変なの思いついたんですけど、ドラマのせいかも
「元就様は、いけません!」
急に怒鳴られて、元就は飛び上がりそうになった。尤も、彼はふんわりとした座り心地の社長椅子に乗っていたから、身動きもせず、ただ驚いて何度か瞬きをしただけだった。
社長室に入って来るなり怒鳴ったのは、先々代社長の秘書で愛人だったらしい杉とかいう女だった。本来なら犬猿の仲になるだろう間柄だったが、不思議と元就は人を嫌うという事が得意ではなかったので、彼女ともそれなりに親しい。
そんな杉が、部屋に入るなり怒鳴ったのには、わけがある。
「なんですか、元就様の評判は!」
杉はずいずいと元就の側まで寄ってきて、机を叩く。
「どいつもこいつも、恐い人だ、って、それだけ!」
「あの、杉、」
「いいですかっ!」
口を挟んでも聞いてもらえそうになかったので、元就はとりあえず黙る。
「社長と言うのは! 本来! 偉い者ではなく! 最高責任者であって! カリスマでなければいけないのですよ」
「はぁ」
「はぁ、じゃありません! それなのに、社員達と来たら、皆で貴方の事を恐い人、恐い人、と。貴方、人付き合いというのはちゃんとしているんですか」
「いや、我は、」
「いーえ、存じておりますとも、元就様は大層優秀な経営学を学びましたが、その結果人らしい生活を送っていない、だから人との付き合い方なんて判らない!」
「あの、」
「いいですか、元就様! 会社は社会でもあります! 人の心がつかめず、理解出来ないなら、会社は、社長はなりたちません! いいですか! お父様から、お兄様から頂いたこの会社を、よりいっそう発展させるためにも、元就様、人をお育てなさい!」
そして杉は言いたいだけ行って、さっさと部屋から出て行ってしまった。
取り残された元就は、しばらく呆然としていたが、やがて、
「育てるといわれても、どうすれば……」
と、小さく呟いた。
長曾我部元親は非常に肩身の狭い思いをしていた。
そもそも高い所はあまり好きではない。仕事以外では行きたくないと思っている。だのに彼は今、足がすくむような高さを、エレベーターで進んでいる。ガラス張りのエレベーターなんて初めて考えたヤツは正気じゃないぜ、と元親は思いつつ。ぎゅっとベルトを握った。緊張した時のくせだった。
彼は一張羅のコートにジーンズ、スニーカーでこの高層ビルを上がっている。まさかそんな場所だとは思わずに、だだっ広いロビーに受付嬢が三人、エレベーターは4つ、スーツ姿の男がウロウロするような所に来てしまい、元親はとても恥ずかしい思いをした。こんな事なら、タンスの奥にしまってるスーツを持ってくるんだった……と思いつつ、恐る恐る受付嬢に用件を告げると、怪訝な顔をする彼女から了承を得て、エレベーターの階数を教えてもらえた。元親が乗ったエレベーターには、他に誰も乗ってこなかった。
やがてエレベーターは止まる。開いた先は廊下で、白い壁、床は一面カーペット。薄汚れたスニーカーの裏を一度見て、元親はまるで盗人のような足取りで廊下に出た。
廊下の右の壁には小さな扉がいくつかついていたが、元親はそれらを通り過ぎて、その奥、一際大きな扉に向かう。社長室、と書かれたそこに向い、ノックをすると、秘書らしき女性が出てきた。彼女もまた、元親を見ると変な顔をしたが、元親が「毛利元就」と書かれている名刺を差し出すと、どうぞと扉を開けた。元親は恐る恐る中に入る。入れ違いに、秘書は出て行ってしまった。
大きな机に、小さな男がひっついていた。元就だ。彼は手にしていた書類に何事か書くと、顔を上げて元親を見ると、僅かに笑んだ。
「我は10人に声をかけたが、本当にここに来てくれたのは、そなたが最初で最後だ。そこの椅子に腰掛けるが良い」
元就は机の前に置かれた椅子を指差して言う。元親はのろのろとその椅子に腰掛けて、改めて元就を見た。見れば見るほど、小さな男だった。スーツが似合っていない。
「さて、そなたをここに呼んだ理由だが、単刀直入に言おう。我はそなたを資金援助したい」
「資金援助……って言うと……」
「先日の質問の結果、そなたが所謂低所得者の苦労人だという事は判った。しかも勉学に勤しむ、今時珍しい働き者だ。だからこそ、我はそなたに資金を送りたい」
「はぁ」
「そなたが領収書を持ってくるなら、その額を無条件で支払おう。我の資金はかなり余裕が有る。どうだ、よい話であろう」
「えーと……」
元親は頭を掻いた。確かに元親は苦労人だ。貧しい家庭に育ったので、大学に行く金はなかった。今はバイトをしながら大学への資金をためている状態だが、正直言って生活にも窮している。元就の提案は、ありがたかった。ありがたすぎて、逆に迷惑だった。
「悪いんだけど、その、お断りします」
そう言うと、元就は驚いたように目を丸くした。元親は「何故」、と問われる前に、断る理由を口にする。
「えーと、確かにありがたいんだけど、やっぱりその、お金があると、それに甘えちまいそうで……だから、」
「それは、困る!」
元就は元親が説明を終える前に、声をあげる。
「これは、我とそなたの問題なのだ!」
「え? あ、はぁ、最初からそうだけど……」
「我は、我はそなたを育てねばならぬのだ!」
「そ、育てる?」
「それで立派な社長になって、父上の、兄上のこの会社を守らなくてはならぬ、そのためにはそなたが必要なのだ、長曾我部元親!」
そう元就は説明してくれたが、元親にはさっぱり意味が判らなかった。
それからしばらく話をして、ようやく元親にも元就の言っている事が判って来た。
元就はこの毛利カンパニーなる会社の新社長で、若社長だ。経済、経営学は大学で熱心に学んだが、その結果、帝王学を学ぶ暇がなかった。そのまま、父、兄の死が原因で、社長についたのだが、経営の学は有っても、手腕は無い。
人望も無いので、社員が離れてしまう。いかに良い経営をしても、下が動かなければ意味が無い。元就はその状況を打開するために、「下」の人物を育成しようと考えた。その過程で、人との接し方を学ぼうという考えのようだった。
話の途中で、元親はこの男が少々哀れになってきた。大学を出て、社会に出たら社長だった。しかも父や兄、母も無くし、孤独の身だという。おまけに新社長に対する不信の風当たりが強く、何をやっても批判される。その上、代々受け継いできた会社を守るというプレッシャーがかかっている。小さな肩には、少々荷が重そうだった。
最初は金を貰う気など無かった元親も、そういう事なら、と考えを改め、少なくとも元就の言う、人材育成と人付き合いの勉強には付き合う事にした。金に関しては、学費のみの援助を受ける事にして、生活補助などには甘えない事にする。
承諾を得て、元就は嬉しそうに笑んだ。だがそれでもまだ足りないらしい。
「そなたと接する事で、我は人を学ぶ。だから、頻繁に会いたい。しかし我は仕事、そなたも仕事だ。会うのは難しい。そこで、我のマンションの合鍵をそなたに与えよう。我の部屋に自由に寝泊りしてよいぞ」
小さな鍵を見ながら、元親はため息を吐いた。
これが、女だったら、最高だったのになぁ。
小さくため息をついて、元親はまた恐々とエレベーターに乗り込んだ。
+++
元就は友達が飼い犬の隆元しか居ない寂しい子
という設定
元就は育ちがいいから、上品なえちしかしらないので、
元親の下町(?)えちの激しさにひぃひぃ言わされればいいと思います
急に怒鳴られて、元就は飛び上がりそうになった。尤も、彼はふんわりとした座り心地の社長椅子に乗っていたから、身動きもせず、ただ驚いて何度か瞬きをしただけだった。
社長室に入って来るなり怒鳴ったのは、先々代社長の秘書で愛人だったらしい杉とかいう女だった。本来なら犬猿の仲になるだろう間柄だったが、不思議と元就は人を嫌うという事が得意ではなかったので、彼女ともそれなりに親しい。
そんな杉が、部屋に入るなり怒鳴ったのには、わけがある。
「なんですか、元就様の評判は!」
杉はずいずいと元就の側まで寄ってきて、机を叩く。
「どいつもこいつも、恐い人だ、って、それだけ!」
「あの、杉、」
「いいですかっ!」
口を挟んでも聞いてもらえそうになかったので、元就はとりあえず黙る。
「社長と言うのは! 本来! 偉い者ではなく! 最高責任者であって! カリスマでなければいけないのですよ」
「はぁ」
「はぁ、じゃありません! それなのに、社員達と来たら、皆で貴方の事を恐い人、恐い人、と。貴方、人付き合いというのはちゃんとしているんですか」
「いや、我は、」
「いーえ、存じておりますとも、元就様は大層優秀な経営学を学びましたが、その結果人らしい生活を送っていない、だから人との付き合い方なんて判らない!」
「あの、」
「いいですか、元就様! 会社は社会でもあります! 人の心がつかめず、理解出来ないなら、会社は、社長はなりたちません! いいですか! お父様から、お兄様から頂いたこの会社を、よりいっそう発展させるためにも、元就様、人をお育てなさい!」
そして杉は言いたいだけ行って、さっさと部屋から出て行ってしまった。
取り残された元就は、しばらく呆然としていたが、やがて、
「育てるといわれても、どうすれば……」
と、小さく呟いた。
長曾我部元親は非常に肩身の狭い思いをしていた。
そもそも高い所はあまり好きではない。仕事以外では行きたくないと思っている。だのに彼は今、足がすくむような高さを、エレベーターで進んでいる。ガラス張りのエレベーターなんて初めて考えたヤツは正気じゃないぜ、と元親は思いつつ。ぎゅっとベルトを握った。緊張した時のくせだった。
彼は一張羅のコートにジーンズ、スニーカーでこの高層ビルを上がっている。まさかそんな場所だとは思わずに、だだっ広いロビーに受付嬢が三人、エレベーターは4つ、スーツ姿の男がウロウロするような所に来てしまい、元親はとても恥ずかしい思いをした。こんな事なら、タンスの奥にしまってるスーツを持ってくるんだった……と思いつつ、恐る恐る受付嬢に用件を告げると、怪訝な顔をする彼女から了承を得て、エレベーターの階数を教えてもらえた。元親が乗ったエレベーターには、他に誰も乗ってこなかった。
やがてエレベーターは止まる。開いた先は廊下で、白い壁、床は一面カーペット。薄汚れたスニーカーの裏を一度見て、元親はまるで盗人のような足取りで廊下に出た。
廊下の右の壁には小さな扉がいくつかついていたが、元親はそれらを通り過ぎて、その奥、一際大きな扉に向かう。社長室、と書かれたそこに向い、ノックをすると、秘書らしき女性が出てきた。彼女もまた、元親を見ると変な顔をしたが、元親が「毛利元就」と書かれている名刺を差し出すと、どうぞと扉を開けた。元親は恐る恐る中に入る。入れ違いに、秘書は出て行ってしまった。
大きな机に、小さな男がひっついていた。元就だ。彼は手にしていた書類に何事か書くと、顔を上げて元親を見ると、僅かに笑んだ。
「我は10人に声をかけたが、本当にここに来てくれたのは、そなたが最初で最後だ。そこの椅子に腰掛けるが良い」
元就は机の前に置かれた椅子を指差して言う。元親はのろのろとその椅子に腰掛けて、改めて元就を見た。見れば見るほど、小さな男だった。スーツが似合っていない。
「さて、そなたをここに呼んだ理由だが、単刀直入に言おう。我はそなたを資金援助したい」
「資金援助……って言うと……」
「先日の質問の結果、そなたが所謂低所得者の苦労人だという事は判った。しかも勉学に勤しむ、今時珍しい働き者だ。だからこそ、我はそなたに資金を送りたい」
「はぁ」
「そなたが領収書を持ってくるなら、その額を無条件で支払おう。我の資金はかなり余裕が有る。どうだ、よい話であろう」
「えーと……」
元親は頭を掻いた。確かに元親は苦労人だ。貧しい家庭に育ったので、大学に行く金はなかった。今はバイトをしながら大学への資金をためている状態だが、正直言って生活にも窮している。元就の提案は、ありがたかった。ありがたすぎて、逆に迷惑だった。
「悪いんだけど、その、お断りします」
そう言うと、元就は驚いたように目を丸くした。元親は「何故」、と問われる前に、断る理由を口にする。
「えーと、確かにありがたいんだけど、やっぱりその、お金があると、それに甘えちまいそうで……だから、」
「それは、困る!」
元就は元親が説明を終える前に、声をあげる。
「これは、我とそなたの問題なのだ!」
「え? あ、はぁ、最初からそうだけど……」
「我は、我はそなたを育てねばならぬのだ!」
「そ、育てる?」
「それで立派な社長になって、父上の、兄上のこの会社を守らなくてはならぬ、そのためにはそなたが必要なのだ、長曾我部元親!」
そう元就は説明してくれたが、元親にはさっぱり意味が判らなかった。
それからしばらく話をして、ようやく元親にも元就の言っている事が判って来た。
元就はこの毛利カンパニーなる会社の新社長で、若社長だ。経済、経営学は大学で熱心に学んだが、その結果、帝王学を学ぶ暇がなかった。そのまま、父、兄の死が原因で、社長についたのだが、経営の学は有っても、手腕は無い。
人望も無いので、社員が離れてしまう。いかに良い経営をしても、下が動かなければ意味が無い。元就はその状況を打開するために、「下」の人物を育成しようと考えた。その過程で、人との接し方を学ぼうという考えのようだった。
話の途中で、元親はこの男が少々哀れになってきた。大学を出て、社会に出たら社長だった。しかも父や兄、母も無くし、孤独の身だという。おまけに新社長に対する不信の風当たりが強く、何をやっても批判される。その上、代々受け継いできた会社を守るというプレッシャーがかかっている。小さな肩には、少々荷が重そうだった。
最初は金を貰う気など無かった元親も、そういう事なら、と考えを改め、少なくとも元就の言う、人材育成と人付き合いの勉強には付き合う事にした。金に関しては、学費のみの援助を受ける事にして、生活補助などには甘えない事にする。
承諾を得て、元就は嬉しそうに笑んだ。だがそれでもまだ足りないらしい。
「そなたと接する事で、我は人を学ぶ。だから、頻繁に会いたい。しかし我は仕事、そなたも仕事だ。会うのは難しい。そこで、我のマンションの合鍵をそなたに与えよう。我の部屋に自由に寝泊りしてよいぞ」
小さな鍵を見ながら、元親はため息を吐いた。
これが、女だったら、最高だったのになぁ。
小さくため息をついて、元親はまた恐々とエレベーターに乗り込んだ。
+++
元就は友達が飼い犬の隆元しか居ない寂しい子
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元就は育ちがいいから、上品なえちしかしらないので、
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