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めでぃのくの日記
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2025-01-20 (Mon)
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2009-12-07 (Mon)
 生まれて初めてかに玉作って食べました。美味しかった。
 焦げたけどね。


 以下、SFねこの10

 ふと目を覚ますと、一人でベッドの中に入っていた。ラボから戻ったような覚えは無いから、恐らく眠ってしまった元就を、元親が運んだのだろう。元就は辺りを見回して、元親の姿がない事に気付いた。

 のろのろと起き上がり、ラボの扉を開く。中の長椅子に元親が寝転がっていた。「元親?」と声をかけると、「こっち来んな」と答え。

「どうした?」

「言ったろ、あんたを抱きたいんだって。なんて言うか、そう、発情期っていうのかな、そんな時期なんだ。どうしようもなくやりたい。でもあんたは怖がってる。俺は元就が好きだ。あんたが嫌がる事はしたくない。でもしたい。距離を取るしかないだろ」

 元親はそう言って、手をひらひら振る。出て行け、という意味のようだ。元就はしばらく考えてから、ラボに入る。

「お、おいおい、言ったろ、今はヤバいんだって……!」

 元親が慌てて上体を起こした。その隣に腰かけて、顔を覗き込む。眼を背けていた。

「判っておるくせに」

「何が」

「都合の悪い時は知らぬふりか? 口で言わねば判らぬとでも言うつもりか」

「だって」

 元親は困ったような顔で首を振る。

「あんたは怖がってたし、怖がってるし」

「だが嫌がってはおらぬ」

「でも、でもよ、でも、あんた俺の事、卑怯だって言ったし、正直言って冷静に考えてみりゃ、あんたと俺とじゃ種族が違うわけで、満足させられるかどうか……」

「そんな不確定な状態で、先ほどは寝込みを襲ったと? 少し落ち着け。何をうろたえておる」

 元就がそっと元親の頬を撫でる。髪と同じ白い耳が、ぴくぴくと揺れた。

「あ、あの、いや、ほ、本当に良いのか?」

「そなたにはもう判っておるだろうが。何を怖がっておる。我はそなたの気持ちに応えるぞ。そなたに出会って我の暮らしは変わった。そなたが居らぬ生活など、もはや想像も出来ない。つまりそなたが我にとって特別な存在になったという事だ」

 そなたは我の背を撫でてくれた、我の生を認めてくれた。だから我もそれに応えよう。それでそなたの気が済むのなら、こんな痩せたつまらぬ身体でも良いと言うなら、そなたの好きなように抱くと良い。

 元就がそう言っても、元親はなかなか動かなかった。やがてそっと手を伸ばし、元就の喉元を撫でる。まるで猫が喜ぶ場所でもくすぐるようだった。

「優しくするよ」

 元親はそう呟いて、元就を抱きしめた。




「……っ、は……」

「俺にとっても元就は特別な存在だよ。あんたは俺を受け入れてくれた、守ってくれた。こんな俺に居場所を与えてくれた。好きなんだ。個への執着は禁じられてるけど、そんな事どうでも良くなるぐらい、元就が好きでたまらない」

「ぅ、っ……ぁ、……っ」

「可愛い、可愛い元就。あんたらも鳴くんだな。可愛い、可愛い」

「……す、少しは、……っ黙らぬか……っ」

 行為の最中、元親はずっとずっと喋り続けていた。彼ら猫の間では、それがマナーらしい。果てしなく気持ちを言葉と身体で伝えあう。それが猫達のセックスだった。

「元就、なぁ俺、今すごく気持ちいいよ、元就は温かくて、俺を守ってくれて、包んでくれて、あぁ元就も気持ち良いんだな、判るよ、判る、なぁもっと鳴き声を聞かせてくれよ、俺にだけ、俺にだけ、あぁ、可愛い、可愛い、元就、元就……」




 元就はそのあまりに恥ずかしい行為が心底嫌になったが、自分でも呆れるほどに熱中してしまったから、文句も言えなかった。ただ元親に揺さぶられ、彼に求められるままに鳴いた。泣いたり鳴いたりで散々な日になった。翌朝は痛みと疲れで、いつまで経っても起きる事が出来なかった。

 すっかり清水も元親に気付いてしまっていたから、元就は二人に介抱されて、恥ずかしくて仕方なかった。そんな機能が有ったとは知らなかったが、清水に「昨晩はお楽しみで。羨ましい事です」といった類の事を言われて死にたくなった。
 恥ずかしくて、痛くて、辛くて、でも幸せで。元就はどうしようもなく満ち足りていた。




 それからしばらくは何事も無く時が過ぎた。強いて言えばC36の研究が少し進み、判った事が増えた程度で、二人あるいは三人は毎日同じように過ごした。

 朝起きるとラボのチェックをして。元親が眠そうに起きて。元親は肉を、元就は乾燥食料を食べ。元就は研究に勤しみ、元親は知識を貪る。夜は時折、えらくうるさく情を重ねた。

 

 そんな日々が何事も無く過ぎて。それが幸せと呼ばれるものだと気付かないまま、時は過ぎ去り。

 そしてその日は、唐突に訪れた。




 元就が目を覚ますと、元親が居なかった。それどころか、彼は睡眠カプセルの中に居た。

 元親と暮らし始めてから、元就はベッドで眠っていた。睡眠カプセルは以来使っていないハズだ。元就は不思議に思いながら、元親を探す。

 彼は何処にも居ない。何の痕跡も無い。一緒に眠ったベッド、布団、毛布、彼が着ていた服、遊具、家具、何もかも。元親に関する全てが、無い。元就はややして、酷い寒気を覚えた。

 我もまた、オリジナルと同じように、記憶を蝕まれたのではないか……。

 すぐさまコンピューターに駆け寄り、日誌を開く。昨日の日付で書かれているそれには、ハッキリと記憶が有った。元親についての記述も有る。自分の記憶が失われたわけではない。
 
 では。
 
 では何だ、何が起こった。

 元就はしばらく考えて、防犯用の隠しカメラの映像を再生した。部屋とラボ、そして外部エレベーター入口と、外に取りつけられた物だ。その存在は元親にも知らせていない。

 音声は無い。薄暗い映像。元親と元就は、二人でベッドに入った。

 深夜、寝静まった頃に、元親が動いた。まず使っていなかった睡眠カプセルへと向かい、起動。それから元就を抱き、カプセルに入れると、彼は本格的に掃除を始める。

 エアベッドから空気を抜き、毛布、布団と共に収納庫へ。着ている物を残して、全ての服をダストシュートへ。己に関わる全ての物を、次々に捨てていく。ラボが片付くと、元親は首話を外してそれも捨てた。

「……何を、しているのだ……?」

 理解出来ないまま映像を早送りする。部屋の掃除は隅々まで行われ、元親の痕跡は消えた。そして元親は元就のカプセルの側へと歩み寄る。

 愛しげにカプセルを撫で。しばらく元親はカプセルの中で眠る元就を見ていた。数十分、そうしていたかもしれない。やがて元親はカプセルを離れ、エレベーターに乗った。

 映像をエレベーター側に切り替える。元親は迷わず、外部入口から外へ出る。外の映像に切り替えると、元親は近くの芝生の上に座り込んだ。

 何をしているのだ、何を。

 困惑する元就は、次の瞬間、元親が吹き飛ぶのを見た。何が起こったのか、と目を凝らせば、元親の近くに車が止まっている。そして、窓から銃が顔を出していた。

 撃たれたのだ。

 手が震えてきた。何、何が、何、我が眠っている間に、何が、何が、何故。

 車のドアが開いて。
 
 銃を持った、光秀が出て来た。

 何度も見返した。何度見ても、光秀にしか見えない。光秀はぐったりとして元親を、彼の世話用アンドロイドと共に運んで、車に乗せてしまった。

 何が、何が、何故、何故元親が、何故、明智が。何故。

 元就は理解出来なかった。何もかもが判らない。ただ身体がガタガタ震えて、寒気がした。とてつもなく恐ろしい事が起こっているのだ。我の知らない間に。

 元就は咄嗟に駆け出して、エレベーターに飛び乗った。

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