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めでぃのくの日記
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2025-05-20 (Tue)
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2009-08-01 (Sat)
 先日の殺人事件の続きです
 朝から頭痛くてこたえてます
 おまけに扇風機がギュイギュイ言い出して寝苦しい
 ついでに尻が痛いし腹も痛い
 おのれ

 あとオーベルシュタイン閣下の
「他に候補者無き場合は臣が人質になりましょう」
 的なくだりにすげー萌えた
 あんたぁどこまですごい人なんだ
 元就様もこれぐらい一貫したすごい人であってほしい

 痛い。

 痛い。

 痛い。苦しい。痛い。痛い。

 死にそうだ。死んでしまう。殺される。怖い。痛い。苦しい。辛い。

 もう、怒鳴られるのも、物を投げられるのも、殴られるのも、蹴られるのも、首を絞められるのも。

 その後でボロボロに泣いて、もうしない、愛している、絶対にしないと繰り返されるのも、うんざりだ。

 なのに終わらない、終われない、逃げられない、逃げたくない。

 このどうしようもなくダメな兄には、我が、我が必要なのだ。我が居なくては、生きていけないのだ。弱い人だから。だから兄がうまく生きていくために、それが必要なのなら、我は殴られなくてはならないのだ。

 痛い。痛い。

 痛いのはもう嫌だ。苦しいのはもう嫌だ。嫌だと言っているのに止まらない。受け入れなければならないのに、どうしようもなく嫌なのだ。逃げたい。今すぐ逃げたい。逃げられない。逃げる事は許されない。

 憎い。

 憎い。

 憎い。どうしようもなく憎い。憎い。憎くてたまらない。

 笑う兄が、人様の前でだけはとびっきり優しい人を演じている兄が、我の、我の目の前で、笑ってテレビを見ている兄が、そのくせ、そのくせ酒を飲むと、我にだけ優しくない兄が、兄が、だのに必死に謝る兄が、泣く兄が、愛していると繰り返す兄が、憎い、憎い、憎い。

 消えろ、居なくなれ、消えてしまえ。なのに消えない。居なくならない。逃げられない。

 死ね、死んでしまえ、死んで消えてしまえ。なのに死なない。どれほど憎んでも、どれほど恨んでも、どれほど呪っても。

 心で叫んでも、泣いても、請うても、抗っても、許しても、なにもかも変わらない。

 なら、なら、なら、もう、もう、こうするしか。

 こうする意外に、どんな選択が有るというのだ。

 もう、ころす、しか。

 

 そして元就は、ナイフを手に取った。





「どんな様子でしたか?」

 元親の相棒は名を真田幸村という。同じ剣道教室の後輩だそうだ。まだ新人で、元親とは共に若いコンビを結成している形になる。幸村が待っていた車に乗り込むと、彼がそう問うてきたので、元親は「うーん」と唸った。

「どうって言ってもなあ」

「被害者を演じているのでしょうか、それとも本当に被害者なんでしょうか」

「さぁてなあ」

「元親殿」

 煮え切らない返事に、幸村は少々不満なようだ。元親は苦笑して、車のエンジンをかける。

「演技ならすごい演技だし、本当なら可哀想な奴だよ。証拠もボロも出てない。どっちにも決められねえさ」

「ですが、早期解決をしようと思ったら……」

「やってない奴にやってるって言わせるとか、証拠も無いのに決めつけるのが早期解決ってんなら、話は早いけどなあ」

「凶器からは指紋が出て、」

「証言通りの行動をしたなら出て当然だろ」

「元親殿」

 やはり幸村は気に入らないらしい。元親は一つため息を吐いて、言った。

「俺達の仕事は疑う事だ。疑った上で、その証拠を見つけ出す事だ。それ以上でも以下でも無い。決めつける事も疑って自白を迫るのも楽だが、もっとキツい仕事がいっぱい有るんだよ。聞き込みするぞ」

「ですが、もう一通り終わっています」

「関係者全員ってわけじゃねぇだろうが。誰が関係者かも判らねえのに」

「しかし」

「お館様なら何て言うと思うよ」

「……」

 お館様、の名を出すと、ようやく幸村も引き下がった。元親は「行くぞ」とそれだけ言って、アクセルを踏んだ。



 
 真田幸村は前述した通り、元親の後輩である。警官として、そして剣道家として。尤も、元親は剣道はそれほど得意ではない。同級生で今でも付き合いの有る伊達政宗と、わいわいやっていただけで、真面目にやっていたわけではなかった。

 それ以外にも共通点は有る。お館様、だ。元親も幸村も、お館様が指す人物に憧れて、この世界へやって来た。

 お館様は武田信玄という。強い警官だった。厳しいが、しかし優しくもあった。つまり、大きな人間だった。彼はたくさんの事件を解決したし、たくさんの被害者も、加害者も救った。元親もその一人である。

 幸村に関して言えば、パトロール中のおまわりさんに優しくしてもらった、というただそれだけがお館様に憧れた理由である。その後駐在に足しげく通い、お館様と交流し、ついにその将来の夢を警官に定めたに過ぎない。

 元親のほうは、若い頃は随分荒れていた。悪い事は大体やったし、それを悪い事だとはあまり感じていなかった。補導されずにいかに逃げのびるか、バイクをいかに扱い警察を振り切るか、それだけが生きがいだった、馬鹿な時代が有るのだ。政宗と共に暴走族を率い、夜は気ままに走り回り、白バイを振り切り、わいわいと酒を飲んで遊んだ。どうしようもなく、馬鹿だったのだ。

 それで、地元で起こった強盗事件の容疑をかけられた。普段の素行が悪いから、という理由であるから、元親には反論する事は出来ても、説得力は無かった。その時、元親を信じてくれたのが、お館様だった。

 後に判った事だが、お館様は元親を信じていたわけではないらしい。ただ、疑う事もしなかった。客観的に状況を見てくれた。それが元親にはありがたかった。

「なあ、元親。ワシには知り合いが居るんだが、これがまた呑気な男でなあ。どうも体の調子がおかしかったのだが、気にしなかった。妙に辛い、妙に体が重い、妙に疲れやすい。しばらくは放っておいたらしいが、そのうち心配になったらしい。病院に行って診てもらったら、腎臓が片方止まっておるとかでな、すぐに投薬を受けたらしいがの。

 奴もワシも、その時はもうダメかと思うたし、仮に生きられたとしても、もう腎臓は戻らんだろうと思った。だがなあ元親、案外と人間は丈夫に出来ておる。奴の腎臓は生き返った。医者に言わせれば、病変には、可逆性の物と、不可逆性の物が有るそうだ。つまり、戻れるか、戻れないかという事だ。一線、とも言えるな。とにかく、ある段階を超えるまでは、自己回復出来るが、その段階を超えてしまえば、もう元には戻らないという事だ。しかもな、その段階が何処に有るのか、今どの位置なのかは、その時には誰にも判らないんだそうだ。

 これは何も病気にだけ言える事ではないと、ワシは思っておる。なぁ元親。お前は色々と悪い事をした。だがのう、やり直せる段階というのは確かに有る。お前がやったか、やっていないか、ワシには判らん。判らんが、世間は勝手に決め付ける。お前がやっていなくても、お前を見る目は冷たく、厳しくなる。お前はその時、きっと世の中を恨むだろうし、そしてそんな世の中を見限って、もっと良くない方向へ行ってしまうだろう。だからな、ワシは証拠がない限り、お前を責めたり、決めつけたりはせん。そうする事で、お前を不可逆に追いやるかもしれんからなあ。ただ、元親、お前はすでにその可逆か不可逆か、その一線の上に立っておる。その事を良く考えなければならんぞ」

 お館様は長い時間、元親と語らい、そして元親に言い聞かせた。元親は大いに反省し、それからきっぱりと暴走行為をやめた。

 それからの道のりも決して楽なものではなかったが、元親は無事に警官になり、お館様の考えを引き継いで働いている。もともと馬鹿をやっていただけに、馬鹿な連中の心理は良く分かった。素行の悪い連中も、「素行が悪い」程度の間なら、言葉を交わせると知っていた。そして元親は、確かに越えたら戻れない一線が有ると知っている。その線を越えてしまうと、どんなに言葉をかけても、届かないのだ。彼らにはもう、罰を、社会的制裁を与える以外に、方法が無かった。




 毛利興元とかいう男も、越えちゃあいけない一線を、元就も、その一線を越えたんだろうか。

 もう戻れない、兄弟として愛し合う事は出来ない、殺すしか、殺されるしかなかった、そんな境界を越えてしまったんだろうか。それならば事件は起こっても仕方ないといえば、仕方ない。そうなる状況だったのだ。

 元親はそう考えてため息を吐き、また首を振った。推測しても仕方がないのだ。

 聞き込みをしても大した収穫は得られなかった。駅の防犯カメラには確かに、9時15分の電車に乗り込む元就が映っている。近所は空き家も多く、特に悲鳴や物音は聞こえていない。死亡推定時刻は8時から10時。元就が犯人だとすれば、兄を無傷で刺し殺し、その日も平然といつも通りの時間に家を出た事になる。

 大学の人間にも聞き込みをしたが、大した情報は得られない。ゼミの中でも隅に一人で居るようなタイプで、友人も居ない。喋った事は有るけど、程度の人間しかいないから、いくらでもくだらない情報だけが手に入る。殺しそうだよね、などという根も葉もない印象の話だ。

 過去通っていた学校でも何故だか「いい子だったんですが」と過去形の話が出てくる。今のところ金銭トラブル、人間関係のもつれ、いずれも見つかっていない。だから尚更、周りの視線が冷たい。決めつけているのだ。それは人間の弱さだ。何が原因か、何が悪いのかとりあえず決めないと、安心して暮らせない。だから手っ取り早い人物を、犯人にするのが一番楽なのだ。

 興元の勤め先である出版社にも聞き込んだが、彼の印象はひたすらに優しく、穏やかで、勤勉で、良い人だったようだ。家庭内暴力という言葉はやはり似合わない。同僚も驚いていた。優しいいい人の腹の中に、どれほど憎しみと鬱憤が凝縮されていたのかと思う。その心が全て元就に注がれたのだ。元就に耐えられるわけがない。

 その後、病院に向かう。元就は一度入院をしている。数ヶ月前、暴力を受けて右腕を骨折したのだ。一か月ほど前に退院しているが、家庭内暴力が有ったという報告は担当医と看護師から上がってきている。

 当時元就の担当だった看護師に話を聞く。彼女は前田まつと名乗った。

「骨折したという事で、救急搬送されて来たのですけれど、お身体のほうを見たら傷だらけで、これはもしかして、と思い本人に訪ねたのですが、暴力を受けたという事実は無いと頑なに否定なさって」

「本人というのは、お兄さんに?」

「いえ、元就さんにです。階段から落ちた、とずっとそればかりで。言いにくい事ですけれど……手首にも、不自然な傷跡が有って……でも、こればかりは、本人が助けを求めてくれない事には、動けませんし……お兄さんも大変に落ち込んで、献身的に看護をなさっていたので……」

「その時の二人の様子は?」

「とても仲の良い兄弟に見えました。お兄さんは本当に優しくて、とても暴力を振るうような方には見えませんでしたし、元就さんのほうもお兄さんの事は慕っているようでした。尤も、そうして表から見えないから、家庭内での暴力が加速するのかもしれませんが……」

「それまでにも何度か病院に来ているという話ですが」

「ええ、怪我や捻挫で元就さんが」

「ここ最近は?」

「退院して以来、お見えになっていません。けれど、お話を伺う限り、暴力は止まらなかったようですね……。今にして思えば、あの時は深く反省しているように見えたのですが……」




 
「仮に、仮にですよ」

 聞き込みを終えて、署に帰る途中。幸村が口を開いた。

「仮に、元就殿が犯人でなかったとして。であれば、誰に動機が有ると言うのですか?」

「まぁ端的に言って、被害者に恨みの有る人間じゃねぇか? 現金類は全く盗まれてなかったって言うし」

「ですが、部屋が荒らされた形跡は有りました。犯人は確かに何かを探したんですよね、現金以外の物を」

「そう思わせるための工作かもしれないけどなあ。指紋は残していないわけだし、それなりの計画性は有ったろうよ」

「……」

「しかしまぁ、毛利家は兄弟二人暮らし、稼ぎ頭の兄は小さな出版社で安月給、生活には困ってたはずだ。誰かの弱みを握って脅してたら逆に……ってドラマみたいなパターンも有り得なくはないわな」

「金銭トラブルなどは上がっていませんが……」

「まぁまだ捜査は続行中だしな。まだ判らねぇや。とりあえず、ナイフと靴を共通に所有してる奴と、血が誰の物か、からだな、話は」

 署に帰ると、元親は上司に呼び出された。

 殺人犯の目撃証言が出たのだ。





 目撃者は毛利家の裏手にあるアパートへ、介護に来ている青年で、風魔小太郎という。事件当日の朝、9時半ごろに介護先である北条氏政宅に到着し、最初にゴミ出しに向かっている時だ。収集車の時間が迫っていて、小太郎は焦っていたという。慌てていたものだから、ゴミ袋の片方を落としてしまい、振り返って袋を拾った。

 その時に、下の民家から笑い声が聞こえた。顔をあげると、勝手口から黒い服を着た男が笑いながら飛び出して行くのが見えた。が、小太郎はその時はゴミ出しに気を取られていて、特に何も感じなかった。何か良い事でも有ったのだろうと、それきり彼の事は考えなかった。

 小太郎の証言が遅れたのは、一つには小太郎が氏政の介護に来るのは週に2回と少なく、事件が起こったという事は知っていたが、詳しい内容を知るのに時間がかかった事、そして彼が先天的に言葉を喋れない事が原因だった。氏政に目撃した事を伝えようにも伝えられず、さりとて警察に電話する事も出来なかった小太郎は、直接警察に赴き、筆談で証言をした。小太郎の証言時間は出勤時間とゴミ収集車の時間の関係からほぼ正確なものであると考えられる。

 9時半というと元就が大学の最寄駅に到着した直後の事である。防犯カメラにも映っている事から、その人物が元就であるという可能性は無くなった。

 加えてそれと前後して、血液鑑定の結果が出た。勝手口の血痕、および廊下の血痕の一部に、興元、元就以外の血液が見つかった。

 ようやっと、元就の容疑は晴れたのである。

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