こそっと短文
にょたです
にょたってまで百合です
にょたです
にょたってまで百合です
元親の父親がそういう無責任な事を言い出すのは初めてではなかったが、流石に今回ばかりは元親も目を丸くした。
「再婚、した!?」
通っている女子高から帰宅すると、なにやらニコニコと気持ち悪い父が手招きをする。狭い家の茶の間に入ると、見知らぬ女性が座っていて、深々と頭を下げた。清楚で穏やかで物静かな、とにかく奔放な父とは似ても似つかない女性を紹介され、しかも「再婚した」と言われた。
「普通、再婚する、とか、したい、とかじゃねぇのかよ! なんで事後報告なんだよ!」
元親が怒鳴っても、
「いや、でもな元親、同居を始めてから言ったらもっと怒るだろう」
と笑うばかりで、話にもならない。
「……って、同居するのか!?」
「おう。家をな、買った。ここは来週に出るぞ。荷物を片付けておけ」
「ちょ……」
「それでな、彼女にも娘が居るんだ。同じぐらいの子だから、仲良くするんだぞ」
無責任にも、ほどがある!
元親は今すぐ父親を殴り殺したかったが、隣の女性が困った顔をしていたので出来なかった。
それに、そういう奴なのだ、親父は。
元親はただ溜息を吐くぐらいの事しか、出来なかった。
元親の父、長曾我部国親は、良く言えば企業家で投資家で、悪く言えば投機家でつまりばくち打ちだった。なんでもやるし、なんでも儲けようとするし、いつでも挫折して、しかしいつでも笑っていた。酒さえ有れば人生は幸せだと豪語し、お気楽そのものの生活を送っている。それでも元親を高校に行かせているのだから、大したものと言うよりはもはや呆れるしかない。
国親は酒と同じように女を愛した。いつでも部屋には女が居たし、いつでもわいわい楽しくやっていた。そんな環境で勉強など出来るはずも無く、元親の成績はいつも悪かった。それでも国親は気にもしなかった。「なーに、女には最後まで売るもんが残るからな」といつも笑っていた。死んじまえ、と元親はいつも言ったが、国親は「元気な娘を持って俺は嬉しいぜ」と笑うばかりだった。
尤も、元親としても国親の事が嫌いではないし、彼の無責任な言動は仕方ないものと判っている部分も有った。母親は妹だか弟だかを腹に入れている時に、ちょっとした転倒事故で死んでしまった。次の子供と一緒に居なくなってしまった。それで国親は少し刹那的な生き方を始めたが、一人の娘を溺愛はしているのだ。寂しさを埋めるように国親は酒と女に溺れたが、借金などはしないし、女に対して過剰に貢ぐ事は無かった。
ただいつも急に引っ越したり、いつも女が居たり、いつも男とは喧嘩をしていたので、そのたびに元親も巻き込まれただけだ。今回もその一つだろうと思っていたが、まさか再婚するとは思っていなかった。
なんだかんだ言って国親は元親の母を愛していて、再婚などという話は聞いた事も無かったのだ。急にその壁を越えてしまった国親と、そしてその妻となる女性に元親は興味を抱いた。何があのクソ親父をそうまでさせたのだろう、と。
そしてその娘とやらの存在も、少しだけ気になった。どうやら一つ屋根の下で暮らせというらしいが、上手くやっていけるのかどうか。せめて、真面目くさった面白くない女じゃなければいいが。
元親はそんな事を考えながら、また溜息を吐いた。
新しい家というのは一戸建てだった。庭付きで、ベランダが有る、幸せな家庭のシンボルとも言えるような、標準的な家だ。元親達はそれまでワンルームに住んでいたのと変わらないから、荷物を入れても部屋は埋まらなかった。
父と引越し作業をしながら、「あの人は手伝いに来ないのか」と尋ねると、彼は苦笑して「まぁ、無理はさせたくないからなあ」と答えた。俺ならいいってのかよ、と元親が毒づくと、「娘が手伝いに来るらしい」と言う。
しばらく親子で箪笥を運んだりして、疲れ果てて転がる。国親は「タバコ買って来る」と言ってコンビニに行った。元親はジュースを飲みながら休んでいると、ふいに人影が現れた。
「……げっ、委員長」
家の中に入って来たのは、2年の図書委員長である毛利元就だった。元親の最も苦手とする、真面目くさった面白くない女だ。眼鏡だし、髪はパサパサだし、可愛くない。なにより、面白くない。
くじ引きで図書委員になってしまった元親としては、元就は苦手な存在以外の何者でもない。その元就が、なにやら大きなビニール袋を持って、目の前にやって来る。
「……長曾我部、……そうか、……そなたの父と、母が……」
元就は少し驚いた顔をして、それから、深く頭を下げた。
「母が、迷惑をかけて、申し訳無い」
「え、あ、いや、……いやー! そんな事無ぇよ!」
元親は慌てて手を振り、笑って言う。
「こっちこそ、その、うちの馬鹿親父が、ほんと、迷惑かけたっつーか、いや、その、頭なんて下げないで、あの、お互い様っていうか、だから、その、あー、えーと、あの、えーと……こ、これからよろしくお願いします、えーと、あ、姉貴、になるのかな? あはは……」
元親は極めて明るく言ったが、元就は申し訳無さそうな顔をするばかりで、元親もやがては黙ってしまった。酷く気まずい時間で、元親は早速この生活から逃げ出したくなった。
と、国親が帰って来る。
「おっ、元就ちゃん、来てくれたのか」
元就ちゃん!? と元親はぎょっとしたが、国親は構わず元就の荷物を奪う。
「おお、お弁当持って来てくれたんだな。そうだ、腹も減ったし皆で食べよう! 弘ちゃんの料理は旨いんだぞー、元親!」
弘ちゃんって誰だよ。元親はやはりただ突っ立っている以外に何も出来なかった。
「あ、それでな、元親。俺と弘ちゃん、新婚旅行に行くから」
弘ちゃんって元就のお母さんの事かよ。
「3ヶ月ほど二人で仲良く暮らしてくれ、頼むな」
「……って、ま、待てよ、待てよ親父! な、なんだよそれ!」
元親はうろたえたが、国親は「いやぁやっぱり旨い」と弁当を食べるばかりで、元親はついに、「ぶっ殺すぞクソ親父!」と怒鳴り、「おうおう、殺してみろみろ」などと流されたのだった。
+++
国親は男なのに弘元は弘ちゃんな悲劇 ついでに興ちゃん
あとまーちゃん こじゅちゃん ひさちゃんにこたちゃん
カオス
「再婚、した!?」
通っている女子高から帰宅すると、なにやらニコニコと気持ち悪い父が手招きをする。狭い家の茶の間に入ると、見知らぬ女性が座っていて、深々と頭を下げた。清楚で穏やかで物静かな、とにかく奔放な父とは似ても似つかない女性を紹介され、しかも「再婚した」と言われた。
「普通、再婚する、とか、したい、とかじゃねぇのかよ! なんで事後報告なんだよ!」
元親が怒鳴っても、
「いや、でもな元親、同居を始めてから言ったらもっと怒るだろう」
と笑うばかりで、話にもならない。
「……って、同居するのか!?」
「おう。家をな、買った。ここは来週に出るぞ。荷物を片付けておけ」
「ちょ……」
「それでな、彼女にも娘が居るんだ。同じぐらいの子だから、仲良くするんだぞ」
無責任にも、ほどがある!
元親は今すぐ父親を殴り殺したかったが、隣の女性が困った顔をしていたので出来なかった。
それに、そういう奴なのだ、親父は。
元親はただ溜息を吐くぐらいの事しか、出来なかった。
元親の父、長曾我部国親は、良く言えば企業家で投資家で、悪く言えば投機家でつまりばくち打ちだった。なんでもやるし、なんでも儲けようとするし、いつでも挫折して、しかしいつでも笑っていた。酒さえ有れば人生は幸せだと豪語し、お気楽そのものの生活を送っている。それでも元親を高校に行かせているのだから、大したものと言うよりはもはや呆れるしかない。
国親は酒と同じように女を愛した。いつでも部屋には女が居たし、いつでもわいわい楽しくやっていた。そんな環境で勉強など出来るはずも無く、元親の成績はいつも悪かった。それでも国親は気にもしなかった。「なーに、女には最後まで売るもんが残るからな」といつも笑っていた。死んじまえ、と元親はいつも言ったが、国親は「元気な娘を持って俺は嬉しいぜ」と笑うばかりだった。
尤も、元親としても国親の事が嫌いではないし、彼の無責任な言動は仕方ないものと判っている部分も有った。母親は妹だか弟だかを腹に入れている時に、ちょっとした転倒事故で死んでしまった。次の子供と一緒に居なくなってしまった。それで国親は少し刹那的な生き方を始めたが、一人の娘を溺愛はしているのだ。寂しさを埋めるように国親は酒と女に溺れたが、借金などはしないし、女に対して過剰に貢ぐ事は無かった。
ただいつも急に引っ越したり、いつも女が居たり、いつも男とは喧嘩をしていたので、そのたびに元親も巻き込まれただけだ。今回もその一つだろうと思っていたが、まさか再婚するとは思っていなかった。
なんだかんだ言って国親は元親の母を愛していて、再婚などという話は聞いた事も無かったのだ。急にその壁を越えてしまった国親と、そしてその妻となる女性に元親は興味を抱いた。何があのクソ親父をそうまでさせたのだろう、と。
そしてその娘とやらの存在も、少しだけ気になった。どうやら一つ屋根の下で暮らせというらしいが、上手くやっていけるのかどうか。せめて、真面目くさった面白くない女じゃなければいいが。
元親はそんな事を考えながら、また溜息を吐いた。
新しい家というのは一戸建てだった。庭付きで、ベランダが有る、幸せな家庭のシンボルとも言えるような、標準的な家だ。元親達はそれまでワンルームに住んでいたのと変わらないから、荷物を入れても部屋は埋まらなかった。
父と引越し作業をしながら、「あの人は手伝いに来ないのか」と尋ねると、彼は苦笑して「まぁ、無理はさせたくないからなあ」と答えた。俺ならいいってのかよ、と元親が毒づくと、「娘が手伝いに来るらしい」と言う。
しばらく親子で箪笥を運んだりして、疲れ果てて転がる。国親は「タバコ買って来る」と言ってコンビニに行った。元親はジュースを飲みながら休んでいると、ふいに人影が現れた。
「……げっ、委員長」
家の中に入って来たのは、2年の図書委員長である毛利元就だった。元親の最も苦手とする、真面目くさった面白くない女だ。眼鏡だし、髪はパサパサだし、可愛くない。なにより、面白くない。
くじ引きで図書委員になってしまった元親としては、元就は苦手な存在以外の何者でもない。その元就が、なにやら大きなビニール袋を持って、目の前にやって来る。
「……長曾我部、……そうか、……そなたの父と、母が……」
元就は少し驚いた顔をして、それから、深く頭を下げた。
「母が、迷惑をかけて、申し訳無い」
「え、あ、いや、……いやー! そんな事無ぇよ!」
元親は慌てて手を振り、笑って言う。
「こっちこそ、その、うちの馬鹿親父が、ほんと、迷惑かけたっつーか、いや、その、頭なんて下げないで、あの、お互い様っていうか、だから、その、あー、えーと、あの、えーと……こ、これからよろしくお願いします、えーと、あ、姉貴、になるのかな? あはは……」
元親は極めて明るく言ったが、元就は申し訳無さそうな顔をするばかりで、元親もやがては黙ってしまった。酷く気まずい時間で、元親は早速この生活から逃げ出したくなった。
と、国親が帰って来る。
「おっ、元就ちゃん、来てくれたのか」
元就ちゃん!? と元親はぎょっとしたが、国親は構わず元就の荷物を奪う。
「おお、お弁当持って来てくれたんだな。そうだ、腹も減ったし皆で食べよう! 弘ちゃんの料理は旨いんだぞー、元親!」
弘ちゃんって誰だよ。元親はやはりただ突っ立っている以外に何も出来なかった。
「あ、それでな、元親。俺と弘ちゃん、新婚旅行に行くから」
弘ちゃんって元就のお母さんの事かよ。
「3ヶ月ほど二人で仲良く暮らしてくれ、頼むな」
「……って、ま、待てよ、待てよ親父! な、なんだよそれ!」
元親はうろたえたが、国親は「いやぁやっぱり旨い」と弁当を食べるばかりで、元親はついに、「ぶっ殺すぞクソ親父!」と怒鳴り、「おうおう、殺してみろみろ」などと流されたのだった。
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国親は男なのに弘元は弘ちゃんな悲劇 ついでに興ちゃん
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