ飽きつつある。さてせっかく買った男だし、他に楽しみ方は無いだろうか、と夜中まで考えたせいで、その日の朝は普段より少し遅く起きる事になった。
久秀の近頃のささやかな楽しみは、新聞屋との戦いだ。以前から久秀宅のポストはギィぃあ、と悲鳴のような声を上げるため、新聞が入れられると久秀は目を覚ます生活を長らく送っていた。だが最近、目を覚まして慌ててポストに行って見ると、新聞が丁寧に差し込まれているのだ。
早い話がポストの音を目覚まし代わりに、年寄り並みの早起きを日課としていた久秀が、その日を境に起きれなくなった。久秀は最初こそ、自分が深く寝入っていたのかもしれないと思ったが、それから毎日、久秀は朝6時まで起きれない。
これは困った、と久秀は思う。実際には久秀が早起きする理由など特に無く、6時に起きたからといって何も困りはしないのだが、久秀は自ら決めた習慣を他者によって変えられる事を酷く嫌った。
そしてなんとか自力で起きて、新聞屋に「もっと激しく入れてくれないかね」とそれだけ聞くとなんとも妙な要求をしようとしていたのだ。
だが、久秀は毎朝6時きっかりに起きてしまい、未だにその言葉を新聞屋に言う事は出来ていなかった。
その日は少し遅くなって6時10分に目が覚めた。時計を見ながら、まあ昨夜は夜更かしをしたから、と納得しつつ、久秀は寝巻きの上からガウンを羽織って、のろのろと寝室を出る。
久秀の家は庭付き二階建てで、少なくとも一階部分は昔ながらの民家、といった風な外見だった。縁側があり、池が有り、庭に松が生えていて、玄関は引き戸で。二階は近年、コレクションである茶道具を収納するために増築したので、傍から見ると下は和風で上は洋風の妙な雰囲気だ。
久秀は家に対しては特にこだわりを持っていなかった(雨風がしのげればそれで問題は無い)ので、祖母の代からのこの家を継いで、建て替える気も無かった。単に雨漏りがしたのと、倉庫が欲しかったので若干リフォームしたに過ぎない。そっちの方が安いというので二階は洋風にしたのだ。それぐらい久秀は家の事には全く興味が無かった。
玄関を出て、飛び石を渡り、塀に取り付けられたポストに手を入れて。
「……?」
久秀は一度眉を寄せて、それからそうっとポストを覗き込んだ。
新聞が無い。
久秀はポストに手を入れたまま、斜め上を見て考える。
昨日の新聞は二日分だったか? いや、違うだろう。テレビ欄は相変わらずの位置に有ったし、翌日の欄は無かった。
さては、忘れられたか。
久秀はそう思い、空を見上げる。まだ空は僅かな明るさしか持っていない。
久秀は朝起きると、縁側で新聞を読むのが日課だった。そして餓鬼共が煩く登校し始める頃に、のんびりと味噌汁の粉を湯で溶いて飲むのが習慣なのだ。しかし、新聞が無いとなると、少なくともあと1時間以上、庭でぼうっとしておかなければいけなくなる。
別にそうまでしなくてもいいように思うが、久秀にとって自ら決めた事というのは、己の生死よりも大切なのだ。己で変えるのは構わないが、他人に変更されるのだけは、温厚な久秀も珍しく「腹が立つ」とはっきり自覚できる。もっとも、彼が温厚だと思っているのは彼自身だけだったが。
久秀はしばらくポストに手を突っ込んだまま、ぼうっと空を見上げていた。
と。
する、と手に何か当った。少しばかり驚いて、ポストを見ると、新聞が入っている。次に塀の向こうを見ると、自転車に乗った青年が見えた。
「……いつの間に」
久秀は思わず呟く。何しろ自分はポストに手を入れていたのだ。それほど近くに居たのに、久秀はその新聞屋が来た事に気付かなかった。しかも相手は自転車だ。音も気配も無くやって来た青年を、久秀はまじまじと見る。
まだ若そうだ。赤に近い茶髪をはねさせた青年。前髪は長く伸ばしてあって、顔は良く見えない。彼もまた久秀に気付いているようで、久秀のほうを向いている。夜中はまだ寒いのだろう、黒い防寒具を身につけていて、それだけ見るとむしろ泥棒か何かのようにも見えた。
「……忘れていたのかね?」
久秀がとりあえず尋ねると、青年はこくんと頷いた。
「卿は喋れないのかね?」
声もかけないというのは、と久秀は続けて尋ねるが、青年が頷いたのには少々驚いた。まさか本当にそうだとは思わなかったのだ。
「……いや、だが助かった。これからあと一時間、何を考えながらポストに手を入れていればいいのかと、悩んでいたところだったのだよ。これで朝食までの時間、新聞が読める」
「……?」
青年は不思議そうに首を傾げる。その仕草が背格好に似合わず、少し愛らしくて、久秀は機嫌が良くなった。
それは庭先で猫が昼寝をしているのを見つけた時のような、純粋な喜びで。
「……仕事は終わったのかね、もう荷物は無いようだが」
こくん、と頷く。
「これから用事は有るのかね?」
ふるふる、と首を横に振る。
「なら、……味噌汁でもどうかね」
久秀のあまりに気まぐれな提案に、青年はしばらくの時間、きょとんとしていたが。
こくん。
と、一つ頷くと、青年は久秀を見つめてきた。
「……卿は純粋だな。何処の誰とも判らぬ中年と、味噌汁を飲むとは」
久秀は青年が提案を呑んだ事にまた驚きつつ、青年を家に招く。と、ちょいちょいと肩をつつかれたので振り返ると、青年が名刺を差し出してきていた。
「なんだね? ……介護師。卿は小太郎君というのか。新聞配達はバイトかね? いや感心な事だな」
こくこく、と頷く小太郎に、久秀は苦笑する。
「……ああこういう事かね? 私は松永久秀、今は隠居しているのだが。互いに名乗れば、何処の誰かは判る、と?」
そしてまた頷いた青年に、久秀は一つ笑んで、言った。
「卿は人が良過ぎるな、あまり人を信じ過ぎると酷い目に合うかもしれない……だが卿ほどまでになれば、騙す方も面白くないかもしれないな」
「……?」
「いやこちらの話だ。……あぁそうだ、確かいちご大福が有った。卿は甘い物は好きかね? 私は少々苦手でね。……そうか、なら食べて行くといい。そうだ甘い物には茶が合うな、少し待ってもらえれば淹れるんだが……そうかね、なら少し待ってくれたまえ、ああそこが茶の間だ、座布団も用意しなくてはね、いやなにうちには三人ぐらいしか客が来ないもので、あまり準備が、ああ手伝わなくても良いのだよ、ああすまないな、いや、卿は本当に良い人だな、座って待って居てくれたまえ、テレビでも見て……3が教育だよ」
久秀はひたすら己だけで喋りながら、小太郎を居間に案内する。小太郎は大人しく座布団に座って、ニュースを見る。それを見て久秀はほほえましい気持ちになりながら、茶器を取りに二階へと向かう。
あれほど待っていた新聞を読めそうにはなかったが、その予定変更を久秀は不愉快に思わなかった。
****
久秀が電波になった。不思議!
久秀は欲の尽きない男と揶揄されるほど気まぐれで、しかもかなり強引な手段で数々の物や者を手に入れてきた。だがその主目標は「奪う」事や「相手を陥れる」事ではなく、あくまで己の欲求を満たす事。だから久秀自身は自分の行動は極々普遍的な物であると考えていたし、平均よりもそれが少々強いのだろう、と思っていた。
久秀はこの頃、一人の青年を買って楽しんでいたが、それもそろそろ飽きつつある。さてせっかく買った男だし、他に楽しみ方は無いだろうか、と夜中まで考えたせいで、その日の朝は普段より少し遅く起きる事になった。
久秀の近頃のささやかな楽しみは、新聞屋との戦いだ。以前から久秀宅のポストはギィぃあ、と悲鳴のような声を上げるため、新聞が入れられると久秀は目を覚ます生活を長らく送っていた。だが最近、目を覚まして慌ててポストに行って見ると、新聞が丁寧に差し込まれているのだ。
早い話がポストの音を目覚まし代わりに、年寄り並みの早起きを日課としていた久秀が、その日を境に起きれなくなった。久秀は最初こそ、自分が深く寝入っていたのかもしれないと思ったが、それから毎日、久秀は朝6時まで起きれない。
これは困った、と久秀は思う。実際には久秀が早起きする理由など特に無く、6時に起きたからといって何も困りはしないのだが、久秀は自ら決めた習慣を他者によって変えられる事を酷く嫌った。
そしてなんとか自力で起きて、新聞屋に「もっと激しく入れてくれないかね」とそれだけ聞くとなんとも妙な要求をしようとしていたのだ。
だが、久秀は毎朝6時きっかりに起きてしまい、未だにその言葉を新聞屋に言う事は出来ていなかった。
その日は少し遅くなって6時10分に目が覚めた。時計を見ながら、まあ昨夜は夜更かしをしたから、と納得しつつ、久秀は寝巻きの上からガウンを羽織って、のろのろと寝室を出る。
久秀の家は庭付き二階建てで、少なくとも一階部分は昔ながらの民家、といった風な外見だった。縁側があり、池が有り、庭に松が生えていて、玄関は引き戸で。二階は近年、コレクションである茶道具を収納するために増築したので、傍から見ると下は和風で上は洋風の妙な雰囲気だ。
久秀は家に対しては特にこだわりを持っていなかった(雨風がしのげればそれで問題は無い)ので、祖母の代からのこの家を継いで、建て替える気も無かった。単に雨漏りがしたのと、倉庫が欲しかったので若干リフォームしたに過ぎない。そっちの方が安いというので二階は洋風にしたのだ。それぐらい久秀は家の事には全く興味が無かった。
玄関を出て、飛び石を渡り、塀に取り付けられたポストに手を入れて。
「……?」
久秀は一度眉を寄せて、それからそうっとポストを覗き込んだ。
新聞が無い。
久秀はポストに手を入れたまま、斜め上を見て考える。
昨日の新聞は二日分だったか? いや、違うだろう。テレビ欄は相変わらずの位置に有ったし、翌日の欄は無かった。
さては、忘れられたか。
久秀はそう思い、空を見上げる。まだ空は僅かな明るさしか持っていない。
久秀は朝起きると、縁側で新聞を読むのが日課だった。そして餓鬼共が煩く登校し始める頃に、のんびりと味噌汁の粉を湯で溶いて飲むのが習慣なのだ。しかし、新聞が無いとなると、少なくともあと1時間以上、庭でぼうっとしておかなければいけなくなる。
別にそうまでしなくてもいいように思うが、久秀にとって自ら決めた事というのは、己の生死よりも大切なのだ。己で変えるのは構わないが、他人に変更されるのだけは、温厚な久秀も珍しく「腹が立つ」とはっきり自覚できる。もっとも、彼が温厚だと思っているのは彼自身だけだったが。
久秀はしばらくポストに手を突っ込んだまま、ぼうっと空を見上げていた。
と。
する、と手に何か当った。少しばかり驚いて、ポストを見ると、新聞が入っている。次に塀の向こうを見ると、自転車に乗った青年が見えた。
「……いつの間に」
久秀は思わず呟く。何しろ自分はポストに手を入れていたのだ。それほど近くに居たのに、久秀はその新聞屋が来た事に気付かなかった。しかも相手は自転車だ。音も気配も無くやって来た青年を、久秀はまじまじと見る。
まだ若そうだ。赤に近い茶髪をはねさせた青年。前髪は長く伸ばしてあって、顔は良く見えない。彼もまた久秀に気付いているようで、久秀のほうを向いている。夜中はまだ寒いのだろう、黒い防寒具を身につけていて、それだけ見るとむしろ泥棒か何かのようにも見えた。
「……忘れていたのかね?」
久秀がとりあえず尋ねると、青年はこくんと頷いた。
「卿は喋れないのかね?」
声もかけないというのは、と久秀は続けて尋ねるが、青年が頷いたのには少々驚いた。まさか本当にそうだとは思わなかったのだ。
「……いや、だが助かった。これからあと一時間、何を考えながらポストに手を入れていればいいのかと、悩んでいたところだったのだよ。これで朝食までの時間、新聞が読める」
「……?」
青年は不思議そうに首を傾げる。その仕草が背格好に似合わず、少し愛らしくて、久秀は機嫌が良くなった。
それは庭先で猫が昼寝をしているのを見つけた時のような、純粋な喜びで。
「……仕事は終わったのかね、もう荷物は無いようだが」
こくん、と頷く。
「これから用事は有るのかね?」
ふるふる、と首を横に振る。
「なら、……味噌汁でもどうかね」
久秀のあまりに気まぐれな提案に、青年はしばらくの時間、きょとんとしていたが。
こくん。
と、一つ頷くと、青年は久秀を見つめてきた。
「……卿は純粋だな。何処の誰とも判らぬ中年と、味噌汁を飲むとは」
久秀は青年が提案を呑んだ事にまた驚きつつ、青年を家に招く。と、ちょいちょいと肩をつつかれたので振り返ると、青年が名刺を差し出してきていた。
「なんだね? ……介護師。卿は小太郎君というのか。新聞配達はバイトかね? いや感心な事だな」
こくこく、と頷く小太郎に、久秀は苦笑する。
「……ああこういう事かね? 私は松永久秀、今は隠居しているのだが。互いに名乗れば、何処の誰かは判る、と?」
そしてまた頷いた青年に、久秀は一つ笑んで、言った。
「卿は人が良過ぎるな、あまり人を信じ過ぎると酷い目に合うかもしれない……だが卿ほどまでになれば、騙す方も面白くないかもしれないな」
「……?」
「いやこちらの話だ。……あぁそうだ、確かいちご大福が有った。卿は甘い物は好きかね? 私は少々苦手でね。……そうか、なら食べて行くといい。そうだ甘い物には茶が合うな、少し待ってもらえれば淹れるんだが……そうかね、なら少し待ってくれたまえ、ああそこが茶の間だ、座布団も用意しなくてはね、いやなにうちには三人ぐらいしか客が来ないもので、あまり準備が、ああ手伝わなくても良いのだよ、ああすまないな、いや、卿は本当に良い人だな、座って待って居てくれたまえ、テレビでも見て……3が教育だよ」
久秀はひたすら己だけで喋りながら、小太郎を居間に案内する。小太郎は大人しく座布団に座って、ニュースを見る。それを見て久秀はほほえましい気持ちになりながら、茶器を取りに二階へと向かう。
あれほど待っていた新聞を読めそうにはなかったが、その予定変更を久秀は不愉快に思わなかった。
****
久秀が電波になった。不思議!
PR
■ この記事にコメントする
COMMENT
COMMENT
プロフィール
Google Earthで秘密基地を探しています
HN:
メディアノクス
性別:
非公開
趣味:
妄想と堕落
自己紹介:
浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
二人とも変態。永遠の中二病。
二人とも変態。永遠の中二病。
カレンダー
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
カテゴリー
メロメロパーク
ひつじです。
ブログ内検索
最新コメント
[02/11 美流]
[02/10 通りすがリィ]
[02/10 通りすがリィ]
[07/28 谷中初音町]
[07/02 美流]
最新記事
(04/26)
(04/26)
(04/23)
(04/21)
(04/20)
カウンター
"オクラサラダボウル"