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めでぃのくの日記
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2010-01-22 (Fri)
 昨日の夜からおばあちゃんがハノイの塔? を楽しんでおられる
 どうしても出来ないから、出来あがるまでは順番ばらばらなら出来る!
 と自信を持っておっしゃったから、それはハノイの塔ではないと言っておきました
 

 以下、小ネタ
 ヒモ下衆元親×自宅警備員元就 なのに元親しか出てないし元就っぽくもない

 もう会ってくれないの、というメールに、すまないとだけ返事をした。これで相手が悲劇のヒロインになってくれれば、元親の勝ちだった。そしてその勝負にも、元親は勝った。メールに返事は無い。元親は煙草の煙を吐き出して笑った。と、背後でドアの開く音がする。元親は極めてのんびりと携帯をしまった。

「待った?」と言いながら、元親の方へ男が歩いてくる。バスローブを着ていた。元親は「いいや」と笑って彼を抱きしめ、ベッドに潜りこんだ。




 元親には現状、付き合っている人間が10人居る。そのうち7人が女である。それぞれから金を貢がれているから、元親の暮らしは実に優雅だった。女は簡単に金を出したし、男は元親の夢物語に投資したような気になっていた。元親は毎日ブラブラして遊び、時には誰かから借りた金を、誰かに渡して返済した。
 
 人たらし、というのかどうか。元親は人に愛される天性の才能が有った。孤児だったから、と誰かは説明した。親に捨てられた者は、二度と捨てられるまいと愛嬌を激しく振りまく、と。そうして母性あるいは父性の本能を刺激し、人をひきつけるのだと。

 元親は自分がどういう理由で、誰からも好かれているのかには興味が無かった。ようは毎食誰かに奢ってもらい、欲しい物は他人にプレゼントしてもらい、住む場所は彼からマンションを与えられ、車は女がデートに使いたいという物を元親名義で買うのが、元親の幸せだ。充実した暮らしに元親は満足していた。欲しい物は何でも手に入る。ただ一言、欲しいと言えばそれで良かった。

 時には元親を詐欺師呼ばわりする人間も居たが、それは元親には心外な事だった。自分は全ての人を平等に愛する事が出来る、貴重な存在なだけだ。元親はそう思っていた。恋、と呼ばれるものを、元親は知らなかった。誰にも興味が無い。それ故、誰の事でも深く愛せた。そして、誰も元親をいつまでも引き留めてはいられなかった。それだけだ。

 何人渡り歩いても、長続きはしなかった。キスもセックスも、妙なプレイも楽しんだが、結婚あるいは同棲するような相手は一人も居なかった。皆で楽しく笑って、寝て、そしてそれが楽しくなくなったら、別れる。人生とはそんなものだというのに、元親を特別責めるような人間も居て、それについては彼も不満だった。

 自分を引き留めるような魅力も無いくせに、偉そうに。元親はそう思っていたから、彼らの言う事にも耳を貸さなかった。それでも面倒になったから、別れ際には相手に花を持たせる事にした。後を濁さず、という奴だ。悲劇のヒロインにしてしまえば、女はたいていの場合満足したし、男にはチャンスだと説明すれば、納得してくれた。そうして誰にも責められない事は、とても心地よい事だった。

 それでも時々は疑問に思う。何故自分には、生涯を通して愛せるような、特別な存在が居ないんだろうか、と。結婚とは家族を作る事で、両親の無い元親に残された最後の希望だったのだ。なのにその相手が見つからない。元親はたくさんの男女と付き合って、その度失望した。そうして別れる度に、元親はますます人に興味を失っていった。







 そろそろ、反応が有るかな。

 元親は帰路を急ぎながら、そう思った。高級マンションにたどり着き、認証を済ませて、自宅に戻る。電気をつけて、靴を脱ぐとすぐさまパソコンに向かった。

 起動する時間も惜しいとばかり、キーボードとマウスに手を乗せる。やがてパソコンが起動した。メールボックスを開く。

 受信メール、1件。

 元親は嬉しくなって、急いでそのメールを開いた。

 件名は、「:Re.」差出人は「09S」。

 内容はこうだ。

「バリスタさんはそう言いますが、私は貴方に会えるような人間ではありません。見た目も良くないし、恐らくこのメールほども饒舌には話せません。だから貴方に嫌われるかもしれない。そう思うと、貴方に会う勇気が出ません。恥ずかしい話ですが、私はもう何年も、友人というものを作れていません。こうして貴方とメールで話せるだけでも、私は幸せです。この関係が壊れるのが、正直に言って怖いのです」

 やたら丁寧な本文。元親はすぐに返信した。

「俺は、09Sに会いたい。君を嫌ったりなんて、決してしない。それとも君は、俺に会いたくないのか? 一緒に洒落た本屋で、例の推理小説の話もしてみたい。君はどう思っているのか、君の言葉で聞きたいんだ。大丈夫、君が引っ込み思案なのは判るよ。だから俺が全部セッティングしてみる。それでも嫌なら……これ以上は言わないよ」

 恥ずかしい文面だった。「彼」があまりに丁寧だから、こちらまで妙な文体になってしまう。送信ボタンをクリックして、しばらくネットサーフィンなどしながら待っていると、またメールが入った。

「本当に私に会っても、幻滅しませんか? 私はお洒落でもないし、見た目も良くないし、正直言って、貴方に会いに着て行く服が有りません。それでもいいのですか? 貴方に言われるまでもなく、私は貴方に会いたいです。もし会ってくれるなら、お恥ずかしい話ですが、ジャンクフードが食べたいと切に願います」

 相変わらず良く判らない事を言う男だった。元親は少し笑って、「判った。じゃあ、会おう。今週の日曜日に」と書き始める。

 バリスタは元親の事だったし、09Sは最近出来た、ネットラヴァーという奴だった。元親はこの馬鹿丁寧な文字だけの存在に、一種の期待を寄せていた。今までは言葉と体で挨拶をして、それでダメだった。だから今度は、文字でお互いを知り合ってから、会おうと決めた。

 出会い系サイトのような場所に、ぽつんと09Sが書き込んでいたのがきっかけだった。元親はちょうどネットでの出会いを求めていたし、09Sは誰か話友達が欲しいと書いていた。そこがホモ系のアダルトサイトだったから、09Sは散々にからかわれていたが、真面目くさった文体で交わしていた。それがどうも、素で何も判っていなさそうだったから、元親はメールを書いた。

 君はホモの友達を捜しているのか? それともホモの恋人を捜しているのか? ここは純粋なお友達を捜すようなところじゃあないから、もっと別な場所に行ったほうがいいよ。

 返事はそう待たずに返ってきた。

 親切にどうもありがとうございます。あの場所がどういう場所かは判っています。それでも話相手が欲しくて、書き込んでしまいました。場違いな事をして申し訳有りません。貴方からメールを頂けて、嬉しかったです。それと敢えて言うなら、私はホモの恋人になってくれる方も、探しています。

 やはりくそ真面目で、元親は面白くなって、その風変わりな人物に付き合う事にした。好きな映画や本の話をした。チャットでリアルタイムに会話した事も有る。果てはその先の、性的な事も話したし、遠く離れた画面の前で、お互い愛し合った事も有る。それでも09Sは、頑なに実際に会う事を拒んでいた。

 それが長い説得の末、ようやく会う気になったのだ。元親は嬉しくてたまらなかった。彼は違う、彼とはきっと、恋が出来る。ここから俺の本当の人生が始まるんだ、と元親は信じていた。

 +++

 今時こんな恋愛する奴居ないと思うから、ちょっと前ぐらいの設定で
 10年前ぐらいならけっこう有ったからなあ
 09Sは……つまりそういう事です

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