なんかいけないような気がしたので
日記に小ネタを投下する時は文章にしようと思ったのですが
何しろやまなしおちなしいみなしの長文が溢れる事になるかと
続くかどうかも判らないのでとりあえず小ネタで投下
ファイル名が「ガチ」です つまりそういう事です。
日記に小ネタを投下する時は文章にしようと思ったのですが
何しろやまなしおちなしいみなしの長文が溢れる事になるかと
続くかどうかも判らないのでとりあえず小ネタで投下
ファイル名が「ガチ」です つまりそういう事です。
毛利元就が、己がヘテロセクシャルでも、ましてバイセクシャルでもないという事に気付いたのは、高校3年生の時だった。
それまではなんとか自分を誤魔化していたのだが、高校生となった同級生の肉付きや骨格に何故だか惹かれていく己に気付き、そしてホモセクシャルである自分を否定しようとそれなりの努力はした。結論から言って無理だった。
無理やりでも女性と付き合って結婚してしまえばいいか、と考えた事も有ったが、それは女性に対して失礼だと気付いて止めた。最終的に、自分がどういう性癖を持っていようと他人には関係ないだろうと割り切る事になった。彼は毛利家の次男であったし、特に子を残す必要性も無い。またそうである以上、その性癖を家族などに告白する必要も無かった。
ただ元就はどちらかというと静かな方で、しかし穏やかではないという人種であり、そもそも人から好かれなかった。頭だけはよく出来ているらしく、人並みに勉強すれば人の1.5倍は吸収する人間だったが、なにしろ男としては貧弱な体付きであるし、目が悪いのでいつも睨みつけているような表情になるし、言葉を作るのが元来苦手で、とかく誤解を招くばかりで友人らしい友人も出来なかった。
大学を無事に卒業し、就職するか、という時期にさしかかり、毛利家の経営する会社がのれん分けを行うという話になった。6つ上の兄、興元が子会社を経営する事になり、元就はその経理として雇われる事となった。最終的にはさらに元就が興元の子会社になるという。
正直に言って、元就は嫌だった。経営者としての手腕は父に有るし、兄は少し落ち込みやすいが、それでも経営学を学んでいる。対する元就は自由にしていいと言われていたから心理学しか学ばなかった。しかも一向役に立つ気配が無い。
だが元就は子供の頃から父や兄の言う事にはむかうという事をしなかった。よくも悪くも溺愛されていた元就は、そんな家族に感謝をしていたし、彼らの期待を裏切るのは良くないと思っていた。だから仕方なく、経営学を学ぶ事になった。経理担当になったはいいが、経理の何も判らなかった元就は、ひとまずセミナーに通う事とした。
そこで出会ったのが明智光秀だ。元就は何故だか一目見た瞬間から、あぁこの男は同類だと思っていた。尤も、光秀のほうも元就をそうだと見抜いていたらしいから、恐らく何か通じるものが有ったのだろう。彼らは自然と話し始めたし、食事に行ったし、こちらはなりゆきだったが体も重ねた。
元就の初体験はお世辞にも良いものではなかった。光秀は大層良い趣味をしていて、およそノーマルとは言い難い性癖を持ち合わせていた。初体験でその趣味に付き合わされた元就は不幸と言える。あまりの事に元就はもう二度と誰とも寝ないと決意したほどだった。それでも元就は始めての友人を得たし、その後も二人は交流を続けた。結局、一度も恋人にはならなかった。
それが証拠に、光秀は出張で他所に行く時、元就に一軒の店を教えている。それはそういった趣味の人間が集まり、交流し、そして相手を探す場所だ。私が居ない間寂しいでしょうから、新しいお友達か何かでも、お探しなさい。光秀はそう言って、元就にその店を紹介した。元就のほうも最初は頷くばかりで、行く気などなかった。
ところが人間の慣れとは恐ろしいもので、光秀という変人の友人を一度持ってしまった元就には、一人の寂しさがとても辛いものだった。父や兄は成功者であり、尊敬する人物であるから、所詮は話し相手にも遊び相手にもならない。元就はしばらくは耐えていたが、光秀の出張が恐らく年単位になると知って、意を決しその店へと向かった。
元就はお世辞にも、ゲイに愛されるような外見でもないし、キャラクターでもない。
だから元就はその店に通うようになったが、声をかけられはしなかった。構いたがりの人間が時々話しかけてきたが、それでも話すだけで終わりだ。長い間、カウンターに座ってマスターの手の動きだけを見つめて過ごす日が続いた。
長曾我部元親の存在の事は、元就も知っていた。毎日のように店に通っては、明るく大声を出して皆と一緒に盛り上がっている男で、常連客からはアニキと慕われている。白い髪の小奇麗なマスターに言わせれば、「元親君はとっても社交的で、声さえかければ一緒に寝てくれるような人だよ」だそうだが、元就はそれを確かめようとは思わなかった。わいわいと下品に酒を飲み盛り上がる彼らの事を、あまり好きではなかったのだ。
それに元親はマスターの言うとおり、毎日違う男と一緒に肩を組んで店を出ていたし、きっとああいうのはなんでもいいのだろうと元就は呆れていた。ただ元親のその屈強な体つきや、胸板や、それにとびっきり明るいところは確かに魅力的だった。地毛なのか染めているのか、白い髪は奇抜だのに何故か彼に似合っていて、元就も彼に近づきはしなかったが、興味はあった。呆れたり、見とれたり、それを繰り返してばかりで、何も進展せず、そして新しい相手も見つからなかった。
その日は常連客が少なかった。なんでも隣町で祭りが有るらしく、皆そっちに行っているという。元就は知らなかったからいつものように店に来て、いつものように酷く無口な巨体のバーテンの前でちびちびとやっていた。このバーテン、天井に頭が着くのではないかというような大きな男で、元就はいつかぶつけるだろうか、と彼の頭を見守るのが趣味だった。生憎彼は器用に物を避けるので、未だに見届けられていない。彼の隣に立つマスターはとても小さく見えたが、いつぞ確かめたところその小さなマスターよりも、己の方が小さい事に気付いて酷くショックを受けたものだった。
と、店に元親がやって来た。彼もまた、店にあまり客が居ない事を嘆いていたが、その祭りとやらに行くような気配も無く、仕方なくといった風にカウンター席までやって来た。強いアルコールを頼んで、マスターと楽しそうに喋っていたが、やがて元親は元就に興味を持ったようだ。名前は、とか、何してるんだ、とかそういう質問をされたが、元就はのらくらと抑揚無く答える事しか出来なかった。慣れていないのだ。
「あんた、毎回一人だよな。相手とか探す気無ぇの?」
そう聞かれて、元就は流石にむっとした。
「そなたは、いつも違う相手と一緒だな」
そう冷たく返すと、元親は一瞬きょとんとして、そして「はっは」と大きく笑った。
「そうだよ、俺は色んな奴と楽しみてぇんだ。どんな奴ともな」
なぁ、今日は俺とどうだ。どうせ相手なんていないんだろ?
どうせ相手が居ないのはそなたのほうだ。元就はその言葉を紡げなかった。酷く愛される男が、妥協して手を出してきたのだと元就は判っていたのだが、本当はとてつもなく恐かったのだが、
「……かまわぬぞ」
と、何故だか高圧的な返事を口にしてしまったのだった。
+++
長曾我部元親には両親と言うものが無い。養子だとは早いうちから知っていた。髪の色からして、親子とは思えなかった。養父も養母も良くはしてくれたが、元親は彼らを両親と認める事はついに出来なかった。何処かに見た事も無い両親がいるという事実は、元親を無意識のうちに不安にさせ、孤独にさせた。誰と一緒に居ても、元親は何故だか寂しかった。
加えて、子が出来ないと諦めて元親を養子にした父母の間に、本当の子が生まれた。元親はないがしろにはされなかったが、それでも家に居場所が無いと感じた。高校を卒業し、元親は専門学校に通うためという口実で家を出た。父母は心配し、寂しがった。それは恐らく本心なのだろうが、元親にはどちらでも変わらなかった。赤の他人を扶養し、学校に行かせてくれる事には深く感謝したが、どうしてもそれ以上にはなれなかった。
美術系の学校で元親は熱心に学んだ。独自の感性と、そして人柄のおかげで元親はとある衣料品メーカーのデザイナーになる事が出来た。元親は何処に居ても誰と居ても明るく大いに笑った。そして彼は男だろうと女だろうと平等に愛した。どちらでも構わなかった。どうしようもない寂しさを埋める何かを求めて、元親は誰とでも打ち解け、誰とでも笑い、そして誰とでも寝た。繰り返すほどに深まる孤独に耐えながら、元親は生きていた。
次第に女というのが男より面倒だと感じ始めた元親は、ゲイではないのだが男を好んで愛するようになった。元親は何処に居ても大層モテた。相手から勝手に寄って来るのだ。しかし元親は満たされなかった。だから闇雲に人を愛した。
おかげで職場の人間関係がこじれた。元親は誰をも愛するが、愛されるほうはたまったものではなかった。何人かが元親は自分に本気なのだと主張し、殴り合い、そしてその責任は元親が取る事になった。元親も納得し、静かに会社を去ると、独自のブランドで服を売ろうとした。
元親の独自の感性は少々評価された。それ以上に、元親の人柄は大いに評価された。彼の作った小さな店は繁盛したが、それは恐らく元親を目当てに来た客が居たからだろう。元親はますます孤独を感じるようになった。どうにも悲しい、だがどうすればいいか判らない。
元親は毎晩のように色んな店を歩くようになったし、酒を飲み、誰とでも構わず寝た。ただし、これは遊びだと必ず前置きをするようにした。一夜限りの恋を渡り歩いた。誰かが隣に居てくれないと、暗い部屋は寒すぎて、上手く眠れないのだ。激しく愛し、愛されて、そしてぐったりと沈み込むようにして眠る日が続いた。心地良かった。
毛利元就の事は、元親も気付いていた。酷く痩せた小さな男で、とてもモテそうには見えなかった。実際、彼はいつも一人で飲んで、一人で帰った。何をしに来てるんだろうと、元親は呆れて、そして気に留め始めた。
元親はいつも声をかけ、そしてかけられる側だ。だが元就ときたら、声をかけて来て欲しくないという雰囲気を出していて、元親でさえ何故だか近寄り難かった。機嫌でも悪いのかと思ったが、どうやらそうでもない。いつもそういう雰囲気なのだ。時折、彼に声をかける奇特な人間が居たが、彼らはものの数分で諦めて帰って行った。
元親は元就という特殊な存在に酷く惹かれた。
だが明るい兄貴分を気取っている手前、皆の前では真面目に口説けない。茶化して笑ってそれで終わりにしなければ、後々面倒になる。なんとか、あいつとだけ話せないだろうか。元親は酷く他人の目を気にしていた。元就を連れて歩く事で、誰にどう思われるか、恐かった。
その日、店には元就と他に数人、大して仲の良くない客しか居なかった。元親はしめたと思った。これで、元就を連れて行ける。声をかけたが、返事はそっけない。元親はめげなかった。何度かのやりとりの後、一緒に帰る事があっけなく決まった。正直言って、元親は落胆した。彼は何か違うと思っていたのに、こんなに簡単に落ちるなら、大して変わらないじゃないか、と。
元就を連れて、部屋に帰る。誰かを抱いて眠るためだけの部屋だ。元就にシャワーを浴びてくるように言うと、彼は意外な事に「したくない」と言い出した。
「ここまで来ておいて、したくないはないだろうがよ」
元親は顔を顰めたが、元就はなおも首を振る。
「嫌なのだ、その、……どうにも駄目で」
もごもごと口ごもるのが気になって、問い詰めれば元就はのろのろと事情を話した。まだ男と付き合った事は一度きりで、しかもその初めてで散々な目にあったという。元親は思わず笑ってしまった。
「そりゃ、ご愁傷様だな」
「笑い事ではない。痛いわ、苦しいわ、辛いわ、あんなのはもうお断りだ」
「大丈夫、俺は大いにノーマルだから、苦しい事はしないよ」
そう優しく言ってやっても、元就は首を縦には振らなかった。
「じゃあ……じゃあこういうのはどうだ。二人とも素っ裸になって、」
「だから嫌だというのに」
「いや、そのまま一緒に寝るってのはどうだ。ただ寝るだけでいいんだ。本当に。その……一人じゃ、寝れないんだ。誰か、居てくれないと、寒くて」
「寒い?」
元就は怪訝な顔をした。その頃は初夏であったから、寒いという元親を不思議に思ったようだが、やがて何か納得したように頷くと、「寝るだけだぞ」と了承してくた。
元就の体は痩せていたが、意外と健康的だった。聞けば大学では体育系サークルに所属していたという。意外だな、と元親は笑って、裸の元就を抱くとベッドに潜る。
それから彼らは布団に潜り、裸のままで静かにつまらない話を繰り返した。それがどうしようもなくつまらない時間で、――けれど何故だか心地良くて、元親は笑った。元就の髪の毛や首筋、耳などを見ながら、元親はのらくらと身のない話を続け、そして元就はそれに付き合ってくれた。ふと気付くと元就は元親の腕の中で眠っていた。元親も時計を見て苦笑し、そして元就の背に顔をうずめて、目を閉じた。
何故だか、良く眠れそうな気がした。
+++
ガチホモばんざい
マスターははんべ と ひでよし
何故か戦国以外だとはんべが主導権握ってるイメージです
それまではなんとか自分を誤魔化していたのだが、高校生となった同級生の肉付きや骨格に何故だか惹かれていく己に気付き、そしてホモセクシャルである自分を否定しようとそれなりの努力はした。結論から言って無理だった。
無理やりでも女性と付き合って結婚してしまえばいいか、と考えた事も有ったが、それは女性に対して失礼だと気付いて止めた。最終的に、自分がどういう性癖を持っていようと他人には関係ないだろうと割り切る事になった。彼は毛利家の次男であったし、特に子を残す必要性も無い。またそうである以上、その性癖を家族などに告白する必要も無かった。
ただ元就はどちらかというと静かな方で、しかし穏やかではないという人種であり、そもそも人から好かれなかった。頭だけはよく出来ているらしく、人並みに勉強すれば人の1.5倍は吸収する人間だったが、なにしろ男としては貧弱な体付きであるし、目が悪いのでいつも睨みつけているような表情になるし、言葉を作るのが元来苦手で、とかく誤解を招くばかりで友人らしい友人も出来なかった。
大学を無事に卒業し、就職するか、という時期にさしかかり、毛利家の経営する会社がのれん分けを行うという話になった。6つ上の兄、興元が子会社を経営する事になり、元就はその経理として雇われる事となった。最終的にはさらに元就が興元の子会社になるという。
正直に言って、元就は嫌だった。経営者としての手腕は父に有るし、兄は少し落ち込みやすいが、それでも経営学を学んでいる。対する元就は自由にしていいと言われていたから心理学しか学ばなかった。しかも一向役に立つ気配が無い。
だが元就は子供の頃から父や兄の言う事にはむかうという事をしなかった。よくも悪くも溺愛されていた元就は、そんな家族に感謝をしていたし、彼らの期待を裏切るのは良くないと思っていた。だから仕方なく、経営学を学ぶ事になった。経理担当になったはいいが、経理の何も判らなかった元就は、ひとまずセミナーに通う事とした。
そこで出会ったのが明智光秀だ。元就は何故だか一目見た瞬間から、あぁこの男は同類だと思っていた。尤も、光秀のほうも元就をそうだと見抜いていたらしいから、恐らく何か通じるものが有ったのだろう。彼らは自然と話し始めたし、食事に行ったし、こちらはなりゆきだったが体も重ねた。
元就の初体験はお世辞にも良いものではなかった。光秀は大層良い趣味をしていて、およそノーマルとは言い難い性癖を持ち合わせていた。初体験でその趣味に付き合わされた元就は不幸と言える。あまりの事に元就はもう二度と誰とも寝ないと決意したほどだった。それでも元就は始めての友人を得たし、その後も二人は交流を続けた。結局、一度も恋人にはならなかった。
それが証拠に、光秀は出張で他所に行く時、元就に一軒の店を教えている。それはそういった趣味の人間が集まり、交流し、そして相手を探す場所だ。私が居ない間寂しいでしょうから、新しいお友達か何かでも、お探しなさい。光秀はそう言って、元就にその店を紹介した。元就のほうも最初は頷くばかりで、行く気などなかった。
ところが人間の慣れとは恐ろしいもので、光秀という変人の友人を一度持ってしまった元就には、一人の寂しさがとても辛いものだった。父や兄は成功者であり、尊敬する人物であるから、所詮は話し相手にも遊び相手にもならない。元就はしばらくは耐えていたが、光秀の出張が恐らく年単位になると知って、意を決しその店へと向かった。
元就はお世辞にも、ゲイに愛されるような外見でもないし、キャラクターでもない。
だから元就はその店に通うようになったが、声をかけられはしなかった。構いたがりの人間が時々話しかけてきたが、それでも話すだけで終わりだ。長い間、カウンターに座ってマスターの手の動きだけを見つめて過ごす日が続いた。
長曾我部元親の存在の事は、元就も知っていた。毎日のように店に通っては、明るく大声を出して皆と一緒に盛り上がっている男で、常連客からはアニキと慕われている。白い髪の小奇麗なマスターに言わせれば、「元親君はとっても社交的で、声さえかければ一緒に寝てくれるような人だよ」だそうだが、元就はそれを確かめようとは思わなかった。わいわいと下品に酒を飲み盛り上がる彼らの事を、あまり好きではなかったのだ。
それに元親はマスターの言うとおり、毎日違う男と一緒に肩を組んで店を出ていたし、きっとああいうのはなんでもいいのだろうと元就は呆れていた。ただ元親のその屈強な体つきや、胸板や、それにとびっきり明るいところは確かに魅力的だった。地毛なのか染めているのか、白い髪は奇抜だのに何故か彼に似合っていて、元就も彼に近づきはしなかったが、興味はあった。呆れたり、見とれたり、それを繰り返してばかりで、何も進展せず、そして新しい相手も見つからなかった。
その日は常連客が少なかった。なんでも隣町で祭りが有るらしく、皆そっちに行っているという。元就は知らなかったからいつものように店に来て、いつものように酷く無口な巨体のバーテンの前でちびちびとやっていた。このバーテン、天井に頭が着くのではないかというような大きな男で、元就はいつかぶつけるだろうか、と彼の頭を見守るのが趣味だった。生憎彼は器用に物を避けるので、未だに見届けられていない。彼の隣に立つマスターはとても小さく見えたが、いつぞ確かめたところその小さなマスターよりも、己の方が小さい事に気付いて酷くショックを受けたものだった。
と、店に元親がやって来た。彼もまた、店にあまり客が居ない事を嘆いていたが、その祭りとやらに行くような気配も無く、仕方なくといった風にカウンター席までやって来た。強いアルコールを頼んで、マスターと楽しそうに喋っていたが、やがて元親は元就に興味を持ったようだ。名前は、とか、何してるんだ、とかそういう質問をされたが、元就はのらくらと抑揚無く答える事しか出来なかった。慣れていないのだ。
「あんた、毎回一人だよな。相手とか探す気無ぇの?」
そう聞かれて、元就は流石にむっとした。
「そなたは、いつも違う相手と一緒だな」
そう冷たく返すと、元親は一瞬きょとんとして、そして「はっは」と大きく笑った。
「そうだよ、俺は色んな奴と楽しみてぇんだ。どんな奴ともな」
なぁ、今日は俺とどうだ。どうせ相手なんていないんだろ?
どうせ相手が居ないのはそなたのほうだ。元就はその言葉を紡げなかった。酷く愛される男が、妥協して手を出してきたのだと元就は判っていたのだが、本当はとてつもなく恐かったのだが、
「……かまわぬぞ」
と、何故だか高圧的な返事を口にしてしまったのだった。
+++
長曾我部元親には両親と言うものが無い。養子だとは早いうちから知っていた。髪の色からして、親子とは思えなかった。養父も養母も良くはしてくれたが、元親は彼らを両親と認める事はついに出来なかった。何処かに見た事も無い両親がいるという事実は、元親を無意識のうちに不安にさせ、孤独にさせた。誰と一緒に居ても、元親は何故だか寂しかった。
加えて、子が出来ないと諦めて元親を養子にした父母の間に、本当の子が生まれた。元親はないがしろにはされなかったが、それでも家に居場所が無いと感じた。高校を卒業し、元親は専門学校に通うためという口実で家を出た。父母は心配し、寂しがった。それは恐らく本心なのだろうが、元親にはどちらでも変わらなかった。赤の他人を扶養し、学校に行かせてくれる事には深く感謝したが、どうしてもそれ以上にはなれなかった。
美術系の学校で元親は熱心に学んだ。独自の感性と、そして人柄のおかげで元親はとある衣料品メーカーのデザイナーになる事が出来た。元親は何処に居ても誰と居ても明るく大いに笑った。そして彼は男だろうと女だろうと平等に愛した。どちらでも構わなかった。どうしようもない寂しさを埋める何かを求めて、元親は誰とでも打ち解け、誰とでも笑い、そして誰とでも寝た。繰り返すほどに深まる孤独に耐えながら、元親は生きていた。
次第に女というのが男より面倒だと感じ始めた元親は、ゲイではないのだが男を好んで愛するようになった。元親は何処に居ても大層モテた。相手から勝手に寄って来るのだ。しかし元親は満たされなかった。だから闇雲に人を愛した。
おかげで職場の人間関係がこじれた。元親は誰をも愛するが、愛されるほうはたまったものではなかった。何人かが元親は自分に本気なのだと主張し、殴り合い、そしてその責任は元親が取る事になった。元親も納得し、静かに会社を去ると、独自のブランドで服を売ろうとした。
元親の独自の感性は少々評価された。それ以上に、元親の人柄は大いに評価された。彼の作った小さな店は繁盛したが、それは恐らく元親を目当てに来た客が居たからだろう。元親はますます孤独を感じるようになった。どうにも悲しい、だがどうすればいいか判らない。
元親は毎晩のように色んな店を歩くようになったし、酒を飲み、誰とでも構わず寝た。ただし、これは遊びだと必ず前置きをするようにした。一夜限りの恋を渡り歩いた。誰かが隣に居てくれないと、暗い部屋は寒すぎて、上手く眠れないのだ。激しく愛し、愛されて、そしてぐったりと沈み込むようにして眠る日が続いた。心地良かった。
毛利元就の事は、元親も気付いていた。酷く痩せた小さな男で、とてもモテそうには見えなかった。実際、彼はいつも一人で飲んで、一人で帰った。何をしに来てるんだろうと、元親は呆れて、そして気に留め始めた。
元親はいつも声をかけ、そしてかけられる側だ。だが元就ときたら、声をかけて来て欲しくないという雰囲気を出していて、元親でさえ何故だか近寄り難かった。機嫌でも悪いのかと思ったが、どうやらそうでもない。いつもそういう雰囲気なのだ。時折、彼に声をかける奇特な人間が居たが、彼らはものの数分で諦めて帰って行った。
元親は元就という特殊な存在に酷く惹かれた。
だが明るい兄貴分を気取っている手前、皆の前では真面目に口説けない。茶化して笑ってそれで終わりにしなければ、後々面倒になる。なんとか、あいつとだけ話せないだろうか。元親は酷く他人の目を気にしていた。元就を連れて歩く事で、誰にどう思われるか、恐かった。
その日、店には元就と他に数人、大して仲の良くない客しか居なかった。元親はしめたと思った。これで、元就を連れて行ける。声をかけたが、返事はそっけない。元親はめげなかった。何度かのやりとりの後、一緒に帰る事があっけなく決まった。正直言って、元親は落胆した。彼は何か違うと思っていたのに、こんなに簡単に落ちるなら、大して変わらないじゃないか、と。
元就を連れて、部屋に帰る。誰かを抱いて眠るためだけの部屋だ。元就にシャワーを浴びてくるように言うと、彼は意外な事に「したくない」と言い出した。
「ここまで来ておいて、したくないはないだろうがよ」
元親は顔を顰めたが、元就はなおも首を振る。
「嫌なのだ、その、……どうにも駄目で」
もごもごと口ごもるのが気になって、問い詰めれば元就はのろのろと事情を話した。まだ男と付き合った事は一度きりで、しかもその初めてで散々な目にあったという。元親は思わず笑ってしまった。
「そりゃ、ご愁傷様だな」
「笑い事ではない。痛いわ、苦しいわ、辛いわ、あんなのはもうお断りだ」
「大丈夫、俺は大いにノーマルだから、苦しい事はしないよ」
そう優しく言ってやっても、元就は首を縦には振らなかった。
「じゃあ……じゃあこういうのはどうだ。二人とも素っ裸になって、」
「だから嫌だというのに」
「いや、そのまま一緒に寝るってのはどうだ。ただ寝るだけでいいんだ。本当に。その……一人じゃ、寝れないんだ。誰か、居てくれないと、寒くて」
「寒い?」
元就は怪訝な顔をした。その頃は初夏であったから、寒いという元親を不思議に思ったようだが、やがて何か納得したように頷くと、「寝るだけだぞ」と了承してくた。
元就の体は痩せていたが、意外と健康的だった。聞けば大学では体育系サークルに所属していたという。意外だな、と元親は笑って、裸の元就を抱くとベッドに潜る。
それから彼らは布団に潜り、裸のままで静かにつまらない話を繰り返した。それがどうしようもなくつまらない時間で、――けれど何故だか心地良くて、元親は笑った。元就の髪の毛や首筋、耳などを見ながら、元親はのらくらと身のない話を続け、そして元就はそれに付き合ってくれた。ふと気付くと元就は元親の腕の中で眠っていた。元親も時計を見て苦笑し、そして元就の背に顔をうずめて、目を閉じた。
何故だか、良く眠れそうな気がした。
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マスターははんべ と ひでよし
何故か戦国以外だとはんべが主導権握ってるイメージです
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Google Earthで秘密基地を探しています
HN:
メディアノクス
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非公開
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妄想と堕落
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浦崎谺叉琉と美流=イワフジがてんやわんや。
二人とも変態。永遠の中二病。
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