後でログ漁る時に見やすいように、
タイトルはタイトルにしようかなと思ったのですが
よく考えたら仮の通しタイトルしか付けてないわけで、
こんな事になってしまった
という事でヒモチカの5
勢いで書いたんでちょっと読みにくいかもしれません
タイトルはタイトルにしようかなと思ったのですが
よく考えたら仮の通しタイトルしか付けてないわけで、
こんな事になってしまった
という事でヒモチカの5
勢いで書いたんでちょっと読みにくいかもしれません
「……は?」
政宗にそう言われても、元親は全く見当が付かない顔で、素っ頓狂な声を上げる事しか出来なかった。その様子に政宗は呆れたように溜息を吐いて、「気付いてないわけ?」と言う。
「だってセックスどころか、キスもしてないんだろ? 恋人なんて言って、プラトニックにも程が有んだろ。おまけにいきなり200万の金貸してくれ、それから音沙汰無し。詐欺にしたってデキ過ぎてるぜ。今時そんなのに騙されるなんて、チカどんだけ純真なんだよっていうレベル」
「い、いや、まさかそんな……、そんなわけねぇよ。元就はすごく良い奴だし、初心な……違うよ、騙したりなんて、そんな……」
元親は何を言われているのか理解して、なんとか反論しようとした。しかし決定的な論拠など一つも出なかった。当たり前だ。
元親は未だに、元就の住所も何も知らないのだから。
「まぁお前がそう思うのは勝手だし、本物の詐欺師ってのは、騙されたと思わせないって言うからな。お前みたいに」
「お、俺?」
「そうだよ。誰にでも愛想振り撒いて、誰にでも愛してるって言って、まるで一つの恋が終わったみたいにしてさ、吸い上げちゃあ捨ててたんだろ? それともお前、そんなつもりなしでやってんの? だとしたらそりゃ、それですごい話だけどよ」
さりげなく随分とけなされた気がしたが、元親はそれでも信じられなかった。
「だって、だって本当に初心な奴で、何にも知らなくて、俺の話も聞いてくれて……」
「自分の話は一つもしなかったんだろ? 恋人なんて言ってても、そいつの事何にも判らないんじゃないか。おかしいだろ。それにお前も百戦錬磨の人たらしとは言っても、ネットからの付き合いはした事が無いんだし。すんげぇやり手に騙されたんじゃねえ? 初心なんだって、そういう振りをしてただけで……」
「も、元就は、そんな奴じゃない!」
「へぇ。自分は「そんな奴」だって事ぐらいは判ってるのか?」
「……」
元親は顔を顰めて、俯く。元就の事を考えた。いつでも何か怖がっているような、控えめなあの態度が、演技だったというのだろうか? 食事も嬉しそうに食べていた。何も判らない様子だった。それを全て演じていたのだろうか。
ふと自分の事を考える。どんな資産家相手にも、何も知らないふりを通してはいなかったか。知っている話をされても、「へぇそうなのか」と初めて聞いたような振りをしなかったか。母性本能をくすぐるために、マナーも知らないようなふりをしなかったか。
身に覚えが有り過ぎて、元親は深い溜息を吐いた。いつもやっている事を、やり返されたのかもしれない、とも思えた。
しかし、それでも。
「俺の事は、……いいんだよ、騙されたんならそりゃ、仕方ないけど……でも、本当に心配なんだ。本当は、……本当は元就、今頃辛い思いをしてるんじゃないかと思って……」
どうでもいい。騙されたんならそれでいい。笑われても良い。馬鹿にされてもいい。ただ、無事だという事を、知りたい。
そう嘆く元親を見て、政宗は大きな溜息を吐いて「お前、重症なのな」と呟いた。
元親を突如襲った事件は、それだけに留まらなかった。あるいは、既に兆候は表れていたのかも知れないが、元親がそれに気付いていなかっただけかもしれない。いずれにしろ、元親は元就を失ったショックに加えて、新たな衝撃に襲われる事になった。
元就に会えない寂しさを埋めようと、他の相手にいくつか連絡をし、そのいくつかに断られた。それ自体は気にするべき事でも無かったのだが、幸か不幸か、元親はデート先で、彼らの姿を見つけた。彼らは、誰か他の相手と談笑していた。元親よりいくつか若そうな相手だった。
「我々が君に求めているものはいくつか有るが、その最たるものが何か判るかね、長曾我部君。それは時間だよ。いくら金をはたいても、決して手に入らない物。若さという美しさだ。君もそれをよく理解しておいた方が良い……」
いつか、付き合っていた紳士がそんな事を言っていたのを思い出す。それだけではないと、彼も言っていた。しかしそれがかなりの力を持っているとも言っていた。若さ。若いという事。元親は愕然とした。
自分はもう、若くないのだ。
元親の魅力は桁違いであったから、若く無くなったという理由で全てから見放される事は無い。それでも、自分の価値がいつの間にか下がった事は理解出来た。鏡を見ても、精悍な顔付きや肉体美に衰えは一切無い。だが確実に歳をとっている。いずれ筋肉は弛み、美味い食事は脂肪となって体内に留まり、皺が顔を浸食し始め、虫食いのようにシミが浮き出るようになる。元親はそう考えてブンブン頭を振った。考えるだけで寒気がする。
だがそれは事実だ。自分の体はいつか衰える。いつか、誰からも見向きされなくなる。耐え難い事で、そして有り得ない事だったが、それが事実だ。金だけで人を買う哀れな老人達を元親は知っている。彼らが決して愛されない事を知っている。その虚しさを自分が味わう番が来るのだ、と考えると、恐ろしくてたまらなかった。
しかしだからと言って、どうすればいいのか。生き方を変えるには、歳を重ね過ぎた。今更時給1000円にも満たない仕事など出来ようはずもなく、またそれ以上の給金を手に入れるほどの価値も、今の元親には無い。
どうすればいいのか、判らない。問題だけはハッキリ見えているのに、答えが何処にもない。
元親は途方に暮れていた。
そんなある日の事だ。09Sからメールが届いたのは。
その時元親は前のめりになる勢いでパソコンに引っ付いて、メールを読んだ。
「長らく御連絡出来ず、申し訳有りません。一度お会いして、現状の事等詳しくお話し出来たらと思います。つきましては先日お世話になった、郊外のバーで、土曜の20時に待ち合わせ出来ますでしょうか? 御都合付きますようなら、お返事を下さい。09S」
元親はすぐに返事をした。無論、どんな予定を蹴ってでも、元就に会うつもりだった。
土曜の20時、元親は件のバーに向かった。気の合うマスターとお喋りをしながら待っていたが、30分経っても、元就は現れない。流石にそわそわしていると、携帯にメールが入る。09Sからだ。
「申し訳有りません。こちらの交通の都合で遅れています。本当に申し訳有りませんが、場所を変更してもよろしいでしょうか? 駅前の公園に、21時には着きます」
元親は少し笑って、マスターに事情を話すと、バーを出た。駅前の公園までは歩いてほんの少しだった。その辺りは街灯も殆ど無く、人通りも無い。薄暗い公園のベンチに座り、元親は元就を待ちわびた。時折人が通ったが、どれも元就ではなく、帰り道を急ぐサラリーマンやOLの類だった。
元親は携帯を開いたり閉じたりしながら、地面を見つめて、ただ考えていた。元就に何が有ったのか、何を説明されるのか。そしてそれを受けて、自分はどうやって彼を助けてやるべきか。有ってくれるというのだから、自分は騙されたわけではないのだろう。ならば困っているに違いない、なんとか手を差し伸べてやらなければ――。
そんな事を考えていると、ふいに側に誰かが来た。顔を上げると、見慣れない男が立っている。
「よう」
男に声をかけられて、元親は眉を寄せた。見知らぬ男だ。どんなに記憶をたどっても、会った事が有るとは思えない。
「あの……えっと……」
「初めまして。09Sです……ってか」
男は僅かに顔を歪ませて、元親を見下ろしている。両手はポケットに入っていたが、それが妙に膨らんでいるものだから、元親は嫌な予感を覚えた。何が起こっていのか判らない。元親は何も言えずに、彼を見上げる。
「……お前か。元就の事をそそのかしたクズ野郎は」
「……え、……っと……」
「お前のおかげで元就がとんでもない事になっちまった。元就に貢がせて何を買ったんだ? あんなひきこもりのニート捕まえてよ。さぞかし騙しやすいカモだったろうよ、元就は素直ないい子だからな……それをいいようにしたんだろ、クズのホモ野郎、アイツに何しやがったんだ? あぁ?」
「あ、あの……あんた、誰……」
「俺は元就の兄だ」
「お兄さん、」
「で、どう落とし前付けてくれるんだ? えぇ? 元就が貢いだ金を返せよ、なあ。痛いの嫌だろ? なあ? 警察になんか言わねえから。今すぐ俺がテメェの事死ぬほど後悔させてやっから。ああそうだ金なんてどうでもいいや、とりあえず俺の気が済むまで殴られろよ、それでいいよな? なぁ?」
元就の兄は何故だかキレていて、元親は訳が判らなかった。ただこの状況がとてつもなくまずい事だけは理解して、元親は咄嗟に逃げようとした。しかし相手の方が早い。服を掴まれて、引き戻される。
「何処行くんだよ」
「いや、あの……お兄さん、何か誤解が有るみたいで……」
「誤解だぁ!? 何が誤解だ! お前のせいで元就が借金したんだろうが! お前に貢いだんだろぉが! 他に何が有るってんだよ、ホモ野郎! それとも何か、俺が知らないだけでもっと何かしてんのか!? まさかテメェ俺の弟のケツにぶちこんだのか!? ああ!?」
ますますキレられて、元親はどうしていいのか判らなくなった。何故か「そんなケツにぶちこむとか、大声で言っちゃあいけないですよ」とそんな事を言ってしまって、元就の兄はどんどんブチ切れて行く。
「ああ? じゃあなんて言えば満足なんだ? 元就にテメェの××を打ちこんで×××××をガツガツに掘ったとでも言えばいいのか!? もう我慢ならねえ、殺す気は無ぇけどテメェの×××をブチ切って食わせてやらなけりゃ気が済まねえ!!!!」
どうしてそこまでキレられたのか判らないまま、元親は咄嗟に逃げた。やはり逃げ切れなかった。今度は背中に飛びつかれ、地面に押し倒される。眼の前に元就の兄の顔。しかし全く似ていなくて、元親は詐欺に合ったのではなく、美人局に合ったのではないかと思ったほどだった。
彼の体格は元就に近く、元親が本気を出せばどうにでもなる相手ではあった。だが暴力沙汰は好かない。元親は何とか話しあいで解決しようとしたが、彼は元親が何か言う度にますますキレた。
おまけに兄とやらがポケットからスタンガンを取り出したものだから、これはもう本気でなんとかしなければならない、と元親が覚悟した時だった。
「止めろっ!」
側で声がした。二人してはっと見ると、すぐ側に元就が立っていた。
「元就、お前どうしてここに……!」
元就の兄が狼狽したが、元就は怒りの表情のまま、怒鳴る。
「元親から離れろっ! 我を……我を何処まで馬鹿にすれば気が済むのか! 離れろっ!」
元就は今までにないほどの大声を張り上げて、兄の方も困惑している様子だった。
「元就、いいか、俺はお前の為にこいつを、」
「うるさい黙れっ!!」
そして元就は兄に飛びかかり、そのおかげで解放された元親は茫然とその後の展開を見守る事になった。元就はニートであるからして力も無く、兄は兄なわけで元就に本気が出せようはずもなく、結局、ロクに痛くもなさそうなパンチをやまほど食らい、引っ掻かれて地味に痛い事をされた挙句に、持っていたスタンガンを奪われて、兄がバチバチ言わされてしまった。
流石にぐったりした兄を放り出して、元就は怒った顔と、バサバサに乱れた髪のままで、元親を引っ張って走り出した。元親は色んな事が怖くて何も言えないまま、元就に引っ張られていた。
+++
何がなんだか。という状況。2作連続で兄上のガラが悪い。
兄上の伏字は恥ずかしいからした事です 文字数から察して下さい
政宗にそう言われても、元親は全く見当が付かない顔で、素っ頓狂な声を上げる事しか出来なかった。その様子に政宗は呆れたように溜息を吐いて、「気付いてないわけ?」と言う。
「だってセックスどころか、キスもしてないんだろ? 恋人なんて言って、プラトニックにも程が有んだろ。おまけにいきなり200万の金貸してくれ、それから音沙汰無し。詐欺にしたってデキ過ぎてるぜ。今時そんなのに騙されるなんて、チカどんだけ純真なんだよっていうレベル」
「い、いや、まさかそんな……、そんなわけねぇよ。元就はすごく良い奴だし、初心な……違うよ、騙したりなんて、そんな……」
元親は何を言われているのか理解して、なんとか反論しようとした。しかし決定的な論拠など一つも出なかった。当たり前だ。
元親は未だに、元就の住所も何も知らないのだから。
「まぁお前がそう思うのは勝手だし、本物の詐欺師ってのは、騙されたと思わせないって言うからな。お前みたいに」
「お、俺?」
「そうだよ。誰にでも愛想振り撒いて、誰にでも愛してるって言って、まるで一つの恋が終わったみたいにしてさ、吸い上げちゃあ捨ててたんだろ? それともお前、そんなつもりなしでやってんの? だとしたらそりゃ、それですごい話だけどよ」
さりげなく随分とけなされた気がしたが、元親はそれでも信じられなかった。
「だって、だって本当に初心な奴で、何にも知らなくて、俺の話も聞いてくれて……」
「自分の話は一つもしなかったんだろ? 恋人なんて言ってても、そいつの事何にも判らないんじゃないか。おかしいだろ。それにお前も百戦錬磨の人たらしとは言っても、ネットからの付き合いはした事が無いんだし。すんげぇやり手に騙されたんじゃねえ? 初心なんだって、そういう振りをしてただけで……」
「も、元就は、そんな奴じゃない!」
「へぇ。自分は「そんな奴」だって事ぐらいは判ってるのか?」
「……」
元親は顔を顰めて、俯く。元就の事を考えた。いつでも何か怖がっているような、控えめなあの態度が、演技だったというのだろうか? 食事も嬉しそうに食べていた。何も判らない様子だった。それを全て演じていたのだろうか。
ふと自分の事を考える。どんな資産家相手にも、何も知らないふりを通してはいなかったか。知っている話をされても、「へぇそうなのか」と初めて聞いたような振りをしなかったか。母性本能をくすぐるために、マナーも知らないようなふりをしなかったか。
身に覚えが有り過ぎて、元親は深い溜息を吐いた。いつもやっている事を、やり返されたのかもしれない、とも思えた。
しかし、それでも。
「俺の事は、……いいんだよ、騙されたんならそりゃ、仕方ないけど……でも、本当に心配なんだ。本当は、……本当は元就、今頃辛い思いをしてるんじゃないかと思って……」
どうでもいい。騙されたんならそれでいい。笑われても良い。馬鹿にされてもいい。ただ、無事だという事を、知りたい。
そう嘆く元親を見て、政宗は大きな溜息を吐いて「お前、重症なのな」と呟いた。
元親を突如襲った事件は、それだけに留まらなかった。あるいは、既に兆候は表れていたのかも知れないが、元親がそれに気付いていなかっただけかもしれない。いずれにしろ、元親は元就を失ったショックに加えて、新たな衝撃に襲われる事になった。
元就に会えない寂しさを埋めようと、他の相手にいくつか連絡をし、そのいくつかに断られた。それ自体は気にするべき事でも無かったのだが、幸か不幸か、元親はデート先で、彼らの姿を見つけた。彼らは、誰か他の相手と談笑していた。元親よりいくつか若そうな相手だった。
「我々が君に求めているものはいくつか有るが、その最たるものが何か判るかね、長曾我部君。それは時間だよ。いくら金をはたいても、決して手に入らない物。若さという美しさだ。君もそれをよく理解しておいた方が良い……」
いつか、付き合っていた紳士がそんな事を言っていたのを思い出す。それだけではないと、彼も言っていた。しかしそれがかなりの力を持っているとも言っていた。若さ。若いという事。元親は愕然とした。
自分はもう、若くないのだ。
元親の魅力は桁違いであったから、若く無くなったという理由で全てから見放される事は無い。それでも、自分の価値がいつの間にか下がった事は理解出来た。鏡を見ても、精悍な顔付きや肉体美に衰えは一切無い。だが確実に歳をとっている。いずれ筋肉は弛み、美味い食事は脂肪となって体内に留まり、皺が顔を浸食し始め、虫食いのようにシミが浮き出るようになる。元親はそう考えてブンブン頭を振った。考えるだけで寒気がする。
だがそれは事実だ。自分の体はいつか衰える。いつか、誰からも見向きされなくなる。耐え難い事で、そして有り得ない事だったが、それが事実だ。金だけで人を買う哀れな老人達を元親は知っている。彼らが決して愛されない事を知っている。その虚しさを自分が味わう番が来るのだ、と考えると、恐ろしくてたまらなかった。
しかしだからと言って、どうすればいいのか。生き方を変えるには、歳を重ね過ぎた。今更時給1000円にも満たない仕事など出来ようはずもなく、またそれ以上の給金を手に入れるほどの価値も、今の元親には無い。
どうすればいいのか、判らない。問題だけはハッキリ見えているのに、答えが何処にもない。
元親は途方に暮れていた。
そんなある日の事だ。09Sからメールが届いたのは。
その時元親は前のめりになる勢いでパソコンに引っ付いて、メールを読んだ。
「長らく御連絡出来ず、申し訳有りません。一度お会いして、現状の事等詳しくお話し出来たらと思います。つきましては先日お世話になった、郊外のバーで、土曜の20時に待ち合わせ出来ますでしょうか? 御都合付きますようなら、お返事を下さい。09S」
元親はすぐに返事をした。無論、どんな予定を蹴ってでも、元就に会うつもりだった。
土曜の20時、元親は件のバーに向かった。気の合うマスターとお喋りをしながら待っていたが、30分経っても、元就は現れない。流石にそわそわしていると、携帯にメールが入る。09Sからだ。
「申し訳有りません。こちらの交通の都合で遅れています。本当に申し訳有りませんが、場所を変更してもよろしいでしょうか? 駅前の公園に、21時には着きます」
元親は少し笑って、マスターに事情を話すと、バーを出た。駅前の公園までは歩いてほんの少しだった。その辺りは街灯も殆ど無く、人通りも無い。薄暗い公園のベンチに座り、元親は元就を待ちわびた。時折人が通ったが、どれも元就ではなく、帰り道を急ぐサラリーマンやOLの類だった。
元親は携帯を開いたり閉じたりしながら、地面を見つめて、ただ考えていた。元就に何が有ったのか、何を説明されるのか。そしてそれを受けて、自分はどうやって彼を助けてやるべきか。有ってくれるというのだから、自分は騙されたわけではないのだろう。ならば困っているに違いない、なんとか手を差し伸べてやらなければ――。
そんな事を考えていると、ふいに側に誰かが来た。顔を上げると、見慣れない男が立っている。
「よう」
男に声をかけられて、元親は眉を寄せた。見知らぬ男だ。どんなに記憶をたどっても、会った事が有るとは思えない。
「あの……えっと……」
「初めまして。09Sです……ってか」
男は僅かに顔を歪ませて、元親を見下ろしている。両手はポケットに入っていたが、それが妙に膨らんでいるものだから、元親は嫌な予感を覚えた。何が起こっていのか判らない。元親は何も言えずに、彼を見上げる。
「……お前か。元就の事をそそのかしたクズ野郎は」
「……え、……っと……」
「お前のおかげで元就がとんでもない事になっちまった。元就に貢がせて何を買ったんだ? あんなひきこもりのニート捕まえてよ。さぞかし騙しやすいカモだったろうよ、元就は素直ないい子だからな……それをいいようにしたんだろ、クズのホモ野郎、アイツに何しやがったんだ? あぁ?」
「あ、あの……あんた、誰……」
「俺は元就の兄だ」
「お兄さん、」
「で、どう落とし前付けてくれるんだ? えぇ? 元就が貢いだ金を返せよ、なあ。痛いの嫌だろ? なあ? 警察になんか言わねえから。今すぐ俺がテメェの事死ぬほど後悔させてやっから。ああそうだ金なんてどうでもいいや、とりあえず俺の気が済むまで殴られろよ、それでいいよな? なぁ?」
元就の兄は何故だかキレていて、元親は訳が判らなかった。ただこの状況がとてつもなくまずい事だけは理解して、元親は咄嗟に逃げようとした。しかし相手の方が早い。服を掴まれて、引き戻される。
「何処行くんだよ」
「いや、あの……お兄さん、何か誤解が有るみたいで……」
「誤解だぁ!? 何が誤解だ! お前のせいで元就が借金したんだろうが! お前に貢いだんだろぉが! 他に何が有るってんだよ、ホモ野郎! それとも何か、俺が知らないだけでもっと何かしてんのか!? まさかテメェ俺の弟のケツにぶちこんだのか!? ああ!?」
ますますキレられて、元親はどうしていいのか判らなくなった。何故か「そんなケツにぶちこむとか、大声で言っちゃあいけないですよ」とそんな事を言ってしまって、元就の兄はどんどんブチ切れて行く。
「ああ? じゃあなんて言えば満足なんだ? 元就にテメェの××を打ちこんで×××××をガツガツに掘ったとでも言えばいいのか!? もう我慢ならねえ、殺す気は無ぇけどテメェの×××をブチ切って食わせてやらなけりゃ気が済まねえ!!!!」
どうしてそこまでキレられたのか判らないまま、元親は咄嗟に逃げた。やはり逃げ切れなかった。今度は背中に飛びつかれ、地面に押し倒される。眼の前に元就の兄の顔。しかし全く似ていなくて、元親は詐欺に合ったのではなく、美人局に合ったのではないかと思ったほどだった。
彼の体格は元就に近く、元親が本気を出せばどうにでもなる相手ではあった。だが暴力沙汰は好かない。元親は何とか話しあいで解決しようとしたが、彼は元親が何か言う度にますますキレた。
おまけに兄とやらがポケットからスタンガンを取り出したものだから、これはもう本気でなんとかしなければならない、と元親が覚悟した時だった。
「止めろっ!」
側で声がした。二人してはっと見ると、すぐ側に元就が立っていた。
「元就、お前どうしてここに……!」
元就の兄が狼狽したが、元就は怒りの表情のまま、怒鳴る。
「元親から離れろっ! 我を……我を何処まで馬鹿にすれば気が済むのか! 離れろっ!」
元就は今までにないほどの大声を張り上げて、兄の方も困惑している様子だった。
「元就、いいか、俺はお前の為にこいつを、」
「うるさい黙れっ!!」
そして元就は兄に飛びかかり、そのおかげで解放された元親は茫然とその後の展開を見守る事になった。元就はニートであるからして力も無く、兄は兄なわけで元就に本気が出せようはずもなく、結局、ロクに痛くもなさそうなパンチをやまほど食らい、引っ掻かれて地味に痛い事をされた挙句に、持っていたスタンガンを奪われて、兄がバチバチ言わされてしまった。
流石にぐったりした兄を放り出して、元就は怒った顔と、バサバサに乱れた髪のままで、元親を引っ張って走り出した。元親は色んな事が怖くて何も言えないまま、元就に引っ張られていた。
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兄上の伏字は恥ずかしいからした事です 文字数から察して下さい
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