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めでぃのくの日記
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2024-05-12 (Sun)
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2009-06-06 (Sat)
 萌え語りをするなら文章で、と決めた以上
 先の事は何も考えずにスタートする場合が殆どな訳で
 続くかとか終わるのかとか何処に帰結するのかとか
 そういう事を考えないで書いてるケースが多々ですので
 そんなだからいけない事も有るんだと思いますが
 とりあえず語るだけですませまいというあがきですので
 今後の事は未定の小ネタです

「……いいですか、長曾我部殿。貴方はエロティシズムという物を誤解しているのではないでしょうか」

 目の前の上司、明智光秀がまるで哀れむような表情を浮かべた。

「エロティシズムはそもそも2つに分類されると私は考えています。つまり、現実と空想にですね。貴方の言うとおり、我々が扱うのは空想、それもエロティックな物ですが、それを低俗と決め付けるのはいかがなものでしょう?

 妄想、つまり現実でない事を想像、理解し、そして欲情する。これは文化、文明、知能がそこに存在するという証です。つまり我々はファンタジーを楽しむ事によって、より豊かな生活を得る事が出来る。その提供をしているというわけです。

 扱っている素材がエロティシズムであるというだけで、我々が守るべき官能作家達もまた作家、偏見を持たずに評価していただきたいものです。ましてや、ここで扱っているのはエロティカであって、ポルノグラフィではないのですから」

「……でもよぉ……」

 光秀にそういい聞かされても、長曾我部元親は理解は出来ても、納得は出来なかった。けれど光秀は首を振っていう。

「でもも何も有りません。この会社に就職した以上、プロとしての誇りを持って仕事をしてもらいます。行ってもらえますね?」

「……そんなに原稿の催促がしたいなら、電話でもなんでも……」

「言ったでしょう、貴方はプロ、そして彼もまたプロの作家です。こちらの誠意が感じられなければ、ますます筆が進まないという口実を与えるだけです。貴方は彼と……毛利殿との人間関係、信頼関係を築かねばなりません」
 
 とにかく、行って下さい。少なくとも、今すぐ解雇されたくなければ。
 
 ダメ押しの一言に、元親は「わぁったよ」と気の無い返事をして、溜息を吐いた。



 元親はとある出版社の従業員だ。新人でもある。尤も、業務内容を知っていたら、元親は決してここには来なかったろうし、今でも辞めたいと思っている。が、気持ち云々の問題より、履歴書に付く傷の大きさが痛い。判っているから、元親は辞めないが、しかしこの仕事の事はなんと言われようと好きになれない。

 元親に与えられた最初の仕事は、作家に対する原稿の催促だ。編集、ではない。ただ行って話をして、早くお願いしますと頭を下げるだけの仕事だ。一般に編集と呼ぶべき場所には彼の上司、明智光秀が立っている。つまり、新人はつまらない仕事でもしていろというわけだ。

 それでも新人なのだから、自身の業務の内容がくだらない事には我慢出来る。だが、この出版社自体の業務内容がくだらない。ここは、有体に言って、エロ本を作っているのだ。

 抱えている漫画家、作家は全員が成人向けの作品を作っている。それも少々コアである。ただのエロではない。SMだとか猟奇だとか、痴漢だとか、およそノーマルではないジャンルばかりを扱っている。そういう嗜好を持った人間を、元親は好きではない。嫌悪さえしている。それ故、元親の想像の中で、作家達は大いに太り、脂ぎった、気持ちの悪い男のイメージになっていた。

 その作家陣の一人、筆名をサンデー毛利という男の原稿が遅れているらしい。光秀の口ぶりからすると、元々筆は遅いほうなので、定期的に生きている事が確認できればそれでいいのだそうだ。しかし、元親は彼に会いたくもなかったし、挨拶もしたくなかった。

 しかしクビになるよりはマシかもしれない……元親は必死に言い聞かせて、自分を励まし、ごまかし、その作家の家へと向かった。

 


 サンデー毛利の毛利は、本当の名前らしい。毛利、と書かれた表札がかかっている。ドアからは大量に新聞が顔を出していて、もしかして中で死んでいるんじゃないかと元親は思った。

 町外れの古アパート、その一階が彼の部屋のようだった。本来大家が住むはずの場所だが、そこに今は官能作家が住み着いている。元親はますます嫌な気持ちになった。何度か深呼吸して、意を決し、チャイムを鳴らす。

 ドアホンががちゃりと音を立てた。しかし声はない。そっちから声をかけるもんじゃねぇのか、と思いながら、元親は声を出す。

「あ、あの、尾張出版の、……明智光秀の、部下の者ですが」

 それ以上何を言っていいやら判らずに立ち尽くしていると、がちゃがちゃと言う音と共に新聞が引っ込んだ。そして、玄関が開く。

 太く脂ぎった中年などを想像していた元親は、顔を出した人間の姿に一瞬驚いた。彼はまだ若く、まして太ってもおらず、おまけにそれなりの顔をしていた。ただ外出する気は無いのか、緑のとてつもなくダサいTシャツと恐らくジャージを身につけている。眼鏡をかけているが、元親が思っているようなすさまじい不潔感は、少なくとも彼の外見には無かった。

「……新入社員か? ……災難だな」

 彼はそう呟いて、部屋の中へと戻って行った。ドアを閉めなかったという事は、入れという事なのだろうと、元親は「おじゃまします」と小声で呟き、のろりと中に入った。

 玄関には新聞が山積にしてあるが、それ以外には特に散らかっていない。というより、何も無いと言ったほうが正しいかもしれない。部屋はあまりにも横長で、その間に何か仕切りを用意しているから、奥の事は判らない。が、少なくとも見える範囲には、驚くほど、何も無い。ちゃぶ台が一つ、その上にノートパソコン、と、プリンターと、大量の紙。それ以外に何も無い。

 とりあえず靴を脱いで、玄関近くでぼうっとしていると、何処からとも無く座布団を持って彼がやって来た。ぽいとちゃぶ台の近くに放り、そして自分はノートパソコンの前に座る。

 元親はのろのろと座布団に座って、一息吐いた。

 会話も何も無い。彼のほうも、別に、キーボードを叩いたりもしない。ただ画面を睨みつけて、座っている。

「……あの、……長曾我部、元親、です……」

 そろりと名刺を差し出すと、彼は「ああ」と気付いたように声を上げて、パソコンから離れる。奥に向かい、戻ってきたら、名刺を差し出してきた。

「毛利元就だ」

 受け取った名刺には毛利元就と書いてあった。職業は、特に書いていない。名前と住所、メールアドレスしか書いていないようなものだ。

「サンデー毛利、さんですよね……」

「うむ」

「これは、本名……」

「うむ。……でかい図体でかしこまるな、気持ち悪い」

 元就はそう言って、またノートパソコンの前に座った。やはり何も書かない。

「……えーと、じゃあ、お言葉に甘えて……原稿、まだ、ッスか」

「……」

 元就が不愉快そうな顔をした。催促されたからかと思ったが、「ッスとはなんだ」と呟いたので、もうタメ口でいいっていう事なのかと理解する。

「進んでないのか?」

「明智から聞いているだろう。我は筆が遅いほうなのだ。少々、今後の展開に悩んでおってな」

(エロ小説に今後の展開もクソも有るかよ)

 元親は心の中で笑った。真面目くさった顔で画面を睨んでいる元就が、心底気持ち悪い。どうせこれから女をどう犯すかだとか、そんな事を妄想しているというわけだ。

 それに元親は、元就に関して決定的に嫌悪すべき情報を得ている。

『あの人の書く作品は、素晴らしいんですよ。何故かというと、彼、女性と経験が無いんです。事実を知らないのですから、いくらでも幻想の世界に羽ばたけるんですよ。すごい才能なんです』

 つまり童貞のエロ作家。元親は元就を蔑むのに何の問題も感じなかった。

「……今後の展開って?」

 一応聞いてみたが、聞きたくもなかった。判ったのかどうか、元就は「そなたには関係無い」と特に答えなかった。

「用が終わったなら帰るがいい。原稿はまだ出来ていないし、しばらくは出来そうもない。2週間後にでも出直すがいい」

 そもそもそなた、何をしに来たのだ。

 そうまで言われて、元親はさすがにムッとした。確かにここには来たくなかった、だが来た人間をそんな風に言うのはどうか。元親は自分の事は棚に上げて、元就につっかかる。

「何って、あんたの様子を見に来たんだよ。明智の奴が言ってたぜ。あんたは連絡取れないから心配なんだってよ。誰か来ないと外と連絡も取らないんだろ?」

「何か問題が有るか?」

「有るに決まってるだろ。生活出来てるのかよ」

「それこそ、そなたには関係の無い事だ」

「……こちとら初仕事がこれなんだ、関係無い事は無ぇだろ」

「……良いから帰れ。邪魔だ」

 言いきられて、元親は遂にキレた。

「うるせぇこのエロ本作家! エロ本ばっかり書いてるくせにエラソーにしやがって!」

「な、……わ、我の作品をエロ本呼ばわりするか!」

 意外な事に元就のほうも怒って来た。もういい、この際こんな仕事も何もかも辞めてやる、と元親は吹っ切れて、大声で言う。

「おう、エロ本ばっかり書いてる変態! その上童貞だなんて気持ち悪ぃ!」

「我は童貞ではない!」

「嘘ばっかり言うんじゃねえ! 明智に聞いてるんだぞ!」

「あ、明智は、……明智は、」

「こんな仕事こっちから願い下げだ! せいぜい濡れ場の推敲でもしてろ、童貞!」

「だ、だから我は、」

 元親はさっさとアパートを出て、そのまま不機嫌に会社に戻った。




 良く考えたら、捨てゼリフが童貞だなんて、格好悪いにも程が有る。

 会社に着く頃には、元親はどんよりと落ち込んでいた。勢い余って大変な事をしてしまった。激しく怒ったのと同じだけ激しく落ち込んだ。しょんぼりと会社に戻ると、光秀がにっこり笑って出迎えてくれた。

「毛利殿と、喧嘩したんですって? いい度胸ですね」

「……すまねえ……」

「いえ、いいんですよ。毛利殿、あれでいて人見知りするほうですから、それぐらいのほうが、仲良くなれますよ」

 あれの何処が仲良くなれるような展開なんだよ。元親はますますどんよりした気持ちでうなだれていた。

「……あ、そうです。さっき文句を言われたので、一応訂正しておきますが、毛利殿は童貞じゃあありませんよ」

「……は? でも女性経験は無いんだろ?」

「無いですよ」

「……つまり」

「……つまりですね」

 光秀はニッコリ笑って。

「おいしく、いただいちゃったんです」

 と、言った。

 元親は、本当に、本当に、心から元就に同情した。


 +++

 たべられた

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