拍手でリクエストを頂いたので、ちらりと思い浮かんだ
BADEDのBADEDな短文です……
続きというよりは完全なる不幸なエンドなので
そういうのが苦手な方は読まない方が良いかな、と……
BADEDのBADEDな短文です……
続きというよりは完全なる不幸なエンドなので
そういうのが苦手な方は読まない方が良いかな、と……
「もしもし? ……あぁ、……うん。……そっか。ん、じゃあ、長い間ご苦労さんって言っといてくれ。俺も後で挨拶に行くわ……」
「あ、……ぅ」
「ん? ちょっと、もう一回言ってくれ」
「ぅー……」
「ごめん、ちょっと待ってくれ。……元就、いい子だから静かにしててくれ。電話中なんだ。判らないか?」
「ぅ……」
「……悪い、なんだって? ……あぁ、……捜索願いが出たか。……困ったなあ。……判った。考えておく」
長曾我部はそう言って、通話を終えると、深く溜息を吐いて、膝の上に乗っている頭を撫でた。
かつて毛利元就という名を持っていたそれは、ただ猫のように長曾我部に撫でられている。目は虚空を見詰めるばかりで、口からはうめき声しか出さない。
それでも長曾我部は彼を「元就」と呼んだし、彼も「あぁ」だの「うぅ」だのと返事をした。ただし、当の毛利がそれを理解しているのかは不明だ。音がしたから音を返している、それだけの反応のようにも思えた。
自分を信じきっていた、愛していただろう毛利を、奈落に突き落とした日の事を長曾我部は忘れない。
再び連れ込まれた地下室で、鎖に繋がれて、注射器に驚愕した彼は、……しかし、長曾我部から逃げようとも、何もしなかった。ただ「もとちか」と彼は泣きそうな声で呟いて、……それが長曾我部と毛利の、会話らしい最後の会話になった。
愛して傷つけて傷つけて愛した。愛でて殴って、撫でて蹴り、口付けて切り、そして抱きしめて薬を与えた。
そうしてボロ人形のようになった彼を、長曾我部は手放せないまま、今日まで来ていた。
そうしたかったはずだ。ずっとずっとそうしたいと思っていた。毛利を地獄に突き落として、笑ってやるのだとずっと思っていたし、それで自分の憎しみは昇華出来るのだと、長曾我部は信じていた。
なのに何故だろう。毛利が壊れれば壊れるほどに、長曾我部は毛利に惹きつけられた。手放せなくなった。……正確に言えば、「何故壊れてしまったのだ」と疑問だった。
確かに自分が壊した。薬を与え、狂うほど抱き、壊れるほど殴った。それは確かなのに、何故「毛利」が壊れてしまったのか、長曾我部には判らないのだ。
自分は「毛利」を壊す事を、本当に望んでいたのだろうか。長曾我部は時折そう考えて、彼を抱きしめて泣く。咽び泣く。どうしてこんな事になってしまったんだ、どうしてお前はそんな風になったんだ、誰にやられたんだと問う。彼の答えはいつも同じ、小さく「あぁ、」と赤子のような声で鳴くだけ。
それが憎くて悔しくて怖くて悲しくて、長曾我部はまた彼を殴る。そうすると彼は火がついたように叫ぶ。それが愛しくて、長曾我部はやっと安心する。まだ反応するのだと安堵出来る。
そしてまた彼を抱きしめて、「元就、元就、元就」と名前を呼び続ける。やがて何も判らぬ彼は、優しく長曾我部の背に手を回したりなどするのだ。それが死んでもいいと思うほど幸福で、そして死にたいと思うほど悲しい。
眠たげな彼の頭を撫でてやる。優しく優しく髪を梳いてやると、彼は目を細める。またしばらくすれば薬が欲しくて縋りついて来るだろう。けれど今はとても穏やかに、そこに転がっているのだ。
「……なぁ、……あんた、なんで……最後に、抵抗しなかったんだ?」
長曾我部が尋ねても、彼はうとうととするばかり。
「あの時あんたが少しでも、俺に騙されたとか、なんとか、とにかく抵抗してくれれば、……俺はこんなに苦しくなかったと思うのに。……あぁそうか、……それがあんたの最後の抵抗だったのかな……」
長曾我部が語りかけている人物と、そこにいるモノは別の生き物だから、彼は返事もしないし、言葉を聞いてもいない。それが酷く虚しくて、長曾我部は彼を抱き寄せた。彼は微動だにしない。
「俺はあんたを最後まで許さなかった。だからあんたも最後まで、俺を許さない。……そういう事、なんだな。……なぁ、……なあ、元就、元就……もとなり」
ぎゅう、と抱きしめると、苦しげな声を出す。それは動物だった。ただ今日生きていて、明日も昨日も無い生き物。男も女も友も恋も愛も何も無い生き物。
「……元就。お前のお兄さんがな。捜索願いを出してくれたんだって。お前の」
「ぅ……」
「今更お兄さん面してるんだぜ。お前をこんな風にした直接の原因なのにな。何にも知らないで……。なぁ元就、こんなお前を取り戻すために、お兄さんはいくら払うかな? 今のお前は何円になるんだろうな。お兄さんにとって……」
長曾我部は溜息を吐いて、そして笑った。
「……止めよ。下らねぇや……なぁ元就。静かな所が好きだったよな。山とか、海とか……なぁ、墓に入るならどっちがいい? 海の中と、山の中」
「……ぁ」
「山? そうか、山か……そうだなあ。とびきり綺麗な所にしような。春には桜が咲いて、……秋には紅葉が……。たんぽぽを植えてやるよ。あんたの上に。……なぁ楽なほうがいいか、辛いほうがいいか? 俺の手のほうがいいか、それとも他の……」
「う、ぅ……」
「……そうだな。もうあんたには楽も辛いも、……俺も俺じゃないのも、判らないんだもんな……」
長曾我部はもう一度、彼を抱きしめて、そして目を閉じて言った。
「……なぁ、もし次が有るなら、……来世が有るなら、また俺の事を憎んでいいよ、元就……ごめんな。許してもらえっこないから言うよ。ごめんな……」
長曾我部は彼の唇に口付けを落として、そして彼の頬を撫でて言った。
「おやすみ、元就」
+++++++
とにかくどちらも救われないし、どちらの思いもすれ違ったままの最終回。
なんだかごめんなさい。
「あ、……ぅ」
「ん? ちょっと、もう一回言ってくれ」
「ぅー……」
「ごめん、ちょっと待ってくれ。……元就、いい子だから静かにしててくれ。電話中なんだ。判らないか?」
「ぅ……」
「……悪い、なんだって? ……あぁ、……捜索願いが出たか。……困ったなあ。……判った。考えておく」
長曾我部はそう言って、通話を終えると、深く溜息を吐いて、膝の上に乗っている頭を撫でた。
かつて毛利元就という名を持っていたそれは、ただ猫のように長曾我部に撫でられている。目は虚空を見詰めるばかりで、口からはうめき声しか出さない。
それでも長曾我部は彼を「元就」と呼んだし、彼も「あぁ」だの「うぅ」だのと返事をした。ただし、当の毛利がそれを理解しているのかは不明だ。音がしたから音を返している、それだけの反応のようにも思えた。
自分を信じきっていた、愛していただろう毛利を、奈落に突き落とした日の事を長曾我部は忘れない。
再び連れ込まれた地下室で、鎖に繋がれて、注射器に驚愕した彼は、……しかし、長曾我部から逃げようとも、何もしなかった。ただ「もとちか」と彼は泣きそうな声で呟いて、……それが長曾我部と毛利の、会話らしい最後の会話になった。
愛して傷つけて傷つけて愛した。愛でて殴って、撫でて蹴り、口付けて切り、そして抱きしめて薬を与えた。
そうしてボロ人形のようになった彼を、長曾我部は手放せないまま、今日まで来ていた。
そうしたかったはずだ。ずっとずっとそうしたいと思っていた。毛利を地獄に突き落として、笑ってやるのだとずっと思っていたし、それで自分の憎しみは昇華出来るのだと、長曾我部は信じていた。
なのに何故だろう。毛利が壊れれば壊れるほどに、長曾我部は毛利に惹きつけられた。手放せなくなった。……正確に言えば、「何故壊れてしまったのだ」と疑問だった。
確かに自分が壊した。薬を与え、狂うほど抱き、壊れるほど殴った。それは確かなのに、何故「毛利」が壊れてしまったのか、長曾我部には判らないのだ。
自分は「毛利」を壊す事を、本当に望んでいたのだろうか。長曾我部は時折そう考えて、彼を抱きしめて泣く。咽び泣く。どうしてこんな事になってしまったんだ、どうしてお前はそんな風になったんだ、誰にやられたんだと問う。彼の答えはいつも同じ、小さく「あぁ、」と赤子のような声で鳴くだけ。
それが憎くて悔しくて怖くて悲しくて、長曾我部はまた彼を殴る。そうすると彼は火がついたように叫ぶ。それが愛しくて、長曾我部はやっと安心する。まだ反応するのだと安堵出来る。
そしてまた彼を抱きしめて、「元就、元就、元就」と名前を呼び続ける。やがて何も判らぬ彼は、優しく長曾我部の背に手を回したりなどするのだ。それが死んでもいいと思うほど幸福で、そして死にたいと思うほど悲しい。
眠たげな彼の頭を撫でてやる。優しく優しく髪を梳いてやると、彼は目を細める。またしばらくすれば薬が欲しくて縋りついて来るだろう。けれど今はとても穏やかに、そこに転がっているのだ。
「……なぁ、……あんた、なんで……最後に、抵抗しなかったんだ?」
長曾我部が尋ねても、彼はうとうととするばかり。
「あの時あんたが少しでも、俺に騙されたとか、なんとか、とにかく抵抗してくれれば、……俺はこんなに苦しくなかったと思うのに。……あぁそうか、……それがあんたの最後の抵抗だったのかな……」
長曾我部が語りかけている人物と、そこにいるモノは別の生き物だから、彼は返事もしないし、言葉を聞いてもいない。それが酷く虚しくて、長曾我部は彼を抱き寄せた。彼は微動だにしない。
「俺はあんたを最後まで許さなかった。だからあんたも最後まで、俺を許さない。……そういう事、なんだな。……なぁ、……なあ、元就、元就……もとなり」
ぎゅう、と抱きしめると、苦しげな声を出す。それは動物だった。ただ今日生きていて、明日も昨日も無い生き物。男も女も友も恋も愛も何も無い生き物。
「……元就。お前のお兄さんがな。捜索願いを出してくれたんだって。お前の」
「ぅ……」
「今更お兄さん面してるんだぜ。お前をこんな風にした直接の原因なのにな。何にも知らないで……。なぁ元就、こんなお前を取り戻すために、お兄さんはいくら払うかな? 今のお前は何円になるんだろうな。お兄さんにとって……」
長曾我部は溜息を吐いて、そして笑った。
「……止めよ。下らねぇや……なぁ元就。静かな所が好きだったよな。山とか、海とか……なぁ、墓に入るならどっちがいい? 海の中と、山の中」
「……ぁ」
「山? そうか、山か……そうだなあ。とびきり綺麗な所にしような。春には桜が咲いて、……秋には紅葉が……。たんぽぽを植えてやるよ。あんたの上に。……なぁ楽なほうがいいか、辛いほうがいいか? 俺の手のほうがいいか、それとも他の……」
「う、ぅ……」
「……そうだな。もうあんたには楽も辛いも、……俺も俺じゃないのも、判らないんだもんな……」
長曾我部はもう一度、彼を抱きしめて、そして目を閉じて言った。
「……なぁ、もし次が有るなら、……来世が有るなら、また俺の事を憎んでいいよ、元就……ごめんな。許してもらえっこないから言うよ。ごめんな……」
長曾我部は彼の唇に口付けを落として、そして彼の頬を撫でて言った。
「おやすみ、元就」
+++++++
とにかくどちらも救われないし、どちらの思いもすれ違ったままの最終回。
なんだかごめんなさい。
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