最近一話だけ書いて書き捨ててるケースが多いですが
これもその一つになりそうです。現パラなチカナリ短文。
これもその一つになりそうです。現パラなチカナリ短文。
誰だって幸せになる権利を持っていると、どこかの誰かが言っていた気がするが、その言葉の意味を元親は理解出来ない。
そもそも権利とはなんだ、と考えれば、それは保障されるものではなく、与えられるものでもなく、自らもぎ取るものであると元親は認識している。
したがって「誰だって幸せになる権利を持っている」という言葉が一体どういう場面で使うべきものなのか元親には理解出来ない。幸せはもぎ取るものだ。権利ももぎ取るものだ。ならばこの極々当然の言葉をいかにして掲げるべきなのか、元親は首を傾げるしかない。
だが元親にはこの言葉が出来た背景ぐらいは理解出来たし、この言葉が表したいところぐらいは判った。つまり誰だって健やかに穏やかに愛に満ちた安寧の日々を送りたい事に変わりは無い、と言いたいのだ。
タバコと酒と博打が趣味の親父がグダグダうるさい家で、献身的かと思えば息子の前で平然と不倫相手と姦通するような母と一緒に暮らす事態は誰だって避けたいに決まっている。たまに両親が揃えば獣の如く威嚇し叫びあって暴れるこの家の中に、元親の居場所が有るはずが無い。だから元親は黙って家を出ると、あてもなく翌朝までぶらぶらするのだった。
よその家はどうなんだろうか、という途方も無く無意味なことを考えて、元親は空を見上げる。そう例えば自分がホームドラマに出て来るような、優しくて格好良くて、家族思いな父親の下に生まれていたら。例えば柔らかくて美人で、愛情溢れる母親の下に生まれていたなら。
借金なんかマイカーローンとマイホームローンだけで十分だ、欲を言うなら教育ローンもまぁ我慢する。居酒屋のツケが100万もたまっているような、性懲りも無くパチ屋で夫婦仲良く浪費をするような、そんな親でなければそれで十分だ。
ましてや息子の部屋まで漁って、バイトで貯めた金を平気で取っていくような、それを問い質したら、「てめぇは俺の子だ、だからお前のモンは俺のモンだ」と怒鳴り散らすような父親でなければ。
上を見たらきりが無い。元親はそういう言葉を知っていたから、きっとそうでない両親の下に生まれたとしても、自分は不満だらけなんだろうな、とそんな風に考えて、そして苦笑した。
だからなんだというのだろう。所詮人生は誰にもやり直せない。あれはどんなにつまらない連中だろうと、確かに俺という命を作り出したんだ。ふざけやがって。
元親は深くため息を吐いて、町並みを歩き続ける。当てはなかった。
親友である伊達政宗の家にかけこむのは良い手だったが、あまりそればかりするのも良くない気がした。実際彼のお守りである片倉小十郎は元親が来ると良い顔はしない。政宗曰く、悪友だと思われてるだけだよ、気にすんな、だそうだが、嫌われているのに気分が良い人間など居るはずがない。
元親は諦めて近くの公園に入った。もう夕方も過ぎて、子供は親に連れられて帰っているようだ。元親は子供の頃から親が迎えに来た事などなかったので、それがどういうものなのか知らない。元親はベンチに腰掛けて、ぼうっと夕暮れの空を見上げる。
高校には行けないだろうな、……いやバイトしてでも行くべきか。でもあの家に一秒だって居たくない。そのためにはなんとかして家を出ないと。
元親はそう考えてから首を振る。いや安易な考えで飛び出したらそれこそ連中の二の舞だ。なんとかしてまっとうな人生を送るんだ。
元親がそんな事を考えていると、
「長曾我部ではないか」
と声がした。振り返ると、眼鏡をかけた小柄な男が立っている。スーツを着た彼を元親は良く良く見て、それから
「もーり先生」
とその名を呼んだ。「もーりではない、毛利だ」と毛利元就は返しながら、辺りを見渡す。
「どうした、お前ほど賑やかな人間が一人で。早く家に帰れ、日が暮れるぞ」
「ん……」
元親は曖昧に返事をして頷いたが、動かない。帰ったところでどうせ修羅場は続いているし、自分の居場所は無いのだと判っている。帰るような理由は被保護者であるという事以外に無かった。
まして彼らは元親が死ねばそれはそれで喜ぶだろう。何しろ教育費がかからなくなるのだ。今でもろくに払っていないくせに、そういう事ばかり気にかける浅はかな両親が元親は好きになれなかった。
「どうした? ……何か帰れない事情でも有るのか」
元就が尋ねる。元親は「まぁ」とまた曖昧な返事をしたが、元就は急に、
「ならば我の家に来るがよい。夜は寒い。風邪を引いてはいかん」
と言うと、すたすた歩き出してしまった。
「……ちょ、もーり先生!」
元親は慌てて声を上げた。元就は怪訝そうな顔で元親に振り返ると、「どうした、来ないのか」と尋ねる。
「や、あの、……いいのかよ」
「構わぬぞ。我はどうせ一人暮らしだし、部屋も余っておるから。もしお前がそうしたいなら、我に着いて来ればいい。別に無理に来いとは言わぬ。誘拐と思われては困るからな」
元就はそう言うとまた歩き出した。その後を慌てて追いながら、元親は妙な気持ちになった。
皆心配しても、同情しても、手は差し伸べてくれないのに、この人はなんであっさり着いて来いなんて言うんだろう。
少々不気味ではあったが、元親にとってその事実は喜ばしいことでもあった。だから元親は静かに元就の小さな背中を追って歩いた。
+++++
中学2年生元親と理科教師元就
と言ったら試験管プレイですかと聞かれたんですが
某ドラマCDのせいでゲラゲラ笑っちゃうので試験管は無理です
そういえば昔読んだお話で
三角フラスコにうなぎ入れてそれをつっこんだら下からあぶると
うなぎが逃げようと上に登って来て中に入るとか言ってましたが
そこまでする意味が有るのか私には良く判らない
元就先生はその昔英語教師のザビー様に虐待から救っていただいたとか
だから今度は自分が不幸な子供を救う番と決意しているとか
そういう設定
そもそも権利とはなんだ、と考えれば、それは保障されるものではなく、与えられるものでもなく、自らもぎ取るものであると元親は認識している。
したがって「誰だって幸せになる権利を持っている」という言葉が一体どういう場面で使うべきものなのか元親には理解出来ない。幸せはもぎ取るものだ。権利ももぎ取るものだ。ならばこの極々当然の言葉をいかにして掲げるべきなのか、元親は首を傾げるしかない。
だが元親にはこの言葉が出来た背景ぐらいは理解出来たし、この言葉が表したいところぐらいは判った。つまり誰だって健やかに穏やかに愛に満ちた安寧の日々を送りたい事に変わりは無い、と言いたいのだ。
タバコと酒と博打が趣味の親父がグダグダうるさい家で、献身的かと思えば息子の前で平然と不倫相手と姦通するような母と一緒に暮らす事態は誰だって避けたいに決まっている。たまに両親が揃えば獣の如く威嚇し叫びあって暴れるこの家の中に、元親の居場所が有るはずが無い。だから元親は黙って家を出ると、あてもなく翌朝までぶらぶらするのだった。
よその家はどうなんだろうか、という途方も無く無意味なことを考えて、元親は空を見上げる。そう例えば自分がホームドラマに出て来るような、優しくて格好良くて、家族思いな父親の下に生まれていたら。例えば柔らかくて美人で、愛情溢れる母親の下に生まれていたなら。
借金なんかマイカーローンとマイホームローンだけで十分だ、欲を言うなら教育ローンもまぁ我慢する。居酒屋のツケが100万もたまっているような、性懲りも無くパチ屋で夫婦仲良く浪費をするような、そんな親でなければそれで十分だ。
ましてや息子の部屋まで漁って、バイトで貯めた金を平気で取っていくような、それを問い質したら、「てめぇは俺の子だ、だからお前のモンは俺のモンだ」と怒鳴り散らすような父親でなければ。
上を見たらきりが無い。元親はそういう言葉を知っていたから、きっとそうでない両親の下に生まれたとしても、自分は不満だらけなんだろうな、とそんな風に考えて、そして苦笑した。
だからなんだというのだろう。所詮人生は誰にもやり直せない。あれはどんなにつまらない連中だろうと、確かに俺という命を作り出したんだ。ふざけやがって。
元親は深くため息を吐いて、町並みを歩き続ける。当てはなかった。
親友である伊達政宗の家にかけこむのは良い手だったが、あまりそればかりするのも良くない気がした。実際彼のお守りである片倉小十郎は元親が来ると良い顔はしない。政宗曰く、悪友だと思われてるだけだよ、気にすんな、だそうだが、嫌われているのに気分が良い人間など居るはずがない。
元親は諦めて近くの公園に入った。もう夕方も過ぎて、子供は親に連れられて帰っているようだ。元親は子供の頃から親が迎えに来た事などなかったので、それがどういうものなのか知らない。元親はベンチに腰掛けて、ぼうっと夕暮れの空を見上げる。
高校には行けないだろうな、……いやバイトしてでも行くべきか。でもあの家に一秒だって居たくない。そのためにはなんとかして家を出ないと。
元親はそう考えてから首を振る。いや安易な考えで飛び出したらそれこそ連中の二の舞だ。なんとかしてまっとうな人生を送るんだ。
元親がそんな事を考えていると、
「長曾我部ではないか」
と声がした。振り返ると、眼鏡をかけた小柄な男が立っている。スーツを着た彼を元親は良く良く見て、それから
「もーり先生」
とその名を呼んだ。「もーりではない、毛利だ」と毛利元就は返しながら、辺りを見渡す。
「どうした、お前ほど賑やかな人間が一人で。早く家に帰れ、日が暮れるぞ」
「ん……」
元親は曖昧に返事をして頷いたが、動かない。帰ったところでどうせ修羅場は続いているし、自分の居場所は無いのだと判っている。帰るような理由は被保護者であるという事以外に無かった。
まして彼らは元親が死ねばそれはそれで喜ぶだろう。何しろ教育費がかからなくなるのだ。今でもろくに払っていないくせに、そういう事ばかり気にかける浅はかな両親が元親は好きになれなかった。
「どうした? ……何か帰れない事情でも有るのか」
元就が尋ねる。元親は「まぁ」とまた曖昧な返事をしたが、元就は急に、
「ならば我の家に来るがよい。夜は寒い。風邪を引いてはいかん」
と言うと、すたすた歩き出してしまった。
「……ちょ、もーり先生!」
元親は慌てて声を上げた。元就は怪訝そうな顔で元親に振り返ると、「どうした、来ないのか」と尋ねる。
「や、あの、……いいのかよ」
「構わぬぞ。我はどうせ一人暮らしだし、部屋も余っておるから。もしお前がそうしたいなら、我に着いて来ればいい。別に無理に来いとは言わぬ。誘拐と思われては困るからな」
元就はそう言うとまた歩き出した。その後を慌てて追いながら、元親は妙な気持ちになった。
皆心配しても、同情しても、手は差し伸べてくれないのに、この人はなんであっさり着いて来いなんて言うんだろう。
少々不気味ではあったが、元親にとってその事実は喜ばしいことでもあった。だから元親は静かに元就の小さな背中を追って歩いた。
+++++
中学2年生元親と理科教師元就
と言ったら試験管プレイですかと聞かれたんですが
某ドラマCDのせいでゲラゲラ笑っちゃうので試験管は無理です
そういえば昔読んだお話で
三角フラスコにうなぎ入れてそれをつっこんだら下からあぶると
うなぎが逃げようと上に登って来て中に入るとか言ってましたが
そこまでする意味が有るのか私には良く判らない
元就先生はその昔英語教師のザビー様に虐待から救っていただいたとか
だから今度は自分が不幸な子供を救う番と決意しているとか
そういう設定
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